萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
カルマノイズには確認されているだけで四つの特性がある。
一つ、一方的に、無尽蔵に人間だけを炭素変換できる。
二つ、高い再生能力を始めとしたこれまでのノイズを超越した戦闘能力。
三つ、周囲の人間に破壊衝動を植え付け、殺し合わせる「呪い」。
四つ、時間経過によって自壊する事なく、倒すまで何度でも現れる。
つまりは、一度現れると凄まじい数の人間が犠牲となるという事だ。
――間に合わなかったか!
二課本部の上層にある基地に辿り着いた詩織が見たのは、大量の黒い塵の山と二体の黒いノイズ、そこに「ガングニール」は居ない。
ようやく見つかったガングニールの融合適合者、だが基地に居た者達は自らの「保身」の為、時間稼ぎの為に適合者をそのまま実戦投入した。
その結果がこれだ。
『ウェル司令、到着したけど生きてる?』
『んがあああ!!せっかくの適合サンプルがあああ!だから投入は待てと言ったんだ!!』
――はぁ、元気そうで何よりだ
どうやらサンプルの犠牲のおかげでウェルを始めとした二課の者は無事な様だ、詩織は安堵と呆れの溜息をつき、目の前の敵に向き直る。
敵はたった二体、されど二体。
カルマノイズは通常のノイズより遥かに強い。
それこそ、ただ普通に戦えば決して勝てる相手ではない。
だから切り札を使う。
「ゾアテックスモジュール、起動」
アームドギアが変形し詩織の姿が変わる、青白い装甲が逆立ち、まるで獣の様な姿へと変わる。
ゾアテックスシステム、融合症例であるが故にシステムの改良、戦闘力の向上を見込めない詩織に与えられた強化デバイス。
「ダインスレイフ」と「ヤントラサルヴァスパ」を搭載し、シンフォギアの暴走を意図的に利用する為の「錬金術」由来のシステムだ。
それは身に秘めた「獣性」を開放し、制御する為の力。
前身である「イグナイトモジュール」はカルマノイズが持つ「呪い」によって理性を失ってしまい敗北を喫する事となった。
その時は「テレポートジェム」によって難を逃れ、対抗策としてダインスレイフによって引き出すモノを「破壊衝動」ではなく「獣性」へと変える事となった。
当然、強力な力にはリスクが伴う。
「ゾアテックス」発動中は目に映る者全てを敵と認識する、それは強力な理性を以てしても制御できない、おまけに発動時間300秒の間は解除もできない。
つまり完全な獣となるわけだ。
だが、それは一人で戦う詩織にとってリスクとなりえない。
手を前足に変え、四足の機械の獣として地を駆け、カルマノイズとの距離を詰める。
頭部に左右上下一対として展開されたブレードが青い輝きを放ちだす、それを見てか一体の蛸足のノイズは後ろへと下がり、もう一体の人型ノイズが構えを取って前に出る。
「GRUUAAAAAAAAA!!!」
咆哮をあげ、カルマノイズに飛びかかり、その胴にアームドギアで「喰らいつく」。
そして自身の体を捻り、回転を加える、それはまるでワニが喰らいついた獲物の肉を「デスロール」でもって引き千切る様な動きで、ノイズの体をズタズタに破壊していく。
-Ray Blade Fang-
バラバラになったノイズの体が爆発四散、その衝撃を推進力とし、もう一体のカルマノイズ向けて空中を駆ける。
それに対してカルマノイズもやられているだけではない、獣と化した詩織を迎撃しようと触手を伸ばすが、それは尽く「噛み千切られ」無力化される。
さすがにまずいと感じ取ったのかカルマノイズが姿を消そうとするが、それよりも詩織が早かった。
カルマノイズの頭に喰らいつき、そのまま前方向に推進、前転の形で別次元に逃げようとしたカルマノイズを引き摺り出した。
そして、牙たる剣を輝かせて必殺の一撃を放つ。
-Plasma Roar-
それはアームドギアの共振反応によって「プラズマ化した歌」を放つ、いわば簡易絶唱だ。
光によって焼き尽くされたカルマノイズは粉々に砕け、塵と化す。
「Aoooooooooooooooooo!!!」
そして勝利の咆哮をあげ、詩織は今日も「カルマノイズ」に勝利した。
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「で、申し開きはありますかウェル司令」
「どうもこうもないだろ奴らが勝手にサンプルを投入しただけの話!僕に落ち度はなっぁああい!」
「はぁ、貴方が司令でしょう、止める権限もないのですか」
「知ったものか!とにかくあの無駄飯喰らいどもを僕は許さんぞ」
「はぁ……わかりました……それじゃ始末します……「ノイズとの戦い」で死んだなら報告は必要ないでしょう?」
加賀美詩織にはもう一つの顔がある。
それは内部粛清を行う「執行者」としての顔。
人格的に問題があるウェルが司令となり、行動に問題のある詩織が独自行動が許される理由。
風鳴機関、特に風鳴訃堂の手先として、日本政府に不利な存在を消し去るという仕事。
それをこなしつつも、利益となる事を続けている、だから二人は自由な狂人として行動できる。
「相変わらずおっかない……そんなにサンプルを潰された事にお怒りなのかい」
その姿に思わずウェルは真顔になり、それに詩織は首を縦に振る。
「私はですね、大義の為の犠牲は認めます……けれど保身の為の犠牲は許さないんですよ」
「おお怖い怖い、僕も気をつけとこ……おっとこんな所に嫌な奴らのリストが~」
メモ用紙を取り出し、ウェルはその場で3つの名前を書く。
「はぁ、また奴らですか……「錬金術師」なら自己防衛くらいしてもらいたいですね」
「役に立たないくせに声だけはデカイ、まったくもって邪魔なのになんで置いておくんだろうねぇ」
現在、二課には複数の錬金術師が所属している。
数年前、内部崩壊を起こした「パヴァリア光明結社」に所属していた錬金術師達を迎え入れたのだ。
だが彼らの多くは大した貢献もせず己の保身と私欲の為に費用を貪り続ける寄生虫だ。
貢献しているのは一部の者だけ、故に詩織もそろそろ「人員調整」を行おうと画策していた。
「今日の襲撃のノイズが基地に入り込んでいた、彼らは偶然それに遭遇してまった哀れな犠牲者」
光のない瞳で、詩織は笑った。
元ネタ解説
・ゾアテックス
「ヘキサギア」に出てくるシステム、機械に動物っぽい動きをさせられる。