萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
朝陽に照らされ舞い散る塵が光を反射する、炭素分解された者の黒い塵と並ぶ様に、白い砂の様な塵の山が混じる。
「これは……?」
「念の為、回収班に回しておけ「例のもう一人」に関係あるかもしれない」
まるで灰の様なソレは特異災害対策機動部一課から、二課の解析班の手に渡る。
当然、櫻井了子の手にも。
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ノイズの犠牲となった人々の為に祈る。
私の居た世界だってまだ完全に平和になった訳ではないし、いつどんな戦いが起きるかわからない。
だけどノイズが現れる事はもうなくて、それだけ悲しむ人が現れなくて済む。
けれどこの世界は違う、まだノイズの脅威は健在のままで、なによりノイズと戦う事の出来る者は一人。
「……何やってんだ」
「祈っていました、私が救えなかった人達の冥福を」
この世界で、奏さんはどれだけ失ってきたのでしょうか。
どれだけ救えなかったのでしょうか。
世界に一人だけで、何時終わるとも知れない戦いの中に身をおく。
奏さんは翼さんを失ってからも、ノイズと戦う心を失わず、ここに立っている。
「この世界で一人で戦って来たんですね」
もし私だったら――
ここまで戦い続けられるだろうか。
「……だったらどうした」
「一人で、多くの人を守ってきたんですね」
ノイズとの戦いは誰かを守る事。
「同じ装者として、私は奏さんを……」
「今のあたしはそんなキレイなもんじゃない……あるのはノイズへの復讐心だけ、それだけだ」
「……奏さんがどう思おうと、私の主観では――奏さんは人を守れる防人に見えます、自分なりに翼さんの想いを……」
「お前がアイツの何を知って……」
「この世界の翼さんの事は知りませんが、私の世界の翼さんの事ならよく知っているつもりなので、こう見えても私の人生は翼さん無しに語れませんからね!」
奏さんは、きっと自分を許せてないのだと思います。
私がもし、翼さんを……誰かを犠牲に自分だけ生き残ってしまったなら、自分を許せないから。
縁の深い筈である、翼さんや響さんではなく、何故私がここに来たのか、まだわからない、だから私に出来る事をやろうと思う。
「……はぁ、なんていうかお前……」
そのつもりで真っ直ぐ奏さんを見つめると、奏さんが諦めた様に溜息をつく。
が、その目は。
「なんですか、そのあほの子を見るような目は」
「お前、翼の事になると早口になるよな」
「エッ!?」
「気付いてなかったのかよ……」
は……恥ずかしいわ!気をつけよう……。
ともかくして。
「……それはそれとして!私がここに居るのは間違いなく「翼さん」の意志が介在するのです!故に!私は奏さんの助けになってみせます、私の意志として!」
「どういう事だよ」
「一緒に戦うだけじゃなくて、出来る限り何でも奏さんを助けます」
「正気かよ」
「正気です、こう見えて無茶振りには対応してきたので~あ、余裕ですよ!」
とりあえず、まず私の活動方針が一つ決まりました。
第一作戦「奏さんの心を支え隊(総勢一名)」
「なんか……テンション違くないか?」
「こっちの方が素ですよ、配信とか特異災害対策機動部の広報装者もやってたので」
「はぁ!?向こうじゃ秘匿されてねぇの!?」
「装者として顔出ししてるのは私だけですけどね!」
「ありえねぇ……正気かよ」
呆れた、というより「マジかよ」って顔で苦笑いしている奏さんですが。
「ようやく笑いましたね」
「くっ……いやいや、そのセリフの使いどころじゃないだろ……」
「『やはり奏には笑顔が似合う』」
精一杯の翼さんの声真似で追撃をする、こうみえて翼さんの声の出し方なんかも研究していたのが役に立つとは。
ついでに表情も出来るだけ翼さんがよくやるように似せる。
「ぶっ……今の翼のマネかよ!?」
「よくわかりましたね」
「でも何かおかしくねえか?なんか翼はそんなキリっとした感じじゃなかったし……」
「こっちの翼さんは先輩として頼れる感じになりたいとキリっとしてますよ、防人ッシュな感じで、でもたまに武士道な感じなセンスが出てきたり」
「……やっぱりそりゃ違うな……でも何処か不器用な所は、変わらない」
世界が違っても、翼さんはそんな人だった様で、なんだか安心した。
おかげで初めて奏さんの笑う顔を見れた。
「もっと聞かせてくれよ、翼の事とか」
「はい、それはもう沢山語れる事はあるので」
これでフェーズ1、取っ掛かりは完璧です。