萌え声クソザコ装者の話   作:青川トーン

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私に出来る事を

「詩織ちゃん、二人だけで話したい事って何かしら?」

 

 私に出来る事を考えた、私一人の手では届かない事を知った。

 

 だから考えた、どうすればそれが叶えられるのか。

 

「あなたにしか、お願いできない事があるのです了子さん……いえ「フィーネ」」

 

「……やはり知っていたか、何故今まで黙っていた?」

 

「こちらのあなたとは敵対していませんから、それに「二度目」なので勝てる算段はあったので」

 

 キャロルやドクターウェルなど何処にいるのかも分からない相手と違い、一人だけ、確実な天才がいる。

 本当に勝てる自信は無い、利用する……といっても策謀など私に出来る筈もない。

 

 だから。

 

「本当に自信があるなら脅迫でもするだろう、それで何を求めている?帰る手段と言われても知らんぞ」

 

「私の望みは、この世界でのシンフォギア装者の強化です。カルマノイズという目先の強敵もありますが……私の居た世界では多くの事件がありました、その中には地球そのものを滅ぼそうとした錬金術師……キャロルとの戦いなんかもありました。だからそれに備えてこの世界の戦力を強化したいんです」

 

 世界はいつだって試練に満ちている、私と奏さんだけで乗りこえらるとは限らない、それに私が居なくなった後もこの世界は続く。

 

 

「なるほどな、確かに世界に滅びられてしまってはお前も帰る所ではないな、それに私にも無関係ではない……それでお前は何が出来る?何を知っている?」

 

「……この世界でも同じとは限りませんが、適合者と聖遺物をお教えします、他にも聖遺物起動の為のフォニックゲインの供給、それと……私の胸を切り開いて中のギアを調べる事を」

 

 正直言って、フィーネ相手にこの情報を与える事は後々奏さん達にとって害を為すかもしれない。

 奏さんと他の皆が戦う事になるかもしれない。

 

 けれど私は信じている、皆が手を取り合える事を。

 

 

 それはそれとして保険として、後で司令と奏さんにだけはメモを渡しておく積もりでもある。

 

「私がお前の胸のギアに細工をするなどと考えないのか?」

 

「正直、迷いました。けれど……あなたを信じる事にしました、かつて私の友があなたを信じた様に」

 

 この命を他人の手に、よりによって一度は私を殺したフィーネに委ねる、というリスクはある。

 けれどシンフォギアについては誰よりも彼女が良く知っている。

 

「……馬鹿げているな」

 

「あまり信用していないのですがカリオストロを名乗る錬金術師曰く、私の心臓は「賢者の石」に近いモノ……だそうです」

 

「おい、まだ協力するとは言っていないぞ」

 

「あの炎を使うカルマノイズ、あれは未来の私が係わっている様で、私を殺す事で歴史を変えたいそうです」

 

「……それがどうした」

 

「私は……私に出来る事を、私がすべき事を成す、それが皆のいる世界に帰る事に繋がると信じています……その為にどうか協力してくれませんか、フィーネ」

 

 

 

 

「……もし断ったら?」

 

「……あなたの気が変わるまで、待ちます」

 

「……私を動かすのだ、高くつくと思え」

 

 賭けには、勝ちました。

 これでようやくスタートライン、ですね。

 

「ありがとうございます」

 

「せいぜい私の気が変わらない様に役に立ってみせろ、使えないとなれば即座に切って捨てる」

 

 

 まさか仇敵と手を取る日が来る、とは思っても見ませんでした。

 

-----

 

「おいおい、もう大丈夫なのかよ詩織」

 

「まあまあ大丈夫といった所ですね、やり方はわかったので次は勝てますよ、あのカルマノイズに」

 

「そうじゃなくて、体の方だよ!ずっと眠ってたんだ心配もする!」

 

「ああ、よくある事なので……体が100%聖遺物になった時よりはマシですし」

 

「んなバカな事があるか!もうちょっと大人しくしてろって」

 

 トレーニングルームでギアを纏って力の制御の練習をしていたら奏さんが来た。

 そういえば、随分と心配させてしまいましたね。

 ……相変わらず、私は他人を心配させる事ばかりだ。

 

「そうですね……じゃあ今日はこの辺りでやめておくとしましょう、せっかくですし、少しお話しましょうか」

 

 

 リディアンの近くの喫茶店に場所を移し、私は手帳を鞄から出す。

 

「なんだその手帳」

 

「もしも了子さんが敵対した時の保険です」

 

「はぁ?どういう事だよ」

 

「こっちの了子さんがやるとは限りませんけれど、残念ながら私達の世界だと了子さんと敵対する事になってしまいました、詳しくは全部この手帳に書いてあります、これを二冊用意しました、片方は司令に渡していただけると幸いです」

 

 

 奏さんがいぶかしげに私が用意した手帳の中を確認する。

 

「……とりあえずさ、色々突っ込みたい事があるんだけれど……了子さんがその、古代の巫女で何度も転生を繰り返してるって本当かよ」

 

「はい、ちゃんとこの世界でも確認は取れましたよ、それはそれとして協力も取り付けましたけど」

 

「聖遺物があるって事はこの世にも不思議な事はあるってのは理解してるよ?だけどよぉ……受け入れられる情報量にも限度があるんだよなぁ」

 

 確かに私も後々フィーネの情報を聞いた時、リーンカーネイションって何だってなりましたし……。

 

「まぁ……それは了子さんが不審な事をしだした時の保険なんで本題じゃないんです」

 

 そう、フィーネの件は本題ではない、私が情報を与えた事でフィーネが連れてくる方が問題なのだ。

 

「もし将来、新しい装者が出てきた時、仲良くしてあげて欲しいんです、最初は気が合わなかったり、了子さんがなんか裏で糸を引いて操ってたりして敵対する事があるかもしれませんが、それを乗り越えれば頼れる仲間になれる子が、この世界にも居るかもしれないんです」

 

「……それはあんたの世界の装者の事か」

 

「はい、手帳に出来る限り情報を載せておきました、もしもこの世界でも皆が居て、装者となったなら、もし私が知らない誰かが装者になった時、最後まで「手を繋ぐ」事を諦めず、対話を諦めず、歩み寄ってあげてください。私達の世界では、それが正解でした……といっても私はあまり何も出来てなかったんですけど」

 

 思えば、皆を繋いだのは響さん、でしたね。

 

 私は響さんの様にはなれないかもしれない、でも響さんのやり方を広める事はできる。

 

 

 

「……この世界はあんたの居た世界と同じとは違う、だから気楽に「わかった」とは言えないけど、もしそんな未来が来たら、まぁ考えとくよ」

 

 

 

 私に出来る事、やるべき事はこういう事かもしれない。


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