萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:青川トーン

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ツヴァイウィング

 もう一度だけ、死んだ者と言葉を交わせるのなら。

 

 あなたは何を伝えたい?

 

 

 赤い夕焼けに照らされ、向かい合うのは翼と奏。

 

「つば……さ?」

「奏ッ……!」

 

 

 互いに未練のまま死に別れた、ツヴァイウィングの再会。

 

 それは望んだ事ではなかったが、起こってしまった現実。

 

 突然の再会に、互いに固まったまま動けなくなってしまう。

 

「翼さん!」

 

 奏のガングニールが纏っていた炎が分離し、詩織が姿を現す。

 そこで翼は我に帰る。

 

「詩織!!またお前は……妙な無茶をして!それより時間がない!マリア達がこのゲートを開いていられる時間はそう長くない!話は帰ってから聞く!」

 

 自分の役目を思い出した翼は詩織の元に駆け寄るとその手をとる。

 

 

 だが詩織は、素直に「はい」と頷けなかった。

 

「でもそれじゃ奏さんが……!」

 

 突然、「鏡面」になったカルマノイズを倒さずに帰っていいのか。

 せっかくまた出会えたツヴァイウィングの二人が言葉を交わす時間もないのか。

 

 

「行けよ、詩織。皆が待ってるんだろ?」

 

 だがその背を押したのは奏だった。

 

「奏さん……」

 

「カルマノイズはあたしがなんとかする、それに翼の事なら沢山聞けたからな」

 

「奏、すまない……せっかくまた会えたのに何を伝えたらいいのか……」

 

「そんな事言うなよ、二人揃ってツヴァイウィング、あんたとあたしの仲だろ」

 

「……そうだな、ならただ一つだけ、ありがとう」

「ああ、どういたしまして。そっちでも元気でな」

 

 

 多くを語る時間はなかった、けれど多くを通じ合うには時間はいらなかった。

 

「奏さん……!ありがとうございました!どうか、どうか元気で!」

 

「おう!あんまり翼を心配させんなよ!」

 

 

 本当に短い時間だった。

 40秒にも満たない、短いやり取り。

 でもその間だけで二人は通じ合っていたと、詩織は信じる事にした。

 

 

「ありがとうな、詩織」

 

 翼と詩織は世界を分かち、繋ぐ鏡面のゲートに向けて駆ける。

 

 信じているから、振り返る事はない。

 そして鏡面との距離が0になり。

 

 ガラスが割れる様な音と共に二人が姿を消すと、そこには片腕の欠けたカルマノイズが立っていた。

 

「さぁて、この世界を守らなきゃな。あいつらも頑張ってるんだから」

 

 奏が手にしたのは聖遺物「ブリーシンガメン」。

 

「派手にやるか!」

 

 

--------------------

 

 勢いあまって転んで、空を見上げれば欠けた月が浮かんでいた。

 

「帰ってきたんだ……」

 

「感慨に浸ってる暇はないぞ詩織!まだカルマノイズが残っている!」

 

 翼の声に飛び起き、詩織は戦闘態勢に移る。

 

 少し離れた場所ではマリアとクリス、そして響が膝を着いて呼吸を整えていて、3人を守る様に切歌と調がカルマノイズに応戦していた。

 

 ならばやるべき事は一つ。

 

「翼さん、ユナイトを使います、少しびっくりするかもしれませんが多分すぐ慣れます」

 

「ユナイト…?まさかさっきの…?」

 

「そういう事です」

 

 詩織が再び姿を炎へと変え、翼のアメノハバキリに纏わりつく。

 

 青と白の装甲に星空の様な紫と夕焼けの様な赤が加わり、その姿が変わる。

 

 

――とにかく、いつもの様な感じで行ってください!援護しますから!

「また妙な事をして……帰ったら話を聞かせてもらうからな!」

 

 揺らめく炎を纏いながら翼が翔ける。

 

 切歌と調を弾き飛ばしたカルマノイズが翼の方を向き炎による攻撃を仕掛ける……が、突然カルマノイズの腹部に「穴」が開き動きが止まる。

 

 それはつまり、向こう側で奏がカルマノイズと戦っているという証でもあった。

 

「生きる世界が違っても、二人なら……飛べる!」

 

 炎を纏った刃がカルマノイズの残っていた腕を切断し、焼き尽くす。

 

 そして、翼の二つ目の太刀がカルマノイズを左側から袈裟斬りにする、と同時に右側からも同じ様な傷跡が出現し。

 ノイズはクロスする形で斬り裂かれた。

 

 

「―――――!!!!!」

 

 全身から炎を噴き出し、カルマノイズは天を仰ぎながら断末魔をあげて爆発した。

 

 すると周囲にいたノイズも、灰のノイズも次々と自壊をはじめ、姿を消していく。

 

 

 

「終わった、か」

 

「ええ、どうやらそのようですね」

 

 ユナイトを解除し、翼の側に詩織が現れる。

 フェニックスギアは既に解除しており、続いて翼もギアを解除する。

 

「詩織!」

「詩織さん!」

 

 ギアを解除し、響とクリスが駆け寄ってくる。

 

「クリスさん!響さん……!」

 

「まったくよぉ!心配かけやがってこの!」

「よかったぁ!本当によかった!」

 

 見慣れた顔、親の顔より見た仲間の顔。

 

 

「ただいまです、皆さん」

 

 気がつけば、涙が流れていた。

 

――皆が居る「ここ」へ帰ってこれた、こんなに嬉しい事はない

 

 

 

----------------

 

 約二週間、加賀美詩織がいなくなっていた時間はなかなか長く、帰ってきた私を待っていたのは向こうの世界に関するレポートの作成だった。

 

 平行世界論の実証をしてしまったのである、それはもう世紀の大発見もいいところでしょう。

 

 改めて、あの世界での出来事を詳細に書き起こすと、私は今この場所に居る奇跡に感謝する。

 

 あの世界での私は死んでいた、この事件を引き起こしたであろう「未来の私」は全てを失ったと言っていた。

 翼さんが居て、皆が居て、辛い事も苦しい事も沢山あったけれど、それ以上に幸福を得ていた。

 

 故に考える、私は皆に幸せを貰って生きている。

 ならば、私は皆に幸せをあげられているのかと。

 

 私が去ったあの世界での奏さんはどんな道を辿るのだろう。

 

 そして私が居るこの世界はどんな道を辿るのだろう。

 

 

 願わくば、皆が生きる世界に幸せがある事を。

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