萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:ゆめうつろ

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エピローグ

 

『私ですね、異世界行ってたんですよ』

 「ウワッおりんだ」「生きていたのか!」「でたわね。」「ついに頭がおかしくなったのかな?」「草」「草」

 

 カリオストロの件も含めて三週間も配信休んで音信不通になっていた謝罪配信を開始する。

 

 8月も半分が終わりそうで、宿題はともかくまったく遊べていない、というか皆には本当に申し訳ない気持ちになる。

 せっかくの夏休みだったというのに私の行方不明案件に係わる事になるなんてまったくついてないというか……。

 

『ええー今回の件につきましては本当に皆様にご迷惑とご心配をお掛けしました事を深くお詫びいたします。まったくの不可抗力というか、本当に私に落ち度はないんですけど、目が覚めたら平行世界だったんですよ。装者の皆とS.O.N.G.の皆さん、そして向こうの方々のおかげでなんとか帰ってこられましたけど』

 「各方面に迷惑を掛ける女」「ついに世界を越えた女」「さすがにウソでしょ」「いやおりんの事だから想定の斜め上を行く」

 

 ともあれ、こうして再び自宅のパソコンの前でこうやって配信をしている現実に安心する。

 

 戻れなければ、こうやって罵倒交じりの「おかえり」さえも知れなかった。

 

 まあ、それはそれとして。

 

『今日はですね、ここしばらく配信出来てなかったのでアレやりたいと思います』

 「異世界の話はないのかよ!?」「アレってなんだ」「まさかアレがくるのか」「あっ…(察し)」

 

 

 画面を切り替えた瞬間、コメントが絶望の悲鳴に塗れた。

 

 

『新作衆道耐久配信(しょうもうせん)です!』

 「あっ…(絶望)」「(視聴者が)消耗戦」「やめてくれよ……(絶望)」「異世界から帰ってくるな」「異世界のおりんと交換して」

 

 お前たちのその声が聞きたかったんだよ!

 

--------------

 

 

 フィーネの技術を以ってしてもフェニックスギア、私の心臓と一体化していたギアを摘出する事はできなかった。

 しかし基本のバリアコーティングも強化されたし、改造やアップデートが可能な様にギア拡張用のペンダントが異世界土産としてやってきた。

 

 おかげでイグナイトモジュールの搭載も出来る……となるはずだったのだが、エルフナインにフェニックスギアへのイグナイト搭載を拒否されてしまった。

 

 でもよく考えればそれはそうだ、他の皆のギアはあくまで外付け、私だけは内蔵型。

 暴走した時のリカバリの利きにくさを考えるとそうなる。

 

 結果としてだが向こうでの経験と改修によって、私の普段使い……メインのギアであるフェニックスの使用許可が下りた。

 

 一応、「向こうで手に入れたギア」という建前で日本政府に申告し、今後はペンダントを使ってギアを起動している……様に見せかける予定だ。

 

 ちなみにだがイカロスはまた技術検証用にエルフナインの手でバラされている、というかキャロルとの戦いの時でももう全然ついていけてなかったし性能も安全性もフェニックスに劣ってしまっているので、もし使うとしても大幅な改修が必要だとの事だ。

 

 他にはマリアさんのアガートラームの新しい運用法が見つかったり、今回の件は全体としてみれば労力に対して得た物の多い一件となった。

 

 

 

 

 でも得たものばかり、という訳ではない。

 

 代わりに失ったものもある。

 

 

「アハハ!やべーデース!」

「ぬぁぁぁ!切ちゃんッッ!その暴れでゴリ押しするのやめてよ!」

「ゲームシステムだから知らないデース!」

 

 私の家に切調コンビが引っ越してきた。

 

 というのも私が家に一人でいると何かしら巻き込まれる事案が二度も続いてしまったが故に警備体制の見直しがあり、監視も含めて切歌ちゃんと調ちゃんが私の家に移動となった(おまけに前の借家は防音設備がそこまでだったのではしゃげなかったとも言っていた)。

 

 

 おかげで私一人の城がなくなってしまった……しかもごく自然に私が留守の間に届いたゲームやってるし……これでは通販でBLゲーが買えないではないか。

 

「詩織さんもやるデース!たのしいデスよ!」

「ぐぬぬ……切ちゃんがクソゲーを押し付けてくる……助けて詩織さん……」

「はいはい、でもチーム制は無しね、どっちかに加担したくないから」

 

 別に嫌な訳ではないが、もっと適切な人選が……いや翼さんと同居とか私が絶対限界になる(色んな意味で)し、響さんは……未来さん怖いし、マリアさんはまあ忙しいから仕方ないし……そうだよクリスさ……あ、ダメだ仏壇買ったりして結構クリスさんの荷物とか多くて置ききれないわ……。

 

 

「ちょ詩織さんキャラ性能でゴリ押しやめてくださいデスよ!?」

「知りませんね、ゲームシステムとしか答えられません」

「因果応報……」

 

 でも楽しい。

 

 こういうのも悪くない。

 

「まずいよ切ちゃん、この人もクソゲーを押し付けてくる!力を合わせよう!」

「さっきもそういいながら裏切ったのは調デース!!その手にももう乗らないデスからね!」

 

 

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『まあ二度ある事は三度あるというか、私一人にしておくと何が起こるかわからないという事で監視員二人が新しくウチに駐在する事になりました……衆道配信を楽しみにしていた方々には申し訳ないです……』

 「やったぜ。」「ありがとう監視員さん……」「衆道配信を怖れていた方々には申し訳ないとは思わないのか……」

 

 切調コンビの教育に悪いとの事でマリアさんにお叱りを受けるBLゲーはしばらくお預け、清楚なゲームをやる事となった。

 

『そういうわけで今日はフレンズの森をやります』

 「うそやろ!?」「馬鹿なまともにかわいいゲームが出てきた」「これは…ありがたい……!」「うそつけ絶対開始数分で清楚が剥がれるぞ」

 

 スローライフ系のゲームをやるのは実は初めてだ、私のやった事のある森は食人鬼の住む森だけだし、家具は骨で出来たオブジェだし。

 

 

 とはいえ、このゲームもエグくないですか?

 なんで開幕借金を?何故引越し資金そんだけ?無賃労働では……?

 

『くそこの狸!ヤクザか何かですか!?搾取を許すな!』

 「ええ……」「草」「やっぱりな」「なんでスローライフゲーでこんな熱くなってるの……?」

 

 とにかくとっとと借金とはおさらばして、自由なスローライフを謳歌せねば!

 

 

『改築?は?望んでないんですけど!?なんで勝手に増築するんですか!?この狸逮捕しろ!!!』

 

 

 

 

----------------

 

「それで、詩織とは誰なんだ?奏」

「あんたらとはまた別の世界の装者だよ、ついこの間まで居たんだ」

「私達の知らない装者……という訳ね」

「どんな人だったんですか、奏さん?」

 

「まぁちょっと目の離せない危なっかしい奴だったよ、まあおかげで色々助かった事もあったんだがな……それにしてもギャラルホルンかー、そいつを使えばいつかまた会える事もある、かもな」


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