萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
強くなりたい、もっと強くなりたい。
「ワンパターンになりがちです!もっと意識して動いてください!」
森の中を、木々を足場に跳び回る。
一瞬だけブーストを吹かし、短距離をステップの様に移動しつつ緒川さんが投げるクナイを回避する。
-Plasma Talon-
イカロスの腕のプロテクターについた機銃をフェニックスのクローに変換し、回避の難しいクナイだけを切り払って「影縫い」されないようにしながら緒川さんを追う。
「そうです!きちんと迎撃すべき攻撃を見極めて、必要な行動を!」
――……ッ!上から来るッ!
翼さんの「千ノ落涙」ですか!
「よく避けたな!詩織!」
なるほど!このタイミングでしかけて来ますか!
――ロックオンアラート!次はクリスさんですか!
飛んでくるミサイルをロック。
-Tear Drop Ray-
ホーミングレーザーで全て起爆させつつ、その隙を狙って迫ってきた翼さんの剣をクローで受け止めるけど――やっぱりパワーが違う!
このままでは押し切られるし、クリスさんがイチイバルのボウガン形態でこっちを狙っているのがわかるし、響さんがまだ出て来てない!
「私を前に考え事とは随分余裕だな!詩織!」
「ッ!私も昔よりは強くなりましたから!」
ならば、クローで剣を支点にブーストで加速して遠心力を利用します!
「跳ぶかッ!」
スイングジャンプで跳び上がったら!狙い撃ちを回避する為に目押しブーストで軌道を変えつつ、索敵!
更に翼さんに向けて拡散レーザーで動きを牽制する!
「っが!」
ブースターが撃たれ……違う!刺さってるのは石の欠片……!!
「響さん……!」
「へへっ!油断大敵ですね、詩織さん!」
なるほど、あのパワーで投石すればダメージにもなるでしょう!しかし!
「油断大敵は貴女もです!」
-Trick Blade-
右手のプロテクターをシザー形態にして射出、もちろん狙いは響さん――と見せ掛け。
「おぉっ!?」
その隣の木の幹に打ち込み固定して、ブーストを吹かしつつ巻取りで接近――
「真正面からなら!」
受け止める姿勢になった響さん、計画通りです!
「かかりましたね!」
もう一度ブーストを吹かし、スイングの方向を変更して木を中心に円を描いて後ろを取る!
「ええーっ!?ぐっ!?」
そして遠心力を利用してキックを背中に叩き込む!地面に落っこちる響さん!これで――
「おーっとゲームオーバーだ」
え?クリス……さん?嘘?
いつのまに……しかし……!
「立花一人に時間をかけ過ぎたな詩織」
「そういう事です、意外と一瞬の様に思えても他人から見ると普通の速度だったりするんですよ」
翼さんに緒川さんまで……くっ……これは……!
逃げ切れないですね……!
「降参です……」
「とはいえ私達3人と緒川さん相手に随分と健闘したな詩織」
「つーか多対一は別に特訓する必要ねーんじゃねーか?」
「いえ、反応速度や動体視力、戦闘中の思考の特訓としては間違っていないと思います」
何故、私がこうして4対1の訓練をしているか、それは咄嗟の時の機転を鍛える為。
「あてて……詩織さんひどいですよ!何も本気で蹴らなくとも!」
「すみません、ちょっとスピードが乗って……蹴り自体にはそこまで威力を乗せた積もりではないんですよ」
そうそう、あくまで物理法則が悪いんです……ゲームの真似をしてグラップルスイング……つまりはワイヤーを使ったアクションで戦術の引き出しを増やしたんですよ。
腕のプロテクターそのものをアンカーとして飛ばすという発想は私一人じゃ間違いなく出てこなかったでしょう。
「後は前みたいにスモーク……煙幕などの技で相手の視線を遮る動きをするのもいいと思います」
「参考にします……それに皆さんお付き合いいただき本当にありがとうございます」
「いいって事よ、というかそろそろ休憩にしねーか?」
「賛成だ、基礎体力訓練から続けてだからな」
……とにかくやれる事を増やす、出来る事を伸ばす。
今現在、エルフナインちゃんと技術スタッフの皆様方がLinkerの解析と賢者の石のデータの解析を交代しながら進めている。
賢者の石の方は私というサンプルがあったおかげでそこそこデータが取れて順調だけれど、Linkerについては後一つ「負荷を低減させ、脳の作用する部分」を解析する必要がある。
どうにもシンフォギアというものは使用する度に適合係数が少しずつ上がっているらしく、マリアさん達の適合係数も上がっている、その結果アガートラームから得られたデータで後は「そこ」だけ解析できればいい、という所までは来た。
エルフナインちゃん達が頑張っているのを見て、私も次に勝つ為に頑張りたいと思った。
いくらアダムにダメージを与えたとはいっても、アレはあのガラクタが大技を出した後でポカをやらかしてくれたおかげで次はない、それにどっちかというと錬金術師どもと遭遇する確率の方が高そうだ。
そっちの方は前に一杯食わされているので、リベンジという面でも…・・・油断なく勝てる様にしなければならない。
「それにしても、随分と詩織も私達の動きについてくる様になったな」
「とは言っても皆さんにはまだまだ届きませんよ、やっぱり戦って来た時間が違います」
「詩織さんは基本的に発想や搦め手で戦っている面が目立ちますね、僕から見るとやはり正面から戦うというよりは支援や補助に向いていると思います」
その辺りは私の戦闘技術の未熟さというか、イメージが大体ゲームから来ているのでそこを真似て「相手の嫌がる事をする」戦いをする癖かも……。
「確かに私は補助向けかもしれませんが……どうにもやっぱり前に出てしまうんですよ」
「詩織さん、随分変わりましたね」
「そうですね……昔の私なら喜んで後ろでチクチクやってたでしょうけど……今は皆さんと並んで戦える様になりたい、って思ってますからね」
……出来るなら一人でも。
「まぁやりたい様にやりゃいいんじゃねーか?そこはお前が決めた事なんだろ?」
「だが、あまり私達を心配させる様な事はしない欲しいものだな」
「そうですよ!いきなり師匠も含めて五対一をやりたいなんて言い出してびっくりしましたよ!?」
「あはは、それくらいやらないと追いつけないかなーっと思いまして」
本当ならここに更に司令が加わっていた筈でしたが、まぁ……私の実力ならさらに酷い事になってしまいましたね……結果として四対一ぐらいが限界だったわけで、それも3分ぐらいしか持ちませんでしたし……。
「……詩織、急ぐ事はないんだ」
「……それでも、ですよ。今は道理を蹴っ飛ばせるぐらい強くなりたい、まあ後でちゃんと休んだり遊んだりしてバランスは取りますから」
そう、対価を払ってでも。