萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:ゆめうつろ
自分の頭の中を覗かれるというのはどういう気分なんだろう。
記憶、感情、思考……私のなんかはあまり自分で言うのもなんですけど、ろくでもない考えとか、ろくでもない感情とか……後はろくでもない記憶ばっかりなので正直恥ずかしいし……見てもあまり面白くなさそうです。
ついでに言えば学術的価値もあまりなさそうなので今後覗き見る事もなさそうですが。
エルフナインちゃんが例のアレ……今は亡きウェル博士の残したデータから作った装置を使ってマリアさんの記憶にダイブする事になりました。
というのも順を追って説明すると、Linkerを完成させる為にシンフォギアが脳に作用する部分、適合係数を上げる部分を突き止める為であり、それはアガートラームによってなんらかのベクトル……私にはちんぷんかんぷんですが、とにかくそういう部分を突き止めるのに意識をリンクさせるらしいです。
らしいというのも、私はその場に居なくて今さっき聞いたばっかりで、おまけに詳しく聞こうと思ったらアルカノイズが出てきて今は遅れて現場に向かっているからです。
なんだかんだ結構興味のある部分なので帰ったらエルフナインちゃんに聞いてみようと思いますが……とにかくまずは目の前の敵を片付ける。
イカロスで向かっていますが、既に現場では翼さん達が戦っている筈――
『詩織くん!アルカノイズが分裂して三方向に移動を始めた!』
――分断ですか。
『私は何処へ向かえば』
『響くんの援護へ向かってくれ』
『それはつまり』
『……もしもの場合、『ユナイト』の使用を許可する』
錬金術師の持つ賢者の石への対抗策はまだ見つかっていない。
いや、現状では二つある。
一人の錬金術師を四人で囲んで叩くか、それか私と響さんでユナイトしてパワーで各個撃破するか。
とはいえこうして三方向に戦力を分断した以上、数の有利を取ってボコる事はできないし、むしろ逆に消耗した所を各個撃破される可能性もある。
そしてユナイトはまだわかっていない事が多くて、『リスクがわからないというリスク』を抱えている。
とにかくするべきは――ッ!
「今のを避けたか」
っ危ないですね!今の銃弾目の前で増えましたよ!動体視力を鍛えてなければ危なかった!
「――そこをどいてもらいましょうか、あんたらの革命ごっこに構ってる暇はないんですよ」
「革命”ごっこ”だと?」
……にしてもまさか、各個撃破にしてもまず私が狙われるなんて日が来るなんて思いもしませんでしたね。
『すみません司令、足止めをくらいまして到着無理そうです』
『待て!一旦引け!』
「あーら、私達三人相手に逃げられるとでも?」
「まあ土台無理なワケだ」
『そういう事なので、ちょっとこいつらボコってから向かいます』
本部との通信を切り、目の前の敵に向き合う。
空に浮いている……と思ったんですが、よくみりゃ何かの上に乗ってますね……ステルス系の異端技術でしょうか?まあいいでしょう……どうせぶっ壊すんですから。
「いまどき流行らないんですよね、暴力革命なんて。フランスとかしょっちゅう革命やってますけど上に立った人達しょっちゅう死んでません?」
「……権力闘争ではない」
「じゃあアレですか?アルカノイズとか異端技術で会社でも立ち上げますか?ああパヴァリア光明「結社」ってそういう……」
「産業革命でもない!!」
この人まじめですね……なんでこんな雑なボケに乗ってくれるんでしょうか。
とりあえず……私一人で突っ込んでも、勝ち目は殆どないのでこうして時間を稼がせて貰うし、やれる事はやるつもりです。
「……さて、冗談はここまでにしておきましょうか……あなた達の目的とか、正義だとか、そういうものは正直興味がありません……」
……私は皆さんが来てくれるのを信じて、文字通り「期待」している。
でも本当にそれでいいのでしょうか?
「それにわざわざ三人揃って私を狙いに来たという事はあなた達のボスをボコボコにしたのを警戒しての事でしょう」
皆に守られる私、皆を信じる私、皆に助けられる私……それも悪くは無いですが。
私は、皆をを守る私、皆に信じられる私、皆を助ける私になりたいと望んだ。
もう弱いだけではいられない、そうでしょう。
「だから期待通りに本気で相手してやりましょうか……」
多対一、数の不利を補う為にわざわざ特訓してきたんですよ。
フライトユニットから推進器の付いたナイフ状のアームドギアを「羽根」の様に展開し、射出する。
- Feather Fang -
これが私が見つけた答え、オプションビット……シューティングゲームにおける強化装備、自機に随伴し、攻撃したり防御したりするアレを三次元的に展開し、攻撃範囲を増やす。
「あーら随分とやる気まんまんね」
すると向こうもアルカノイズを出して来ましたが……パワーアップした私の前では無力だという事を証明してあげましょう。
「言うならそうですね……『革命家気取りが、報いを受けて死ね!!』」
今の今までチャージしていたホーミングレーザーを一斉に開放、オプションビットのレーザー攻撃を雨あられと降らせる。
アルカノイズなど物の数ではありません、想定通りデカブツ以外は瞬く間に蜂の巣になりましたし、奴らの足場の要塞のステルスが解けました。
オプションビットはある程度撃つとエネルギー切れになって撃てなくなるのでそのまま突っ込ませます。
「他の子達と違って手加減しないのね!」
「そうやって殺意マシマシで襲ってくる分やりやすいワケダ!」
直球な火球、趣味の悪いハート型弾、炎みたいなエネルギー波、アルカノイズ、対空砲撃。
その程度の弾幕など、ぬるい、ぬるいです。
緒川さんの全方位クナイの方がまだ厄介です!!
-Tear Drop Ray-
アルカノイズを拡散レーザーの雨で焼き尽くして、エネルギーの尽きたビットを要塞に突き立てていく。
「まずはカリオストロ!あなたから始末してやります!いつかのお礼も兼ねてね!!!」
左手からシザーアンカーを放つ、それは当たる事なく逆にワイヤーを掴まれた。
「それじゃあーしからもお礼に!」
すごいパワーで引っ張られるが、それは想定の内であり――私の狙い通りです!
カリオストロが左手に青いエネルギーを纏う、距離は――今!
十分に距離を詰めてワイヤーを切り離してクローを展開する。
-Plasma Talon-
後ろに跳躍して回避されましたが少し脇腹をカスってダメージは与えられた様です。
青いエネルギーはどうやら水みたいでしたね、接触したせいでクローの熱が減衰してしまいました。
もう一息で少なくとも治療しないと死ぬレベルのダメージにはなったと思ったんですが。
「っはぁ!なーるほどそれが局長をボコボコにした力ね」
「それが知れたらもう用はないワケダ!消えろ!」
黒髪のチビの方から随分と巨大な炎弾が飛んできましたが――そうですかこいつらは見てないんですね……!
なら、わざと受けてやってもいいでしょうか。
火の玉を、右手で受け止め――握り潰して爆発させる。
「あーらもう終わり?あっけないわね」
「所詮は言葉だけなワケダ」
「――とでも言えば満足か?」
――あら、見破られてましたね……というか少し調子に乗ってました。
周囲に舞う炎を全て吸収し、エネルギーに変換する。
「警戒して損をしたワケダ」
「局長の自業自得ね」
「これで憂いはなくなった、さて」
――ッ!雰囲気が変わりましたね……もしかして、もしかしなくとも……ただただ測られてただけでしょうね……やっぱ私だけじゃキツイ現実は変わりませんね……。
「貴女の命と賢者の石、革命の礎として貰い受ける!」
――銃口の動きは見え……
「遅いワケだ!」
このチビ!動きが早いですね!
ですが!
「貰うのは!!」
距離を詰められる?逆に考えるんです、『こっちの手の届く所にわざわざ来てくれてありがとう』。
「お前の命ですッッ!!!」
このタイミングで足元に突き刺したビットを全機自爆させる。
「しまっ……!」
相手が衝撃で浮き上がった、さあ……ハラワタヲエグリダシテヤ――
「――っが!!」
――――――――
痛い、ですね。
「させないわーけ」
カリオストロ……なるほど、格好を変えて……これがファウストローブという奴ですか……今のパンチは随分痛かったです。
おかげで一瞬意識が飛びましたが……。
「プレラーティ、今のは油断しすぎよ」
「すまないサンジェルマン、それに助かったワケダ、ありがとうカリオストロ」
「いいってこと、次から気をつけましょ」
……全く仲間を思いやる気持ちは持ってるくせに、どうしてそれを他の人達に向けられないのでしょうか?
「随分と効きましたが……たかが二点三点点取ったぐらいでもう勝ちムードですか、まだ二回表、試合は始まったばかりです」
「ならば早々にコールドゲームにしてやるワケダ」
残りの二人もファウストローブを纏いましたね、確かサンジェルマンとプレラーティと言いましたか……名前は覚えました。
とりあえず……まぁ……ここから先は、覚悟はしておきましょうか、死ぬ覚悟とか。