萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:ゆめうつろ

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Fire and Tear

「――っがぁっ!」

 

 ハート弾を回避すれば爆発する銃弾が飛んできて、さらにそれを避けてもバカデカい剣玉の玉の方が飛んでくる。

 

 今の所はかろうじてかすり傷程度に抑えていますが――ッ!

 上下前後左右に自由に移動できるとはいえ、逆に言えば全方向から攻撃が飛んでくると同義、つまりどうしようもないですねッ!

 

「逃げるのが随分得意なワケだ!」

 

 戦線から離脱して逃げる――という選択を取りたいものですが、生憎周囲はアルカノイズだらけ、さらに背中を見せれば集中砲火に加え、かろうじて逃げ切れたとしてもどれだけの被害が出るものか。

 

 ならば活路は死地の中にしかありません――!

 

-Tear Drop Ray-

 

 ホーミングレーザーで程ほどにノイズを減らしながらも、弾幕を迎撃、敵さんの足場たる要塞にもチマチマとダメージを与えておく。

 

 

「助けを期待しての持久戦か、だが果たして助けが来るまで持ちこたえられるかな?」

 

 ――確かに、響さん達が来てくれれば……状況は打開できる、でしょう。

 あいつの言うとおり、私が持てば……ですが!

 

 

-Plasma Talon-

 

 剣玉を右手クローで弾き。

 

-Trick Blade-

 

 左手からワイヤーアンカーを射出して大型ノイズを掴み、それを引き寄せて盾にする。

 

 しょぼいとはいえアルカノイズの位相差障壁のおかげで若干の余裕が作れました。

 ここで考えるべきは、私の取るべき行動。

 

 

 選択肢はただ一つ、戦う事。

 勝利条件はこいつらを倒すか退かせるか。

 

 この状況で切れる手札は――

 

 

「チェンジ!!フェニックス!」

 

 イカロスからフェニックスフォームに移行、両腕に実体型ブレードを構えて足場に降りる。

 

 

 飛行し続ける優位性はない、こうすれば最低でも下からの攻撃は多少気にせず済む。

 私が狙うのは「インペリアル・フレイム」、生憎ここは敵の要塞の真上、被害を気にせずぶっ放せます。

 

 そして、その為にはエネルギーのチャージが必要です。

 チャージ速度を速めるには最低限のエネルギーで、回避して時間を稼ぎ……「命」を少しずつ燃やす。

 

 失敗すれば死ぬ、成功すれば生き残る、それだけの賭けです。

 

 

「ようやく諦めたか?」

「いえいえ、貴女方を倒す算段が付いたので」

「その割には随分余裕がなさそうなワケダ」

「それとも「命」でも燃やすのかしら」

 

 ……もう既にカウントは始まっています。

 60秒、持ちこたえればそれで十分です。

 

 

「決着をつける時です」

 

 まずは前に進む、飛んでくる弾は防御せずに回避、可能なら受け流し、迎撃はしない。

 

「自棄になったか!」

 

 ドラゴンの様なエネルギーは―――剣で受けるッ!

 焼き付くぐらいに冷たいけどッ――!耐えれる!防ぎきる!

 

「近づかせないワケだ!」

 

 近づいてくるのは赤い玉、選択は攻撃による防御――。

 玉に力の限り剣を「突き刺して」そのまま前転姿勢で飛び越える。

 

「ダサいんですよ!剣玉なんて!」

 

 刺さった剣を引き抜くには――割に合わないので手放しましょう。

 

「言ったな!」

「隙ありね!」

 

 着地は無防備になる、そこを狙わない理由はないでしょう。

 カリオストロがハート弾を撃ってきますがこれは――。

 

「ぐぅっ!!」

 

 ―ッッ!あえて受けます!無理に避けて体勢を崩すよりはマシですッ!

 そしてそのまま前に!

 

「あらぁっ!?」

「随分としぶとい!」

 

 銃口はこっちを向いている、回避するべき方向は――。

 

 

「進むッ!私は!!昨日よりも前へ!!」

 

 前に進みながら身を屈めて銃弾を回避、カリオストロがこっちに向かってくるのが見えます。

 

「何をする気かは知らないけどッッ!」

 

 さっき私を殴り飛ばしてくれた拳、どうやら本気になると格闘戦を仕掛けてくるようですね――

 

 

「あーしの勘が貴女を早く倒せって言うのよ!」

 

 格闘戦をやりすごす手段はただ一つ。

 

 残ったもう一本の剣を投擲、それを回避される――のを予測して、全力で拳を振るう――

 

「やったか!」

「カリオストロ!」

 

 クロス……カウンターですが、リーチの差を甘く見ましたね。

 

「うぐぅっ!」

 

 プロテクターを射出してリーチを伸ばしてお腹に一撃くれてやりました……ようやくまともに攻撃が入った気がします……が――

 

 

 私も随分重いのを喰らって首がグキっていわせまして……死ぬ程痛いです。

 

「どの道押しつぶせただろうに!勝負を急ぎすぎたワケだ、カリオストロ」

「ご……ゴメンゴメン……でもあーしの勘がずっと警告してたから」

「とにかく我々の勝ちだ、また局長に余計な手出しをされない様に早々にトドメを……」

 

 

 ……ですが、こっちの準備も整いました――

 

 

「この熱ッ!離れるぞ!カリオストロ!プレラーティ!」

「さっさと立てカリオストロ!焼かれ……ええい!私が抱えるワケだ!」

 

 逃がすとでも――?

 

 

 

 

-Imperial Flame-

 

 

 

 

 

 

 収束した火球を大爆発させ、要塞とアルカノイズは消炭に出来ました。

 

 ぶっぱなした炎を再吸収する事で多少は回復する事は出来ました……が。

 

 無理が祟ったのでしょうか、体が動かず墜落するばかり。

 

 

 視線の先には――多少はダメージを与えたものの無事な錬金術師どもです、私と同じく重力に引かれて落ちています。

 

 

「随分と粘ってくれたけれど、今度こそ終わり。その命、革命の為の礎に――」

 

 

 ……私はやれるだけやりました、後は。

 

『後は任せるデース』

『いつかのお礼!まだ出来なかった!』

 

 この声は……切歌ちゃんと調ちゃん……!!つまりは――!

 

「新手か!!」

「ここで増援なワケか!」

 

「なんとイガリマデース!!!」

 

 ピンクと緑の輝く刃が降り注ぎ、錬金術師達はそれの防御の為に私への視線を外した。

 

 これなら、間に合うかもしれない。

 

「動けッ……!」

 

 炎を吹かし、推進力で姿勢を制御、落下速度を減速させて――

 

 

「イカロス!」

 

 形態を変更、イカロスにしてその特性により更に減速、そして――

 

「ぐぅっ!」

 

 なんとかつぶれたトマトにならずに済みました、膝を若干やりましたが!

 

「詩織さん!無事でよかった!」

「二人がギアを纏っているという事は、つまりそういう事でいいんですね?」

「デスデス!エルフナインとマリアの頑張りのおかげデース!」

 

 調ちゃんと切歌ちゃんが助けに来てくれなければどうなっていた事か。

 

 とにかくエルフナインちゃんは無事にLinkerを完成させた、みたいです。

 おかげで命拾いしました。

 

「詩織さん!無事ですか!?」

 

 おまけに響さんも到着ですか!

 

 これで形成は逆転、四対三。

 

「お薬頼りが二人と手負いが二人になった所で!」

「エルフナインの作ってくれたLinkerをただの薬と思ってもらっては困るデース!」

「そう……私達を繋いでくれた絆の力!」

 

 多少消耗しましたが、勝負はここからです。

 

「おーっとそこまでだ」

「ようやく追いついたわ、パヴァリア光明結社!」

「これで七対三だ、お前達もアルカノイズをあれだけ使って数の面で卑怯だとは言うまいな?」

 

 クリスさん!マリアさん!翼さん・・・…!これで全員集合って訳ですか!

 

 勝ちましたねこれは!

 

「まったく無理をする!お前が一人で戦ってると聞いて肝を冷やしたぞ!」

「いやー不可抗力ですよ翼さん!」

「帰ったら説教ね、詩織」

「そんなマリアさんまで!」

 

「もう勝った気なワケか?」

「なめられたものだ」

 

 そら、世界を2回も救った面子ですからね。

 

「はは!散々私をいたぶってくれましたね!降伏するなら今のうちですよ?」

「オメーは調子に乗ってないで少し休んでろ!」

 

 あだっなにも叩く必要はないでしょう!クリスさん!

 

 

「さてお前達の目的、今日こそ聞かせてもらうぞ!パヴァリア光明結社!」

 

 


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