萌え声クソザコ装者の話【and after】   作:ゆめうつろ

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シンフォギアXV毎週見てるんですけどいいアイデアがどんどん出てきて展開決めかねる!


愚者の石

 行き詰まった時には視点を変えてみるというのも大事です。

 

 先日の戦いの際に得られたデータから「賢者の石」への対抗策が見つかりました。

 

 賢者の石に逆位相に存在する物質を使った「対消滅バリアコーティング」。

 それは響さんがかつて融合症例だった時に生成した結晶の様なアレだそうです。

 

 もっとも、何の因果かクリスさんが吹っ飛ばした深淵の竜宮に保管されていたそうで……サルベージ作戦が決定しました。

 

 

 そこで一つ気になったのは同じ融合症例だった私から生成される「蝋」は使えないのか?

 理論的には同じ方法で作られているのに、響さんからは「石」私からは「蝋」、何故違うのか。

 

 実際に聞いてみた。

 

「はい、では第一回異端技術会議を行います」

 

 作業のひと段落した藤尭さん、準備中はそこまで仕事のないエルフナインちゃん、マリアさん、そして私の4人だけの会議です。

 

「はい、質問者は加賀美詩織。どうして響さんの石はよくて私の蝋は使えないんですか?」

「回答者はエルフナインです。簡単に言えば数値が違うのです。あの三人が使っている賢者の石が「100」とすれば響さんの「愚者の石」は「-100」に相当します。しかし詩織さんの「蝋」は位相が「0」なんです」

 

 あーなるほど、「対消滅」させるにはマイナスである必要がありますからね……。

 

「待って、エルフナイン……いますごい事が聞こえたのだけど数値が0というのは?」

「マリアさん、これも議事録残るんで一応は……」

 

 え……私がノリでいる面子集めただけなのに……?

 これも記録に残るとなれば迂闊な発言は控えましょう。

 

「あ、ごめんなさい……質問者はマリア、イカロスの蝋の位相数値0というのはどういうことかしら?」

「回答者、エルフナイン。はい、位相の0というのは文字通りの「無」なんです、基本的に動かないのです。不活性化した存在とも言えます」

「……はい、質問者兼蝋の生産者の詩織です。でもなんかめっちゃ色んな効果持ってますよ?機械に同化したり、被検体のモルモット殺したり……」

 

 そう、ちょっと思い出すとイカロスの蝋、燃やせたり止血に使ったり……でも言われて見れば……。

 「止める」や「繋ぐ」事に良く使ってる。

 

「その辺りは「イカロス」そのものの「哲学兵装」としての効果だと思われます、イカロスといえば「ヒトの技術の結晶」というイメージが持たれる事があり、また同時に「抑止の喪失による失墜」という面もあります」

「なるほどね……そういえば私達と戦っていた頃の詩織は……」

「思い出させないでくださいよ、あの頃の私は本気で葬り去りたい過去なので……」

 

 マリアさんが苦笑いして私を見る、藤尭さんもあーって思い出した顔をしてる。

 多分私史上最も皆さんに迷惑をかけていた時期ですよあれ。

 

「それは、そうね……私も悪を貫けなんて言ってたけど……一番辛い時期だったわね」

「まあ、人は過去を乗り越えていくっていうでしょう……マリアさんも詩織さんも若気の至りで迷走した時期があったって事でそれを糧にしようって感じで……」

 

 うん、藤尭さんが良い事いいました。

 完璧な気遣いです。

 何故モテないのか、それがわからない。

 

「話は戻りますが、響さんの愚者の石とイカロスの蝋の最大の違い。同じ融合症例からの副産物でありながら効果がまったく異なる理由なのですが、これはお二人の症例の違い……だと推測します」

「性格の違い……ですか?」

「響さんの場合、エネルギーを生み出すポジティブな反応の結果余ったのが愚者の石。詩織さんの場合はエネルギーを固定・貯蔵する形の反応を出してたので」

 

 かぁー!まさかここで陰キャと陽キャ(物理)の違いですかぁー!

 

「なるほど、融合症例の個人差と聖遺物そのものの特性という訳ね……イカロスといえばもう一つ「自由への開放」というイメージもよくあるわね」

「そうです、おそらくそれも関係しているので蝋がエネルギー位相を固定する特性になった……と、ボクは推測します」

 

 なるほど……とりあえず私の疑問は解消しましたね。

 専門用語があまり出てこなかったおかげで私でも理解できました。

 

「エルフナインちゃんの講座は為になるなぁ!」

「では、次はボクから詩織さんに質問よろしいですか?」

「はい?」

「詩織さんの中の「フェニックス」に対してどんなイメージを持っていますか?」

 

 ……ごめん、まさか自分が聞かれる側になるとは思ってなくて回答用意してなかった……。

 私のフェニックス……。

 

 頭の中に浮かんでくる単語を整理しつつ、自分の感覚を研ぎ澄ます。

 

 歌を思い浮かべる様に、その本質を感じる。

 

「生と死の循環、原初の炎の唄、永劫への回帰……え……?あれ?」

 

 あれ、イメージがおかしいです。

 フェニックスといえば、普通に伝説上の生き物で……死んでも復活する?

 

「……?どうしたの詩織?」

「……不死の存在たるフェニックスはどうして、今この世界に居ないのでしょうか?ドラゴンなんかだと、英雄に倒されたりとか寿命だったりとかあるでしょうけど……それにその始まりは……どこなのでしょうか?人類を作ったといわれる旧支配者、カストディアンの時代には既に居たのでしょうか……それとも……」

 

 ……イメージされるのは、炎の大地、星の始まり、命の始まり……そう、そうだった……。

 海が生まれ、陸地が生まれ、大気が生まれても炎は星の中に残っている。

 

「詩織さん!しっかりしてください!」

 

 皆が心配そうにこっちを見ているのを見て、私の意識は今に戻ってきた。

 ですがこの一瞬で言葉が纏まりました!

 

「そうか……生命の循環に還ったんだ!……私の「前」のフェニックスは……この星の中に還ったんだ……!」

「詩織!」

「大丈夫です、ただちょっと理解しただけです。星の命の循環、レイラインの中を通るエネルギーの中に前のフェニックスは還ったということを」

「詩織さん?大丈夫ですか?それは大丈夫じゃなくてトリップしてませんか?」

 藤尭さんがわりとガチな心配の声で私に話しかけてますね……。

 

「なるほど!少しボクにもわかりました!フェニックスが賢者の石と同一視される理由が!」

「今のでわかったのかエルフナインちゃん!?」

「エルフナイン!?」

「そう……全ては簡単な事でした!生命エネルギーとは…・・・!宇宙とは!」

 

 ……?あれなんかエルフナインちゃんの目がぐるぐるしてる……?

 

「……エルフナイン……?」

 

 こ……これは!

 

「すぴー」

 

 目を開けたまま……寝ている……!

 

「……寝てる……というか近頃働き詰めだったからな……」

 

 あ……そういやそうですね、Linker作ったり色々してましたからね……。

 

「……そういえばなんか寝る前の思考ってこう宇宙の真理がわかった気になるんですよね……」

「ええ、できれば今さっきのあなたの発言も寝言みたいものだといいわね……」

「……そうですね……」

「じゃ、第一回異端技術会議はここらへんでお開きでいいかな……」

 

 締まらねぇですね……。


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