萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:青川トーン
アダム・ヴァイスハウプトが詩織を呼び寄せる為に使った人工衛星による電波ジャックはまだ続いていた。
もはやそれどころの事態ではなく、その存在すら忘れられていた。
故に地上に舞い降りた二体の神の姿は多くの者の目に映った。
『――――゛ッ!!!』
加賀美詩織……ロードフェニックスが咆哮をあげる。
銀色の瞳、炎の様な模様を描く真紅の巨人がかつて一人の少女であったとして。
「化け物だ……」
「しかも二体も……」
アルカノイズを焼き尽くし、自分達を守った存在だとしても。
多くのモノにとってそれは恐怖の対象でしかなかった。
「あの子は化け物じゃない……!」
だとしても中には、恐怖を押し殺して「彼女」を信じようとする者もいた。
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「存分に暴れろ!ティキ!」
『あだぁむぅう……わかぁったよぉ!』
力に呑まれ、意識がはっきりとしないディバインウェポンはアダムの命令のまま「平行世界」一つを生贄とし、エネルギーを作り出し、それを燃料とした攻撃を始める。
『―――!!!―♪゛』
『うる…さぁあい!!』
「耳障りだよッ!!」
対してロードフェニックスは周囲を破壊する程の衝撃を持つ「歌」でエネルギーを生み出す。
だがそれは「歌」というにはあまりにも聞き苦しく、聞く者全てに恐怖を抱かせる、破滅の序曲。
ビルが崩壊し、瓦礫が宙へと浮かぶ、二つの力は高まり。
一閃の光がディバインウェポンの口と、ロードフェニックスの右手から同時に放たれた。
衝突したエネルギーは爆発を引き起こし、周囲の万物を一瞬のうちに蒸発させた。
初撃を制したのはディバインウェポンだった、ロードフェニックスの右腕は吹き飛び、射線上の全てが溶融していた。
「トドメをさぁ!ティキ!」
それにアダムは安堵と共に気持ちを昂ぶらせたが、すぐにその表情は曇る。
溶融してマグマとなった周囲のものを吸収して再生、さらに鎧の様なものを纏うロードフェニックスの姿。
今の一撃は、周囲のモノを原初の炎に還して吸収する為の「準備」でしかなかったのだ。
『―――ア……ア゛ア゛!!!!』
ロードフェニックスから紡がれる歌が転調する、前奏曲は終わった。
「石」の鎧を纏い、両の手にエネルギーを纏わせ交差させる。
「ティキ!迎え撃――ッ」
アダムが命令をするよりも早く、「破滅」が訪れた。
ロードフェニックスが放った光線がディバインウェポンに直撃、アダムは余波で吹き飛ばされたおかげで直撃を免れたがディバインウェポンの体の6割が爆ぜた。
ヨナルデパズトーリと同じ様に平行世界の自身を肩代わりにする事で再生を果たすがティキを「核」としている以上、そこを狙われれば再生できなくなる。
今の一撃は、地平線の向こうまで焼き尽くし、街を跡形もなく消し去った。
『あだむを!きずつけるなぁ!!』
怒りに燃えるディバインウェポンの容赦のない光線の雨。
それを受けても怯むことの無いロードフェニックスの繰り出す殴打。
天まで焼き尽くすような炎が立ち上る中、二体の神の戦いは続く。
「こんな……こんなものが……私達が求めていた力……?こんなものの為にプレラーティは……カリオストロは……大勢のものを私は殺して……」
黙示録あるいは、地獄そのもの。
そう表現するしかない光景にサンジェルマンは膝をつき崩れ落ちる。
「滅茶苦茶だぁ……何もかも!」
アダムもまた自分の千年計画が取り返しのつかない程に砕かれた事に落胆していた、ティキが勝てばいいが、それでも今の状況では互角か少し不利といった所。
本来はここで戦う予定などなかったのだ、持ち帰ってしかと使いこなせるようにしかる準備をするつもりだった。
だが加賀美詩織と風鳴訃堂という想定外がそれを粉々に打ち砕いた。
そして。
「そこまでだ……!アダム・ヴァイスハウプト!」
「サンジェルマン!!」
翼、切歌、調、響の四人の装者とプレラーティがようやく現場へと辿り着いた。
二体の神の攻撃の余波でヘリが近づけないが故の遅れだった。
「プレ…ラーティ……?何故……生きて……?」
「そこのヒトデナシにやられ、S.O.N.G.に手を貸してもらった!アダム・ヴァイスハウプトは私達を裏切っていたワケだ!!」
「局長……!!あなたは!!」
サンジェルマンはプレラーティが生きていた事に驚愕と同時に「少しの喜び」を感じていた、が今はそれどころではない。
再会を喜ぶよりも今は、自分達を利用してきたアダムと、そして破壊の限りを尽くす二体の神だ。
「思ってもみなかったよ……!君がまさか裏切るなんて!」
「裏切ったのはお前だ!私はサンジェルマンの為だけにここまで来たワケだ!」
「いいさ、まあ。もう神の力は地に降りた。君達の役目は終わりだ……それにその有様で何ができるのかな?」
アダムの指摘どおり、プレラーティの現在の状態は非常に悪い。
完全な肉体である事を前提としたあらゆる機能が不全を起こして彼女の命を蝕んでいる。
「私達を忘れてもらっては困りますよ!プレラーティさん!それにサンジェルマンさん」
「立花響……何故この期におよんで……」
響が膝をついているサンジェルマンに手をさし出す。
「だとしても、困っている人に手を差し出す事を忘れたら私でいられなくなるかもしれない。だから私は「それでも」といい続けるんです……それが私のワガママです!」
サンジェルマンが求めた理想、支配され苦しむ世界から人を救う事。
その気持ちを響は理解した、その為の手段の違いでぶつかってきた事も、だから手を取り合えないかもしれないという事を。
だから理想じゃなくて「わがまま」で手を取り合いたいと思った。
「サンジェルマン……私は構わない、元から私もカリオストロもワガママで付いてきた」
「そーよ、あーしもサンジェルマンが望むようにしてほしいの」
サンジェルマンとプレラーティ、そして響が一様に唖然とした表情を浮かべた。
「カ……カリオストロ……?何故……やられたのでは……」
「めんごめんごー!それは死んだフリ、局長が怪しかったから最初から仕込みをしてたの」
「……それで、仕上がったから出てきたワケか?」
「そうそう、はいコレ。プレラーティの体を治す為の新しい「ラピス」」
「……後でしっかり、聞かせてもらうワケだ」
プレラーティは「新しい」ラピスを受け取り、それを体へと「一体化」させる。
カリオストロはクリスとマリアの二人との戦いで負け「死んだふり」をして姿を隠していた。
それはかつて「詩織」から得たデータで「もう一つのラピス」を作る為だった。
「癒す」薬としてのラピス。
それはボロボロだったプレラーティの体を瞬く間に治した。
「やれやれ……さすがに君達を相手にするには……今の僕には余裕がない、ここは引かせてもらうが……」
「させるものか!」
―千ノ落涙―
7対1、おまけに神の力の練成の為に力を使ったアダムは不利と判断してこの場を退こうとするが、翼がそれを阻止せんとするが――。
「ティキ!一度僕は離れるから存分にやるんだ!!」
『わかぁったぁ!!!』
ロードフェニックスと決着のつかないぶつかり合いをしていたディバインウェポンに「本気」を使う事を命令して、アダムが姿を消す。
同時にディバインウェポンの全身に「口」が開く。
「トンデモキモチ悪いデース!!?」
「来るよ!切ちゃん!!」
新たにもう一つ平行世界を生贄としてエネルギーを充填したディバインウェポンから無数の光線が全方位に向かって放たれる。
ロードフェニックスにもダメージを与える程の威力だが、それ以上に地上に居る装者や錬金術師達にとってそれはとてつもない脅威となった。
全てを焼き尽くす一撃を響が拳で押し止めるが、それでも押され気味というほか無い。
「皆……!力をかして!」
「わかっている!」
「デース!」
絶唱でこそないが、四人の装者が歌とアームドギアを束ねて「盾」とする。
「あーしも手を貸すわ」
「借りは返すワケだ!」
そこにファウストローブを纏ったプレラーティとカリオストロが加わり、守りはより強固となるが――もう少し足りない。
「……手を取り合うわけではない……だが、同じ方向を見る事は出来る!」
「サンジェルマンさん!」
「これは……私のワガママだ!」
サンジェルマンが加わった事で7人の力が一つとなり、ディバインウェポンから放たれた破壊の嵐を防ぎきる事が出来た。
周囲一帯、もはや遮蔽物一つない焦土と化してしまったが、彼女等は皆無事であった。
アダムが逃げた今、彼女等がしなければいけないのはこの二体の神による破壊を止める事。
「あれが詩織さんとはとても思えないデス……」
「今の攻撃でもモノともしてない……」
全方位への破壊光線を受けてもまるで堪えず、ディバインウェポンと取っ組み合いを続けるロードフェニックスを見上げる。
「……あの危険な力を放ってはおけない、ティキを破壊し、彼女を元に戻す為に動くぞ。カリオストロ、プレラーティ」
「そーね、あーしの方はあの子に個人的な借りもあるしね」
「私も、借りはしっかり返すワケだ」
全ては神の力を求めたから起きた事、サンジェルマン達が望むのは世界の破滅ではない。
責任を果たす、その為にあらゆる手段をとる。
「翼さん……必ず、必ず詩織さんを連れて帰りましょう」
「……ああ、わかっているさ立花。あんな心を痛めそうな歌をいつまでも歌わせるわけにはいかないからな」
違う道を歩んできた者達が同じ方向を見た。