萌え声クソザコ装者の話【and after】 作:ゆめうつろ
「どうして……こんなことに……僕は……僕はただ!」
降り注ぐ光、それは行き場を失った神の力の残骸。
真っ二つにされたとしてもアダムはまだ機能を停止していなかった。
そして天はまだアダムを見放しては居なかった。
アダムを打ち破った二人の装者は既に仲間を助ける為にその場に居なかった。
故に光は瀕死のアダムへと降り注いだ。
「これはぁ……!そうかぁ!まだやれる!僕はまだ完全を超越し……」
ただ不幸な事に、敗北したアダムにはその力を制御するだけの精神力が残ってはいなかった。
意識を力によって塗りつぶされながら、アダムの体は地に沈み、再構築を始めた。
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「ようやく!ようやく反動汚染の除去が完了しました!」
本部ではエルフナインが賢者の石のデータからようやくイチイバルとアガートラームを復帰させた。
「待っていたわ!ありがとうエルフナイン」
「全速力であのバカを連れ戻しに行くぞ!」
マリアとクリスはモニターに映されるロードフェニックスと装者・錬金術師チームの戦いに今すぐにでも駆けつけたいと待ちわびていた。
サンジェルマン達錬金術師チーム三人が凍結弾により時間稼ぎをしていたが、効き目は着実に弱まってきており、切歌と調の攻撃で凍結部分を破壊してダメージを与えたとしてもすぐに再生される。
このまま行けば先に力尽きるのがどちらかなどは一目瞭然だった。
一方でディバインウェポンとアダム・ヴァイスハウプトは翼と響により倒され、いくつもの危機の一つはどうにかなったと言えた。
「響くん!詩織くんには「まだ」ガングニールの神殺しは使うな!効果はさっき見た通り!下手な所に当ててしまえば詩織くんを殺しかねない!」
『はい!わかっています!』
「僕もお手伝いします!」
弦十郎達はどうにか神の力だけを詩織から引き剥がす方法を考える、そこに作業を終えたエルフナインが解析に加わる。
仕事続きとなるが、それでもやり遂げるという意志はまだ戦う力を与えてくれる。
「おっさん!アタシらも現場に出るぜ!止めてくれるなよ!」
「仲間を助ける事を止める大人はいないさ!行って来い!」
クリスとマリアはエルフナインから受け取ったギアを手にそのまま出撃しようとするがその時、通信が入り、二人は顔をしかめる。
『――装者共を下がらせろ』
訃堂からの通信であった。
「それはできません、彼女は……詩織くんは力を制御できていません。あのままでは間違いなく大きな被害が……」
『そうではない、国連が今あやつに対して戦略反応兵器を使おうとしている。八紘がどうにかそれを阻止しようとしておるが……ワシとしては是非とも反応兵器と戦わせてみたいとも思っておる』
反応兵器、それは現代技術が作り上げた「神殺し」ともいえる。
それは確実に加賀美詩織を殺し、周囲一帯を壊滅させた上に汚染させかねない。
そうなれば日本は大きなダメージを負う筈だ、そんな危険性があるというのに訃堂はまるで気にも留めていない。
『どのみち、各国はどうしてもアレを排除したくて仕方がなさそうだぞ?丁度いい機会だ、神州日本の国防兵器の力を思い知らせて反抗する意志さえも奪ってしまえばよい』
「兵器じゃない……!あの子は兵器なんかじゃない!!あなたの歪んだ野望の道具じゃない!」
『ふん……誰かと思えば……翼の軟弱な遊びの相手か』
「詩織は返してもらう、それにアイツにあんな事をさせるアンタをアタシは許さない」
クリスとマリアは怒り心頭だった、それはもうその場に訃堂が居たならクリスは撃ってたかもしれないし、マリアも殴りつける一歩手前まで行きかねなかった。
『面白い。どの道反応兵器の使用決議まで時間はある、あやつを止めてやろうではないか』
画面の向こう、訃堂が取り出した一本の杖が輝く。
同時にロードフェニックスは動きを止め、その場に蹲る。
「動きが止まった……だとォ!?」
本部に居た者達、そして現場に居た者達も一様に驚愕する。
『調伏する手も無い力を国防の為に使う訳がなかろう、尤も今はまだ「戦わせる」か「止める」かのどちらかしか選択できんがな』
「……とことんまで腐ってやがるな、アンタ」
『覚えておくとよい、ワシは国を守る為ならあらゆる手段を取る。反応兵器使用の決議がされるまでは恐らく二日程度と見る……あの小娘が大事なのならば取り戻してみろ、ワシとしては貴様らに絆される程度の「弱い」兵器なら捨てても痛くは無いのでな』
それだけ言うと訃堂は通信を切る。
「随分とまあ調子に乗っているわね」
「いいじゃねえか、その鼻っ面叩き折ってやる」
訃堂の挑発にマリアとクリスはもう「勝負」を受けるつもりでいた。
「いくら神の力が強力なモノだとしても……」
一方で弦十郎は訃堂の態度に疑問を覚えていた。
道を外れてしまった父が、あえて「取り戻すチャンス」を与えるのか?
そこにはもっと深い思惑があるのではないか?
詩織の意識を操り、更に神にまで仕立て上げた訃堂。
「装者達を引かせ作戦会議だ!詩織くんが動きを止めている今のうちに俺達が出来る事を考えるぞ!」
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一人になりたくなかった。
「……」
何も言わないお父さんとお母さん、私を見てくれてなんていなかった。
先生も、クラスの皆も、私を見て見ない振りをしていた。
誰でもよかった、私を見て欲しかった。
街頭テレビに映る「彼女の歌」そして、それを見て歓声を上げる人達。
それがとても綺麗だと思った、そしてどうしようもなく羨ましく思った。
私は初めて人を好きになった。
同時に人に嫉妬を覚えた。