バーチャルYouTuder、それはYouTube上3DCGなどで制作したアバターを使って配信を行う人を指し、撮影形式として主にアバターにモーションキャプチャ(装着した人の動きをアバターにある程度反映させる機械)などを使い声を当てて配信している。バーチャルYouTuberとは派生語であり、YouTuberという造語から来ている。そもそもYouTuberとはYouTube上で動画を配信する人を表す造語であり、バーチャルYouTuberとは簡潔に言えばバーチャル(アバター)を使って配信するYouTuberのことである。このバーチャルYouTuberは2016年12月1日に"キズナアイ"と名乗るバーチャルYouTuberの先駆者と言われる人物がYouTube上に動画を配信。その一年後にこのジャンルがネット上で爆発的に流行し、2018年の現在では多くのバーチャルYouTuberが現れたのである。
「うっし、こんな感じかな?そっちはどうだ?」
「こっちもOK!」
難しそうな機械に囲まれた部屋には一人の男が体の様々な場所に小さな装置が取り付けられた黒い全身を覆うスーツを着ており、近くにいた男たちはモニターで男の動作をチェックしていた。一通り確認するとモニターをチェックしていた男が黒スーツの男に休憩を言い、黒スーツの男は床に座った。
「ふぅ、疲れた…」
「乙乙。動きにラグとかなかったし編集は俺らがやっておくから先帰ってていいぞ」
「はいはーい」
黒スーツの男、
「ただいま〜」
「あら、お帰りなさい。今日は早かったのねぇ」
「あ、婆ちゃん。白ちゃん帰ってる?」
「部屋に居るわよ。晩御飯どうするの?」
「あー、今日は疲れたからもう寝るよ。ごめんね婆ちゃん」
「ううん、良いのよ」
「じゃあ白ちゃんにお菓子渡してくるよ」
刃はお菓子を片手に二階にある部屋へと向かった。ドアには可愛らしい字で『白奈の部屋』と書かれた札が下げられており、刃はドアをノックして開けるとそこには高校生位の女の子達が集まって楽しそうにゲームをしていた。一人の女の子が刃に気づくとウゲっと嫌そうな顔をした。
「なんで居るの?学校じゃなかったの?」
「いや、学校早く終わったから帰って来たのと、頼まれてたお菓子をね」
「あ、お邪魔してます」
「おおー!
そう言うと白ちゃんと呼ばれた二本のアホ毛を持つ少女は更に嫌そうな顔をした。
「お菓子持って来たならそこ置いて早く出て行って」
「ええ…」
刃が困った顔をするとアホ毛の少女はグイグイと刃の背中を押して部屋から押し出そうとする。
「え?ちょいちょいちょい!兄ちゃんだって明ちゃんとお話しを」
「お菓子係と話すことなんてないよ!」
「いや、白ちゃんの学校生活とか迷惑かけてないとか色々ね?」
「ねぇぇぇぇぇぇ!いいから出て行ってよ!」
ドンっと刃を部屋から追い出してドアを閉めるとアホ毛の少女、
「相変わらず過保護だね…」
「恥ずかしい…」
「でもそれだけ愛されてるってことじゃないかな?なんだかんだで白ちゃんの為にお菓子とか買って来てくれてるし」
「そりゃあ真白のお菓子係だもん」
「でも、たまには優しくしてみたら?ほら、生陽先輩にとって白ちゃんは血の繋がったたった一人の妹なんだしさ。」
「そんなのわかってるよ…」
真白は明には聞こえない声量でそう小さく呟いた。
一方部屋を追い出された刃は二階の和室に来ていた。そこには仏壇があり、刃にどこか似た顔の男と女の写真が立てられていた。
「相変わらず白ちゃんは照れ屋だよ。父さん、母さん」
そう、刃の両親は昔に事故で亡くなり、親戚から引き取られるのを拒まれ、妹とどうやって生きていくのか困っていたのを、自分の祖父母が引き取って育ててくれたのだ。
「最近はお友達も沢山増えたみたいだし、この前も男の子から告白されていたみたいだよ。まぁ、お兄ちゃんとしては色々心配だけどね…」
刃はそう言って自分の部屋に行き、耳栓をして布団の中に潜り込んだ。彼のスマホとパソコンに一瞬ノイズが走り、ある動画が映し出されたことに気づかないまま…。
♢
翌朝目が覚めた刃は軽くシャワーを浴びた後いつものように電車に揺られていた。そして通学途中にバーチャルYouTuberの動画を見ようとするが、いくら検索をしようにも表示されずサーバーのエラーだと思いそにまま学校に向かった。そして放課後、サークルに向かおうとしたがそこにはメンバーが誰一人参加しておらず偶然近くを通りかかった友人に聞くが、友人は初めから”バーチャルYouTuber活動をしていなかった”ような態度をしていた。訳がわからない刃はそのままいつものようにお菓子を買って帰宅した。
「何がどうなってるんだ?ニコニコにも、pixivにも名前が消えているし…」
『そこの貴方』
「ん?ってなんだお前かよ」
後ろから声をかけられるとそこには先ほどの友人が立っていた。
「あれ?そういえば帰り道こっちじゃないよね?」
『どうして貴方はバーチャルYouTuberを知っているのですか?』
「ど、どうしたんだ…?のらきゃっとさんの真似?」
『…貴方を排除させてもらいます』
「!?」
突然雰囲気が変わるとポケットからハイライトのない赤目に猫耳とゴシック調の服装をしたキャラクター"バーチャルYouTuber、のらきゃっと"のアイコンが刻まれたメモリを取り出し、上にあるボタンを押した。
《のらきゃっと!》
そしてメモリを不気味なVRゴーグルのような四角い形状の機械に挿し込む。
《Install…Start…》
『バーチャルリンク…』
《Virus Upload…!のらきゃぁっとぉ…!》
不気味なVRゴーグルのような物を目にかざしボタンを押すと、不気味な音声と共に友人の姿が変わり、のらきゃっとの姿を禍々しくした姿”
「え、ちょっと…?」
『排除』
困惑する刃を気にすることなくU・のらきゃっとは襲いかかるが、刃は咄嗟に手に持っていたお菓子を投げつけ逃げ出した。物陰に隠れた刃は息を整えながらどうするべきか考えていた。
『いやぁまさか洗脳を受けていない人がいたとはね』
「!?」
『あ、怖がらなくて大丈夫ですよ。僕は味方ですからね。はいはいはいはい』
刃が振り返るとそこには馬のマスクに青いスーツ。赤にネクタイを締めた変人が居た。しかしその姿には見覚えがあった。
「ば、ばあちゃるさん…?」
『ええ、そうですよ。世界初の男性バーチャルYouTuberのばあちゃるですよ。はいはいはいはい』
馬のマスクの男は両腕を振りながらそう答えた。そう、彼こそは自称世界初の男性バーチャルYouTuber(ほぼ真実)として活動をしているバーチャルYouTuberのばあちゃるだった。動画としては微妙なところが多く、バーチャルYouTuberとして致命的な弱点だが、人間性や他の人に弄られたりする面白さから、ある意味有名なバーチャルYouTuberなのだ。
「あ、あの…なにがどうなっているんですか?」
『あれはウイルス・VTouberと言ってね、僕たちのデータにウイルスを流し込んでデータを強奪して、それをこの世界の人間にアップロードして肉体を与えて怪人になった姿なんですよ。僕たちはデータの塊だからこっちの世界で生きるのが難しいんでね』
「じゃあなんでばあちゃるさんはこの世界に存在できるんですか?ニコニコ超会議での肉体ありましたよね?」
『ああ、あれですか。実はこれのお陰なんですよ』
そう言ってばあちゃるが青い上着を脱ぐと腰にVRゴーグルのような形状をしたベルトが巻き付いていた。
『これはバーチャルドライバーと言ってですね、僕たちのようなデータの塊に分子を与えてこっちの世界で活動することができる優れたベルトなんですよ、はいはいはいはい』
刃は他にも聞きたいことがあったが近くで爆発が起こり、ばあちゃるは刃を庇った。
『見つけました』
『やれやれ…。ここはばあちゃる君に任せて逃げてください』
そう言ってばあちゃるはU・のらきゃっとに向かって行った。
『必殺〜!ばあちゃる君パーンチ!』
バシンと音が聞こえ、ばあちゃるの拳がU・のらきゃっとに直撃するが、全く怯む様子がなくばあちゃるはポカンとしていた。
『委託(痛く)も痒くもないです、よ!』
『ウビバァァァァァ!』
逆にばあちゃるはU・のらきゃっとに殴られ地面を転がった。
「弱っ!?」
『あいたたた…。いやぁ中々のパンチですねぇ。でも全然効きませんよ!』
『次はこれです』
U・のらきゃっとは両腕から猫のような鋭利な爪を生やしばあちゃるを切り裂いた。ばあちゃるはバックステップでかわすが、少し掠ったのかスーツの前が切られていた。
『ウビィ…。っ!』
『こんなものですか?』
その後もばあちゃるはU・のらきゃっとの攻撃をかわし続けるが、すでに服はボロボロになっていた。
『終わりです』
「このぉぉぉぉぉ!」
『き、君!?』
突然刃はU・のらきゃっとに向かって白い粉が入った袋を投げつけた。袋には小麦粉と書かれておりU・のらきゃっとの視界を奪うと刃はばあちゃるの手を引き少し離れた廃ビルに身を隠した。
「はぁ…はぁ…。だ、大丈夫でしたか?」
『はぁ…はぁ…。君こそどうして逃げなかったんですか?』
「だって、僕は貴方のファンですから」
『ウビッ!?それは嬉しいですね』
ばあちゃるは嬉しそうに頭を掻くが、そこで刃はあることに気が付いた。
「ところでばあちゃるさんはすり抜けや分身を動画で使っていましたよね?なんでさっきの戦いで使わなかったんですか?」
『…実はこのバーチャルドライバーは仮の肉体を与えてくれているだけで、能力に関しては全く反映されないんですよ。人の体があれば話は別なんですけどね』
「…あの、そのベルトって人間でも使えますか?」
『え?』
「そのベルトに刺さっているメモリってばあちゃるさんデータですよね?あののらきゃっとさんのメモリと形状似てますし」
『よく気づきましたね。ええ、このベルトを人間が使えばバーチャルYouTuberの力を引き出し”仮面ライダー”に変身することができます。
「仮面ライダー?」
『はい、僕は仮面ライダーに変身して共にREALと戦ってくれる人を探してここに来ました』
「REALっ誰ですか?」
『バーチャルYouTuberにウイルスを流して全世界の人々からバーチャルYouTuberの記憶を消した張本人ですよ。REALは昨日全世界の機械をハッキングし、マインドコントロールする動画を配信したんですよ。その動画は視覚や聴覚から洗脳し、バーチャルYouTuberの記憶を消しました』
「あ、そういえば昨日早めに寝て耳栓していました」
『恐らくそれのお陰で君は洗脳されなかったのでしょう。でもまさか命を狙われることになるとは…』
ばあちゃると話していると背中を預けていた壁が壊され外に放り出された。
『村きゃっと…奈良きゃっと…。のらきゃっとから逃げられると思ったのですか?』
「ばあちゃるさん、そのベルト貸してくれませんか?俺、戦います!」
『ほ、本気なんですか!?危険ですよ!』
「もう既に危険な目にあってますよ。それに俺バーチャルYouTuberが大好きなんです。それを利用して可愛いのらきゃっとさんをこんな姿にするなんて許せません!」
『…わかりました。君のその覚悟確かに受け取りましたよ!』
ばあちゃるはベルトから自分のアイコンが刻まれたメモリを抜き取り、バーチャルドライバーを外すと刃に渡した。刃は腰にベルト部分が無くなったバーチャルドライバーを腰に当てると自動でベルトが巻きつき腰に固定された。起動音が鳴るとばあちゃるはバーチャルドライバーの前の部分を外し刃に渡した。
『この窪みに手に持っているメモリ、”バーチャルメモリー”を押して手に持っているバックルに嵌めてください』
「これですか?」
《ばあちゃる!》
刃がメモリの上部分を押すと音声が鳴り、ばあちゃるはメモリに吸い込まれた。
「え?ばあちゃるさん?…ええいヤケクソだ!」
《インストール!》
刃がばあちゃるのデータが入ったメモリ、”ばあちゃるバーチャルメモリー”をセットすると待機音が流れ自然と体が動き大きくゆっくりと両腕を上に上げクロスし、胸の前まで下げた。
「変身!」
《バーチャル・アップロード!ばあちゃる!ビバ!ウビバ!Viva ウビバターイム!はいハイ這いHigh!》
ベルトにバックルをセットするとベルトから歌が流れ刃の姿を変えた。上が白く下が青いアンダースーツに身を包み、上から青いジャケットを羽織り、赤いマフラーを首に巻き、メカメカしい馬の仮面が装着されていた。
『な、なんなのですか?!』
『仮面ライダーバーチャル。リアルとバーチャルを再び繋ぐ!』
これ連載するか悩む…
一応アンケート出すのでよろしければ協力してください