艦これ1期終了記念。
内容的に2期記念とは言いづらいので、1期の終了記念とします。

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お題「日本を救った提督がリアルの世界に帰ってきて、再開する秘書艦」(原文ママ)

即興で1時間20分ほどで書いたものになります。
ちょっと長めに書けたので多少の手直しを入れた上でこちらに投稿させていただきます。

念の為但し書きを付けますが、筆者の連載しているSS群とは何ら関係のない作品です。
気軽にお楽しみくださいませ。
ご都合主義と笑わば笑え。

こんな内容で申し訳ないんですが、2期も楽しんで行きましょう。


夢とカッコカリが消え

 五四時間。

 約束された、そのまどろみの中。

 僕はうつらうつらと夢を振り返る。

 

 おおよそ五年分か。

 けれど、その思い出は目覚めているにしては荒唐無稽過ぎるから、僕が勝手に夢と称しただけ。

 それはもしかすると、宇宙のどこか、重なり合った世界のどこかの出来事なのだろうか。

 僕の世界の出来事ではないだけで、誰かの世界の出来事ではあった、というわけだ。

 僕の見えるものが真実の全てではないように、誰かの見えるものもまた真実の全てではない。

 けれど、確かに真実の一端ではあるわけだ。

 ……その全てを見られる者は、どこにいる?

 益体もない問い掛けだ。それこそ神に聞いてくれというものだ。

 

 尤も、それを僕の問いたい形に、一意に整えるとすれば、

「世界を仕組んだのは誰だ」

 目は閉じているから見えないけれど、言葉は静かな水底で泡沫に溶けた。

 ……誰に届くこともない。誰が答えてくれるわけでもない。

 

 五四時間、そう決定されたこの眠りの直前……五年前のあの日から僕のそばに仕えていた彼女―――――大淀は、最後にこう言った。

 

「お疲れ様でした」

 

 それはなんてことのない、いつもの言葉だったけれど。

 多分、特別だったんだろうと思う。

 

 僕は……夢の中で戦いを指揮していた。

 命を下す先は、彼女達。

 古き軍船の名を冠するという、”艦娘”達。

 彼女達からは……”提督”、”司令官”、”司令”……色々な役職名で呼ばれていた。意味するところは、大体同じだった。

 

 色々と頭が痛い日々が続いたと思う。五年間もだ。

 その五年間が本当に五年間だったのかは、僕がそれを夢と呼んでしまっているが故に正しさが担保されなくなってしまったが、何にせよそれだけ長い時間、僕は提督というやつであり続けた。

 夢の中の横須賀に忽然と現れた瞬間。

 それから僕に、彼女達は文字通り身命を預けることになった。

 

 何がなんだか分からないままに、僕の住む国を救った……らしいのだ。

 派手に言い回せば、世界も少しだけ救ったと。僕の知っている世界とは少しだけ違う、よく似た世界を。

 なるほど、男の子の夢だと思う。

 しかし、加えて見目麗しい少女達を従えて…ともなれば、夢の見すぎというもの。

 

 ただし、何も知らない僕に、まるで押し売りのように己の全存在を託した彼女達には、当初辟易させられた。

 芽生えた責任感が育っていく内に、その感情は強くなっていった。

 なんで僕なんだ、と。

 少女達の園で暮らすという、本当に夢みたいな状況も、何の慰めにもならなかったのだ。

 

 けれど、そんな中で別の感情を持つに至ったのは、やはり僕を他とは違う目で見てくれる子が居たからだろう。

 その子は、いつも僕を疑っていたから。

 だからこそ、僕は彼女を信頼していたのだ。僕自身を信じられない僕を、認めてくれているようで。

 その猜疑はむしろ安心をもたらした。

 

 そして、僕がどこかで”自信”というものや”自負”に目覚めたときは、彼女はそれを”信頼”してくれた。

 僕は、どこまでも彼女の感情が……居心地が良かった。

 彼女はつっけんどんに接していたことを、

 

「悪かったわ」

 

 と一度だけ言ってくれた。

 

 でも、それは僕にとってはおかしな話。

 だって、ずっとそれに救われてきたんだ。

 救ってくれたことに謝罪まで添えられちゃったら、筋が通らない。

 勿論、それは僕の中だけの話だ。

 けれど収まりがつかなかったから、僕は精一杯考えて、「ありがとう」と言った。

 

 変な顔をされた。

 それは僕と出会った時の、疑いに満ちたものじゃなくて……照れくさそうなのか、ばつが悪いのか、目を逸して腕を組んでいた。

 頬に少し紅が差していた。夕暮れが差し込む、僕の部屋、執務室。その日の仕事が終わる時のことだった。

 

 そして一晩経って、僕は――――――――彼女に恋をしていたと、気付いたのだった。

 

 大本営、という僕より偉い人達が居るところから、”ケッコン指輪”というものが届けられていた。

 それは艦娘を強化する装備品だと言われていた。

 けれど、一個しか支給されなかった。

 

 普通は素晴らしい装備は積極的に生産すべきで、たくさん欲しいと思った。

 けれど、その名前の響きが僕にそうすべきではないと考え直させた。

 ……僕は、そこまで思い至った瞬間。

 誰に渡すべきなのかをようやく理解した。

 

 渡したいと思った人に渡せばいいのだと。

 

 彼女はこれを装備する条件を満たしていた。

 そして、僕にとっては最も信頼のおける艦娘。

 僕も数年で甲斐性というものを見に付けていたし、けれど身持ちもまた固いつもりでいた。数々の熱い誘惑にも目もくれなかった……わけではないけれど。

 それでも、渡すならば、心を伝えるならば、彼女しか居なかったのだ。

 彼女以外はあり得なかったのだ。

 最初に出会ったあの子。

 一番長く僕を見ていたあの子。

 一番僕を分かっていたあの子。

 

 僕は起き抜けに寝室を飛び出すと、執務室の引き出しの奥から指輪の箱を取り出して、走り出した。

 艦娘のみんなが僕を見て呆然としていた。

 けれど、目ざとく右手に持った箱に気付くと、

 

「がんばれ、提督さん!」

「テートクゥ、二号はワタシにしてくださいネー!」

 

 そんな応援と妬みが混じった声が僕の背中を押した。

 

 そして、駆逐艦の住まう寮、その一室の前に立つ。

 深呼吸を四度繰り返し、ノックを三回。

 

「叢雲、僕です」

 

 返事は返ってこない。けれど間を開けて、

 

「……何しにきたのよ、私は今日は非番なの」

 

 彼女が玄関先に出てきた。眠そうな目を擦る彼女が。

 僕は跪いて、

 

「結婚して下さい」

 

 多分、今まで生きてきて一番張り詰めた声で、そう言った。

 

「……寝惚けてる?」

 

 その言葉に、僕はそのまま地面に崩れ落ちて這いつくばりそうになった。けれど、

 

「……夢じゃ、ない?」

 

 貶しではなくて、彼女の自問自答だったことに気付いた僕は、顔を上げて、

 

「結婚して下さい。夢じゃ、ないです」

 

 もう一度言った。

 

 そこまで言うと、彼女はいよいよ慌て始めて、

 

「え、うそ、何よそれ……冗談じゃ」

「僕の、本心です」

「……んんぅ……!」

 

 叢雲は顔をこの上なく赤くすると、跪いたままの僕を蹴っ飛ばして転ばし、ドアをバタンと閉じて鍵を掛けた。

 

 尻もちをついて、今度こそ絶望かと思っていたら、

 

「……なんで寝間着でプロポーズなんてしに来るのよ!バッカじゃないの!バカ!」

「……あ」

 

 思い立ったら、どころか目覚めた瞬間に行動に出ていたから気付かなかった。他のみんなはなんで止めなかったんだ。

 恥ずかしさで、思わず体操座りをしてしまった。

 

「ごめん」

「ごめんじゃ済まないわよバカぁ!」

「ごめん」

「うるさい!……とっとと着替えてきて!早く!」

 

 それに従って、僕はよろよろと立ち上がって自室に戻っていく。その背中に、

 

「……待ってるから。今度こそ、カッコよく決めてよ」

 

 僕は、人生で一番の本気で走った。

 

 そうして、僕と彼女は……ケッコンカッコカリ、の間柄になった。

 僕はなかなかに先走りすぎて突き抜けてしまったと思ったけれど、叢雲はこんな捉え方だった。

 

「カッコカリ、ってことは結婚の手前でしょ?じゃあこれで……お、お付き合い、ってことよ」

 

 なるほど。

 

「じゃあ、いつか”カッコカリ”が外れる日が来るのかな」

 

 と、問いかけると、

 

「……そうだと、いいわね」

 

 胡乱な回答が返ってきた。僕はなんだか、少し不安になった。

  けれど、今こうしてゆらゆら水底にいるわけで、その不安は間違いじゃなかったんだと思う。

 

 ……おそらく、この五四時間を最後に、僕の夢は終わるのだろう。

 確信めいた予感がある。

 つまり、僕のケッコンカッコカリ相手である彼女とは、ついにカッコカリのままで別離となる。

 

 そうして、約束の時が来て、僕は眩しさの洪水の中に浮かび上がっていく。

 全ては終わった。夢と消えた。……僕の五年間が本当に五年間だったのかも、これでわかる。

 現実に帰る時が来た。

 

 

 ……目覚まし時計、そのやかましい音が僕の鼓膜を突き刺して痛い。

 そして目を開ける。

 軽い冷房の効いた部屋で迎える朝は、けだるく、けれど心地よい。夏の朝って感じがする。

 それに安心したけれど――――――――僕は何を思ったのか、今日の日付を確認し始めた。

 

 4月23日。

 

 ……今は、8月のはず。

 だって、暑いと思ったから……いや、確かに4月でも寝苦しいときは冷房を効かせて寝るけれども、いや、とにかく、日付は4月だった。

 加えて、今は2013年。

 僕はやっぱり、5年間のような1晩の夢を見ていただけ、ということだったのか。

 

 まぁ、納得できるところなんていくらでもある、

 だから虚しさは少しだけだった。……そのはずなのに、どうしてこんなにも寂しいんだろう。

 僕は左手の薬指を……

 

「え?」

 

 そこには、指輪が嵌っていた。そして、少し震えているようにも感じられた。

 

「なんで、これが?夢じゃ……」

『夢で終わらせて、たまるもんですか!』

 

 声が聞こえた。僕はこの声を知っている。忘れるはずもない!

 叢雲の声だ。

 叢雲。

 

「叢雲!」

 

 僕が愛しいその人の名前を呼ぶと、指輪が輝いて、世界は白く染め上がった。

 眩さに僕が思わず目を閉じていると、

 

「……お目覚めかしら、あなた?」

 

 はっきりと聞こえた。

 僕の、愛する人の声が、この部屋の空気を震わせている。

 それを理解して、思わず涙をこぼしながら目を開ける。

 すると目の前には、――――――――なんでだろう。

 エプロン姿が堂に入った、彼女がそこに立っていた。

 

 

 ●

 

 

 それから僕らは僕の部屋で同居することになった。

 不思議な事だけれど、彼女はこの世界ではちゃんと”存在する人間”らしい。

 税金や年金の払込書は僕と彼女の二人分が来るし、その上彼女の苗字は僕と同じなのだ。

 あまりに不思議だから、住民票の控えを取ってみたりもしたけれど……。

 

 すると、本当に不可思議なことに、彼女が僕の籍に居た。

 名前は、……本当に”叢雲”のままだったけれど。

 

 実感は何もないけれど、いつのまにか夫婦ということになっていたのだ。それも昨日かららしい。

 本当に誰が仕組んだ世界なのか。神にでも聞かなきゃ分からない。

 そう言ったら彼女は、

 

「世界を救ったご褒美とかじゃない?」

「じゃあ君、景品ってことじゃないか」

「いいんじゃないかしらね?言い換えればお姫様だもの。悪い気分じゃないわ」

 

 得意気に微笑んで、自分をまるでやんごとなきお方のような言い方をするけれど――――――――まぁ、ともかく。

 

 僕達は、夫婦になっていく。


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