鎮守府近海の潜水艦掃討と並行して、南西諸島海域の哨戒作戦を昨日実施し、その報告書に目を通す。昨日の編成は満潮、雪風、島風、能代、鈴谷、隼鷹だった。敵空母もそう多くは無く、隼鷹と鈴谷に載せた水上戦闘機だけで制空権は問題ないと思っていたのだが……。
「敵、強くなってるの?」
不意に耳元に甘い声が響く。見やるとそこには瑞鳳の姿が。書類に集中しすぎて気付かなかったようだ。彼女は今の鎮守府で最も練度の高い軽空母だ。対潜能力がピカイチでここ数日は海防艦二人と暁を率いて潜水艦の掃討作戦に従事してもらっている。
「あ、あぁ。今の海域にいる深海棲艦は以前より強力になっているようだ。島風が大破、満潮は中破、隼鷹も小破の被害を受けている。そちらは大事ないか?」
「えぇ。択捉ちゃんも対馬ちゃんもいい娘だし、暁ちゃんも頑張ってるわ。ただ、択捉ちゃんが小破しちゃったから今は船渠に入ってもらってるわ」
ドッグこと船渠。艦娘の傷を癒す特別な薬をここの温泉に溶かして大浴場として開放している。怪我がなくても入る人は多い。急ぐ時は濃度の濃い修復材を被ってもらうことがあるが、鎮守府を移してからはまだそういったことはしていない。艤装の管理については妖精さんにも協力してもらっているため、高速修復の仕組みは解明されていない。
「報告ありがとう。下がっていいよ。次は確か五十鈴の班が出撃だったな」
「えぇ。もう出撃していると思います。では、失礼します。後で玉子焼き、持ってきますね」
「それはありがたい」
南西諸島海域の敵が強くなっていることを考えると、不安がもたげるのはいわゆる2-4だ。もとより強力な個体がいたり羅針盤の制御がきかなくなったり、難所であったが……やはり主力を徹底して出撃させるべきなのだろうか。とにかく南西諸島海域は資源が豊富である。そうそうに取り返して輸送路等の確保を徹底せねばならない。まずは準主力を投じてパシー、オリョール両海域を制圧する必要がある。そうしたら、いよいよ決戦になる。もちろん、北方海域の攻略もそろそろ考え出さねばならない。
「提督、お疲れ様です。本日午前の演習、終了いたしました」
練習巡洋艦である香取が今日の演習が終わったことを報告する。
「そろそろパシー島へ出撃させるメンバーを決めなくては。空母を編成する必要があるとなると、蒼龍に出てもらうか。他は……阿武隈や大井、北上にも出てもらって早急に突破することとしよう」
「では、陽炎さんと雪風さんを随伴させ、その旨を伝えてきます」