大歓声と紙吹雪が舞う中、進むのはJ1の優勝パレードの車。
其れを見に来た小学生5人と初老の男は人だかりから離れ遠くから眺めていた。
「こんなんじゃあ全然見られないですねー、せっかくビデオカメラ持ってきたのに…」
「だから言ったろ、あのままTVで見てりゃよかったんだよ」
「まあまあ、録画して来たから後でゆっくりみんなで見ればよかろう…」
残念がる元太、光彦、歩美にコナンはつっかかるも阿笠博士に宥められていた。
「あ、あそこにいいもんあるぞ!」
「待ってー!元太くん!」
元太が駆け寄って行ったのは郵便ポストだった。そしてそれをよじ上り、光彦に上に乗るように言う。
光彦と歩美は顔を見合わせ嬉しそうな顔をすると、さっそく光彦は元太の上に乗りビデオカメラを回し始めた。
「これでどうだ?」
「わあー!ヒデが手を振ってます!それに後ろにナオキも!」
「いいないいな!歩美にも見せてー!」
「こら!君たちそこに上っちゃ危ないぞ!」
後ろから声を掛けてきたのは、ミニパトに乗った由美だった。
「はーい…」
渋々郵便ポストから下りる元太と光彦。隣で博士は平謝りしていた。
「由美さんこんなところで何してるんですかー?」
「どうせ仕事サボってパレード見に来たんだろ?」
ポストから下りた2人は嫌みったらしい口調で言った。
「違うわよ、駐禁のパトロールの応援中!」
「あれ、由美さんじゃないですか」
ひょこひょこと現れたのは現場に着いた高木刑事だった。
「…高木刑事もサボってんのか?」元太は呆れたように言う。
「違うよ、違う違う。僕らは捜査だよ」
「何の捜査なの?」事件のにおいを嗅ぎつけたのかコナンが勢いよく尋ねた。
「ええっと…本庁にさっきFAXが送られて来てね…“このパレードで面白いことが起きる”って。たぶん優勝を妬んだ犯人の質の悪いイタズラだと思うけど…」
「ふーん…」
「それより高木刑事、後ろにいるのは彼女?」歩美は首を傾げた。
「えーっ!高木刑事は佐藤刑事のことが好きじゃなかったんですか!」光彦は驚いたように言う。
「それも違うって!あと好きとかそういうのじゃなくて…」
「なあに高木くん?そんなの私聞いてないわよ?」
「もう由美さんまで…。違いますよ、今日から配属になった僕の後輩です」
北条聖刑事です、と高木は簡単に紹介する。
「女刑事さんかー!高木刑事、美人の後輩が出来てよかったね!」と歩美。
「ほんとですね、高木刑事にはもったいないくらい!」と光彦。
「お前仕事教えられるのかー?」と元太。
子どもたちの発言にタジタジになる高木を見て、コナンと灰原は呆れた顔をする。
「高木さん、子どもたちと仲がいいんですね」
「仲がいいというか…振り回されてるってのに近いわね」由美はけらりと笑う。
「へへへ…」高木は力なく笑った。
「それで…そのFAXってどういうものなの?」
コナンが再び事件の話を尋ねた時、わっと歓声が上がった。
「ヒデが近くを通ってるみたいだよ!」
「なら無理やりでも前に行ってビデオ撮ろうぜ!」
「で、でもさっきからビデオ撮りっぱなしで…テープが…」
「予備のテープは持ってきてないの?」灰原は光彦に尋ねる。
「あ、あああります!」
「…じゃ、それを入れて撮りに行こ!コナンくんも!」
歩美はコナンの腕を引っ張り、子どもたち5人はパレードの人だかりの中へ入っていった。
「……しかし大丈夫かのぉ…そのFAX、今日のパレードで何かが起こるって書いてあったんじゃろ?」
「まあこの感じなら大丈夫だと思いますよ」高木はへらりと笑う。
「……そうでしょうか」北条は高木をじっと見つめた。
「送られてきたFAX、3年前の事件とよく似ていると聞きました」
「…えっ」
「私たち、狙われているかもしれないってことですよね?」
北条は高木の目を見つめながら問いかける。
思わず高木は自分の顔が熱くなるのを感じ、視線を逸らした。
何なんだろう、彼女は。
考えていることをすべて見透かしてしまうような、そんな視線。
「…あれ、美和子じゃない?」
暫く黙っていた由美がのんびりとした口調で言う。
「あ、佐藤さん…!佐藤さんも捜査です…か…」
彼女の隣には一人の男がいた。
由美は驚いたような表情を浮かべ、ぽつりと呟いた。
「………松田、くん?」