コナン達の後を追って高木と北条も外へ出ると、彼らは既にある場所に着いていた。
それは、光彦と元太が乗っかっていた郵便ポストだった。
「あ、高木刑事!」
「オレたち犯人の手がかりをつかんだぜ!」
「さっきコナンくんが全部話してくれたの!」
「……ああ、僕達も分かったところだよ」高木は小さく頷いた。
「…分かった?」コナンは不思議そうな顔をする。
「北条さんが教えてくれたんだ。ポストの中の手紙を回収する、郵便屋さんの車が来てないこと。犯人の目当ては警察の人間じゃなくてもしかすると…郵便局を狙った強盗なのかもしれないこと」
コナンはへえ…と珍しそうなものを見る目で高木と北条を見上げた。
高木は目暮警部にコナンと北条の推理を電話で伝え始めた。
「……ねえ、あの人」灰原はコナンにしか聞こえないような小声を出す。
「…どうした?」
「………何だか、変な感じがする」
「考えすぎじゃねーか?…“匂い”でもすんのか?」
「…それは無いけど……」
「まあ確かに、郵便ポストの回収時間に気がつくなんて推理力のある人だと思うけど……一応刑事だろ?それくらい思いつく人だって……」
「…そうね」灰原は不安そうな面持ちで北条を見つめた。
実はさっきからコナンもほんの少し不安に感じたのだ。
北条を見上げた時の、彼女の表情。
あの瞳は、きっと何か気づいているような、そんな感じ。
もしかするとオレ達の正体を………。
「ねえ」北条は視線を合わせるようにコナンの前でしゃがみ込む。
「…ん?」コナンは子供っぽい声色で答えた。
「……あなた、賢いのね。こんなことにすぐ気がついちゃうなんて」
「そ、そうかなぁ?ちょっと気になっただけだよ…」
「……ええ。きっといい刑事さんになれるわ」北条はにっこり微笑んだ。
目暮と話していた高木はすべてを伝え終わったのか、携帯電話をポケットにしまい込んだ。
「警部達は今から米花郵便局へ向かうって。僕らも念のために向かおう」
北条はすっと立ち上がると、「はい」と高木の後に着いていこうとした。
「………あ、そうだ」北条は振り返りコナンに向かってもう一度微笑んだ。
「貴方の場合は、刑事じゃなくて“探偵さん”の方が嬉しいかしら?」
北条は悪戯っぽい笑みを浮かべると何事も無かったかのように高木の後を追った。
“探偵さんの方が嬉しいかしら”
どういう意味だ。
あいつは、何かを知っているのか。
コナンの表情が一気に曇る。それに気がついた灰原は心配そうに、「何かあったの?」と問いかける。
「……いや、何でもねェよ」コナンは自分に言い聞かせるように明るく言った。
………まさか、な。
あの人はきっと頭のいい人なんだろう。だから、あんなことを言ったんだ。
まさか………そんなはず、ないよな―………。
***
コナンと北条の推理通り、連続爆弾事件と見せかけて郵便局を襲おうとした強盗が米花郵便局に押し入ったものの既に居た捜査員達に全員逮捕された。
「お手柄だったわよ、高木くん」佐藤は嬉しそうな顔で言う。
「…いや、子供たちと北条さんに手伝ってもらったんです」
「……今日は何かと助けられてばっかりね、高木くん」
「ほんとですね、北条さんがいなかったら僕は……」
そう言いかけて、話すのをやめた高木に佐藤は笑みを零した。
「とにかく、無事でよかった」
「……はい」
「実はね、私も今日助けられたの。成宮くんに」
佐藤は何かを思い出すかのように既に日の落ちた空を見上げた。
「忘れようって頑張ってるけど…やっぱダメね」
「佐藤さん……」
「警部が呼んでるぞ」後ろから成宮が大きな声を出した。
「…あ、すぐ行くわ。……じゃあ高木くん、また後で」
「はい………あっ、佐藤さん!」
「何?」
「僕、…僕、は簡単に……」
“貴方の元を去ったりしませんから”
そう伝えたいのに、言葉をうまく伝えられない。
「い、いえ…何でもないです」
「……そう」佐藤は訝しげな表情で高木を見るも、その場を足早に離れて行った。
「……ちゃんと言葉で伝えないと、相手は何も分からないですよ」
高木を待っていた北条は腕を組みながら呆れたような口調で言った。
高木は思わず顔を赤くした。
「…えっ!な、なんのこと…?って聞いてたの…!?」
「あんな大声じゃ聞こえますし、何となく雰囲気で分かります」北条は面白く無さそうに続ける。
「もーう!北条刑事の言うとおりだよ!さっさと告白しちゃいなよ!」と歩美。
「早くしないと誰かにとられちゃいますよー」と光彦。
「もしかしたらあの兄ちゃん、佐藤刑事とっちゃうかもなー」と元太。
高木は彼らに困ったような苦笑いを向ける。
しばらく、彼女への思いは自分の中にしまいこむ事になりそうだ…と高木は思った。
***
「……最後にあの人、何て言おうとしたんだろうな」成宮は助手席に座る佐藤に問いかける。
「…あの人、って高木くんのこと?」
「もしかしたら自分の気持ち伝えようとしてたのかもな」
なんてな、と成宮は意味有りげな笑みを浮かべながらおかしそうな口調で話す。
私が大切に思う人は、全ていなくなってしまった。
父も、体育の先生も、野球部の先輩も、そして、松田君も。
彼は……巻き込んじゃいけない。
彼だけは、絶対に。
成宮は隣で何かを考えているように俯く彼女に声をかけようかどうか迷ったが、やめた。
―…自分が思っている以上に彼女は大きなものを抱えているのかもしれない。