sognando   作:ricca

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sciolto.3

 

 

 

 

 

「―……警部!一つ目の爆弾は南杯戸駅から東京へ向かう東都線の車内です!」

「佐藤さん!爆発物処理班に連絡しました!」

 

二つの車内は緊迫した空気が流れる。

佐藤と高木からの連絡を受けた目暮警部は捜査員を南杯戸駅へ向かわす。駅員が乗客の避難を呼びかける声や乗客の悲鳴で駅内はパニック状態になっていた。

そんな中捜査員と駅員は爆発物をいくつか見つけるも、全て偽物だった。

 

 

「ええっ!?偽物!?」佐藤は驚いたような声で電話で話す。恐らく相手は警部だろう。

「…犯人は恐らくそこへ捜査員を向かわすことを読んでたようだな……」コナンは小さな声で探偵バッジの向こうの灰原へ伝えた。

「ええ…かなりずる賢そうね、このイタズラ坊主…」灰原も小声で返した。

 

そして、何も手がかりを得られないまま夜が明けてしまった。

一発目の爆破予告時間まであと5時間を切った。

佐藤と高木の二人の車は休憩のため近くのファミレスに止まっていた。

「…もしかすると電車とは関係ねェのかもな……」成宮は疲れたような声を出した。

「…え?」佐藤は首を傾げる。

「なんか引っかかるんだよな、その暗号。あと野球場はどうだったんだ?野球に関係してんだろ?」

「今捜査員が調べてるわ……でも大きな野球場は粗方調べたらしいけどひとつも無かったみたい…」

「なんか変じゃねェか?わざわざ電車にはフェイクを置いておくのに野球場には何にも置かねェなんてよ」ふわあ、と成宮はあくびをしながら話した。

「きっと探しにこないと思ったんじゃないかな…シーズンオフで大きな試合は組まれてないし…」高木も成宮につられるようにあくびをしながら答えた。

「とにかく、子供たちをこれ以上引っ張りまわすわけにはいかないわね……それより白鳥くんの容態は?」

「あっ、さっき北条さんから連絡がきました。本庁に戻ってからずっと白鳥さんに付き添ってたみたいなんですけど、手術は成功してあとは意識の回復を待つだけだって…」

「そう…」佐藤は安堵の笑みを浮かべて良かった、と言葉を零した。

「あ、あと……佐藤さん……」高木は視線を下げた。

「何?」

「………松田刑事のこと、なんですけど…」高木はもごもごと話し辛そうに言う。

「……ああ、」佐藤の表情が曇った。

「…ぼ、僕は……あの……」高木が話し出そうとした瞬間、携帯電話が鳴る。

 

「…悪りィ、俺の携帯だわ」成宮はひらひら手を振ってその場を離れた。

佐藤はなぜか少し安心したような顔をして、

「高木くんは子供たちを家まで送り届けて、仮眠を取ってから目暮警部の手伝いをしてなさい」と言った。

「あ、え、でも!」

「そんなフラフラしてる刑事じゃ足手まといなだけよ!……成宮くんは私と来て」

ちょうど電話を終えた成宮は分かった、という風に手を上げた。

佐藤の車へ乗り込もうとする成宮はふと高木の側で足を止めた。

 

「………東都タワーだ」

「…え?」

「あんたの“後輩”からの伝言だよ」

成宮は意味深にそう伝えると、悪戯っぽい笑みを浮かべながら高木の肩を軽く叩いた。

佐藤と成宮を乗せた車は、高木を置いたままその場を走り去って行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ええーっ!僕たち家に連れ戻されちゃうんですか!」

「もうちょっとでこの暗号解けそうなのに!」

光彦と歩美がわんわんと文句を言う。高木は車に少年探偵団を乗せ家まで送り届けようとしていた。

北条さんが残した伝言の“東都タワー”……。一体何を意味するのだろうか。

それにあの時の佐藤さんの顔…。松田刑事のことを引きずっているのだろう。

あの時、伝えられなかった言葉………。

僕は絶対、貴方の側を……。

 

「血塗られたマウントに登れ…」コナンがぽつりと呟く。

「どうかしたの?」隣に座る灰原が問いかけた。

「いや、さっきから引っかかるんだよ…」コナンは何かを考えながら答えた。

「赤といえば…ポストに消防車に…」後ろで光彦もぶつぶつ呟く。

「赤オニと赤ずきんちゃんと…」と歩美。

「トマトだろ、イチゴだろ…」と元太。

「赤…登る…鉄の箱…」コナンは暗号文を途切れ途切れに読んだ。

高木はふと、北条の“伝言”を思い出す。

「………もしかして」高木は大きな声を出した。子供たちは高木の声に驚く。

「なんだよ急に!」

「もー!びっくりさせないでくださいよー!」

 

「東都タワーだよ!」高木はコナンに向かって言った。

「……そうか!鉄の箱は…エレベーター!東都タワーのエレベーターか!」コナンも謎が解けたようなすっきりした顔で言う。

高木は子供たちの家路ではなく、東都タワーへと車を走らせた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「東都タワーに爆弾!?」佐藤は電話の向こうの高木へ言った。

「は、はい!多分間違いありません…さっき小さな爆発が起きてエレベーターが止まったらしくて…子供がエレベーターに閉じ込められてるようだって……」

「小さな爆発…?」佐藤は3年前の爆破事件を思い出していた。…確かあの時も……。

「待って高木くん!あと5分で到着するからその場で待機して!」

「で、でも子供が……」

「私が必ずその子を助けるから……だからお願い、行かないで!」

 

もう二度と、彼のように…

 

誰も失いたくない………。

 

 

高木は電話越しの彼女の声が、そんな風に聞こえた。

でも、僕は。僕は“彼”じゃない。だから…。

 

「イヤです」そう伝えると電話を切った。

子供たちにその場で待っているように言うと、高木はエレベーターへと向かった。

佐藤さんのためにも、僕は、僕がこの事件を解決しなきゃいけない。

前へ進むためにも………。

 

 

 

 

電話を切られた佐藤はしばらく呆然としていた。運転席に座っていた成宮は路肩へ車を止めた。

「…おい、大丈夫か?」成宮は心配そうに佐藤の顔を覗き込む。

「……高木くん、行っちゃった……」ぽつり、と佐藤は言葉を零した。

 

「…あの人なら大丈夫」成宮ははっきりと佐藤へ言った。

「……え?」

「あの人は……簡単に消えたりしねェよ。それに……信じてやれよ。“大丈夫”だって。あんたが信じなくて誰が信じてやるんだよ」

「成宮、くん…」

「命がけで子供助けに行くんだ。俺らがどっしり構えて待ってやらなきゃ、あの人だって不安になるだろ」成宮はぽん、と佐藤の肩を叩く。

「……そうね、…ありがとう」佐藤はほんの少しだけの笑みを成宮へ向けた。

きっと、彼女は不安でいっぱいなんだろう。―…精一杯の笑顔に感じた。

 

「それに…俺には分かるんだ。あの人、松田刑事とは違うって」

「…?」

成宮は大きく息を吸って、吐き出した。

 

 

 

 

 

 

「………松田刑事…松田陣平は……俺の兄なんだ。腹違いの」

 

 

 

 

 

 

 

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