佐藤は返す言葉が見つからないのか、じっと成宮の顔を見つめたまま固まっていた。
成宮はもう一度息を吐くと何かを思いだすような素振りを見せる。
「兄弟…といっても母親も違ったし離れて暮らしてたから、兄のことはそんなによく知らねェんだ……だけど警察官になった兄の姿を見たときは…すごくかっこよく見えた。母親には隠れてこそこそよく会って兄の仕事の話をよく聞かせてもらってたんだよな………。そんな兄の影響もあってか俺は自然と警察官を目指した。兄と一緒に仕事して一緒に悪い奴をとっ捕まえたかった。……それは叶わなかったけどな」
成宮の顔は笑ってはいたが、どこか寂しそうだった。
「俺もまだ、心のどこかで兄のことを吹っ切れてないねェんだよ。忘れて前へ進もうとすればするほど、兄のことを思い出す。……だから11月7日に合わせて捜査一課で応援をさせてくれと頼んでこの事件に関わろうとした。…なんで兄が死んだのか、知りたかったんだ」
成宮はひっそりと自分だけで抱えていたものを、全て佐藤へと打ち明けた。開放感からか少しすっきりしたような顔をしていた。
「……それにさ、高木って人はひとりじゃねェんだろ?」成宮は悪戯っぽい笑顔で言った。
「……え?」
「多分あの人の周りをうろちょろしてたガキんちょ共を乗せて東都タワーに向かっただろうし…その中にいるんだろ?メガネをかけたよく気がつく子ってのが」
「……コナンくんのこと?」
「ああ、あの子の推理はなかなかのモンだったと思うぜ。……それより早く現場へ行こう」成宮は車を発進させようとする。
「…ちょっとは元気出た?」
「……まあね」
佐藤は成宮にほんの少しだけ嬉しそうな笑みを浮かべて答えた。
自分と同じ思いの人間が、もう一人いる。
……なんだか心強い気がした。
***
子供を助けようとタワー内のエレベーターへ向かった高木だが、トラブルでコナンとエレベーター内に閉じ込められてしまった。
佐藤は高木に呆れたような声で電話をかけた。
「…かっこつけて出て行ったけど、結局閉じ込められちゃってるじゃない」
「……す、すいません…」電話越しに高木は苦笑いをしているようだった。
「それで…爆弾は仕掛けられてないの?」と佐藤は問いかける。
「……水銀レバー?」高木はぽつりと呟いた。
「……もしかして……」佐藤は不安そうにタワーを見上げた。
3年前と同じ、だ……。
佐藤の表情はみるみる曇っていく。
解体してしまえば、もうひとつの爆弾の場所の手がかりを見つけられない。
手がかりを見つけようとすれば、死ぬしかない……。
悪魔のような、あの箱……。
爆発物処理班がエレベーターへ下りることが出来ないため、爆弾が仕掛けられていたエレベーターの天井にのぼっていたコナンが爆弾を解体することになった。
そんな時高木の携帯が鳴った。―…北条からだった。
「…もしもし?」
「……高木さん、大丈夫ですか?」久しぶりに聞く彼女の声がなんだか懐かしく感じた。
「あ、え、まあ大丈夫だよ……」
「…高木さん、よく聞いてください。……もうひとつの爆弾の場所、分かったんです―……」
「―…分かった、全部メモしたよ。これを…コナンくんに見せればいいんだよね?」しばらく黙って聞いていた高木は確認するように言った。
「はい。…大きな声は出さないようにしてください。恐らく盗聴されていると思います」
「……ありがとう」
「ちゃんと、生きて帰ってきてくださいね。待ってますから」
電話を切った高木は、コナンに北条の推理をメモした携帯電話の画面を見せる。
コナンも同調するように頷いた。
「北条さんがね、暗号文から解いたらしくて…。でも該当する場所は400通りくらいあるから後は爆弾の表示される文字で解くしかないらしくて……」
「すごいね、北条刑事って。一体どういう人なの?」コナンは子供っぽい口調で問いかけた。
「うーん、僕もまだよく分からないんだ……冷静でとても賢いんだけどちょっと取っ付きにくい、というか…」高木は苦笑いを浮かべた。
「へぇ……」コナンは何かを考えるように呟いた。
あの“北条”って人、普通の刑事だとは思えない推理力……
一体何者なんだ……。
タイムリミットは1分を切った。