初めて投稿しました。好きな作品の世界でオリ主と他作品のヒロインを絡めたくて書いた自己満足ものです。
駄文ではありますが、読んで貰えたら幸いです
───桜の花びらが舞っている。
春、入学式ともなれば桜が舞い散る景色はこの国ではある意味当然かもしれないが、世界最先端の科学の結晶たるISの事を学ぶここ「IS学園」でも同じ景色が見れる事に俺は妙に感心していた。
俺、
何故こうなったかというと・・・・
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今から約1ヶ月半前、志望大学であった東大医学部に合格を果たした俺は、当時通っていた高校に報告をしに行った。担任の先生に報告を済ませ帰ろうとすると、何やら校内が騒がしい。理由を聞いてみると、男向けのIS適性検査が行われているとの事だった。
───
正式名称インフィニット・ストラトスは今から9年前、日本人の天才科学者
ミサイルの直撃すら効かない絶対防御と呼ばれる強固なエネルギーシールド、戦闘機を遥かに上回るスピードと機動性、特殊な武装による絶大な攻撃力など、現行兵器を遥かに凌駕する性能を持つISは発表当初、机上の空論として見向きもされなかった。しかし、「白騎士事件」においてその力を世界中に見せつける事で、ISはその存在を世に知らしめた。本来の目的である宇宙開発用ではなく兵器として、であるが。
ISの前ではあらゆる現行兵器は意味を成さず、たった一機で小国の総戦力に匹敵する戦闘力を持つISに勝てるのは同じISだけ、と世界各国はこぞってISの開発に着手した。しかし、ISの最重要パーツであるコアと呼ばれるパーツがブラックボックス化しており、篠ノ之博士にしか作れず、また、博士は世界中に467個のコアを提供すると姿をくらませてしまった為、ISの数は事実上、頭打ちとなった。
このままでは数少ないコアの奪い合いで戦争が起きると畏れた世界各国はIS運用協定───通称「アラスカ条約」によってコアの国家間取り引き及び、ISの軍事利用を禁止した。それ以降、ISは表立って兵器として開発される事はなくなり、現在ではIS同士を戦わせる「ISバトル」というスポーツ競技用として開発が進められている。
そんなISの最大の欠点、それは女にしか動かせないという事だった。開発者の篠ノ之博士にも不明だと言うこの欠点によって各国はこぞってISを動かせる女を優遇する政策を立て始め、それはやがて女尊男卑という悪しき流れを世界中にもたらした。
───
その女にしか動かせないはずのISを動かした男が現れた。彼の名は
彼の出現により、ISを動かせる男が他にもいる可能性を考えた各国首脳は、彼と同年代の15歳から20歳までの全ての男に適性検査を実施する事にした。
その適性検査が今日、この高校で行われているとの事。俺は先生の薦めもあり、適性検査を受けていく事にした。
今思えば、この時の俺は子供の頃からの夢であった医者になる為の一歩を踏み出せた事で正直浮かれていた。浮かれて、何も考えず検査を受け、その結果、
「きっ、起動しました! 2人目の適合者が出たぞ!!」
そう、俺はISを起動してしまったのだ。
ISを起動してしまった俺は、あっという間に黒塗りの車に押し込められ、走り出す事約30分、何処かの建物に入ると車を下ろされ、その中の広い応接室に通された。
この頃には冷静さを取り戻していた俺は、自分の置かれている状況を分析していた。いきなり連れ出されはしたが、身柄を拘束もせず、携帯も取り上げられていない事から、問答無用で研究材料にされるという最悪の展開はなさそうだ。扉は施錠されてるし、外には見張りもいるだろう。当然隠しカメラで覗いてるだろうから下手な事は出来ない。結果、相手の出方を待つしかないと思い至った俺は高級そうなソファーに深く腰を下ろし、目を閉じた。
それから2時間程経過した。その間、合格した事をメールで知らせただけだった妹達に連絡しようとしたが、電波が届いておらず出来なかった。携帯取り上げられない訳だ。
待たされる間、俺は今後の状況をいくつもシミュレートしていた。正直、ISを動かしてしまった俺に望んだ未来を勝ち取るのは難しいだろう。だからといって諦める訳にもいかず、頭の中で色々な事を考えていたら、ノックも無く応接室の扉が開き、2人の人物が入って来た。
「やあ、待たせて済まなかったね、結城志狼君」
入って来た1人目、中年男が尊大な態度で言った。大方政府の役人で今回の適性検査の担当、といった所だろう。まあ、こいつはどうでもいい。所詮決まった事を伝えるメッセンジャーにすぎない。
問題はもう1人の女、やや癖のある長い黒髪をした20代半ばの美女。目つきがややキツイが黒のスーツからこぼれんばかりのバストや引き締まった脚、腰のくびれからヒップのラインが堪らなくセクシーだ。
俺は彼女が誰か知っている。彼女こそ世界最強の女、
思いもよらない大物の登場に面食らっているうちに、2人は俺の対面に腰を下ろした。
「さて、君に来て貰ったのは他でもない。君の将来について話しをしたいのだよ」
「・・・・俺の将来? 医者になる為の勉強を大学でするつもりですが?」
「ああ、誠に残念ながら君の合格は取消しとなった」
「・・・・・・」
悪い予想が一つ当たった。
「勝手に合格を取り消すなど実に腹立たしい事だろう。だが、これは世界規模の問題でね。所謂超法規的措置が執られ、君はその対象となる。君の意思に関係なく、世界の利益の為に貢献して貰いたい」
俺が何も答えないのを見て、ショックを受けてるとでも思ったのか、中年男は得意気に話を続ける。
「ああ、分かっているよ。君は医者を目指していたんだったね。だが、世界中に医者が何万人いると思う?対してISの男性操縦者はたった2人しかいないのだよ。どちらに希少価値があるかは比べるべくもないだろう?」
その顔は弱った人間に鞭打つのが楽しくて仕方ない、と醜く歪んでいた。
野郎・・・・どうしてくれようか。
「・・・・それで世界に貢献とは具体的にどうしろと? まさか実験体になって体中切り刻まれろ、何て言わないでしょうね?」
俺が内心の腹立たしさを隠し、何事もなかったかのように話し出したのを見て、男はつまらなそうな、女は面白そうな正反対な顔をした。
「まさか、法治国家である我が国でそんな事ある訳なかろう」
「おや? 俺に対しては超法規的措置が執られるのでは?」
「・・・・・・」
俺が芝居掛かった口調で切り返すと、中年男は苦虫を噛んだような顔をする。
「超法規的措置の対象、という事は法に守られない代わりに法を守る必要もない、という事の筈。と言う事は仮に俺が絶望のあまり逆上して、この場で貴方を殺してしまったとしても罪には問われない、という事ですよねえ?」
俺は殺気を込めた視線を中年男に向けて、嗤った。
「な、何を言ってるんだ君は! そんな拡大解釈が認められるか!」
「超法規的措置というのは文字通り法を超えた措置。俺がその対象だと言ったのは貴方だ。次に出来るかどうかだが、まあ、確実に隣りの彼女が邪魔するでしょう。さて、ここで問題なのがお2人の関係性です」
「か、関係性?」
「ええ、簡単に言えば貴方が彼女に嫌われてないか、という事です。もし、嫌われていたら俺が一撃入れるくらいは見逃してくれるかもしれない。因みに俺の経歴は知ってますよね。俺なら一撃で頭蓋を割るくらい出来ると思いますけど。どうです? 過去の言動や態度を振り返って自分は彼女に嫌われてないと断言出来ますか?」
「・・・・・・」
中年男は心当たりがあるのか慌ててる。チラリと織斑千冬を見ると、実に楽しそうな顔をしており、ふと目が合うと小さく頷いてくれた。
「そ、そんな事をして許さ「貴方のような役人が何万人いるか知りませんが、2人しかいない男性操縦者とどちらが希少価値があるか比べるべくもないのでしょう?」
「!? ・・・・・・ギリッ」
俺がニヤリと
「プッ、クククク・・・・」
突如聞こえた笑い声に目を向けると、今まで一言も発しなかった織斑千冬が声を抑えて笑っていた。
「貴方の負けですよ理事。超法規的措置なんて切り札を最初から曝してしまったんですからもう脅しになりませんよ」
声に笑みを含ませながら千冬が言う。
「し、しかし千冬君!」
「これ以上は時間の無駄です。後は私が」
千冬が強い口調で言うと中年男は苦々しい顔をして、応接室を出て行った。
「ククク、いや、面白いものを見せて貰った」
「あ、やっぱり嫌ってたんですか?」
「まあな。あの男はIS委員会日本支部の理事でな。高圧的な態度とセクハラで男女共に嫌われている奴なんだ」
「・・・・今時、よくそんなのが理事になれましたね」
「生憎金だけは持ってる奴なのでな。まあ、あいつも終わりだろう。お使いも満足に出来ないと証明してしまったから上がさっさと切り捨てるさ。
・・・・さて、選手交代だ。自己紹介は必要かな?」
「いえ、貴女を知らない人なんていないでしょう。お会い出来て光栄ですよ、織斑千冬さん。後でサイン貰えますか?妹達の分も合わせて3枚程」
「・・・・まあ、サインはともかく本題に入ろう」
「あれ、駄目ですか?」
俺が食い下がるとキッと睨まれた。そんな顔してるから目つきが悪くなるというのに、折角の美人が台無しだ。とは言え本題に入るのはこちらも望む所だ。
「ゴホン、まず先程言った大学の合格取り消しは本当だ。これは政府の要望だけでなく、大学側の決定でもある」
「俺という存在に周りが巻き込まるのを恐れての事ですか・・・・」
「そうだ。君は既に様々な国家、企業、組織から狙われている。中には一般市民を巻き込む事など歯牙にもかけない連中もいるだろう」
「成る程。そういう奴等から狙われている俺が大学に入学するのは迷惑だ、と」
「その通りだ」
「はっきり言いますね、流石にへこみますよ?」
「いくらへこんでも事実は変わらんさ。それより自分の置かれている状況は解っているようだな」
「ええ、政府としては警護の為に俺を隔離したいと、いや、監視の為かな?」
「・・・・まあ、そういう事だ」
俺は会話しながら自分の落ち着き先がどうなるか候補をしぼる。・・・・うん、嫌な予感しかしないな。
「落ち着き先は? まさか本当に研究所で実験材料コースじゃないでしょうね?」
「流石にそれはない。その提案をした馬鹿も中にはいたがな。少なくとも研究所よりはマシな所だ。そこに入ればあらゆる団体も簡単に手を出せない。唯一の欠点は女の園だと言う事だが、幸い今年から共学になる。まあ、男は今の所2人だけだがな」
ああ、嫌な予感的中だ。
そして織斑千冬は、その後の俺の人生を決定付ける言葉を口にした。
「結城志狼、君には2人目の男性操縦者としてIS学園に入学して貰う」
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と、いうやり取りを経て、その後いくつかの条件を飲んで貰い、俺はIS学園への入学を承諾した。因みにサインは後で貰った。
それからは家にマスコミやら企業やらが連日押し掛けては、やれ取材させろ、やれ研究させろだのとほざくので、俺も家族も対応に大わらわだった。そのせいで迷惑になるからと高校の卒業式に出られなかった。
そして、今日はいよいよIS学園の入学式だ。
人生を懸けた夢を奪われ、二度目の高校生活を送る事になった俺の心は、晴れ渡った4月の空とは反対にどんよりと沈んでいた。
読んで頂きありがとうございました。