いつの間にかUAが1万を越えていました。
趣味の自己満小説をこんなに沢山の人に読んで貰えて驚いています。
それでは第9話お楽しみ下さい。
~志狼side
土曜日。IS学園も週休2日制を採用しているので、今日は学園に入って初めての休日だ。
友達と遊びに行くも良し、訓練するも良し、1日中寝るも良しと、どう過ごすのも個人の自由だ。
本来なら俺も代表決定戦に向けた訓練をしたい所だが、その為の専用機をどんな機体にするのかを今日これから話し合うのだ。
そもそも俺の事を何も知らない企業が用意したものがそのまま使える訳がない。俺の戦い方やそれに合った武装、それらを考慮した機体でなければ専用機の意味がないのだから。
そろそろ時間なので駅まで迎えに出る。
IS学園は部外者の出入りに非常に厳しい。部外者が学園内に入るには前日までに来訪の目的を説明し、警備部から許可を取らねばならない。許可を取ったとしても、当日色々な手続きが必要で、手間も時間も掛かる為、非常に面倒くさい。
だが、学園内の人間から招かれた場合は、いくつかの手順をショートカット出来るので、比較的容易に学園内に入れるのだ。
無用な時間を取られたくない俺は、藍羽浅葱を駅で出迎える事にした。手続きの面倒さは学園OGの彼女も分かっていたので、駅での待ち合わせと相成った。
学園の玄関口「IS学園前」駅。学園のある人口島と本州を結ぶモノレールの駅で、一般人や生徒が唯一利用出来る交通手段。
他にもモノレール路線上に敷設された橋道やヘリポートもあるが、それらは物資搬入やVIP専用なので、余程の事がない限り一般人は利用出来ないのだ。
休日らしく街に遊びに行くのか、私服姿の生徒達が何人かいる。俺の方をチラチラ見てる娘もいるが、近寄って来ない限り放置しておこう。
やがてモノレールが到着して皆が乗り込んで行く。反対に下りて来るのはまだ早い時間のせいか1人だけだった。
シュシュでまとめた長い金髪と深いブラウンの瞳。真新しい女物のスーツに身を包んだ美少女だ。彼女は俺を見ると近付いて来た。写真で見たのと同じ顔。彼女に間違いない。
「こんにちは、貴方が結城志狼君よね?」
「ええ、俺が結城です。貴女が藍羽浅葱さん?」
「ええ。初めまして
「2ndドライバー? 初めて聞いたけどそんな呼び名が流行ってるんですか?」
「ええ、だって2人目の男性操縦者って長くて言い難いでしょう?」
「それは確かに・・・・では、ご案内します。尤も入ったばかりの俺より3年間通った藍羽さんの方が詳しいでしょうが」
「あはは、そうですね」
挨拶を終えた俺達は、並んで学園に向かった。
~side end
~浅葱side
結城志狼。この名前を初めて聞いたのは卒業間近の頃だったと思う。
世界初の男性操縦者の出現により起こった熱狂は凄まじいものだった。男からすれば虐げられた自分達を解放する希望であり、女尊男卑主義者からすれば女にしか動かせないはずのISを動かした男など絶対に許せない存在であっただろう。
本来主義者達の粛正対称である彼──織斑一夏が見逃されたのは彼がブリュンヒルデ織斑千冬の弟であったからだ。さしもの主義者達も自分達の崇拝する織斑千冬の弟に手は出せなかった。世の男達は第2の織斑一夏を探せ、とばかりに世界中で適性検査を行い、その結果彼、結城志狼が見つかった。
適性検査が始まって3ヶ月、世界の約8割で検査が終わったが、適合者は今の所彼1人だけ。恐らく以後も現れないと私は思う。
そんな稀有な存在である彼と接触する機会など私にはないと思っていたが、社長がどう交渉したのか彼の専用機をうちが作る事になった。こう言っては何だが
───
ISの登場により世界の科学は100年進んだと言われている。
ハイパーセンサーの高感度視認装置、パワーアシストの高出力モーター、PICの慣性制御、量子変換技術等々。
ISコアという規格外があってこそ可能なものもあるが、コアがなくても他に流用出来る技術も多く、それらを応用する事で開花した分野がいくつもある。その中の1つにパワードスーツがある。
ISに比べて出力は低く、バッテリーの問題で稼働時間は短い。絶対防御もなく、空も飛べないがその利便性と何より誰でも、そう男でも動かせる事から災害現場での救助活動や犯罪現場の制圧、危険な場所での作業などに力を発揮して、その地位を確固たるものとした。
女尊男卑主義者からすればISを使えぬ者の玩具、IS技術者からすればISの模造品などと言われるものの、誰にでも扱え、かつ数を揃える事が出来るパワードスーツは警察や消防、軍事関係を中心に広く普及した。
いつの頃からかISに至らぬモノ、ISの無世代機などの揶揄を込めてパワードスーツの総称を「
そのI-0を主力としている我が社にISでの実績など当然ない。そんな企業に貴重な男性操縦者の専用機を任せる理由は2つある。
一つ目は勿論データ取りの為。織斑一夏は国内最大手のISメーカー倉持技研が担当する。「打鉄」という充分な実績を持ち、開発者の篝火ヒカルノ博士も優秀な技術者だ。それに比べてうちは実績もなく、開発者は学園を卒業したばかりの小娘だ。つまり政府は織斑一夏を優遇し、結城志狼を冷遇する事で両極端のデータを取ろうとしているのだ。
二つ目は時間短縮の為。うちの開発したI-0は自慢じゃないが高性能だ。それこそISコアを搭載しさえすればすぐにでもISとして転用出来る程にだ。どうやらうちの社長はそう言って政府に売り込んだらしく、織斑一夏と違い、主義者達の標的になるだろう結城志狼に早急な自衛手段を与えたかった政府はその話に乗ったのだ。
「・・・・で? それがどうしたんですか?」
政府の思惑や彼の置かれている状況を説明すると、最初にこう言われた。
「・・・・どうしたって、貴方本当に分かってるの?」
「ええ、自分の置かれている状況くらい把握してますよ」
「なら何でそんな涼しい顔していられるのよ!」
咄嗟に感じたのは怒り。理不尽な状況に置かれ、明らかに冷遇されているというのに何故そんな顔をしていられるだろう。
「まず言っておくが、全ての人間が平等だと思っているなら大間違いだぞ。もし真に平等な世界があるなら同じ場所で生まれ、同じ教育を受け、同じ能力を持った人間しかいないディストピアになるだろうな。この世界がそうじゃないのは違う場所で生まれ、違う教育を受け、違う能力を持った人間で溢れているからだ。平等な世界なんて破綻している。この世界は不平等だからこそ発展して来たんだ。そうは思わないか、電子の女帝?」
「・・・・私の通り名、知ってたんだ」
「勿論。今後パートナーになるかもしれない人だからな。調べるのは当然だし、お互い様だろう?」
確かに彼の事は調べている。私にとっては朝飯前の事だし、彼の言う通りお互い様だ。でも、
「確かに貴方の言う事も一理あるわ。でも、悔しくないの?」
「決まってる。悔しいさ」
「だったら何でっ!?」
「何、要は政府の思惑をひっくり返してやればいい。取り合えず代表決定戦で織斑一夏を倒す」
・・・・成る程。政府一推しの織斑一夏が彼に倒されれば現時点での格付けが決まる。そうすれば政府でも織斑推しが間違いではないかと考える輩も出て来るだろう。少なくとも織斑推しをしていた連中に一泡噴かせてやれる。しかし、
「・・・・勝てるの?」
そう、それが問題だ。あの織斑千冬の弟が倉持技研の最新鋭機を駆って来るのだ。それだけじゃない。イギリスの代表候補生もいるのにだ。
「フ、おいおい。貴女も織斑千冬の幻影に惑わされてる口か? あれは弟であって千冬本人じゃないんだぞ。倉持だってそうだ。現時点で国内トップクラスのISメーカーというだけだ」
「だけって、貴方・・・・」
「それとも貴女達絃神はトップを目指す気概がないのか?」
その一言に私は無意識に負けを認めていたと気付かされた。その途端に悔しさと恥ずかしさで一杯になった。
「そんな事ない! うちの技術は倉持にだって決して負けてないわ」
「うん、俺もそう思う」
!? ・・・・・・あれ?
「絃神が俺の専用機を担当すると聞いてから出来る限り調べたよ。確かに絃神のI-0は高性能だ。あの技術があれば安心して機体を任せられると思ってるよ」
・・・・何だろう、この人何かズルい! 操縦者にそこまで言われてその気にならない技術者はいないわよ。
「いいわ、やってやろうじゃないの! 貴方の機体を完璧に作り上げて政府や倉持の鼻をあかしてやるわよ!」
「OK、意志が共有出来て結構だ。よろしく頼むよ藍羽さん。所で」
「・・・・何よ?」
「それが君の素かい?」
「!! ~~~」
しまった。途中から失念してたけど、いつの間にか普段の態度で接してたわ! 思わず顔が熱くなる。社会人になったんだから毅然とした態度を取ろうと思ってたのに!
チラっと彼を見ると実にイイ笑顔で私を見つめていた。
「・・・・貴方、性格が悪いって言われるでしょ?」
「いや、イイ性格だとは言われるけどね」
「ふん、ばれちゃったんならもういいわよ。そうよ、これが素よ、文句ある?」
「いいや、さっきまでの取り繕った態度よりこっちの方が魅力的だよ」
~~~こいつ、やっぱりズルい! ここで素の私を肯定するなんて。それでちょっと嬉しくなってる私も何なのよ、もう!
「はあ、いいやもう。貴方の前ではこれで通すから。それと私の事は浅葱でいいわ」
「分かった。俺の事も志狼でいい。改めてよろしく、浅葱」
「ええ、よろしく志狼」
私達は握手を交わす。これでもう後には退けない。このまま彼と共に進むだけだ。私達を見下してた奴らに必ず一泡噴かせてやるわ!
この後、打ち合わせは白熱し、専用機の設計図が完成したのは次の日の朝方だった。
~side end
~?side
新品の制服に袖を通す。IS学園は制服の改造が許されているが、私はノーマルでも充分可愛いと思うので、スカートを少しミニにする程度にしている。
鏡を見ておかしな所がないか確認して更衣室を出る。外には私の良く知る男性が待っていた。
「お待たせ、お父さん」
「ああ。・・・・うん、良く似合っているよ」
「えへへ、ありがとう。でも本当は一番に兄さんに見て欲しかったなあ」
「やれやれ、仕方がないさ。こんなに遅れるとは誰も思わなかったろうしな」
そう、私の専用機は特殊なシステムを搭載している為、調整が難航していた。出力の微調整などで操縦者である私も付いていなければならず、本来出られるはずだった入学式にも出られず、今に至ってしまった。
話を聞き付けたお父さんが力を貸してくれなければ、未だに完成しなかっただろう。本当に感謝してます。ありがとうお父さん。
「だが無事に完成したんだし、これで安心して学園にも通えるさ」
「そうだね。ありがとうお父さん」
私はお父さんが差し出した赤いネックレスを受け取り、身に着ける。これが私のISの待機形態なのだ。
「でも、私も兄さんも寮生活になると、雪ちゃんが一人になるから心配だよ」
「私もしばらくは家にいる事にしたし、雪菜はしっかりしてるから大丈夫だよ。学園に着いたら志狼によろしくな」
「うん。それじゃ行って来ます、お父さん」
「ああ、行っておいで、明日奈」
今日から、遅れていた私の学園生活がようやくスタートする。
~side end
読んで下さってありがとうございます。
次回、ついに正ヒロインが本格的に登場します。