二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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10話以前の文体を統一し、文章も若干修正しました。
筆者のこだわりにすぎないので内容に変化はありません。

今回他作品ヒロインが2人出て来ます。
設定上、性格が少し?変わってしまいましたが、ファンの方はご寛如下さい。

それでは第11話、お楽しみ下さい。



第11話 クラス代表決定戦へ向けて

 

 

~志狼side

 

 

 携帯のアラームが鳴って目を覚ます。いつものように顔を洗い着替えるが、いつもより静かに、隣りのベッドで寝ている明日奈を起こさないように部屋を出る。

 

 昨夜から明日奈がルームメイトになった。元々2人部屋を1人で使っていたので、遅れて来た明日奈の部屋は当然ベッドの空いている部屋、つまりはここになるのだ。

 昨夜部屋に帰ると明日奈の荷物が届いていて、荷ほどきと整理を手伝ったら0時を回ってしまい、2人共ベッドに入ると疲れてたのかすぐに眠ってしまった。

 専用機の完成が長引いて、相当ストレスが溜まっていたのだろうが、昨日久し振りに同年代の女の子と遊んでいくらか発散出来たのか、明日奈の寝顔は穏やかだった。

 

 

 いつも通り織斑先生とトレーニング中、頭をよぎるのは織斑の件。あいつが明日奈に惚れた事を姉である織斑先生に伝えるべきだろうか? それとも姉弟とは言え、プライベートを無闇に伝えるべきではないのだろうか? そんな事を考えてると、織斑先生の中段蹴りが綺麗に腹に入った。

 

「グフッ!」

 

「結城! 模擬戦中に何を考えてる! 全然集中出来てないぞ!」

 

 いかん、集中してなかったから腹筋を締めるのが間に合わずモロに入ってしまった。

 

「す、すいません・・・・」

 

「ふう、全く、今朝はどうしたんだ。何か悩みでもあるのか?」

 

 いや、悩みのタネは貴女の弟なんですが・・・・

 

「悩みがあるなら相談に乗るぞ。話してみろ」

 

 本人がこう言ってるし、1人で悩むのも馬鹿らしい。俺は昨日の顛末を話す事にした。

 

 

 

 

「いっ、一夏が結城明日奈に惚れたあ!?」

 

 昨日の箒と全く同じ台詞とリアクションをする織斑先生。あいつの身近な人にとってはそれ程の一大事らしい。

 

「・・・・あの一夏が恋ねえ。とても信じられん!」

 

「確証はありません。ですが、今まで明日奈に惚れて告白して来た連中と同じ反応してるんです。それと今の所、織斑自身に自覚はないようですが」

 

「そうか・・・・うーん、どうするべきか」

 

「まず、明日奈はあいつを嫌ってるから脈はないと思います。俺としても今の織斑に大事な妹を任せる気はありません。ただ、このままだとあいつが自覚もなしに明日奈に付きまといそうで・・・・」

 

「そうだな・・・自覚がない内に消滅してくれればいいんだがなあ」

 

 結局、2人で話し合っても有効な対策は思い浮かばなかった。本当にどうするべきか・・・・

 

 

 

 

 

 昼休み。総勢6人になった俺達は、大きめのテーブル席を確保して昼食を摂っていた。間もなく食べ終わるという頃、明日奈が声をかけられた。

 

「あれ? 明日奈ちゃん、やっと学園に来たんだ」

 

「え? あ、なのはさん、フェイトさんもお久し振りです!」

 

「うん、お久し振り~」

 

「久し振りだね、明日奈」

 

 声をかけて来たのは2人の2年生。超有名人だ。

 

「お2人共紹介しますね。私のクラスメイトと、兄です」

 

「ふーん、君が・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「初めまして。入学式での演技は実に見事でした、高町さん、ハラオウンさん」

 

「にゃはは、そう言って貰えるのは嬉しいなあ。それじゃ改めまして、日本代表候補生序列1位高町なのはです」

 

「同じくイタリア代表候補生序列1位フェイト・T ・ハラオウン。よろしく」

 

「結城志狼です」

「鷹月静寐です」

「あ、相川清香です!」

「布仏本音で~す♪」

「イギリス代表候補生序列3位セシリア・オルコットです。お2人の噂は聞き及んでおりますわ」

 

「うん、皆よろしく~」

 

 

 高町なのはとフェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウン。この2人が世界にその名を轟かせたのは今から2年前の事だった。

 日本の湾岸地区に建造されたベイタワーシティホテルで火災が発生した。出火原因は不明。何者かのテロとの噂もある。突然の出火に地上50階の高層ホテルはあっと言う間に火の海に包まれた。

 あまりの火の勢いに警察や消防も手をこまねく中、偶然旅行で来ていたなのはとフェイトが自らの専用機を駆り、ホテル内に取り残された人達を全員救出したのだ。

 建物こそ全壊したものの、宿泊客と従業員に被害者はなし。身元不明の4人の焼死体が焼け跡から見つかったが、恐らく火を点けたテロリストと思われている。

 これだけの規模の火災で人的被害なしのこの結果はの奇跡と称賛され、かつISの有用性を再び世に知らしめる事となった。

 後に「湾岸大火災」「星と雷の奇跡」などと呼ばれるこの事件で2人の名は世界中に知れ渡った。

 

 

 

「そっか~、明日奈ちゃんの専用機もやっと完成したんだ~」

 

「はい、散々でしたよ、もう」

 

 こうして話をしている姿を見るとそんなに凄い活躍をした人には見えないが、あの事件の後も数々の逸話を残して来たスゴ腕の操縦者なのだ。

 

「そう言えば聞いたよ~・・・えーと、志狼くんでいいかな?」

 

「いいですよ。高町先輩」

 

「にゃはは、なのはでいいよ。それより明後日バトルするんだって?」

 

「ええ、クラス代表決定戦ですね。俺とセシリアと織斑の総当たり戦です」

 

「ふーん、で? 勝てそう?」

 

「さて? 取り敢えず負けるつもりはないですよ」

 

「そっか・・・・ねえ志狼くん。私と戦ってみない?」

 

 なのはさんの一言に皆が驚く。

 

「ち、ちょっとなのはさん!? いきなり何を!?」

 

「明日奈ちゃんはちょっと黙ってようね。私は志狼くんと話してるんだから」

 

「は、はい!」 

 

 一瞥しただけで明日奈を黙らせてしまった。成る程これが高町なのはか。

 

「で? どうする?」

 

「ふむ、止めときます。少なくとも今は、ね」

 

「えー、何で?」

 

「うーん、そうだなあ、強いて言うなら勿体ないから、かな?」

 

「? 勿体ない?」

 

「ああ、折角戦うなら万全の状態で戦いたい。貴女のような強者となら特にね」

 

「・・・・プッ、アハハハハ!」

 

「な、なのはさん!?」

 

 いきなり笑い出したなのはさんに明日奈が驚いて声をかける。

 

「あ~ゴメンゴメン。・・・フフ、そっかそっか。うん、面白い。気に入ったよ、しろくん♪」

 

「・・・・はあ、それは光栄です?」

 

「明後日のバトル、私達も見に行くからね。頑張ってね、しろくん。セシリアちゃんもね」

 

「あ、はい」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃ、またね。行こ、フェイトちゃん」

 

「うん。じゃあね」

 

 そう言うと2人は去って行った。

 

「なあ、明日奈。結局何だったんだあの2人」

 

「ゴメン、私にも良く分かんない。なのはさんって普段は優しくて、面倒見のいい人なんだけど・・・・」

 

 気に入ったと言っていたし、認めて貰ったと言う事だろうか? 何と言うか掴み処のない人だったな・・・・

 

 

~side end

 

 

 

 

~フェイトside

 

 

 2年1組の教室へ向かう途中、隣りを歩くなのははいつものように朗らかな笑顔を浮かべ、一見楽しそうに見える。でも、長い付き合いの私には分かる。なのはは今、闘志を燃えたぎらせている。

 高町なのはは明るく優しく面倒見のいい、いつも朗らかに笑っているような娘だ。でもそれは表向きに過ぎず、彼女の内面はかなり複雑だ。幼い頃事情があり、1人で過ごす日々が多かった彼女の心の深奥には孤独が巣食っていた。その孤独を払拭する方法として、彼女は戦いを求めた。

 実家の道場で剣術や体術を学び、やがてISが発表されるとそれにのめり込んだ。ISについて学び、当然のように13才で代表候補生、それも『冒頭の6人(ページワン)』入りし、専用機を得た。それからはずっとバトルの日々。気付けば序列1位になっていた。それでも彼女のバトルへの渇望は一向に衰えず、今も強者との戦いを求めている。

 

「ん? なーにフェイトちゃん。どうかした?」

 

 いつの間にかなのはをじっと見つめていたらしい。

 

「楽しそうだね」

 

「ん? そう見える?」

 

「うん。彼は強い?」

 

 そう聞いた途端、なのはの浮かべていた笑みの質が変わった。

 

「うん、強いね。精神(こころ)身体(からだ)も。彼の言う通り今戦うのは勿体ないよ。しろくんがISに慣れてからでも遅くない。楽しみは後に取っておくよ、ふふっ」

 

 そう言ってなのはは笑みを深める。私だけではなのはの孤独を埋める事は出来なかった。願わくば彼、結城志狼がなのはの求める強者であるよう、私の親友の渇きを満たしてくれるように祈るのみだった。

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

 次の日。通常通りの授業を終えて放課後。俺は真耶先生の補習を受ける為、教員用アリーナにいた。

 用意したISは「打鉄」。「ラファール」より防御力が高く、近接戦闘向きの機体だ。俺の専用機が格闘戦仕様に決まったのでよりそちらに近い機体を先日より使っている。ISスーツ姿でストレッチをしていると、

 

「お待たせしました、結城君!」

 

 ISスーツに着替えた真耶先生が駆けて来る。この人は本当にもう・・・・無防備にも程がある。

 

「・・・・先生、お願いですからその格好で走るのは止めて下さい」

 

「はい? ですが遅れては悪いですし」

 

「いや、この際だから言っておきますが、先生は無防備すぎます。男の前なんですから、ただでさえ薄いISスーツで走ったりしたら胸がブルンブルンと揺れてエライ事になるんですよ?」

 

「ぶ、ブルンブルンって・・・・」

 

「先生は男から見たらもの凄く魅力的なんですから、もう少し考えて行動して下さい」

 

「わ、私がですか? 私なんてそんな・・・・」

 

「顔は年齢不相応に可愛らしく、性格は優しくて面倒見が良く、抱き心地のよさそうな肉付きのいい身体をしてる女性なんて男からしたら絶対に手に入れたい存在なんですよ? もうちょっと自覚して下さい」

 

 俺は先生と目を合わせて言うと、先生は見る見る内に顔を赤くして、

 

「えっと、その、ゆ、結城君もですか?」

 

「そりゃ、勿論っ──」

 

 と、言いかけて、ふと我に帰る。

 あれ? これじゃまるで口説いてるみたいって言うか口説いてるよな、俺!? こ、これはマズイ!

 気付けばすぐ側にいた真耶先生は顔を真っ赤にして、目をウルウルさせて、少し開いた口からは甘い吐息を感じる。うわあ、この人凄くいい匂いがするよ!

 思わず見つめ合うと、真耶先生はそっと目を閉じる。え? これっていいのか? 正直言えば俺もしたいけど仮にも教師と生徒、立場上マズイだろう。すると真耶先生が催促するかのように俺の手をそっと握って来た。ああ、もうダメだ。俺は引き寄せられるように真耶先生に顔を近付け───

 

 

「ウオッッッホンッ!!」

 

 

 突如聞こえた咳払いに俺達は体を離し、その人を見た。

 

「「お、織斑先生!!」」

 

 織斑先生は少し顔を赤らめながら、

 

「あ~、その、お前達のプライベートに口出しする気はないんだが、流石に時と場所は選んで欲しいのだが・・・・」

 

「「いや、これは違うんです!!」」

 

「いや、私は男女交際には寛容なつもりだから、節度さえ守ってくれれば・・・・それにしても、あの真耶が、ねえ?」

 

「「だから、違いますって、誤解なんです!!」」

 

「いや、お前達さっきから息ピッタリなんだが」

 

「「!! ~~~~」」

 

 この後、織斑先生の誤解を解くのにえらく苦労した。

 

 

 

 

 

「で、では気を取り直して始めましょうか!」

 

「はい! お願いします」

 

 あの後、真耶先生に連絡事項を伝えてから織斑先生は戻って行った。あの雰囲気の後で少々気まずいが、明日は代表決定戦当日だ。少しでも対策を立てたいので、そのまま補習を続ける事でお互い合意した。

 

「今日は射撃武器への対策法を教えます」

 

「はい」

 

「射撃の利点、それは言うまでもなく遠くから攻撃出来る事で、欠点は命中させ難い事です。ですがISにはハイパーセンサーがありますし、優れたスナイパーは一撃で急所を撃ち抜いて来ます。他にもエネルギーのチャージに時間はかかるけどレールガンや荷電粒子砲のように威力の高い武器もあるし、年々射撃武器の性能は上がっています。では結城君、それらを踏まえて貴方が射撃を得意とする相手と戦うなら、どう戦いますか?」

 

「・・・・それは、やはり回避と防御を繰り返して近付くしかないと思います」

 

「成る程。では、防御はともかく回避は出来ると思いますか?」

 

「・・・・難しいでしょうか?」

 

「結城君は銃弾の速度がどのくらいか知ってますか? 一般的な9mm弾で秒速350m前後、これは時速に換算すると約1250kmになります」

 

「! それって音速を超えてるじゃないですか!」

 

「そうです。まあ、これらはあくまで初速なんですが、それでも100mくらいの距離ならばほとんど速度は落ちません。

結城君、音速近い速度で迫る銃弾を貴方は回避出来ますか?」

 

「・・・・とても無理です。これじゃ本当に何も出来ずに蜂の巣にされて終わってしまう」

 

「確かに、生身ならそうでしょう。ですが、ISバトルでなら話は別です」

 

「! 何か方法があるんですか!?」  

 

「はい。先程も言いましたがISにはハイパーセンサーがあります。数km先の引き金を引く指の動きや銃口の向き、操縦者の視線すら感知出来るこの“目”があれば着弾点を予測し、回避する事も不可能ではありません」

 

「・・・・成る程。ですがこちらは近寄らなければ反撃出来ません。ただ回避し続けてもジリ貧なのでは?」

 

「はい。ですからその対策としてこれからある技を覚えて貰います。そう瞬時加速(イグニッション・ブースト)を」

 

 

 

 

 

 この後、ハイパーセンサーを使った射撃の回避と瞬時加速の修得を目的とした訓練は苛酷を極めた。そのお陰かハイパーセンサーの扱いにはかなり慣れたが、肝心の瞬時加速の成功率は良くて3割といった所だ。後は実戦でどこまで出来るか賭けるしかない。

 

 

 その日の夜、1通のメールが届いた。差出人は藍羽浅葱。内容は「専用機が完成。明日の放課後搬入する」との事だった。

 

 戦う準備は整った。後は全力で戦うのみ!

 

 

~side end

 

 




読んでいただきありがとうございます。

読んで貰った通り、ウチのなのはさんはバトルジャンキーになってしまいました。彼女の黒い所を出しつつ、志狼に興味を持たせようとしたら、何故かこうなってしまいました。ファンの人ホントすいません。

次はいよいよクラス代表決定戦。初めてのバトル回ですが、書けるかどうか不安です。
場合によって投稿が遅れるかもしれませんが、ご容赦下さい。

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