二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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誤字報告して下さった方、ありがとうございます。

今回戦闘シーンに入るはずが、思ったより長くなってしまい、2回に分ける事にしました。今回は戦闘前までとなります。

それでは第12話をお楽しみ下さい。




第12話 クラス代表決定戦開始!

 

~志狼side

 

 

 木曜日。クラス代表決定戦の日だ。

 今日の放課後、第3アリーナにて2人の男性操縦者とイギリス代表候補生がクラス代表の地位を賭け戦う事は既に学園中に知れ渡り、今期最初のイベントとして注目されていた。

 俺と織斑にとっては初の本格的なISバトルであり、自らの価値を示さねばならない試練の場でもある。

 下馬評ではやはり代表候補生であるセシリアがトップで、次いで織斑。最後が俺の順になっている。これは順当な評価で、普通に考えれば代表候補生であるセシリアにズブの素人である俺達2人が勝てると思う方がおかしいのだ。そして織斑には何と言っても織斑千冬(ブリュンヒルデ)の弟と言う肩書きがある。よって、俺が最下位と言う評価になっていた。

 まあ、俺はこれらをひっくり返そうとしてるんだけどな。

 

 

 

 そして放課後、俺は第3アリーナのEピットに来ていた。そこでは白衣を着た浅葱が絃神のスタッフらしいツナギ姿の青年と話をしていた。

 

「浅葱、お疲れ様。良く間に合わせてくれたな」

 

「ああ志狼、お疲れ様。約束したからね。それと紹介しとくわ。ほら、挨拶」

 

「へいへい。やあ初めまして。矢瀬基樹(やぜもとき)、絃神の整備士だ。よろしくな」

 

「結城志狼です。この度はありがとうございました」

 

「いいって、こっちも仕事だし楽しませて貰ったからな。あと同い年だからタメ口でいいぜ」

 

「そうなのか。分かった、それじゃよろしく、矢瀬」

 

「おう」

 

 そう言って俺達は握手を交わした。

 

「それで、これが?」

 

 俺はシートを掛けたままの機体を指差して聞く。

 

「そうよ。貴方の専用機『孤狼(ころう)』よ!」

 

 ニンマリと笑った浅葱がシートを外して言った。

 I-0をベースにしてる為、ISとしては珍しい全身装甲(フルスキン)型。ただ、この白い機体には見覚えがある。

 

「・・・・なあ浅葱、俺にはただの『ゲシュペンスト』に見えるんだが?」

 

「ん? ああ! そっか、志狼貴方知らなかったのね。この状態はあくまで“素体”なの。これから『初期化(フォーマット)』と『最適化(フィッティング)』をして操縦者のデータを取り込む事によって、この娘は貴方の専用機になるのよ」

 

「へえ、そうだったのか」

 

「そうよ。だからここからは操縦者が必要なの。分かったらさっさと着替えてらっしゃい。はい、これが専用のISスーツよ」

 

「ん、分かった」

 

 俺は浅葱から新しいISスーツを受け取ると、更衣室へ向かった。

 

 

 

 

「・・・・へえ、な、中々似合うじゃないのよ」 

 

 着替えた俺を見て、浅葱が何故か頬を赤らめながら言う。新しいISスーツはダイビングスーツのような上下一体型。上はノースリーブで何故か男心をくすぐる指抜きグローブ付き。下はシューズ一体型でご丁寧にファウルカップも付いていた。色は赤をベースに左右に黒いラインが入ったデザインだが、どことなくウル〇ラマンのようなフォルムと、ちゃっかり自社のロゴが入っているのが絃神製らしい(笑)。かなり趣味的ではあるが、学園が用意した腹出しスーツよりよっぽど良い。

 

「そうか? 確かに着心地はいいし動きやすいな。気に入ったよ。・・・所でこのグローブは必要なのか?」

 

「ああそれ? 貴方の拳の動きをより反映しやすくする為のものだから外しちゃ駄目よ」

 

 なんと、ただの趣味ではなかったのか。

 

「ん、分かった」

 

「よし、それじゃ始めましょうか! 志狼、この娘に乗って頂戴」

 

 俺が“素体”に乗り込むと何本もコードがついた輪っかを頭に被せられた。コードを機体とノートパソコンに繋いで浅葱がノートパソコンの前に座ると、彼女の雰囲気が一変した。その姿はまるで女帝が玉座に着いたが如く、気高く、そして美しかった。その変化とデータを打ち込む速さに驚いていると、矢瀬が話かけて来た。

 

「もしかして初めて見たのか? スゲエだろ?」

 

「ああ、一瞬で雰囲気が変わった。正に『電子の女帝』だな。いつもこうなのか?」

 

「いつもって訳じゃない。あいつが本気になった時だけだ。最近じゃ滅多に見れないぞ」

 

「最近って、彼女とは付き合い長いのか?」

 

「お!? 気になる?」

 

「いや、そう言う意味じゃないからな」

 

「ハハハ、まあ、親同士が知り合いの所謂幼なじみって奴でな、中学までは一緒の学校だったんだよ」

 

「成る程。で? 同じ会社に入ったのは流石に偶然じゃないよな?」

 

「ああ、まあその辺は追々な。あ、言っとくがお互い恋愛感情はないからな!」

 

「そうなのか? 俺はてっきり・・・・」

 

「いやいや、俺好きな人いるから! 浅葱みたいなガサツなのはタイプじゃないから!っ痛ててて──!!」

 

 いきなり矢瀬が悲鳴を上げたので、驚いてそっちを見ると、浅葱が矢瀬の耳を引っ張っていた。

 

「コラ基樹! 誰がガサツだって? 志狼に変な事吹き込むな! 緋稲(ひいな)さんに言いつけるわよ!」

 

「痛ててて! 悪かった、それだけは勘弁!」

 

 どうやら緋稲さんとやらは矢瀬にとって頭の上がらない存在らしい。

 

「志狼も! 私別にガサツじゃないから! ただちょっと細かい所まで気が回らないだけなんだから!分かった!?」

 

「ああ、うん、分かった分かった」

 

 俺は内心それがガサツって事じゃないかなあ、と思いながら何も言わなかった。俺は空気が読める男なのだ。

 

「それで? どこまで進んだんだ?」

 

「え? ああ、『初期化』は終わったわ。今は『最適化』を進めてる所だから、もうそれ外してもいいわ。ただ、機体から降りちゃ駄目よ」

 

「その『最適化』はどのくらいで終わるんだ?」

 

 俺は頭から輪っかを外しながら聞いた。

 

「ディスプレイに出てない?」

 

 脇にあるディスプレイを見ると、18:42とあり、以後41、40とカウントを減らしていた。後18分程掛かるらしい。俺は黙って待つ事にした。

 後で知ったのだが、これはとんでもなく早い事で、浅葱のプログラマーとしての実力が突出しているからこそ出来る事なのだそうだ。

 

 しばらくすると、ピットに来客を報せるベルが鳴った。浅葱が入室許可を出すと、入口が開き織斑先生が入って来た。

 

「結城、こちらの状況はどうだ?」

 

「浅葱、説明よろしく」

 

「解ったわ。お久し振りです、織斑先生。現在『初期化』が完了し『最適化』中です。後18分程かかります」

 

「久しいな、藍羽。ふむ、状況は解った。後18分・・・・やはり難しいか」

 

「? 何かあったんですか?」

 

「・・・・ああ、それがな、織斑の機体がまだ来ないんだ」

 

「え? 連絡はしたんですか?」

 

「したんだがな、「今向かってる。もう少し待て」の一点張りで埒が明かん」

 

 蕎麦屋の出前か。しかし、酷いな。

 

「呆れた。倉持技研は時間も守れないんですか? 企業の人間として考えられないわ!」

 

 浅葱の言う通りだ。1分1秒を争う企業人が時間を守れないのでは信用もされないだろう。とは言え実際遅れているのだから言っても仕方がない。

 

「ああ、察するに俺とセシリアの試合を1試合目に繰り上げたいと言う所ですか?」

 

「はっきり言えばそうだ。アリーナの使用時間も限られているからな」

 

「ふむ、浅葱どうだ?」

 

「『最適化』を完了して一次移行(ファーストシフト)しないとこの娘は力を発揮出来ないわよ? それでも行くなら後は貴方次第。どうする?」

 

「つまり後18分、セシリア相手に逃げ切らないといけないって事か・・・・・ふむ、面白くなって来たな。分かりました織斑先生、すぐに準備します」

 

「・・・・すまん。よろしく頼む。準備が出来たら管制室に連絡してくれ」

 

 そう言うと織斑先生は足早にピットを出て行く。

 

「浅葱! 矢瀬! すぐに出る、準備よろしく!」

 

「はいはい。基樹! 1分で準備するわよ!」

 

「うお! マジかよ!」

 

 そう言うと急ぎ出撃準備を始める2人。浅葱は元より矢瀬もなかなか手際が良い。本当に1分で出撃準備を整えてくれた。

 

「管制室、こちらEピット結城です。出撃準備が整いました。指示を願います」

 

『こちら管制室、山田です。大丈夫ですか結城君?』

 

「まあ突然ですが仕方がありません。何とかします」

 

『すみません、こちらの不手際で』

 

「真耶先生が悪い訳じゃないんですから、お気になさらず」

 

『ありがとう。それと一応朗報です。たった今、織斑君の専用機が届きました。準備に30分程かかるそうです』

 

「30分か・・・・了解。なるべく時間を稼ぎます」

 

『お願いします。ではカタパルトへ移動して下さい』

 

 俺は機体を動かしカタパルトへ。機体をセットして指示を待つ。

 

『結城君』

 

「はい」

 

『私の立場でこんな事言ってはいけないのかもしれませんが・・・・頑張って、勝って下さい志狼君!』

 

「真耶先生・・・・ありがとう、必ず勝ちます」

 

『はい! では、進路クリアー、発進どうぞ!』

 

「了解! 結城志狼、『孤狼』出撃する!」

 

 カタパルトに射出され、俺はアリーナへ飛び出した。

 

 

~side end

 

 

 

  

 




読んでいただきありがとうございました。

次の話はなるべく速く投稿したいと思います。

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