二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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少し短いですが、書き上がったので投稿します。


この場を借りて修正部分の説明をさせて下さい。

今まで整備「課」と書いていましたが、原作では整備「科」になっていた事に今更気付きました。

従って、原作に合わせて整備「科」に修正をしました。
読者の皆さんを混乱させてしまい申し訳ありません。


今回から何回かに分けてクラス対抗戦の模様をお送りします。

それでは第26話をご覧下さい。



第26話 クラス対抗戦①~開会式

 

~all side

 

 

 4月の最終週の金曜日。この日は晴天に恵まれ、まだ4月だと言うのに気温が28度にも昇る、まるでアリーナに集まった観衆の熱気に当てられたかのように暑い日であった。

 

 

 

 ここIS学園では毎年恒例のイベントであるクラス対抗戦(リーグマッチ)が開催されようとしていた。

 

 

 学園で最も大きい中央(メイン)アリーナには学園の生徒だけではなく、各国のテレビクルーが入場し、世界各国に試合の模様を伝えようと、数えきれない程のカメラで間もなく入場する選手達を映そうとしていた。

 

 総勢8名の出場選手は例年通り全員が女ではなく、今年は1人男がいる。この初めての事態に、テレビの前の観衆の表情には驚きと興味が浮かんでいたと言う。

 

 

 

 

 渦中の人である2人目の男性操縦者(2ndドライバー)結城志狼はこの大舞台にもさして緊張した様子を見せず、選手入場口であるピットで待機していた。

 

 

「しかし、凄いなあ」

 

 下手すれば学園の生徒達より多いように見える取材陣を見て志狼は呆れたような声を出した。

 

「クラス対抗戦が注目されるのはいつもの事だけど」

 

「今年は客寄せパンダがいるからねえ?」

 

 簪の言葉に鈴が志狼に揶揄うような視線を向ける。

 

「お前の事だな、鈴にゃん」

 

「鈴にゃんゆーな! アンタの事に決まってるでしょ!!」

 

「あははは、何だか余裕だね、しろくん」

 

 志狼と鈴のじゃれ合いを見て、なのはが笑う。

 

「そう見えますか?」

 

「うん♪ ねえ、所でいつ私と戦ってくれるの?」

 

 笑みを含ませたなのはが腕を絡めて尋ねて来る。

 

「そうですねえ・・・・じゃあGWが明けてから、と言うのはどうです?」

 

「ホント!? じゃあ約束だからね。忘れちゃやだよ?」

 

 小首を傾げて不安そうに呟くなのは。なのは級の美少女にそんな態度を取られて思わずクラッと来る志狼だったが、これはなのはの悪ふざけだと心に言い聞かせ、あえて素っ気ない態度で答える。

 

「はいはい、分かりましたよ」

 

「むう、何だか素っ気ないなあ。でも、まあいいや」

 

 そう言って先程のしおらしさなど欠片もない様子で離れるなのは。

 “あの人は悪魔だ”と志狼は改めて用心するよう心に言い聞かせた。

 

 

 

 

『ご来場の皆様、お待たせしました!ただ今より第6回IS学園クラス対抗戦を開催いたします!!』

 

 

 そうこうしている内に開会式が始まった。

 まずは選手入場からなので、選手達は皆ISを纏う。係員に入場を促されると、1年1組の為、最初に入場する志狼がカタパルトに乗り待機する。その時ハイパーセンサーが外のアナウンスを聴き取った。

 

 

『さあ、お待たせしました! 選手入場です!

まず最初に入場するのは皆さんお待ちかね2人目の男性操縦者。つい先日初めてのISバトルでイギリス代表候補生のページワンともう1人の男性操縦者を見事に撃破した、鋼鉄の赤き狼。1年1組代表、結城ぃぃ志狼ぉぉーーーっ!!』

 

 恥ずかしいアナウンスに志狼は出る気をなくしたが、係員に促され、渋々カタパルトから射出される。

 アリーナ上空に飛び出した孤狼を見て、歓声が沸き起こる。志狼は上空から観客席を眺めてクラスメイトを捜すと、彼女達はしっかりとアリーナの最前列に陣取っていた。明日奈が、箒が、セシリアが、皆が声援を送っている。「志狼、勝利を掴め!」と書かれたお手製の横断幕を見て、志狼は笑みを深くした。

 

 

『操るISは絃神コーポレーション製の専用機“孤狼”。近年珍しい全身装甲型。それもそのはず、元は絃神製のI-0ゲシュペンストを改造した機体で、急造であるにも関わらず高い戦闘力を発揮したのは皆さんも知る所でしょう。赤き狼の牙が獲物を狙うぅっ!!』

 

 

 相変わらずの恥ずかしいアナウンスだが、志狼はもう気にしない事にした。

 

 

 

 

『続いての入場は突如やって来た謎の転校生。その正体は中国4千年からの刺客、中国代表候補生序列3位、中華の麒麟児、鈴にゃんこと1年2組代表、凰、鈴音んんんーーーっ!!』

 

「鈴にゃんゆーなぁっ!!」

 

 そう叫びながら鈴が入場する。

 

『操るISは中国製の第3世代機“甲龍(シェンロン)”。中・近距離戦で力を発揮する強力な機体です。今宵龍の逆鱗に触れ、無惨な屍を晒すのは誰だ!?』

 

 

 

 

『続いての入場はアメリカ代表候補生序列8位、射撃の名手、1年3組代表、ティアナ・ランスタァァーーーッ!!』

 

 ティアナがラファールを駆り入場して来る。その表情は固く、無表情を保っている。

 

『操るISはフランスが誇る名機“ラファール・リヴァイヴ“。1年生で唯一専用機ではない量産機での参戦となりますが、果たしてどのような試合になるか、楽しみな所です』

 

 そのアナウンスにティアナが無表情を崩し、苛立ちをあらわにして唇を噛む。その様子が志狼には妙に印象に残った。

 

 

 

 

『1年生最後の入場です。数々の不運に見舞われるも、新たなる力を手にして不死鳥の如く甦り、今、我々の前にその姿を現すぅ! 日本代表候補生序列3位、1年4組代表、更識ぃ、簪ぃぃーーーっ!!』

 

 入場して来た簪は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしていた。因みにこの様子をテレビで視ていた多くの男性視聴者が萌え狂ったと言う。

 

『操るISは何とIS学園製の第3世代機“華鋼”。とある企業が作りかけで放置していたものを学園生徒の力で再生したと言う未知数の機体です。果たしてどんな戦い振りを見せてくれるのかっ!!』

 

 

 盛大な歓声が沸き起こる中、当の志狼達はと言うと、

 

「この場合手でも振った方がいいのか?」

 

「さあ? まあ、やったら喜ばれるんじゃない?」

 

「じゃあ皆で手を繋いで、ダーッでもやるか?」

 

「私は嫌よ。やるなら貴方達だけでやって」

 

 志狼と鈴の会話にティアナが口出しする。

 

「ランスターさん。君はいつもそんな顔してるな。折角の美人が勿体ないぞ?」

 

「お生憎様。そんなので靡くと思ったら大間違いよ」

 

 取り付く島もないティアナを見て、鈴が揶揄うように言った。

 

「あらあら。志狼が口説き落とせないなんて、中々やるわねえ」

 

「いや、そんなつもりはないぞ? 誰だって仏頂面より笑顔の方がいいだろう? 鈴、お前だって織斑が笑顔でいてくれた方が嬉しいだろうが、ん?」

 

 揶揄われた仕返しと言わんばかりに鈴に言い返す志狼。

 

「べ、別に一夏の事は関係ないでしょ!?・・・・そりゃまあ笑顔の方がいいけどさ」

 

「ほお~、ふう~ん」

 

「な、何よお・・・・」

 

 頬を赤く染めた鈴を揶揄う志狼。そんな鈴を見てティアナが言い放った。

 

「ふん、下らない。あんな男に熱を上げてるなんて凰鈴音も噂程じゃないわね!」

 

 途端に剣呑な表情でティアナを睨む鈴。

 

「ああ!? 何アンタ、ケンカ売ってんなら買うわよ?」

 

「別に、ただ事実を言ったまでよ」

 

「よし買った! ボコボコにしてやるわ!!」

 

 いきなりティアナに襲い掛かろうとする鈴を志狼が、迎え撃とうとするティアナを簪が止める。 

 

「止めろ鈴、世界中にテレビ中継されてるんだぞ。また問題を起こす気か!?」

 

「ランスターさん、貴女もです。試合前に挑発するような真似は控えて下さい」

 

 ティアナを睨み付けるも志狼の言い分が正しいと理解しているのか、矛先を収める鈴。だが、やはり気が治まらないのか一言言い返した。

 

「残念ね。試合で当たれば直接ぶちのめしてやるのに、アンタ初戦で消えるもんね」

 

 これにはティアナが過剰に反応した。

 

「何ですって!? 私がこの男に負けるとでも言うの!!」

 

「あら、アンタ志狼に勝てるつもりだったの? 身の程知らずねえ? 志狼はページワンに勝ってるのよ。8位のアンタじゃ話にならないわよ!」

 

「くっ!アンタよくも!!」

 

 激昂して鈴に襲い掛かろうとするティアナ。だがその前に鈴の頭に志狼の拳骨が落ちる。

 

「いっったーーーいっ! 何すんのよ志狼!!」

 

「いい加減にしろ!テレビ中継されてるって言ってるだろうが! お前ら全世界に恥を晒す気か!?」

 

「あっ」「うっ」

 

 鈴とティアナが息を洩らす。しかし、

 

「・・・・志狼さん、もう遅いみたいです」

 

 簪の言葉に彼女の視線が向いている方を見ると、オーロラビジョンに志狼達が揉めている様子がはっきりと映し出されていた。

 

 

『お~~~っとぉ?試合開始が待ちきれないのか、何やら1年生が早くもヒートアップしている模様。意気軒昂なのはいいが、場外乱闘はいただけないぞ~~!?』

 

 アナウンスの声にばつが悪くなったのか、鈴とティアナはそっぽを向きながら離れる。志狼と簪は顔を見合わせると、揃ってため息を吐いた。

 

 

『志狼君!? 何かトラブルですか!?』

 

 真耶からプライベートチャネルで連絡が入る。

 

『真耶先生? 今どちらに?』

 

『管制室です。それより何があったんですか?』

 

『いえ、心配ないです。ただ子猫が2匹じゃれていただけですから』

 

『子猫って・・・・はあ、では問題はないんですね?』

 

『はい、お騒がせしました。そのまま式を進めて下さい』

 

『分かりました。それじゃあ試合頑張って下さいね』

 

 

 真耶からの通信が切れると、再び選手入場が始まる。

 

 

『それでは続いて2年生の選手入場です。尚、2年生からは3組が整備科、4組が開発科に別れている為、操縦士科の1組2組からのみ参戦となります。それでは選手入場です! 最早この人に説明は不要でしょう。「不沈要塞」、「エース・オブ・エース」「白き魔王」など数々の異名を持つ学園最高の操縦者。日本代表候補生序列1位、2年1組代表、高町ぃぃーーっなのはぁぁーーーっ!!』

 

「ええーーっ! 魔王って何よーー!?」

 

 なのはが憤りながら入場する。

 

『操るISは八神重工製第2世代機“レイジング・ハート”。砲撃戦特化の強力な機体で、世界で10機しかない二次移行(セカンドシフト)機でもあります! 星の光が敵を撃つっっ!!』

 

 

 

『続いての入場はいつもマイペースながら高い実力を誇ります。ギリシャ代表候補生序列2位、2年2組代表、フォルテ・サファイアァァッ!!』

 

「何だか私の紹介薄くないっすか?」 

 

 呟きながらフォルテが入場する。

 

『操るISはギリシャ製第2世代機“コールド・ブラッド”。冷気を操る力を持つ特殊な機体です。氷の刃が敵を切り裂くぅっ!!』

 

 

 

 

 

『さあ、ここからは3年生の入場になります。長身と抜群のプロポーションを誇る学園の姉御。アメリカ代表候補生序列1位、3年1組代表、ダリルゥ・ケイシィーーーッ!!』

 

「おいおい、姉御って何だよ、ったく」

 

 苦笑しつつ、ダリルが入場する。

  

『操るISはアメリカ製第2世代機“ヘルハウンドver.2.5”。炎を操る能力を持つ強力な機体です。地獄の業火が敵を焼き尽くすっ!!』

 

 

 

 

 

『さあ、最後の選手の入場です。小さな身体に大きなバイタリティー。学園の騒動の影にはこの人あり。学園のお祭り娘、IS学園祭事実行委員会会長、3年2組代表、角谷ぃぃ杏ぅぅーーーっ!!』

 

「やあ、どーも、どーも」

 

 観衆に手を振って、鈴よりも小柄なツインテールの少女が入場する。 

 

『操るISは日本の倉持技研製の量産機“打鉄”。近接戦闘と防御力に定評がある傑作機です。果たして専用機相手にどこまで戦えるでしょうかーーーっ!!』

 

 

 

 

『以上8名のクラス代表達が、No.1は誰かを競い合います。皆さん、素晴らしいバトルを見せてくれるであろう彼女達に盛大な拍手をーーー!!』

 

 

 アナウンスに導かれ、拍手と歓声が鳴り響く。

 この後は学園長の挨拶、来賓の挨拶の後は生徒会長の挨拶となり、楯無が壇上に上がる。最近更に美しさを増したと言われる美貌を惜し気もなく晒し、それを見た観衆からため息が洩れる。

 

 

『クラス代表の皆さん。時候の挨拶なんかは先に挨拶した方々が散々したから省きますね。私からはひとつだけ。このクラス対抗戦での勝者には私への挑戦権を与えます。どう使おうとその人の自由ですが、この学園最強に挑まんとする者はかかってらっしゃい』

 

 そう言うと楯無はニコリと笑って、手にした扇を広げる。そこには「我、最強也」と書いてあった。覇気を纏ったその姿は正しく学園最強の名に相応しいと誰もが納得させられた。

 

『それでは良いバトルを期待しています』

 

 見蕩れる程美しく一礼をして、楯無は壇上を降りる。一拍遅れて拍手と歓声が鳴り響いた。

 

 

 アリーナ上空からそれを見ていた選手達。ある者(なのは)は戦意を昂らせ、ある者()は憧れを抱き、ある者(ダリル)は好色そうに舌舐めずりをした。

 志狼は己が契約者の自分の知らない真剣な表情と普段のギャップに苦笑を浮かべつつ、やはり強者との戦いに心を昂らせるのだった。

 

 

 

 続いて試合上の諸注意を審判長である織斑千冬教諭が説明をする。千冬が壇上に上がると途端に歓声が沸き上がる。そのあまりの騒々しさにいつものように怒鳴りつけたくなる千冬であったが、流石に全世界にテレビ中継されている前では自粛せざるを得ず、「静粛に!」と繰り返す事しか出来なかった。

 5分後、静かになり、ようやく説明を始められた千冬のこめかみに青スジが浮かんでいたのを志狼はハイパーセンサーではっきりと目撃した。

 

 

 

『以上を持ちまして開会式を終わります。この後は第1試合1年1組対1年3組の試合を行いますので、出場選手の2人はこの場に残って下さい』

 

 

 アナウンスに従い、志狼とティアナを除いた選手達がピットに戻って行く。去り際に鈴が、簪が、なのはが声をかけて行った。

 

「ギッタギタにしてやんなさい!」

「が、頑張って下さい!」

「楽しみにしてるからね♪」

 

 彼女らの励ましに志狼は親指を立てて答えた。

 

 

 

 アリーナ上空には志狼とティアナだけが残った。

 

 

「今更挨拶は不要だろうが、結城志狼だ」

 

「ティアナ・ランスターよ」

 

 

 やがて観客席にシールドバリアーが張られ、オーロラビジョンには志狼の孤狼とティアナのラファールのデータが表示され、試合の準備が整った。

 

 

 志狼とティアナは上空で30mの距離を空けて対峙する。

 

『それでは第1試合、1年1組代表結城志狼“孤狼”対1年3組代表ティアナ・ランスター“ラファール・リヴァイヴ”、試合開始!!』

 

 

 試合開始のブザーがアリーナに鳴り響いた!

 

 

 

~side end

 

 




読んで頂き、ありがとうございます。

今回3年2組の代表として「ガルパン」より角谷杏会長に出演して貰いました。
3年2組の代表を誰にするか考えて、代表候補生ではない一般生徒にしたいと思い、彼女になって貰いました。

補足として、彼女の所属する祭事実行委員会とは学園内のイベントを取り仕切る委員会で、体育祭や文化祭などのバトルのないイベントでは生徒会に次ぐ権力を持っています。
 
因みにこの委員会では会長と呼ばれていて、胸の大きな娘と片眼鏡を掛けた娘が補佐をしています。

今回限りの出番かもしれませんが、よろしくお願いします。


次回は対ティアナ戦です。



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