二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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第27話を投稿します。

感想で散々指摘を受けていた一夏アンチをタグに追加しました。

今までも一夏の扱いをどうするか散々悩みましたが、今後の一夏の先行きが決定したので、改めて追加する事にしました。

それではバトル回の第27話、ご覧下さい。




第27話 クラス対抗戦②~志狼VSティアナ

 

 

~all side

 

 

 

 ブザーと同時に孤狼がラファールに襲い掛かる。

 ティアナは牽制に銃弾をバラ撒き、後ろに距離を取ろうとするが、孤狼の予想以上の速度に接近を許し、一撃を受けてしまう。

 

「くっ! 厄介な!!」

 

 孤狼の光る拳がヒットして、ラファールのSEが削られる。

 

「何なのよ、その光る拳は!?」

 

「ヴァリアブル・ナックル。孤狼の特殊兵装のひとつだ」

 

 意外な事に志狼が答えた。

 

 

 

 

 ───エネルギーコーティング式特殊兵装

    「ヴァリアブル・ナックル」

 

 

 エネルギーを拳にコーティングする事により、孤狼の拳を剣や槍と同様、衝突しても自機のSEが損なわれないようにする特殊な処理を施した孤狼の特殊兵装。

 拳が光るのはエネルギーが拳に満ちている為に起こる現象で、エネルギーが減るにつれて光が弱くなる。

 内蔵バッテリーよりエネルギーを供給している為、長時間の使用は出来ず、両拳にしかコーティング出来ないという欠点もあるが、志狼のボクシング主体の戦い方に適した兵装である。

 一応、第3世代兵装を目指して開発されたものだが、諸々の問題から第3世代兵装には至ってはいない。

 

 

 

 

「つまり、孤狼の拳は剣や槍、銃弾と同じと言う事だ。当たればどんどんSEが削られるぞ」

 

「・・・・これだから専用機は」

 

 ティアナの声が一段低くなる。

 

「随分と専用機にご執心のようだな?」

 

「貴方には分からないわよ! 男と言うだけで何の苦労もなく、専用機を手に入れた貴方なんかに!!」

 

 ティアナは2丁拳銃を撃ちながら距離を取ろうとするが、孤狼は銃弾をダッキングやウィービングを駆使しながら回避し、近付いて来る。そして拳が届く距離まで来るとヴァリアブル・ナックルの一撃でまたもSEが削られていく。

 

 

 

 

 

「ヴァリアブル・ナックル──それが光る拳の正体ですか」

 

 アリーナ最前列。1年1組が陣取った席でセシリアが呟いた。実際に試合で食らった事のある彼女にはその威力が良く分かっていた。

 

「兄さんにピッタリの武装よね」

 

「3組の代表は対応出来てないな」

 

 明日奈と箒が試合から目を離さずに言う。

 

 試合は一方的な展開になっていた。

 

 

 

 

 

 

 試合開始から5分が経過すると、ラファールのSEは半分近くまで減っているが、孤狼のSEは1割も減っていなかった。

 いま、2機は20m程距離を置いて対峙している。孤狼なら一瞬で詰められる距離だ。

 

「くっ、ここまで手も足も出ないなんて・・・・」

 

 ティアナが悔しそうに唇を噛む。

 

「諦めて、降参するか?」

 

 志狼がそう尋ねると、ティアナが吠えた。

 

「! ふざけないで! アンタなんかその機体の性能で強いだけじゃない!? 私のこの機体が専用機だったらアンタなんかに決して負けたりしないわ!!」

 

「確かに。俺が仮にも代表候補生である君と互角以上に渡り合えるのは孤狼の性能のお陰だ。本当に絃神のスタッフには頭が上がらないよ。だがな、例え君が専用機を持っていたとしても、今の君には負ける気がしない」

 

「何ですって!? どう言う意味よ!?」

 

「君はそのラファールをどう思ってるんだ?」

 

「何を言って・・・・?」

 

「答えろ、ティアナ・ランスター!」

 

「!?」

 

 ティアナは志狼の真意を量ろうと孤狼を見た。全身装甲型故に直接顔が見えた訳ではないが、志狼からは怒りと、そして哀しみをティアナは感じた気がした。

 

(何?どうして貴方から怒りだけじゃなく哀しみまで感じるの?)

 

 自分の感覚を不思議に思いながらも、何か答えなくてはとティアナは己の答えを探した。やがて、

 

「・・・・ど、どうも何も、ただの量産機じゃない。それがどうしたって言うのよ!?」

 

「そうか・・・・。俺はISと言うのは操縦者と機体とコアの3つがひとつになった時、真価を発揮すると師である人に教わった。だが、今の君はどうだ? 機体をただの量産機だと断じてまるで価値がないかのように扱っている。そんな君には専用機を持つ資格なんてないよ」

 

「! アンタなんかに何が分かるって言うのよーーーっ!!」

 

 志狼の言葉に激昂したティアナが2丁拳銃を撃ちながら突進する。だが、志狼は冷静に回避すると右腕にリボルビング・ステークをコールする。そしてすれ違い様にステークを一閃させると、確かな手応えを志狼は感じた。

 

「くあああっ!!」

 

 ステークの衝撃に吹っ飛ぶラファール。吹っ飛びながらも何とか体勢を整えると、ラファールのSEは4割を切っていた。

 

「くそっ! 負けるもんか!!」

 

 ティアナは距離が開いたのをいい事に、拡張領域から大口径レーザーライフルをコールし、孤狼に狙いを定めた。

 

「食らええええーーーっ!!」

 

 照準が合うと同時にティアナは引き金を引く。

 孤狼目掛けて直進するレーザーを孤狼は避けもせず、真正面から受けた。すると本来ならダメージを与える筈のレーザーは孤狼の装甲に当たり霧散してしまった。

 

「なっ! 何よそれは!?」

 

「ABフィールド。孤狼の特殊兵装のひとつだ。」

 

 

 

 ───AB(アンチビーム)フィールド

 

 

 孤狼の特殊兵装のひとつ。ビームやレーザーなどの光学兵器をある程度無効化するフィールド。

 特殊な塗装を装甲に施す事により、ある程度の威力までの光学兵器を無効化出来る。しかし、一定以上の威力を受けると塗装が蒸発してしまう為、大ダメージを受けてしまう諸刃の剣ならぬ楯でもある。

 絃神コーポレーションが開発し、クラス代表決定戦後に試験的に孤狼に採用された。

 

 

 

 

 

「何だよあれ・・・・あんなの反則じゃないか!」

 

 アリーナの最後列。周りに人が少ない区画で試合を見ていた一夏は一方的な試合展開に憤っていた。一夏の目には志狼が一方的にティアナを痛め付けているようにしか見えず、更にはABフィールドの存在が卑怯な反則にしか思えなかった。

 

「やっぱりあいつは卑怯者だ。あんな奴許しておいちゃいけないんだ!」

 

 一夏は口唇を噛み、志狼を誅する決意を新たにした。

 

 

 

 

 

 

「つまり孤狼には下手なレーザーは効かないんだ。悪いな」

 

「何よそれ、そんなのあり・・・・?」

 

 決め手にと用意していた大口径レーザーライフルが通用しないと知ったティアナは絶望感に支配された。

 

(やっぱり凡人が何をやっても無理なんだ・・・・)

 

「諦めるのか?」

 

 項垂れたティアナに向かって、孤狼がゆっくりと近付いて来る。

 

「・・・・・・」

 

「君の相棒は諦めていないと言うのに、君は早々と諦めてしまうのか?」

 

「私の、相棒・・・・・?」

 

 志狼のその言葉を聞いて、ティアナは首を傾げた。相棒と言われて誰の事を指しているのか分からなかったのだ。だがその時、ティアナは誰かに呼ばれたような気がして顔を上げた。

 

「え、誰?」

 

 思わず周りを見渡すと、観客席でスバルが自分を心配そうに見つめていた。だが、先程聞こえた声は聞き慣れたスバルの声ではない。では誰が、と考えた時、不意に頭に浮かんだのは───

 

「・・・・貴女なの、ラファール?」

 

 そう呟くと、指先に熱を感じた。まるで誰かに手を握られたかのように。

 

「あっ、あああ───」

 

 目の奥が熱い。その熱さが雫となって溢れて来る。ああ、私は何て馬鹿なんだろう?相棒と言われて何故貴女だと解らなかったんだろう?結城志狼の言う通りだ。私に専用機を持つ資格はない!それ所かISを扱う資格すらも。でも貴女はこんな私を見捨てないでいてくれた。勝利を諦めた私と違い、貴女は諦めていなかった!相棒である貴女が諦めないなら、私だって───!!

 

 

 

 不意にティアナが顔を上げる。涙で滲んだその瞳には、戦う意志と諦めない決意が見て取れた。志狼は満足そうに微笑むと、ファイティングポーズを取る。

 

「第2ラウンドだ。ティアナ・ランスター」

 

「ええ、望む所よ。結城志狼!!」

 

 

 

 

 

 

「全く、志狼君らしいなあ」 

 

 中央アリーナ管制室。メインコンソール席に座った真耶は志狼とティアナの会話を聴いて、苦笑を浮かべていた。

 ティアナ・ランスターは代表候補生として突出した能力こそないが、全てに於いて高レベルの成績を修める良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏と呼ばれるタイプであった。

 彼女の過去を紐解いてみれば、力を求め、専用機を欲するのは当然の帰結と言える。だが、真耶や千冬と言った教師陣はその力だけを求める傾向を不安に思っていた。

 志狼にもそれが分かったのだろう。ティアナを単なる力の信奉者ではなく、真のIS操縦者として目覚めさせてくれたのだ。そう言う心の闇を抱えた人を放っておけないのが志狼らしいと、思わず笑ってしまった。

 志狼と接する事によって、箒や簪などは驚く程変わった。無論良い方にだ。ティアナも同様に変わってくれればいいと真耶は思った。

 それに真耶にしてみれば、志狼がティアナを諭す時に言ったISの真価のくだりは自分が教えた事であり、それがしっかり志狼に根付いている事や自分を師だと言って貰えた事が素直に嬉しかった。

 

「あいつは案外、教師に向いてるのかも知れないな」

 

 メインモニターを見ていた千冬の呟きに真耶は微笑を浮かべ頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 ティアナは選択を迫られていた。主武装の2丁拳銃では遠距離で当たっても大したダメージは与えられない。切り札にと考えていたレーザーライフルは無効化されてしまう。SE残量は既に3割程しかない。この状況で自分達に出来る手段はもうひとつしかなかった。すなわち、

 

(接近戦!!)

 

 そう、相手の懐に飛び込んで、近接ブレードかゼロ距離からの銃弾によりダメージを与えるしかない。無論、1度では駄目だ。何度も繰り返さねば効果はない。しかも、孤狼の攻撃が1度でも当たればこちらはSE切れを起こして敗北する事だろう。

 そんな綱渡りの状況で、ティアナの集中力はかつてない程高まっていた。

 

「行くよラファール。力を貸して!」

 

 そう叫んでティアナはラファールを突撃させる。ラファールはティアナに応えて素晴らしい加速を見せた。その今まで以上の加速力に孤狼の反応が一瞬遅れ、回避は間に合わないと判断した志狼は銃撃に対するガードを固めた。

 

(ここだ!!)

 

 孤狼のガードの下をすり抜けて懐に入ったラファールは両手に近接ブレードをコールして、当たるを幸いに斬り付けた。

 

「ぐっ!」

 

 少しでもSEを削り取ろうと言う意志の元に行われたティアナの行動は、孤狼から1割のSEを削り取る事に成功した。

 

「これだけやって1割か・・・・割に合わないわよね」

 

 孤狼の残りSEは8割。今の攻撃を最低あと8回、それも被弾なしで成功させねば勝てないのだ。だが、

 

「それでも、やるしかない!!」

 

 ティアナは再度ラファールを突撃させた。

 

 

 

 

 

 

 ティアナが接近戦に戦法を変えてから3度目の突撃が終わった。1度目は近接ブレードで斬られた為、2度目もそう来ると思ったら、至近距離で銃撃に切り替えられ、モロに銃撃を浴びてしまった。3度目はどちらで来るか警戒していたら、銃撃で来たのでガードしたらすれ違い様に斬撃を受けた。

 3度の突撃を受け、既に孤狼のSEは半分近くまで減っていた。最初は見ているだけだった観客も、不利な状況でも決して諦めず、戦い続けるティアナの姿にいつしか声援を送るようになっていた。

 

「こりゃあ眠れる獅子を起こしちまったかな?」

 

 ティアナは世界一の大国アメリカの代表候補生。序列8位とページワン入りこそしてないものの、大国故に保有するコアの数も、IS操縦者の人数も、それに至る代表候補生の人数も世界一だ。

 そんな模擬戦の相手に事欠かない環境でティアナは8位にまで登りつめている。バトルに対する即応性が志狼とは段違いなのだ。

 しかも、ティアナは先程から剣と銃の切り替えを一瞬で行っている。これは以前真耶から教わったが、高速切替(ラピッドスイッチ)と言う高等技術であった筈だ。

 志狼は今、ティアナの底力を感じて歓喜に奮えていた。

 

「そうだ、戦う相手は強い方がいい。そうじゃなくちゃ面白くない。お前もそう思うだろう、孤狼?」

 

 志狼の問いかけに孤狼が応えるように出力を上げる。

 

「とは言え、このままではジリ貧だな・・・・こうなりゃ、肉を斬らせて骨を断つ。決着を付けるぞ、孤狼!」

 

 次の攻防で決着を付けるべく、志狼は決意を固めた。

 

 

 

 

 

「行けるかも知れない」 

 

 3度の突撃を成功させ、ティアナはこの試合で初めて勝機を見出していた。高速切替を駆使した突撃に孤狼は対応仕切れていない。あと5回突撃を成功させなければならないが、今の自分なら出来る、そう思えた。

 加えて観客席から送られる声援が背中を押してくれる。こんなにも試合で声援を受けたのは初めてだった。観客の声援が自分の力になる事をティアナは初めて実感していた。そして改めて思った、勝ちたいと。

 

 

 

 

 

 4度目の突撃を仕掛けようと孤狼を見据えた時、孤狼がガードを固めた。銃撃が来るとヤマを張ったのかと訝しんだが、3度目と同じ銃で牽制してから剣で斬る方法で行く事にする。志狼も2度続けて同じパターンが来るとは思わないだろうと考え、ラファールを加速させる。

 

 10mまで近付いて銃撃を浴びせる。ガードの上からなので大したダメージは与えられないが、本命はこの次、ティアナは屈み込んで孤狼の懐に入り、高速切替で銃から剣に武器を替える。そのまま斬りかかろうとした時、

 

「かはっ!!」

 

 腹と背中に同時に衝撃が来た。その衝撃に動きが止まり、武器を取り落とす。

 

(マズい!早く動かないと!!)

 

 ティアナが動きを止めたのはほんの一瞬、しかし、志狼にはそれで充分だった。

 

「見事だ、ティアナ・ランスター。君と戦えた事を誇りに思う」

 

 志狼の声が聞こえた次の瞬間、腹部に更なる衝撃が3度。そうしてティアナは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 ラファールの銃撃をガードする。次に来るのは懐に入っての斬撃か、銃から剣に武器を切り替えたのが見える。その剣が当たる直前、志狼はラファールの横に回り込み、肘と膝を同時に叩き込む。所謂空手で言う交差法だ。

 ヴァリアブル・ナックルは拳にしか展開出来ない。当然肘と膝を直接ぶつければ孤狼のSEは減る事になるが、ティアナの攻撃を受けるのも、自分が攻撃を当てるのもSEが減るのは同じと割り切った、正に肉を斬らせて骨を断つ戦法であった。

 

「かはっ!!」

 

 ラファールがほんの一瞬、動きを止めた。

 

(ここだ!!)

 

「見事だ、ティアナ・ランスター。君と戦えた事を誇りに思う」

 

 惜しみない称賛をティアナに送り、決着のリボルビング・ステークを撃ち込む。

 

 

 鋼鉄がぶつかり合うような衝撃音が3度、アリーナに響く。そして───

 

 

 

 

 

『“ラファール・リヴァイヴ”SE残量0、及び操縦者ティアナ・ランスターの戦闘不能を確認。よって、第1試合は12分37秒で結城志狼“孤狼”の勝利です!』

 

 

 アリーナにアナウンスが流れると、次の瞬間、歓声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 試合が終わり、志狼はラファールに近付く。以前同じように意識を失ったセシリアが落下したので、今回は落ちる前に支えようとしたのだ。

 孤狼がラファールを支えるとラファールはそれを待っていたかのように待機状態に戻った。後には気を失ったティアナが孤狼の腕の中に残った。

 

「う、ううん・・・・」

 

「気がついたか?ランスターさん」

 

「・・・・結城、志狼?・・・私は・・・・・・」

 

 しばらく朦朧としていたティアナだったが、すぐ気がつくと、周りの状況を確認して、ため息を吐いた。

 

「──そっか、負けちゃったか・・・・」

 

 こんな風に負けた事をあっさり口に出せるのをティアナは不思議に思った。以前負けた時は悔しくて夜も眠れなかったのに、今は負けたと言うのに何だか清々しい気分だった。

 

(どうしたちゃったんだろう、私) 

 

 負けたショックで1周回っておかしくなってしまったんだろうか? そんな時、

 

「おーい、ランスターさん? 大丈夫か?」

 

 孤狼のマスクを開いて、素顔を見せた志狼が心配そうに声をかける。しばらく志狼の顔をじっと見つめていたティアナだったが、

 

「ねえ、最後の攻防で一体何があったの? 私はただ衝撃を何度か感じて意識を失ったから何をされたのか分からないのよ」

 

「ああ、それなら丁度いい。今からリプレイするみたいだ」

 

 志狼はそう言うと、ティアナにオーロラビジョンを見るように促した。丁度、最後の攻防をスローでリプレイしている所だった。

 志狼の解説付きでリプレイを見ていたティアナは、あの瞬間に何をされたのか理解し、再度ため息を吐いた。

 

「・・・・貴方には謝らなければいけないわね」

 

「? 謝られる覚えはないんだが?」

 

「さっき私はこう言ったわ。貴方が強いのは機体の性能のお陰だって。でも違った。確かに孤狼の性能は高いわ。でもそれだけじゃない。貴方自身が強いから孤狼も強いのね、侮辱するような事を言ってしまったわ。ごめんなさい」

 

「・・・・ああ、いや、俺も挑発しようと色々言ったからな。こちらこそごめん」

 

「いいわ。私に専用機を持つ資格がないのは事実だもの・・・・」

 

「ランスターさん、ひとつ勘違いしてるよ」

 

「え?」

 

「俺は試合前半の君には資格がないと確かに言ったよ? でもね、途中で立ち直った君は高い技術と諦めない心を持った専用機持ちに相応しい操縦者だったと思う。それは何よりもこの歓声が証明してるだろう?」

 

「!?」

 

 ティアナは志狼の言葉に改めて周りを見る。アリーナに響く歓声の中には確かにティアナを称賛する声も混ざっていたのだ。

 

「そっか・・・私、そう言うバトルが出来たんだ・・・・」

 

 ティアナは涙を滲ませて、呟いた。

 

「ランスターさん? 大丈夫か?」

 

「───ティアナ」

 

「ん? 何だって?」

 

「だから、ティアナでいいって言ってるの!か、勘違いしないでよ?ライバルと認めた人には名前で呼ばせる主義なだけなんだからね!?」

 

 顔を真っ赤にしながらティアナが捲し立てる。

 

「プッ、アハハハ───!」

 

 ティアナの様子を見て、志狼は思わず吹き出した。

 

「な、何よう・・・・?」

 

「いや、ごめん。分かったよティアナ。俺の事も志狼でいい」

 

「う、うん。志狼・・・・」

 

 そんなティアナをじっと見つめる志狼。

 

「な、何?」

 

「うん。ティアナは髪を下ろした方が大人っぽくなるな。どちらかと言えば可愛いと言うより綺麗って言う顔立ちだからその方が良く似合うぞ?」

 

「へ? な、なななな───!!」

 

 志狼の言葉に混乱しながら、頭に手をやるティアナ。ツインテールに結っていた髪は、バトルの衝撃でリボンが外れてしまったのか、太陽のようなオレンジ色の髪が背中まで下りていた。

 

「い、いきなり何を言ってるのよ、もう!」

 

「アハハ、さて、そろそろピットへ行こうか」

 

 顔を真っ赤にしてそっぽを向くティアナの様子に笑みを零しながら、志狼は孤狼をピットに向けて走らせた。

 

 

 

~side end

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

ご覧の通り、ティアナはめでたくヒロイン昇格しました。
貴重なツンデレ枠として頑張って貰おうと思います。

次回は鈴VS簪をお送りします。

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