入学式が終わった。この後は各クラスに移動してHRの後、昼食、午後からはもう授業になるそうだ。
「いや~凄かったなあ」
1年1組の教室へ清香達と移動中、話題になるのは先程のデモンストレーション。初めて生で見たISの飛翔する姿に柄にもなく興奮気味に俺が言うと、
「ふふ、志狼さん目をキラキラさせてましたもんね」
「ええ、ちょっと意外でした」
「しろりん、か~わいい~♪」
清香、静寐、本音の3人にからかわれてしまった。年上をからかうもんじゃないよ君達。と言うかしろりんって俺の事かな、本音君?
「いや、俺も男だからな。ああいうメカが実際に動いているのにはやはり心惹かれるというか・・・・」
4人で雑談していると1年1組の教室に着いた。席は出席番号順なので一旦、皆と別れたが、
「わ~い、しろりん、お隣だ~」
俺の隣りの席は本音だった。
「そのようだな。改めてよろしくな、本音」
「うん! よろしくね~。・・・・ねえしろりん、お菓子持ってない?」
「お菓子? お腹空いたのか?」
「・・・・うん」
「ちょっと待て、・・・・あったぞ。ほら、持ってけ」
「わ~い、ありがと~」
俺は丁度鞄に入れておいた果汁グミを本音に渡すと、彼女は喜んで清香達の所へ持って行った。
席に着き、教室内を見渡すと大半が日本人のようだ。外国人は5人くらいしかいない。それと、
「織斑一夏か・・・・・」
俺がこの学園に通う事になった元凶、織斑一夏がいた。
織斑は席に突っ伏したまま固まっていた。まあ無理もない。この不躾な視線にさらされて平気な奴はまずいないだろう。
何と言っても教室内のクラスメイトだけでなく、廊下にも珍しい男性操縦者を見に来たのかビッシリと人が集まっており、そっちからも視線が飛んで来るのだ。中にはリボンタイの色が違うから上級生も混ざっているらしい。因みにこの視線は俺にも向けられているが、もう気にしない事にした。
1ヶ月前なら余計な事をして俺の夢を台無しにした織斑を一発ぶん殴ってやる所だったが、時間の経過と共に怒りも薄まり、奴も被害者なのだという同情心も少し湧いていたので、手を出すのは止めておこう。て言うか、本当に手を出したら普通に暴行・傷害事件だしな。
「皆さーん、席に着いて下さーい。HRを始めますよー」
眼鏡を掛けた可愛らしい娘がセシリアと一緒に教室へ入って来た。セシリアもこのクラスだったのか。
「このクラスの副担任の
おや、先生だったのか。まあ、私服だもんな。童顔で大きめの眼鏡が良く似合うとても可愛らしい人だ。制服を着ていたらクラスメイトと絶対間違える事だろう。
しかし、あの胸は凄い。ゆったりしたワンピースを着てるのにそこだけがパンパンに張っている。日本人であの大きさは滅多にいないだろう。因みに俺は巨乳派なので喜ばしい限りだ。
それにしても折角先生が挨拶したのにクラスの連中は無反応だな。あまりの無反応振りに先生もオロオロしてる。丁度、目が合ったので俺がよろしく、と軽く礼をしたら、それだけで山田先生は嬉しそうに微笑んだ。
「コホン、それではまず最初に自己紹介をして貰いますね。出席番号順に進めますので、出席番号1番の相川清香さんから、お願いします」
「あ、はい!」
こうして自己紹介がスタートした。
「はい、ありがとうございます。次、織斑君お願いします」
「・・・・・・」
「織斑君? 織斑一夏君!?」
「あ、はい!」
「ごめんね。自己紹介織斑君の番なんだけど、大丈夫?」
「あ、はい、すいません!」
織斑は勢い良く立ったはいいが、かなりテンパッているようで何も出て来ないらしい。たっぷり30秒過ぎた頃、ようやく口を開き、
「えー、織斑一夏です。よろしくお願いします」
「「「「・・・・・・」」」」
「以上です」 ガタンッ!
クラス全員が注目する中、名前を言うだけの自己紹介をする織斑に、期待を外されコケる娘が大勢いた。散々時間を使ってあれじゃ・・・・すると、
───バシンッ!
とても痛そうな音が教室内に響いた。
「全く、自己紹介もまともに出来ないのかお前は」
「げっ、ち、千冬姉!」
「ここでは織斑先生だ、バカ者」
再びバシンッとおよそ出席簿が出してはいけない音を出して織斑を沈めると、織斑千冬が教壇に立つ。
「諸君、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。私の役目は諸君らを1年間で使えるように鍛え上げる事だ。私の指導についてくれば、1年後には一端のIS乗りにしてやる。授業を良く聞いてしっかりついて来るように。以上だ」
もの凄い上から目線の挨拶が終わった途端、
「「「「きゃああああああっ!!」」」」
女生徒達の絶叫が響き渡った。
彼女達は我先にと千冬にアピールするが、去年もあった事なのか呆れ気味の千冬。辛辣な言葉をかけるも、それさえイイらしく、更にテンションを上げる彼女達。
最期には、調子に乗った彼女達を殺気で黙らせる千冬。これを浴びては流石に彼女達も静まって、織斑の自己紹介から始まった一連のコントはようやく終わったようだ。いや、端から見てると本当にコントに見えたんだよ、コレ。
「お疲れ様です、織斑先生。会議は終わったんですね」
「ああ、任せっきりですまないな山田先生。どこまで進んだかな?」
「自己紹介の途中なのですが・・・・」
山田先生がチラリと備え付けの丸時計を見る。
「ああ、もう時間か。仕方ない、後は午後に回そう。その前に、結城!」
いきなりご指名が来た。
「はい?」
「皆、気になっているだろうからな、お前だけ先に自己紹介しろ」
「はい」
俺は席を立つと、周りを軽く見る。大半が受け入れてくれてるのか興味深そうに見ているが、数名睨みつけている娘もいる。彼女らは女尊男卑主義者のようだから気を付けよう。それと織斑が驚いた顔をしていた。どうやら俺がいる事に初めて気付いたようだ。どれだけテンパッていたのか・・・・さて、自己紹介を始めよう。
「皆さん、初めまして。俺は結城志狼。巷では2人目の男性操縦者と呼ばれています。年は18で、本来は高校を卒業して大学生になるはずだったんだが、適性検査でISを動かした為、この学園に入学して皆と机を並べる事になりました。年上の男だからと言って、構えず、気軽に接して下さい。1年間よろしくお願いします」
俺が自己紹介を終えると、皆が拍手をしてくれた。
「全く、これが自己紹介というものだ。少しは見習え」
「うう、面目ない」
織斑の情けない声と共にチャイムが鳴る。
「それでは各自昼食を摂れ。午後からは授業がある。IS学園は時間厳守だ、遅れるなよ」
そう言うと先生達は教室を出る。
さて、昼食だ。俺は、
「しろり~ん、お昼行こ~」
「ああ、行こうか」
本音達に誘われて食堂へ行こうとすると、
「
可憐な声が俺の足を止めた。その声の持ち主を思い浮かべ、振り向くと、
「ああ勿論。久し振り、綺麗になったねセシリア」
「はい! お久し振りです、志狼さま!」
そこには金髪碧眼の美しい少女、セシリア・オルコットが輝くような笑顔を浮かべていた。
自分では志狼のCVは中村悠一さんをイメージして書いています。