二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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明けましておめでとうございます。

2019年最初の投稿です。

今回はタイトル通り対ゴーレム戦、主人公サイドの話です。

明日奈の専用機もやっと登場する第30話、ご覧下さい。




第30話 クラス対抗戦⑤~決戦(表)

 

 

~all side

 

 

 

 中央アリーナ管制室は慌ただしい空気に包まれていた。

 

「どうなっている!? 何故あんなモノが学園の警戒網をくぐり抜けて進入しているんだ!!」

 

「分かりません! 突如中央アリーナ上空に出現したとしか。レーダーには先程まで何の反応もなかったんです!」

 

「くっ、ステルス機能まで備えているのか!? 止むを得ん、アリーナ全域に避難警報を出せ! 生徒達の避難を最優先とする! それと、鎮圧の為に教師部隊に出動を要請しろ!!」

 

 極めて悪い状況の中、事態を解決しようと千冬の指示が飛ぶ。しかし、

 

「織斑先生、駄目です! 観客席の扉がロックされてる上に警報が鳴りません!!」

 

「何だと!? どう言う事だ!?」

 

「どうやら何者かのハッキングを受けたようです。現在こちらからのアクセスを全く受け付けません!」

 

「織斑先生! 教師陣から連絡です! 格納庫の隔壁が下りていて、ISが出動出来ないそうです!!」

 

「何だと!?」

 

「織斑先生、中央アリーナだけでなく、現在学園の至る所の隔壁が下りて、外部からの救援が困難となっています。どうしますか?」

 

(学園のファイヤーウォールをくぐり抜けハッキングするだと? そんな事が出来る奴は2人しかいない。藍羽とは思えない。だとすればお前なのか、束!?)

 

 千冬はこの事態を引き起こしたのが何者か、正解にたどり着くも、出来る事のなさに歯噛みをする。

 その時、管制室に通信が入った。

 

『管制室、こちらアリーナの結城です。侵入者についての情報は何かありませんか?』

 

「結城、織斑だ。侵入者の様子はどうだ?」

 

『はい、アリーナ上空のシールドバリアを破り、侵入した3機のISはアリーナ上空にとどまったまま、動きがありません。私見ですがまるでこちらの出方を伺っているように見えます。それと観客席に避難警報は出してないんですか?』

 

「・・・・結城、良く聞いてくれ。現在学園は何者かのハッキングを受けて、こちらからのアクセスを一切受け付けない状態だ。加えて各扉がロックされて避難も救援も出来ん。所謂最悪の状態だ」

 

『・・・・ハア、つまりこいつらが動き出したら俺と簪の2人で何とかするしかないと言う事ですか』

 

「そう言う事になる。現在コントロールを取り戻そうと開発科や整備科の3年生を中心に色々試しているが、今の所芳しくない」

 

『成る程。では──! 織斑先生、状況が動きました。3機中2機がこちらに向かって来ます。交戦許可を!』

 

「許可する! 出来るなら撃墜しても構わんが自分達の身を守る事を第一に心掛けろ!!」

 

『了解!』

 

 その声を最後に志狼からの通信が切れた。そして、

 

「織斑先生、侵入した2機が孤狼と華鋼に攻撃を仕掛けました! 戦闘状態に突入します!!」

 

「くっ、現時点を持って侵入した3機を敵性機体と判断し、撃墜の対象とする! コールサインはエネミー1、2、3と呼称する!」

 

「「「了解!!」」」

 

 アリーナ上空で始まった戦闘の様子を見ながら、千冬は事態を解決すべく、外部と連絡を取ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う事だ」 

 

「随分と用意周到ですね。状況最悪じゃないですか」

 

 アリーナ上空。千冬との通信内容を志狼から聞いて簪は憤慨していた。

 

「確かにな。だが後手に回ってしまった事実は今更どうしようもない。俺達でやるぞ、簪」

 

「はい。取り敢えずは向かって来る奴を迎撃すればいいですよね?」

 

「ああ、但し先程のビームを観客席に撃たれないよう気を付けよう。下手すれば観客席のシールドバリアまで破られかねないからな」

 

「了解です」

 

 簪はそう言うと、夢現をコールして華鋼に向かって来るエネミー2と対峙する。それを確認して志狼も自分に向かって来るエネミー1に攻撃を仕掛ける。

 

「行くぞ!」

 

 エネミー1に対してヴァリアブル・ナックルを繰り出す孤狼。しかしエネミー1は孤狼の前で急停止すると、方向転換をして孤狼の横に回り込み、至近距離から手にした大剣を孤狼に振り降ろす。だが志狼は孤狼を瞬間的に加速させ、エネミー1の懐に張り付くと、その至近距離から腰の回転だけで拳撃を繰り出しエネミー1にダメージを与える。

 

「くっ、やっぱり空中じゃ踏み込みが効かないせいで威力が弱い!」

 

 本来なら今の一撃は腰の回転に加え、地面に踏み込む事で全身の力を余す所なくぶち込む必殺の一撃になる筈なのに、空中で踏み込みが出来ない事で牽制程度の威力しか出せず、思惑が外れてしまった。

 以前から空中戦で力が充分に伝わらない事に苦悩していた志狼だったが、ここに来て格闘戦型ISである孤狼の短所が浮き彫りになってしまった。

 

「地上戦に持ち込みたい所だが、空を飛べるISで地上戦って、無いよなあ」

 

 戦闘に於いて頭上を取る事がどれだけ有利かは自明の理だ。となれば、

 

「叩き落とすしかないか」

 

 志狼は方針を決めると、再びエネミー1に向かって行った。

 

 

 

 

 

「くっ、こいつやっぱり高機動型!?」

 

 エネミー2と対峙する簪はエネミー2のスピードに翻弄され、苦戦していた。華鋼と同じ高機動型のエネミー2相手では春雷や山嵐などの高火力兵装を使っても当てる事は難しい。更に自分より速い相手に簪は後手に回り、攻めあぐねていた。

 

(それにしても私には高機動型、志狼さんには近距離戦型、自分と同じタイプの相手が向かって来るなんて偶然? そうじゃないなら何が狙いなの?)

 

 自分と同じタイプの、自分より一枚上を行く相手との戦闘。それはまるで、

 

(まるでこちらの力を測ってるみたい。嫌な感じ)

 

 そんな時、志狼から通信が入る。

 

『簪、一旦合流しよう』

 

「了解です」

 

 簪はエネミー2が離れたのを見計らい、志狼と合流する。

 

 

 

 

「簪、奴らの動きをどう見る?」

 

「気持ち悪いです。まるで私達の力を測っているみたい」

 

「同感だ。どこかの国が偵察の為に送り込んだのか?」

 

「・・・・それは無いと思います。仮にどこかの国家が裏で糸を引いてるとしたら、バレた時のリスクが大きすぎます」

 

「だよなあ。ならこいつらはどこの手の者だ?」

 

「現時点では何とも。ただ、私達のデータを集めているのは間違いないかと」

 

「その根拠は?」

 

「私達の撃墜が目的ならすぐにでも攻撃して来るはずです。でも、こうして相談してる間は様子を見てるようで動きがありません」

 

「・・・・成る程。もうひとつ気になる事があるんだが、あれ人が乗ってると思うか?」

 

「どう言う事です?」

 

「俺の相手をしてた方の腹をぶん殴ったんだが、かなりの衝撃があった筈なのに何事も無かったように反撃して来たんだ」

 

「それが何か?」

 

「孤狼の拳撃を食らったら、普通は衝撃で操縦者の方にダメージがあって、動きを止めるものなんだが」

 

「それが無かったと・・・・そう言えば私が相手した方もかなり無茶な機動をしてました。相当腕の良い操縦者かと思ってましたが、あれに人が乗ってないと言うなら納得出来ます」

 

「自分で言っておいて何だが、無人機って可能なのか?」

 

「分かりません。どこかで研究しててもおかしくありませんけど・・・・」

 

「なら聞いてみるか」

 

 その言うと志狼は通信を開いた。

 

 

 

 

 

 中央アリーナ管制室。事態を解決する為にそこにいる者達は懸命に作業を進めていた。

 

「ああ、そうだ。後はお前次第だ。ああ、構わん。責任は私が取る、やってくれ」

 

 千冬はそう言うと携帯を切った。すると、

 

『織斑先生、オルコットです。観客席でパニックが起きています。早く扉を開けて下さい!』

 

「・・・・オルコット、良く聞け。現在学園は何者かのハッキングを受け、一切アクセス出来ない状態だ。事態の収拾にはもう少しかかる。何とか押さえられないか?」

 

『そんな!? 無理です! このままではパニックから怪我人が出かねません。最終手段として扉を破壊しても?』

 

「扉を破壊してもその先の隔壁も閉じられているから避難出来んのだ。狭い通路で万が一崩れでもしたら怪我人ではすまなくなる。許可は出来ん」

 

『・・・・了解しました。出来るだけ宥めてみますが、効果は期待しないで下さいね』

 

「・・・・すまん。よろしく頼む」

 

 セシリアとの通信を切ると、千冬は自分の無力さに歯噛みした。

 

(何が頼むだ! 生徒に無茶振りしておいてそれでもお前は教師か、千冬!!)

 

 そんな千冬にまたも通信が入る。

 

『織斑先生、こちらEピット、結城明日奈です。実はアリーナ側の通用口が何とか開きそうなんです』

 

「何!? そうか。だが、外は危険だ。そのまま待機していろ」

 

『いえ、先生にお願いしたいのは私に出撃許可をいただきたいんです』

 

「・・・・兄の加勢に行きたいのか」

 

『はい。私の専用機なら侵入者と互角以上に戦えます。今、機体のデータを送りますからそれを見て判断して下さい』

 

 千冬は送られたデータを見て、驚愕する。

 

「明日奈、このデータ本当なのか?」

 

『はい。嘘偽り無く』

 

「・・・・いいだろう。結城明日奈、お前に出撃許可を与える。兄を助けに行ってやれ」

 

『はい! ありがとうございます!!』

 

 明日奈からの通信が切れる。

 

(ほんの少しだけだが希望が見えて来た。後は───)

 

 そう思った千冬だったが、今度は管制室に志狼から通信が入る。

 

『管制室、こちらアリーナで戦闘中の結城です。ちょっと調べて欲しい事があります』

 

「どうした結城。何事だ?」

 

『侵入者は無人機の可能性があります。生体反応をそちらで探ってくれませんか?』

 

「無人機だと!? 一体何を根拠に?」

 

 志狼は先程簪と話した内容を説明する。それを聞いた千冬は、

 

「成る程。それなりに根拠はあると言う事か

・・・・真耶! エネミー各機をスキャンしろ!」

 

「今やってます・・・・・・出ました! エネミー各機に生体反応は・・・・ありません!!」

 

 真耶の声に管制室にいる全員が驚愕した。無人機が実在すると言う事実が信じられなかったのだ。だが、そんな中で千冬は、

 

(無人機なんてものを作れるのは1人しかいない。やはりお前か、束!!)

 

 疑惑が確信に変わった。とは言え束が犯人だと言うなら目的は何なのか? 思考の迷路に入り込もうとした時、

 

『無人機と言う事は、思いっ切りやっても問題は無いと言う事ですね』

 

 妙に嬉しそうな志狼の声が聞こえた。その事を聞いて千冬は思わず苦笑する。

 

「フッ、あまりやり過ぎるなよ。それと間もなく明日奈が増援として出る。3人で事に当たれ」

 

『明日奈が!?・・・・了解です』

 

 志狼が通信を切った。

 

「後はコントロールさえ取り戻せれば、頼むぞ藍羽・・・・」

 

 今の千冬には先程の電話相手、藍羽浅葱に期待するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「と言う事で間もなく明日奈が増援に来るそうだ。でもその前に1機落としてしまおう」

 

「何か作戦でも?」

 

「ああ・・・・・・・・と言う作戦だ」

 

「危険です! 一歩間違えば志狼さんまで・・・!」

 

「俺は大丈夫。だからいざと言う時、躊躇うなよ」

 

「志狼さん!」

 

「簪、俺を信じてくれ。俺もお前を信じる」

 

「志狼さん・・・・ハア、ズルいです。そんな事言われたら断れないじゃないですか。分かりましたよ、もう!」

 

「悪いな・・・・よし、行くぞ!」

 

 そう言うと志狼はエネミー1に向かって行く。自分に向かって来る孤狼を感知したエネミー1も大剣を構えて孤狼を迎え撃とうとする。

 空中で交差する2機。志狼は孤狼をエネミー1に張り付かせたまま、至近距離からの攻撃を繰り返し、エネミー1の大剣を思うように振れなくする。

 一方、エネミー1が孤狼に向かったのに合わせ、エネミー2も華鋼に攻撃を仕掛ける。孤狼らと違い、この2機の戦いは距離を置いての追いかけっことなった。逃げる華鋼をエネミー2が追う。しかし、スピードではエネミー2に分があるのか、徐々に追いつめられて行く華鋼。

 やがて戦いの構図は、アリーナ中央で戦う孤狼とエネミー1の周りを華鋼とエネミー2が飛び回ると言う展開になっていった。

 

 

 そんな中、戦いながらアイコンタクトでタイミングを量る志狼と簪。そして、

 

((───今だっ!!))

 

 華鋼が孤狼の真上に位置した時、孤狼はエネミー1の背後に回り込み、羽交い締めにして動きを封じる。

 

「簪、撃てええええーーーーっ!!」

 

「!!」

 

 志狼の叫びに応じて、華鋼が春雷で孤狼ごとエネミー1を撃つ。

 春雷の威力に大ダメージを受け落下する孤狼とエネミー1。

 味方を巻き込んだ華鋼の攻撃に観客席から悲鳴が上がる。

 しかし、ダメージを受けたかと思った孤狼は次の瞬間、体勢を整え、落下するエネミー1へ加速する。

 

「ステーク、行けえええーーーー!!」

 

 志狼はリボルビング・ステークを右腕にコールすると、孤狼の加速に落下速度を加えて威力を増した一撃を叩き込んだ。

 響いた衝撃音は6度。ステーク全弾をぶち込んだ攻撃はエネミー1のシールドバリアを貫通し、エネミー1を文字通り粉砕した。

 

 

 

 

 

 中央アリーナ管制室に歓声が響いた。

 エネミー1を撃破した孤狼に、作業をしていた生徒達がその手を止めて、歓声を上げているのだ。

 

 そんな中、千冬は華鋼の春雷をエネミー1ごとその身に受けたはずの孤狼が何故無事なのか考えていたが、

 

「良かった。孤狼のABフィールドは上手く機能したみたいですね」

 

 真耶のその言葉に千冬はようやく孤狼が無事だった理由を思い知った。

 

「そうか、ABフィールドがあるからこその戦法か。とは言え、随分と思い切ったものだな?」

 

「全くです。志狼君ったら危ない真似をして、後でお説教なんだから」

 

 志狼を心配するあまり、プリプリ怒っている真耶に千冬は苦笑する。

 

「程々にしてやれよ。しかし、分かっていたとは言え、本当に無人機とはな・・・・」

 

 胴体に穴を空け、完全に機能停止したエネミー1を見て、千冬は呟いた。

 

(束の奴、あんなものを作って一体どうする気だ?)

 

 千冬は束の思惑を考えようとして、やめた。昔から束の考える事など誰にも分からないのだから考えるだけ無駄と気付いたのだ。そして、そんな事を考えてる内に事態が動いた。エネミー2と戦闘中の華鋼が被弾したのだ。

 

 

 

 

 

「志狼さん、やった!」

 

 エネミー1を撃墜した志狼に簪は喜びの声を上げた。志狼から作戦を聞いた時には危険すぎると反対したが、上手くいったようでホッとした。

 しかし、簪はここでミスを犯す。戦闘中だと言うのに思わず動きを止めてしまったのだ。戦闘中に動きを止めれば的になるだけ。華鋼はエネミー2の砲撃を受け、被弾してしまう。

 

「! しまった!!」

 

 体勢を崩し、落下する華鋼にエネミー2はビーム砲の砲口を向ける。回避しようとした簪だが、避ければビームが観客席に当たる角度であった為、避けるのを止めて、春雷で相殺しようとする。

 

「!!」

 

 春雷とエネミー2のビームが真正面からぶつかる。威力を相殺し合う中、勝ったのはエネミー2であった。

 

「くああああっーーーっ!!」

 

 相殺し切れなかったビームが華鋼を掠める。ビームは華鋼のSEを削りながら、観客席のシールドバリアに直撃する。

 

「「「「きゃああああーーーーっ!!」」」」

 

「! しまった!!」 

 

 シールドバリアは明滅しながらも、辛うじて破れなかった。しかし、それが観客席の生徒達のパニックに拍車をかけた。彼女達は我先にと出入り口に殺到し、開かない扉を叩く。泣き声や喚き声、怒号が飛び交い、セシリアらが何とか宥めようとするも、然したる効き目は無かった。

 

 

 

 

 

 

 中央アリーナEピット。ロックされた出入り口を皆で協力して何とか人1人通り抜けられるだけの隙間を確保出来た。早速明日奈が通り抜けようとしたが、明日奈は途中で引っ掛かっていた。

 

「ん~~~! 何で引っ掛かるの~~!? 同じくらいの背丈のスバルは抜けられたのに~~!!」

 

「それは、まあ」

 

「あすにゃんの方が引っ掛かる所が多かったって事だよね~~」

 

「うう、どうせ私は・・・・」

 

 隙間が開いた時、明日奈とほぼ同じ背丈のスバルが通り抜けられる事を確認したのだが、いざ明日奈が通り抜けようとすると、つっかえてしまった。

 

「全く、無駄にスタイルが良いのも考え物です、ね!」

 

「本当よね、全くもう!」

 

 ヴィシュヌとティアナが明日奈を押しながら呟く。

 

「痛たたた! 2人には言われたくない~~~! んあっ!!──で、出られた」

 

 2人に押されて、ようやく抜け出せた明日奈。

 

「ハア、ほら、早く志狼を助けてらっしゃい!」

 

「相手は未知数の敵です。気を付けて」

 

「うん! ありがとう、行って来ます!」

 

 ティアナとヴィシュヌに激励されて、明日奈が駆け出す。

 アリーナに出た明日奈が見たのは危機に陥った華鋼の姿だった。

 

「かんちゃん!? 行くよ『閃光』!!」

 

 明日奈が首から下げた赤いネックレスを手に叫ぶ。

 眩い光に包まれて明日奈が自らのISを纏う。今、閃光が空を翔る。

 

 

 

 

 

「簪! くそっ、間に合わない!?」

 

 志狼は簪の危機に孤狼を疾らせるが、距離が離れすぎていて間に合わない。その時、華鋼に向かう光を志狼は見た。

 

「あれは・・・・!?」

 

 華鋼にとどめを刺そうと迫るエネミー2は、自らに高速で迫る機体を感知する。それはスピードに特化した自分以上のスピードで迫って来て、自分と華鋼の間に割り込んだ。

 全身が白く胸部を青に染められた機体は、各部の装甲を操縦者自身が装着している為、従来のISより一回り小さく見える。右手にライフル、左手にシールドを装備し、背面のバックパックには長大な6枚の翼があった。

 

「選手交代よ。アナタの相手は私がするわ!」

 

 明日奈は簪を守るようにシールドを構える。

 

「あ、明日奈?」

 

「かんちゃん、後は私に任せて休んでて」

 

 明日奈は簪にウインクを飛ばす。

 

「・・・・それが貴女の?」

 

「ええ、私の専用機『閃光(せんこう)』よ!」

 

 明日奈が手にしたライフルをエネミー2に向けて、撃つ。一条の光がエネミー2を掠めると、エネミー2は慌てたように距離を取る。しかし、明日奈はそれを逃さずエネミー2を追う。

 

 

「今のって、まさかビームライフル!? 実用化されてたなんて・・・・」

 

「簪! 大丈夫か?」

 

 明日奈に遅れる事数秒、志狼がやって来た。

 

「・・・・志狼さん、私は大丈夫。明日奈が助けてくれました」

 

「そうか・・・・あれが明日奈の」

 

「はい。明日奈の専用機『閃光』です」

 

 簪の視線の先には空中戦を繰り広げる2機の姿があった。高機動型であろう閃光のスピードはエネミー2を凌駕しており、段々と追いつめて行くのが分かる。

 閃光のスピードもさる事ながら、驚くべきは手にしたビームライフルだ。ビームとは所謂荷電粒子砲の事で、現在出回っているレーザー兵器とは一線を画す代物だ。閃光のビームライフルは武装として小型化され、速射性と連射性に優れ、扱い安さで言えば春雷以上の物となっている。

 技術的な問題で、研究されてはいるが実用化には程遠いと言われていたのだが、どうやら実用化に成功したようだ。

 

 

 

 

 

 明日奈は閃光を操り、エネミー2を追いつめながら地上を見る。観客席では相変わらずパニックが起きていて、所々怪我人も出ているようだ。

 

「あまり時間は掛けられないか。一気にけりを着ける! 閃光『V-MAX』発動!!」

 

『Ready』

 

 機械音声が聴こえると、閃光の機体各部のスリットから一条の光が疾る。その光が全身を覆いつくし、閃光の機体は光の繭に包まれた。

 光の繭に包まれた閃光は更にスピードを上げて、あっと言う間にエネミー2に追いついた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・何と言うスピードだ。機体データは見たがこれ程とは」

 

 千冬の目の前ではあれ程のスピードを誇ったエネミー2が足を止め、閃光の突撃になす術なく翻弄されていた。

 閃光の突撃を受け、弾き飛ばされたエネミー2は、その先に回り込んだ閃光に再び弾き飛ばされる。圧倒的スピード差故に何度も繰り返されるその光景は、まるでアニメのようで現実感を感じなかった。

 

「あれが閃光の第3世代兵装『V-MAXシステム』ですか・・・・元は緊急脱出用のシステムだったものを見事に攻撃に転用してますね」

 

 真耶の言葉に千冬が頷いた。

 

「正に『閃光』。あいつに相応しい機体だな」

 

「はい。所で明日奈さんってあれが無人機だと知ってるんでしたっけ?」

 

「! いや、無人機だと判明したのはあいつに出撃許可を出した後だ! いかん、すぐ知らせなくては!!」

 

 千冬は慌てて明日奈に通信を入れた。

 

 

 

 

 

『明日奈、そいつらは無人機だ。完全に破壊してしまって構わん!』

 

「無人機!? 実在するんですか!?」

 

『信じられんだろうが本当だ。だから躊躇するな』

 

「了解です!」

 

 明日奈は拡張領域から細剣型近接ブレード「ランベントライト」をコールし、構える。

 

「行くよ、閃光!」

 

 光に包まれ、エネミー2に突撃する閃光。その猛スピードに反応する事も出来ず、エネミー2のボディにランベントライトの剣先が突き刺さり、

 

「はああああーーーーっ!!」

 

 そのまま突き抜けた。

 

 

 閃光を包んでいた光が消え、機体に篭った熱が音を発てて排出される。

 閃光が通り過ぎた後には真っ二つになったエネミー2が空に大輪の花を咲かせ、爆発音がアリーナに轟いた。

 

 

 

 

「よし!!」

 

「やったあ! あすにゃん凄~~い!」

 

 エネミー2を倒した閃光を見て、ティアナと本音が歓声を上げる。

 

「あれが明日奈の専用機・・・・見事なものですね」

 

「うん、びっくり」

 

 ヴィシュヌと紗夜も称賛を送る。

 

「これで残るは1機だけだね!」

 

 スバルの声にその場にいる者達は最早、勝利を疑わなかった。

 

 

 

 

 

「皆さん! 落ち着いて下さい! 既に2機が倒されました。残るは1機が倒されるのも時間の問題です! どうか落ち着いて、もう少しの間辛抱して下さい!!」

 

 観客席ではセシリアが声を上げて、パニックを起こした生徒達を宥めようと頑張っていた。

 先程までパニックを起こしていた生徒達も、2機目が倒された事で少しは落ち着いたのか、沈静化の兆しが見えて来た。

 

「セシリア! 取り敢えず怪我人は連れ出して、出来る範囲で手当てはしておいたぞ」

 

「箒さん、神楽さん、ご苦労様です。何人いました?」

 

「幸い骨折などの重傷者はいなかった。転んで打撲した者や擦り傷切り傷などの軽傷者が20人程だ」

 

「クラスの皆さんの様子は?」

 

「うちのクラスは大丈夫。他のクラスにもなるべく声をかけて落ち着かせるようにしています」

 

「ありがとう、助かります」

 

「私達の事よりお前は大丈夫なのか、セシリア?」

 

「ええ、正直参りましたわ。ですが、あそこで戦っている志狼さま達に比べれば」

 

「強いのね、セシリアは」

 

「いいえ、(わたくし)は信じているだけです。志狼さま達がこの状況を必ず何とかして下さると」

 

「セシリア・・・・そうだな、私も信じよう。志狼達を」

 

 箒はそう呟くと、アリーナ上空の志狼達を見上げた。

 

 

 

 

 

「明日奈、やったな!」

 

「凄かったよ、明日奈!」

 

「兄さん、かんちゃん、やったよ!」

 

 アリーナ上空で志狼達は明日奈の勝利を喜び合った。

 

「と、喜ぶのはここまでだ。まだ終わってないんだからな」

 

 志狼は未だ動かないエネミー3を見て言った。

 

「そうですね」

 

「うん。でも何で動かないんだろうね、アレ」

 

「恐らく情報収集用の指揮官機なんだと思う。このまま退いてくれたらいいんだけど」

 

 その時、エネミー3が動きを見せた。志狼達に向かって来たのだ。迫るエネミー3を迎え撃とうとその前に孤狼が立ち塞がる。

 

「2人共、散れ!」

 

 志狼の号令に明日奈と簪は左右に別れて距離を取る。

 

「明日奈、貴女もうエネルギーがないんじゃ!?」

 

「大丈夫! 今、換装するから! 換装、

『ソードシルエット』!!」

 

 明日奈の声に閃光のバックパックと装備が消え、一瞬の後、先程とは別の2本の長大な剣を装備したバックパックに換装される。すると、閃光の姿が全身の白はそのままに胸部が赤に変わった。

 すると、残りわずかだった閃光のエネルギーが回復したのだ。

 

 

 

 ───用途別兵装換装システム

    「シルエットシステム」

 

 

 閃光専用の特殊システム。用途別に作られた「シルエット」と呼ばれるバックパックを換装する事により、あらゆる戦場に対応する事を目的としたシステム。

 現在、高機動型の「フォース」、近接戦闘型の「ソード」、遠距離砲戦型の「ブラスト」の3つがあり、それぞれを用途によって使い分ける。

 また、SEが残りわずかになってもシルエットを換装するとSEが回復する為、継戦能力にも優れている。

 

 

 

 明日奈はシルエットを「フォース」から「ソード」に換装し、バックパックから2本の長大な剣「エクスカリバー」を抜き、連結させると孤狼の加勢をしようと前に出る。

 

「かんちゃんは援護をお願い!」

 

「了解!」

 

「兄さん、加勢するよ!」 

 

「明日奈! こいつ凄いパワーだ、気を付けろ!!」

 

 エネミー3は丸太のように長く太い腕を振り回しており、流石の孤狼も懐に入る事が出来ずにいた。

 明日奈はエネミー3の背後に回り込むとエクスカリバーで斬りかかる。その時、エネミー3の腰が180゚回転して、斬りかかろうと剣をかざしていた閃光のボディに振り回した腕が直撃して、閃光を吹き飛ばす。

 

「きゃあああーーーっ!!」

 

「明日奈! 貴様ああーーーっ!!」

 

 妹をやられて逆上したのか、志狼が珍しく、ただ孤狼を突っ込ませる。しかし、再び腰を180゚回転させたエネミー3は遠心力を加えた一撃を孤狼に叩き込む。

 

「ガハッ!!」

 

 その一撃で地表まで吹き飛ばされる孤狼。エネミー3は倒れた孤狼に追撃のビームを放つ。

 

「!!」

 

 咄嗟に孤狼のバーニアを吹かし、孤狼は迫り来るビームを間一髪で回避した。

 そして、その光景を見た観客席の生徒達は、再びパニックを起こした。 

 

 

 

 

 

 織斑一夏は目の光景に憤慨していた。

 

(何だこれは? この光景を見て一体誰が女は男より強いなんて言えるんだ?)

 

 一夏はパニックを起こし、我先にと開かない出入口に殺到する生徒達を見ていた。泣き喚き、争い罵り合う。先程より酷くなって、セシリアらが必死に宥めようとするも、誰も聞く耳を持たなかった。

 

(目の前にいるのは何の力も持たない哀れな女達だ。結局強いのはISと言う力を持つ者だけで、女が男より強くなった訳じゃないんだ。そうだ、やっぱり俺が正しかったんじゃないか!)

 

 一夏は改めて周りを見渡すと、決意する。

 

(結城ではアイツは倒せない。アイツを倒すには一撃必殺の強い力を持つ者じゃなければ駄目なんだ。そう、例えば零落白夜を持つ俺のような!)

 

 一夏は観客席の最前列まで歩いて行く。

 

(ここで俺がアイツを倒せばきっと皆俺の事を見直すに違いない。千冬姉も、箒も、クラスメイトも、そして明日奈も───!)

 

 最前列にたどり着いた一夏は右腕の腕輪をかざして己がISを喚ぶ。

 

「来い、白式!!」

 

 光に包まれ、白式を纏った一夏は、静かに雪片弍型を抜いた。

 

 

 

 

 

 その事に最初に気付いたのは箒だった。パニックを避ける為、出入口から離れた所にクラスメイト達といた彼女は、人の流れと違う方向に歩いて行く人を見つけた。

 

(一夏? 一体何を───?)

 

 訝しんで見ていると、最前列にたどり着いた一夏は突然白式を纏い、剣を抜いた。その時になって箒は一夏のしようとしている事が分かった。

 

「やめろ、一夏あああーーーっ!!」

 

 咄嗟に叫んだが既に遅く、零落白夜を発動させた白式が観客席のシールドバリアを斬り裂いた。一瞬の後、観客席のシールドバリアは消滅し、アリーナに吹く風が観客席に入り込む。

 それは戦場の風。すぐ側にある破壊された敵機から流れる油の匂い。ビームで焼け焦げた地表から発する熱気とイオン臭。今までシールドバリアに遮られて感じなかったものが風に乗って一挙に流れ込んで来た。

 そして、生徒達のパニックは頂点に達した。

 

 

 

 

 

 志狼が、千冬が、箒が、セシリアが、明日奈が、簪がこの時、同じ思いを抱いた。すなわち、

 

((((───あのバカ、何て事を!!!))))

 

 

 

 だが、そんな事に気付かない一夏は白式で空に舞い上がる。

 

「明日奈、今、俺が行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 中央アリーナ管制室。その場にいた者達は皆、唖然としていた。織斑一夏が避難する事が出来ない現状で、生徒達を守っていたシールドバリアを内側から斬り開くと言う自殺行為を仕出かしたのだ。しかも、当の本人は後の事は知らんとばかりに上空の明日奈達の元へ勝手に飛んでいってしまった。これで唖然とするなという方が無理な話だ。

 

「一夏・・・・お前という奴は何て事をしてくれたんだっ!!」

 

 一夏の姉であり、担任でもある千冬はその場で崩れ落ちた。志狼との模擬戦以降大人しくしていたから少しは落ち着いたのかと思いきや、何にも変わってなかった弟に流石にショックを受けていた。

 そんな時、千冬の携帯が鳴った。携帯を取り出し相手を見ると、千冬は飛び起きて携帯に出る。

 

「藍羽! 終わったのか!?」

 

『! は、はい! お待たせしました。思ったより時間がかかりましたが、今、終わりました。スイッチひとつでコントロールを取り戻せますが、どうします?』

 

「やってくれ! 大至急だ!!」

 

『了解です』

 

 浅葱が返事をすると、管制室の電源が消えて、次の瞬間、電源が点くと、メインコンソール席の真耶が直ぐ様状況をチェックする。

 

「・・・・織斑先生! 全て異常なし、完全にコントロールを取り戻しました!!」

 

 管制室に歓声が上がると、生徒達も次々と空いているコンソール席に座り、状況を確認し始める。

 

「藍羽、感謝する。報酬についてはまた後日に。観客席に継げ! 私が直接話をする。マイクを!」

 

 携帯を切ると、生徒から渡されたマイクを手に千冬が話し始める。

 

 

 

 

 

 

 中央アリーナ観客席で、セシリアはほとほと困り果てていた。パニックを起こしていた生徒達を何とか宥めて一時は沈静化したと言うのに、三たび起こったパニックは決定的で、もう手の施しようがなかった。

 特にシールドバリアが破られたのが痛かった。これが敵機の攻撃で破られたのならまだ諦めもついたが、破ったのが生徒、しかもクラスメイトであるのだから、セシリアが脱力するのも無理はないだろう。そんな時、観客席のスピーカーから千冬の声が聴こえて来た。

 

 

『観客席の生徒諸君並びにマスコミ各員に告げる。私は織斑千冬だ。今から出入口のロックを解除する。速やかに避難せよ。繰り返す───』

 

 

 その声を聴いたセシリアは慌てて千冬に通信を開いた。

 

 

「織斑先生、オルコットです! 全ての出入口を一度に開放するのはやめて下さい!」

 

『オルコット? 何故だ!? 皆を速く避難させねばならんと言うのに何故止める!?』

 

「お忘れですか!?出入口の先の通路は狭いんです! そんな所に一斉にこれだけの人が入れば身動きが取れなくなりますわよ!!」

 

『!! そ、そうか。では、どうするか──!?』

 

「開放する出入口は両端の2ヶ所だけにしてはいかがでしょう。そこからなら最寄りの階段も別々ですから途中で詰まる事もない筈です」

 

『成る程・・・・ではオルコット、お前に避難指揮を任せる。速やかに全員を避難させろ』

 

(わたくし)がですか!?」

 

『人手が足りんのだ、悪いがそちらは任せる。責任は私が取るからお前の好きなようにやれ。合図があり次第扉を開放する。頼んだぞ』

 

「くっ、了解!」

 

 なし崩しに避難指揮を執る事になったセシリアだったが、自分1人でこの難局を乗り切るのは無理だと判断した彼女は、素直に友人達の力を借りる事にした。

 

 

 

「皆さん、聞いて下さい! (わたくし)はイギリス代表候補生序列3位、セシリア・オルコットです! 織斑先生から避難指揮を執るよう命じられました。皆さんには今から(わたくし)の指示に従って避難していただきます!!」

 

 突然観客席に響いた声に訝し気な表情を見せながらも生徒達はセシリアに注目する。

 

「今から両端の出入口を開放します。そこにいる(わたくし)のクラスメイトの指示に従い避難して下さい。扉の前に2列に並んでお待ち下さい。尚、怪我人が優先です。怪我をしている方は列の前に移動して下さい!」

 

 マイクも使わずに観客席中に声を響かせるセシリア。彼女の言う通り、片方の出入口には神楽とナギ、癒子が、もう片方には箒と静寐、清香の姿があった。

 彼女らの指示に従って列を作る生徒達の中、それでも我先にと並んだ列を乱す輩はやっぱりいた。そんな輩に向かって、セシリアは部分展開したBTのレーザーを足下目掛けて撃つ。

 足下を掠めて疾るレーザーに全員が一瞬、声を失う。

 

「いい加減になさい! 先程からの自分勝手な振る舞い、見苦しい事この上ない! 貴女方はそれでも栄えあるIS学園の生徒ですか!? この学園に入学したのならこの程度の危険がある事は覚悟していた筈です。ならばこの学園の生徒らしく毅然とした態度をお見せなさい!!」

 

 その場にいる者の誰もがセシリアを見つめていた。セシリアの威風堂々とした態度、理路整然とした言動、そして輝くような美貌は見る者を魅了し、圧倒する。人の上に立つ者として生まれ持った資質を遺憾なく発揮し、セシリアはその場にいる者達を従わせた。

 周りが大人しくなったのを確認して、セシリアは合図を出す。両端の扉が開放され、生徒達が避難を始めた。最早列を乱し、我先にと避難しようとする者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

「明日奈、待たせたな!」

 

 いきなりやって来た一夏に呆れて声も出せない明日奈に代わり、簪が糾弾する。

 

「貴方何を考えてるの!? 観客席のシールドバリアを破って勝手に出撃して来るなんて、自分のした事が分かってるの!?」

 

「何怒ってるんだよ? そもそも君らがモタモタしてるから俺が来てやったんじゃないか!?」

 

「「なっ!?」」

 

 一夏の物言いに言葉を無くす2人。

 

「まあ、後は俺に任せろ。あんなデクの坊、俺の零落白夜で一撃だ!」

 

 そう言うと、一夏は白式をエネミー3に突撃させる。

 

「食らえ、零落白夜あああーーー!!」

 

 零落白夜を発動させ、上段から斬りかかる白式。しかし、エネミー3は急加速してガラ空きのボディにカウンターの一撃をぶち込む。

 

「グヘッ!」

 

 エネミー3の一撃を食らい、白式が吹っ飛ぶ。大口を叩いておいてあっさり吹っ飛んだ一夏に白い目を向ける明日奈と簪。

 エネミー3は追撃のビームを白式に向けて放つ。一夏は何も考えずに間一髪でビームをかわした。

 

「くっ、当たるかよ!」

 

 だが、白式がかわしたビームはまだ避難が完了していない観客席に真っ直ぐ伸びて行った。

 

 

 

 

 

「「ああ! ダメェェェーーーーッ!!」」

 

 明日奈と簪が叫んだ。

 

 

 

 

 

「い、いかん!!」

 

「!!」

 

 千冬が叫び、真耶が息を飲んだ。

 

 

 

 

 

「あ、やべ・・・・」

 

 一夏は自分のかわしたビームが観客席に向かっているのを見て、顔を青くした。

 

 

 

 

 

 

「あっ・・・・・・」

 

 セシリアは自分のいる観客席に向かって来るビームを見て、息を吐いた。

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

 箒は迫り来るビームを見て唇を噛む。せめてもの反抗とばかりに迫るビームを睨みつけると、その視線を遮るように箒の目の前に立ち塞がる赤い影が。

 

 

 

 

 

「させるか! ABフィールド出力最大!!」

 

 観客席に迫るビームをその身に受け、防ごうとする孤狼。ABフィールドの出力を全開にするも装甲の塗装が剥離し始める。

 

「くっ、頼む、持ってくれ!!」

 

 ビームの高熱で装甲が溶け始め、そして、爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

「兄さん、そんな・・・・」

 

「志狼さん・・・・」

 

 アリーナ上空で明日奈と簪が息を飲んだ。

 

 

 

 

 

「くっ、何という事だ」

 

「志狼君!!」

 

 管制室で千冬が口唇を噛み、真耶が悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

「た、助かった!?」

 

 アリーナ上空で観客席が無事だった事に一夏が胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

「志狼さま、どうか無事で・・・・」

 

 自分達を守ってくれた志狼の身を案じ、セシリアが祈った。

 

 

 

 

 

「あ、ああ、そんな、こんなの嫌だよ、志狼!!」

 

 箒は目の前の惨劇に絶叫する。膝を付き涙を流す彼女の耳に低い可動音が聞こえて来た。その音は徐々に高くなり、やがて、

 

「・・・・・・狼の、咆哮?」

 

 

 アリーナに響く狼の咆哮。その独特のブースト音を響かせて爆煙の中から孤狼が飛び出す。

 爆煙から飛び出した孤狼はあちこちの装甲が溶け落ちて、頭部の角が折れた無惨な姿だった。

 そんな姿のまま、孤狼は一直線にエネミー3に突っ込んで行く。

 エネミー3は孤狼に向けてビームを撃とうとすると、志狼はビームの砲口に向けてグランディネを撃つ。グランディネの砲弾が発射前のビームの砲口に入り、爆発を起こした。

 爆発で体勢を崩したエネミー3に孤狼は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を駆使して近付き、リボルビング・ステークを全弾叩き込む。6度の衝撃音の後、動きを止めたエネミー3に向けて孤狼は両肩のカバーを開いた。

 

 

 

 ───近距離戦用指向性炸裂弾

    「スクエア・クレイモア」

 

 

 孤狼の特殊兵装のひとつ。両肩から4発×2基、計8発のクレイモア地雷を近距離で放出する。

 一発一発がチタン合金製の特注品である炸裂弾を、近距離から大量に発射して目標を粉砕する。特注品であるが故に、浅葱からはなるべく使わないで欲しいとお願いされている高価な武装。

 射程が短いと言う欠点もあるが、その威力は凄まじく、孤狼の最大火力を誇る正に必殺武器である。

 

 

 

 

 

  8発の炸裂弾が至近距離からエネミー3に放たれると、8発のクレイモア地雷それぞれが誘爆し、エネミー3が大爆発を巻き起こした。

 

 

 

 

 

 アリーナ内が静寂に包まれる。

 

 

 爆散したエネミー3の残骸が地表に落ちた次の瞬間、アリーナは爆発的な歓声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「「「きゃああああーーーーっ!!」」」

 

 管制室は喜びの声に包まれていた。

 

「・・・・・・勝った、のか」

 

 千冬は珍しく呆けた顔をして、呟いた。そんな中、

 

「こちら山田です。中央アリーナへ至急医療班を寄越して下さい!」

 

 真耶は負傷してるであろう志狼に医療班を手配していた。

 

「織斑先生、エネミー各機の残骸を回収しますが、よろしいですか?」

 

「あ、ああ、構わない。急ぎ手配してくれ。それと、結城兄妹と更識、それと織斑をここに呼び出してくれ。それと教師部隊のISに周辺の警戒に当たらせる。出動要請を」

 

「了解しました」

 

 そう言った真耶が志狼達に通信を開いた途端、

 

『兄さん!?』『志狼さん!!』

 

 切羽詰まった明日奈と簪の声が飛び込んで来た。

その声に慌ててアリーナ内を見ると、孤狼が落下していくのが見えた。

 

「! 志狼君───!?」

 

 幸い地表スレスレで閃光と華鋼が孤狼を受け止める事に成功した。しかし、

 

『管制室! 医療班の手配を! お願い、急いで!!』

 

 明日奈の悲痛な叫びが響いた。

 

 

 

 

 

 駆け付けた医療班が孤狼から意識のない志狼を降ろし、担架に乗せて運び出す。

 

「医務室、大至急医療ポッドの準備を!このままではマズイわ、急いで頂戴!!」

 

 いつもと違う真剣な表情で養護教諭御門涼子が指示を飛ばす。

 

「御門先生、私も付き添います!!」

 

「・・・・貴女は妹さんだったわね。残念だけど貴女に出来る事は今は無いわ。やるべき事をやってから後で医務室にいらっしゃい」

 

「でも!!」

 

「明日奈、今は先生に任せるしかないよ。私達はやる事をやってから志狼さんに会いに行こう?」

 

「かんちゃん・・・・うん。すみませんでした先生、兄さんをお願いします」

 

 明日奈はそう言うと涼子に頭を下げる。

 

「任せて。必ず助けるわ」

 

 涼子は明日奈の肩を叩くと、踵を返してアリーナを出て行った。

 悲痛な表情で見送る明日奈。その肩叩く人物がいた。

 

「大丈夫、アイツならきっと無事だよ」

 

 次の瞬間、その人物、一夏の顔面に明日奈の右ストレートが炸裂した。

 

「ぶへっ!!」

 

 吹っ飛ばされ、アリーナに倒れた一夏を冷たい表情で一瞥すると、明日奈はアリーナを出て行った。

 簪も無言で明日奈の後に続く。出て行く時に一夏を踏みつけて行った。

 

 

 

 アリーナには気を失い、鼻血を流した一夏だけが残される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今年度のクラス対抗戦は、こうして終わった。

 

 

 

~side end

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

苦節31話(プロローグ含む)にして、ようやくタグのひとつ「オリISはMS少女」を回収する事が出来ました。
基本的に他作品ヒロインの専用機はMS少女になりますので、誰の機体がどのMSになるのかお楽しみに。

明日奈の専用機閃光のモデルはご覧の通りインパルスガンダムでした。
第3世代兵装V-MAXシステムは某レイズナーのものを使わせて貰いました。理由は閃光というイメージに合っていた事と、単純に筆者が好きだからです。
今後もオリISには自分の好きなロボットの能力を使わせていきたいと思っています。

次回は決戦(裏)。今回の戦いで出て来なかった人達は何をしていたのか、お送りしたいと思います。

それでは、今年もよろしくお願いします。


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