二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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第35話を投稿します。ご覧下さい


第35話 3人の転校生

 

 

~志狼side

 

 

 GWが終わると、IS学園にも学生が頭を悩ますイベントがやって来る。

 中間試験だ。中間試験は筆記だけで実技の試験は無い。試験1週間前には部活動が全面禁止となり、放課後の訓練も自粛ムードになる。静かな1週間になるかと思いきや、我が1年1組の面々は今日も元気であった。

 何と言ってもこのクラスには入試首席のセシリアがいる。自らの成績に自信が無い者は早速セシリアに泣きついた。

 

「「「お願いセシリア、勉強教えて!」」」

 

「え?ええ、(わたくし)は構いませんけど・・・・」

 

 セシリアに勢い良く頭を下げ、お願いしてるのは清香、ナギ、ゆっこの3人。仲間内では比較的成績が良くないメンバーだ。

 因みにいつものメンバーの成績順がセシリア、明日奈、神楽、静寐、俺、本音、箒、ゆっこ、ナギ、清香となっている。俺は一般科目は問題無いが、IS専門科目が足を引っ張り、真ん中辺りに位置している。

 とにかく、勉強会を開き、皆で赤点を回避しようと言う事になった。因みに赤点は45点以下。ボーダーラインが高いと思うが、IS学園は国立なので厳しいのだ。

 赤点を取ると地獄の補習と再試験が待っている。再試験で50点以上採らない限りそれがいつまでも繰り返されると言う、最早生徒にも教師にも苦行としか思えない日々が待っているそうだ。あの織斑先生が「頼むから赤点だけは取るなよ」と念を押す程なのだから押して知るべし、である。

 その恐ろしさを知った俺達は早速、今日の放課後から自由参加で勉強会をやる事になった。

 

 

 

 

 1週間が過ぎて今日から中間試験が始まった。

 中間試験は1、2日目が一般科目、3、4日目がIS専門科目、5日目が答案の返却となっている。因みに今日から織斑が懲罰期間を終え、クラスに合流したが、皆試験に手一杯で表面上気にしてる風には見えなかった。

 

 

 

  

 特に問題無く、中間試験は終わった。

 答案を返却され、友達同士で点数を比べ合う試験後によくある風景があちこちで見られる。

 試験の結果、学年1位はセシリア、2位簪、3位ティアナであった。因みにこの順位は入試と同じ順位だそうだ。

 俺の順位は108人中14位。取り敢えずクラス代表の面目は保てただろう。問題の清香達3人も辛うじて赤点は回避した。勉強を見てくれたセシリアに3人は抱き付いてお礼を言っていた。

 1組で赤点を採ったのは織斑1人だった。試験期間中ずっと懲罰房で反省文を書いていて、試験勉強してないのだから仕方がないとは思うが、織斑先生はその結果に深くため息を吐いていた。

 

 

~side end

 

 

 

 

~鈴side

 

 

 5月も下旬になり、暑さが日々増しつつある今日この頃。中間試験が終わって、学園に日常が戻って来た。

 試験の結果、私は108人中16位。僅かな差で志狼に敗けてしまった。因みにヴィシュヌは8位とアタシより上だった。

 クラス対抗戦までは121人いた1年生は今では108人まで減っていた。クラス対抗戦で閉じ込められ、ビームに晒された恐怖は多くの生徒の心に傷痕を残し、その恐怖から立ち直れなかった者達は学園を去る事になった。1組から3人、2組から4人、3組から5人、4組から1人と1年生の合計で13人もの退学者が出た。因みに2年生から5人、3年生から2人の退学者が出て、学園全体で20人もの退学者が出ると言う前例に無い事態に陥っていた。

 そのせいだろうか、今日うちの2組と隣の1組に転校生が来ると言う。クラスは今朝からその話題で持ちきりだ。

 元転校生であったアタシが言うのも何だけど、転校試験は入試よりも難しく設定されている。その試験をパスしたと言う事はかなり優秀な娘達なんだろう。

 

「元転校生として、やはり鈴も気になりますか?」

 

 ヴィシュヌが聞いて来た。

 

「さあね。まあ、それなりに出来る娘なんでしょうけどね」

 

「そうですね。もしかしたらどこかの国の代表候補生かも知れません」

 

「あ~~、ありそう」

 

 何たって今の学園には世界各国が注目する男がいる。彼と接触して、出来れば自国に引き込みたいと思ってる国など幾らでもいるのだ。そう言った命令を受けたハニトラ要員なんかが送り込まれて来るかも。

 まあ、志狼は本人がしっかりしてるし、周りの娘達も目を光らせてるだろうから問題無いと思う。

 問題は一夏だ。一夏は今、孤立している。確かにアイツがやった事を考えれば仕方がないのかもしれないけど、今の学園でアイツに自分から話しかけるのは先生かアタシくらいだ。そんな中で可愛くて、胸の大きい娘なんかに優しくされたら、今のアイツならコロッと落ちかねないわ。それだけは何としても阻止しなくちゃ!

 

「どうしました鈴? 変な顔して」

 

「別に──ってか変な顔って何よ!?」

 

 ヴィシュヌとそんなやり取りをしていると、教室の扉が開いて先生が入って来た。

 

「おーーし、皆、席に着けーーっ!」

 

 1年2組担任、桐島(きりしま)カンナ先生。1組副担任山田先生の同期で空手の達人。主に生身での格闘技の指導を担当している。その実力はあのヴィシュヌが歯が立たない程で、彼女曰く「母さんと同じくらい強い」との事。190Cmを越えるガッチリした体格の女丈夫。豪快かつ親しみ安い性格で私達生徒から慕われている。

 

 

「おはよう皆!・・・・この浮わついた雰囲気、皆もう聞いてるみたいだな。そう、今日からこのクラスに新しい仲間が増える!皆、驚くなよ?──それじゃ、入れ!」

 

 カンナ先生が転校生を呼ぶ。その時アタシと一瞬目が合ったのは何だろう?

 その理由は入って来た娘を見て分かった。て言うか何であの娘が!?

 

「え?」

「鈴ちゃんが2人!?」

「うわ~、そっくり!」

 

 クラスメイトが転校生を見て騒ぎ出す。無理もない。それ程までに彼女はアタシとよく似ている。まあ、血が繋がってるからある意味当然なんだけど・・・・

 

「あ、でも良く見ると別人だよ!?」

「そうね。髪型も違うし。それに──」

 

「「「何てったって、胸がある!!」」」

 

「アンタらしまいにゃブッとばすわよ!?」

 

 そう叫びつつチラッとあの娘を見る。くっ!ホントにある!あの娘いつの間に!?

 

 

「はいはい。お前ら、いい加減にしろ~? 転校生が困ってるぞ~」

 

 カンナ先生がパンパンと手を叩いて注意を引く。確かにあの娘の頬が若干引き攣ってる。2組のノリについて行けないみたいだ。

 

「おし、転校生。自己紹介だ」

 

 皆が静まったのを見計らい先生が言った。

 

「はい。初めまして皆さん。台湾代表候補生序列4位、凰乱音(ファン・ランイン)です。飛び級したので皆さんよりひとつ年下です。ですから気軽に(ラン)と呼んで下さい。因みに・・・・そこにいる凰鈴音は従姉になります。今日からよろしくお願いします!」

 

 一瞬の静寂の後、教室内に割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

 

「年下なんだ。可愛い~~」

「従姉か。成る程似てる訳だ」

「飛び級したって。優秀なのね」

「代表候補生!それも冒頭の六人(ページワン)だよ!」

「え?って事は専用機持ち!?凄~~い!」

 

 皆がワイワイと騒ぎ出す。矢継ぎ早にされる質問に乱はそつ無く答えている。あの娘はこう言う所は如才ないのよね。しかし、

 

「転校の事、知らなかったのですか鈴?」

 

「聞いてないわよ。アタシあの娘がページワンだってのも初めて知ったわ」

 

「・・・・流石にそれはどうかと思いますよ、鈴」

 

「うっ、悪かったわね!」

 

 代表候補生の序列決定戦は毎年明けに行われる。その時点であの娘がページワンと言うのは分かっているのだ。いくら他国の事情に興味が無いとは言え、確かに不勉強だったかも知れない。

 

 

「でも乱ちゃん。何でこんな時期に転校してきたの?時期的に半端だし、転校しなきゃいけない理由でもあったの?」

 

 クラスメイトの1人が乱にそう質問した。言われてみれば確かに気になる。まさかさっき考えてたハニトラ要員!? 乱はこっちを見ながら(睨んでるように見えるけど、アタシの気のせいよね?)質問に答える。

 

「ええ。それはですね・・・・あの馬鹿姉のお目付け役として転校して来たんです!」

 

「「「な、何ですってーーーっ!?」」」

 

 周りのクラスメイトが驚きの声を上げる。しかしアンタ達ノリがいいわね───ともあれ、

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい乱!お目付け役ってどう言う事よ!?」

 

「・・・・鈴、貴女転校早々学園の機材を壊しまくったんですってね」

 

「うっ」

 

「その機材の弁償は中国政府がしたんだけど、総額いくらになったか知りたい?」

 

「ううっ」

 

「例え問題を起こしたとしても、結果さえ出せば良かったんだけど、何なのクラス対抗戦の不様なバトルは?」

 

「うううっ」

 

「全力で戦った結果の敗北ならまだしも、相手をナメてかかって敗北しただなんて、自分でも不様だと思わない?」

 

「それは!・・・・確かに油断したアタシが悪いんだけど、でも他国の代表候補生であるアンタにそこまで言われる筋合いは無いわよ!!」

 

 アタシがそう文句を言うと、乱はわざとらしく大きくため息を吐いた。

 

「ハア・・・・鈴、今の発言はね。IS委員会中国支部長が言ってたそうよ」

 

「!!」

 

 IS委員会の中国支部長!?そんな上の人間がそんな事を!?それはマズイ!中国支部長がアタシをそう評価したのなら下手したらアタシは代表候補生資格を取り上げられ、国家反逆罪で逮捕なんて事もあり得るかも!?

 最悪の想像をしてアタシは血の気が引いてくのを感じていた。そんなアタシの様子を見て、乱が言った。

 

「・・・・最悪の場合どうなるか想像出来たみたいね。でも安心しなさい。今の所そこまでの処分は考えてないみたいだから」

 

「ホント!?」

 

「あくまで今の所は、よ。中国政府も貴女をこんな事で失うのは惜しいと判断して、これ以上馬鹿な事をしないようお目付け役を付ける事になったの。で、私に白羽の矢が立ったって訳」

 

「乱。質問いいですか?」

 

 ホッとして椅子に座り込むアタシに代わり、ヴィシュヌが乱に質問する。

 

「どうぞ、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーさん」

 

「私の事を知っているのですか?」

 

「勿論です。タイの代表候補生。今年は不運が重なってページワン入りを逃したとは言え、実質タイでもトップクラスの実力を誇る貴女を軽んじられる訳ありません」

 

 乱の言葉を聞いて、アタシは驚いていた。道理で強い訳だ。でも、アタシはそんな事も知らなかったのか・・・・

 

「それは光栄です。中国の動向は分かりましたが、従妹とは言え他国の代表候補生である貴女が何故その役目を引き受けたのですか?」

 

「それは・・・・まあ、色々とありまして。察して貰えると有り難いのですが・・・・」

 

「・・・・成る程。言い難い事を聞いてしまったようですね。すみません」

 

「いえ、こちらこそ」

 

 話が一段落付いたと見たカンナ先生が再びパンパンと手を叩いて注意を引く。

 

「よーーし、話は大体分かったな?そう言う訳で乱は今日からあたいらの仲間だ!皆、よろしく頼むぞ!」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

「よーーし、それじゃあ午前中はお前らお待ちかねの実技講習だ。全員ISスーツに着替えて第2アリーナに集合しろ! 1組との合同授業だから遅れるなよ。遅れたら千冬先輩に何されるかわかんねえぞ!!」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

 私達は返事をして、着替え始める。アリーナの更衣室にはロッカーが1クラス分しか無いので、合同授業の時は教室で着替えるのが通例となっている。乱も自分の席に案内され、周りのクラスメイトと談笑しながら着替えていた。あの娘は問題なさそうね。

 さて、アタシも早いとこ着替えなくっちゃ!千冬さんの出席簿は食らいたくないもんね!

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

 あのクラス対抗戦の後、1組からも退学者が出た。女尊男卑主義者のあの3人だ。

 3人のリーダー格の娘がISに対して恐怖心を持ってしまい、逃げるように退学すると残る2人もあっさり退学してしまった。結局、言葉を交わす事も無かった奴らだが、女尊男卑主義の源であるISに恐怖心を持ってもその主義を貫けるものだろうか?

 

 何はともあれ中間試験も終わり、日常が戻って来た。しばらくは何も起きないだろうと思っていた俺が甘かった事を、朝のSHRで思い知らされた。

 

 

 

 朝、明日奈と教室に入ると何やら騒がしい。見ると清香やナギを中心に何人かで固まって、ああだこうだと意見を交わしているようだ。

 

「おはよう。何してるの?」

 

「あ、明日奈、志狼さんおはよう! 皆でこれ見てたんだ」

 

 そう言って清香は読んでいたものを持ち上げ、表紙を見せた。それはISスーツのカタログだった。

 

「志狼さんや明日奈のISスーツってどこ製なの?」

 

「俺のは企業が用意した特注品だ」

 

「私のもそうよ。でも、ISスーツって色々あるのねえ」

 

 明日奈がカタログを見ながら感心しているが、明日奈自身のISスーツも珍しいタイプだ。白を基調としたノースリーブのスーツに赤のミニスカートと膝下までの白いブーツという、一見騎士団の制服のようにもチアに衣装のようにも見える変わったデザインをしている。中々派手なスーツだが、明日奈には良く似合っていた。

 

 清香達はカタログを見ながらあそこのがいい、こっちのも可愛いなどと話をしている。こんな会話が教室のあちこちでされているのは、今日の午前中に実技の授業が2組と合同で行われるからだろう。

 今まで実技の授業は先生の模範操縦を見るか、実機に触れたりするだけで、自分で動かせなかったが、今日からは自分で操縦出来るのだ。やはり操縦者を目指す彼女達からすれば嬉しくて仕方がないのだろう。

 ISスーツは学園指定のものもあるが、自分の選んだスーツを学園で申し込み、それを着用する事が認められている。IS操縦者は早い内に自分のスタイルを確立する事が大事だと言われているので、ほとんどの者がスーツを申し込むと言う。因みに1着数万から数10万するというISスーツだが、学園から申し込むと3~5割引きで購入出来るそうだ。

 皆どんなのにするか頭を悩ませているのだろう。俺としても学園が用意した紺一色のスーツより、色とりどりのスーツの方が見ていて楽しいから大歓迎だ。

 

 

 

「おはようございます、皆さん」

 

 朗らかな笑顔を浮かべて真耶先生が教室に入って来た。

 真耶先生を見るとどの生徒も笑顔で挨拶を交わす。ただ皆、山ちゃんとか山ピー、マヤマヤなど勝手なアダ名で呼んでいる。慕われている証拠だとは思うが、流石にしんぶんしは駄目だろう。

 困り顔で皆を注意する真耶先生だったが、この人のこう言う顔もまた可愛いから困ったものだ。思わずいじりたくなってしまったが、明日奈がジト目で見ていたので自重した。

 

 

 

「おはよう諸君」

 

 真耶先生に遅れて、織斑先生が颯爽と教室に入って来た。その途端に全員速やかに席に着き、さっきまでの緩んだ空気が嘘のように引き締まった。全員が注目したのを見計らい、織斑先生が話し始める。

 

「まず連絡事項だ。来月下旬から全員参加の学年別トーナメントが開催される。それに伴い、今日から本格的な実機訓練が開始されるが、その為に必要なISスーツの注文申し込みを今日から開始する。注文してもモノによっては届くのに時間が掛かる事もあるので、なるべく早く注文するように。届くまでは学園指定のスーツを使うので忘れるなよ。忘れたら学園指定の水着で授業を受けて貰うからそのつもりで。それも忘れたら・・・・まあ下着で構わんだろう」

 

((((いや、構うだろ!!))))

 

 恐らく俺を含めた大半の娘が心の中でツッコんだだろう。このクラスには俺や織斑と言った男もいるのだ。そんな中で下着姿って・・・・

 

(流石に冗談だよな・・・・?)

 

 俺は下手したらセクハラでパワハラなこの発言が、織斑先生なりのジョークである事を切に祈った。

 

 

 

「私からは以上だ。では山田先生、後は頼む」

 

 織斑先生は連絡事項を伝えると、真耶先生と交代した。

 

「はい。ええとですね、今日は何と転校生を紹介します!しかも一挙に2人です!」

 

「「「「えええええっ!?」」」」

 

 転校生?クラス対抗戦の後、学園全体で20名もの退学者が出て、欠員を埋める為に転校生を迎えるのは分からなくもないが、何故このクラスに?普通は最も人数が少なくなった3組から欠員を埋めていくと思うのだが・・・・

 

「それでは、2人共入って下さい」

 

 真耶先生がそう言うと、扉が開き、噂の転校生が入って来た。

 

 「失礼します」

 

 「・・・・・・」

 

 入って来たのは対照的な2人だった。明るい笑顔を浮かべる金髪とムスッとした表情の銀髪。

 IS学園の制服は改造が自由なのだか、2人共女子用のスカートではなく、ズボンを履いていた。

 

「え? 男・・・・?」

 

 その時、そんな呟きが聞こえた。男?

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。僕と同じ境遇の方がいると聞いて転校して来た──」

 

「「「「きゃああああーーーっ!」」」」

 

 教室中に響く喚声と言う名の超音波。不意を突かれてガード出来ずまともに食らってしまった。

 

「男子!3人目の男子!!」

「しかも美形!守ってあげたくなる系の!」

「このクラスで良かったあ~~!」

 

 自己紹介を途中で遮られたデュノアがこの状況に笑顔のまま固まっている。

 紫の瞳の中性的な美しい顔立ち。濃い金髪は後ろで丁寧に束ねている。男にしては華奢だが女であれば平均的な体格。男と言われてそう見えなくもないが、俺にはやはり男装した女にしか見えない。それに、

 

(───シャルロット!?)

 

 そう、デュノアには2年前知り合った1人の少女の面影がある。成長した彼女が男装したらこんな感じだろうか?

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

 自分の思考に沈んでいた俺に織斑先生の呆れたような声が聞こえた。

 

「そうですよ、皆さんお静かに。それにまだ自己紹介が終わってませんよ~」

 

 真耶先生にそう言われて、皆はもう1人の銀髪の少女に目を向ける。忘れようにも忘れられない個性的な少女だ。

 腰まである輝くような長い銀髪は綺麗ではあるんだが手入れなどせず、無造作に伸ばしっ放しにした印象がする。整った顔立ちは不機嫌そうに歪み、左目の黒眼帯は威圧感を、右の紅い瞳は冷たい光を放っている。体格は小柄。恐らく150㎝ないだろう。だがそんな風に見えない程の存在感を全身から放っていた。

 

「挨拶しろ、ラウラ」 

 

「はい、教官」

 

 織斑先生にそう言われた彼女は織斑先生に対して敬礼する。

 

「・・・・ここで敬礼はよせ。ここは軍ではないし、私ももう教官ではない。私の事は織斑先生と呼べ」

 

「はい、了解しました」

 

 そう言ってまた敬礼する彼女に思わず目を覆う織斑先生。

 

「・・・・もういい。自己紹介しろ」

 

「はい」

 

 彼女はこちらを向いて休めの姿勢をする。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 どこかの誰かを連想させる挨拶をすると、彼女は口を閉ざした。

 

「あの・・・・以上、ですか?」

 

「以上だ。ムッ!?」

 

 いたたまれず話かける真耶先生をバッサリ斬り捨てると、彼女──ラウラはとある1点に視線を止める。

 

「貴様が───!」

 

 そう言って真っ直ぐ歩いて行くと、

 

 バチンッ!!

 

 教室中に響かせる大きな音を発てて、織斑をひっぱたいた。一瞬呆然としていた織斑だが、我に帰ると、

 

「いきなり何しやがる!?」

 

 と怒鳴りつけた。だが、ラウラはそれ以上の激しい怒りをその紅い右目に宿し、

 

「私は貴様など認めない!貴様があの人の弟など絶対にだ!!」

 

 そう言うとラウラは踵を返す。彼女が見せた激情に虚を突かれたのか、被害者であるはずの織斑はポカンとして見送っていた。

 

「あー、それでは朝のSHRを終わる。この後は2組と合同での実技授業だ。全員ISスーツに着替えて速やかに第2アリーナに集合しろ」

 

 織斑先生は織斑が殴られた事をさらっと流して号令を出す。合同授業の場合、女子はこの教室で着替える事になるから俺達男はアリーナの更衣室まで移動しなくてはならない。

 

「結城、織斑、同じ男子としてデュノアの面倒を見てやれ」

 

 織斑先生はそう言うと、真耶先生と共に教室を出た。同じ男子、ねえ・・・・・

 

「結城君、織斑君、初めまして。僕は──」

 

「デュノア。悪いが挨拶は後だ。織斑、デュノアを案内して先に行け。俺もすぐ行く」

 

「お、おう。デュノアこっちだ」

 

「う、うん」

 

 織斑に連れられてデュノアが出て行った。俺も早く行かなくてはならないが、その前に、

 

「セシリア、明日奈。ボーデヴィッヒを頼む。かなり厄介そうだから気を付けてな」

 

「分かりましたわ」

「うん。任せて」

 

 2人にボーデヴィッヒの事を頼み、俺も教室を出る。廊下を走る訳にはいかないので早足で移動して第2アリーナに到着した。途中、息を切らして蹲った女子の群れがいたが、何だったんだろう?

 

 

 一応ノックをしてから更衣室に入る。中には織斑しか見えなかった。

 

「デュノアはどうした?」

 

「ああ、シャルルならあっちで着替えてる」

 

 反対側で着替えてるようだ。ならいいだろう。俺も着替えようと服を脱ぎ始める。

 

「こっちで一緒に着替えようって言ったのに、何だかんだと理由を付けてあっちに行っちまったんだ」

 

 デュノアが一緒に着替えない事が不満なのか、織斑が溢す。

 

「あのな、織斑。何でも自分を基準に考えるのはよせ。裸の付き合いなんて習慣の無い国だってあるし、もしかして身体に傷があって見られたく無いのかもしれないだろう?」

 

「それは!・・・・そうか」

 

 少しは他人の事を考えられるようになったか?以前なら食ってかかる所だが、少しだけ変わったようだ。考えてみれば織斑と話をするのはあいつが懲罰房を出てから初めてだ。そんな時、

 

「お待たせ一夏──って、ひゃああっ!?」

 

 デュノアの悲鳴が響いた。

 

「何だよシャルル!?」

 

「だ、だって志狼が!!」

 

 俺はISスーツを着る為に全裸になった所なので丸出しだった。

 

「おいおい、男の裸なんて見慣れてるだろ?」

 

「た、だって、そんなに大きいなんて!!」

 

「・・・・本当だ。デカイな」

 

「・・・・何を言ってるんだ、お前らは」

 

 俺は呆れながらもISスーツに着替え終える。しかし、志狼か・・・・

 

「さて、デュノア。改めて結城志狼だ。クラス代表でもあるので、何か困った事があったら遠慮なく相談してくれ」

 

「あ、うん。シャルル・デュノアです。よろしくね」

 

 顔を真っ赤にして握手をするデュノアは、やはり可愛い女の子にしか見えなかった。

 

「おい、もう時間がないぞ!」

 

 俺が訝しんでいると、織斑が声をかけた。

 

「いかん、急ごうデュノア」

 

「う、うん」

 

 俺達は更衣室を出て、アリーナに向かった。

 

 

~side end

 

 

 

 

~明日奈side

 

 

 兄さんが教室を出たのを見届けてから私達は転校生の彼女に声をかけた。

 

「ボーデヴィッヒさん。(わたくし)はクラスの副代表を務めるイギリス代表候補生序列3位、セシリア・オルコットと申します。よろしくお願いしますね」

 

「私は日本代表候補生序列4位、結城明日奈です。分からない事があったら遠慮なく聞いてね。ボーデヴィッヒさん」

 

「ああ」

 

 それだけ言うと、ボーデヴィッヒさんは黙々と着替えを始める。私とセシリアは顔を見合わせると色々と話かけた。

 

「ボーデヴィッヒさんはドイツの代表候補生なんだよね?」

「ボーデヴィッヒさんは軍の関係者なんですの?」

「ボーデヴィッヒさん、織斑先生と知り合いなのかな?」

「ボーデヴィッヒさんの専用機ってどんな機体ですの?」

 

「・・・・・・」

 

 私達を全く無視して着替え終えた彼女はさっさと教室を出て行こうとする。

 

「あ、ボーデヴィッヒさん、アリーナの場所は分かるの?」

 

「問題無い。学園内の地理は把握済みだ」

 

 そう言って彼女は立ち止まり、振り返らずにこう言った。

 

「ひとつだけ言っておく。私に構うな。お前らと馴れ合う気は無い」

 

 そう言い捨てて、ボーデヴィッヒさんは今度こそ教室を出て行った。 

 その言を受け、教室が静まり返る。

 

「な、何よあの態度!」

 

 1人が声を上げると、それは一気に広まって、彼女への不満が爆発した。これでは彼女が孤立してしまう。こうならないように兄さんは私達に頼んで行ったと言うのに、大失敗だ!

 皆が不満を洩らす中、パンパンと手を叩いてセシリアが注意を引く。

 

「皆さんお静かに。彼女への不満は一先ず置いておいて、今は授業に遅れないようにしましょう」

 

 セシリアに言われて、着替えの途中だった娘達は慌てて着替えを続けた。

 

「明日奈さん。(わたくし)達も急ぎましょう」

 

「あ、うん!」

 

 私達は専用機の拡張領域(バススロット)に入れてあるISスーツをコールすると、一瞬で着替えを終える。本来ならIS本体のエネルギーを消耗するのでなるべく使わないように言われてる機能だが、今回だけは大目に見て貰おう。

 

「わ、ずるい!」

 

 まだ着替えていたナギにそう言われたが、専用機持ちの特権と諦めて貰おう。

 

 全員教室を出たのを確認して、私とセシリアも扉を施錠してアリーナへ向かった。

 

 

~side end

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

乱、シャル、ラウラの3人が本格的に登場しました。
今後の活躍にご期待下さい。

2組担任のカンナ先生。某華撃団のあの人です。

次回は実技授業の風景をお送りしたいと思います。
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