遅くなりました。第39話を投稿します。
今回こそシャルロットの過去話をお送りします。
当然ながら本作のオリジナル展開であり、原作至上の方は読まない事をお薦めします。
それでは第39話をご覧下さい。
~志狼side
翌日の放課後。俺は昨日の約束通り、屋上に向かっていた。
IS学園の屋上は一般解放されているので、誰でも出入り自由だ。昼休みに昼食を摂る者もいれば、放課後はどこかの部の活動場所になってる事もある。
今日はどの部も使わない事を刀奈から教えて貰い、生徒会権限で誰も来ないようにして貰った。権力って素晴らしい。
ギイイ、
重苦しい音を立てて、屋上の鉄扉を開ける。
薄曇りの空の下、1人の少女がこちらに背を向けていた。俺に気付くと、彼女は振り向いて儚げな笑顔を浮かべた。
「やあ。
「ああ。
俺は彼女の側まで行って、シャルルじゃない、シャルロットと再会の挨拶をする。彼女は男装時の
「全く。僕の事覚えていた癖に知らんぷりしてたの? 相変わらず酷い人だよね。君って」
「何言ってんだ。お前が話してくれるのを待ってたんじゃないか。何も話さないお前が悪い」
そう言い合ってしばし睨み合う俺達。だが、
「プ、クフフ───」
「プ、クハハ───」
睨み合いは長くは続かず、俺達は同時に吹き出していた。
「ふふ、ずっとこんな風に君と話をしたかったんだ、僕」
「これからいくらでも出来るさ。だが、その前に問題を片付けなきゃな」
「うん。そうだね」
そう言ってシャルロットは表情を引き締めた。
「まず確認したいんだが、お前の事情は昨日聞いた通りで間違いないか?」
「うん。少なくとも僕の聞いてた事は全部話したよ」
「そうか・・・・それを踏まえて聞くぞ? シャルロット、お前はどうしたい?」
「僕は・・・・」
「それが分らなきゃ方針が定まらない。だから他ならぬお前が決めてくれ」
「・・・・・・」
「正直、お前だけを助けるなら割と簡単なんだ」
「えっ?」
「先生に話を通して、国際IS委員会へ訴えればいい。委員会のメスが入ればフランス政府は国際的に大恥を掻いて信用を失い、デュノア社も良くて他社に吸収合併、もしくは倒産って事になるだろう。お前は無理矢理スパイにされた上、デュノア社での扱いが酷かったのもあるから被害者として世間の同情を惹けるだろう。それからお前は他国に亡命すればいい。テストパイロットを務め、IS学園に転校出来るくらいの実力の持ち主ならどの国でも歓迎してくれるだろう」
「いい事ずくめに聞こえるんだけど?」
「言ったろ。今のはお前だけを助ける場合で、勿論デメリットはある。まずお前は二度とフランスには帰れない。事が露見すればフランスはこの先国際社会で冷遇される事になる。その引き金となったお前が入国するのをフランス政府が許すと思うか?」
「うっ」
「それに政府及びデュノア社で大勢の人が職を失う事になる。お前を酷い目に合わせて来た奴等だ。俺としてはいい気味だが、お前はそれを善しと出来るか?」
「ううっ」
「それに亡命するとしても、お前はIS操縦者として亡命するから訳だから、デュノア社にいた頃とあまり変わらない生活になるかもしれない。まあ、待遇は改善されるだろうがな」
「うううっ、そうか・・・・」
「これが一番簡単なやり方だ。でもシャルロット、お前耐えられるか?」
「・・・・無理だと思う。大勢の人に恨まれながら生きてくなんて。それに」
「それに?」
「フランスにはお母さんが眠ってるから」
「ああ・・・・、そうだな」
「うん。ごめんね、折角考えてくれたのに」
「いいさ、多分承知しないだろうと思ってたし。お前は優しい娘だからな」
「志狼・・・・」
シャルロットは嬉しそうにはにかんだ。
「となると、別の手を考えなきゃならないんだが・・・・専門的な知識もいる事だし、場所を変えるか」
俺はそう言って携帯を取り出した。
「ああ、俺だ。封鎖は解除してくれていい。ありがとう助かったよ。ああ、これからそっちに行く。あの人達も呼んでおいてくれ。それじゃ」
電話を切って振り向くと、シャルロットが不安そうな顔をしていた。
「・・・・志狼? 誰と話してたの?」
「生徒会長。これから生徒会室に行くぞ、シャルロット」
「えええーーーーっ!?」
シャルロットの叫びは、薄曇りの空に吸い込まれて、消えていった。
~side end
~シャルロットside
志狼の後に付いて廊下を歩く。普段来ない所を歩いているせいか、これから会う人のせいか、僕はさっきから緊張していた。
前を歩いていた志狼が他の部屋とは違う、重厚そうな扉の前で止まった。
その部屋には「生徒会室」と書かれた木製の看板が掛かっていた。後から聞いたけど生徒会長の直筆らしい。達筆だ。
見るだけで普通の部屋ではありませんと主張してるような高級感漂う扉を志狼がノックすると、中から1人の女性が迎えてくれた。
「こんにちは、虚さん」
「お待ちしていました、志狼さん。デュノアさんも」
そう言って彼女は僕を見た。知的な雰囲気の眼鏡美人。生徒会会計兼整備科科長、布仏虚先輩の第一印象を僕はこう感じた。
布仏先輩に案内されて生徒会室に入る。普通なら入る事の無い部屋に僕の緊張感が増す。
生徒会室は扉を開けると、3mくらいの短めの廊下があり、その横にはトイレと給湯室があり、扉を開けた位置からは室内が見渡せないように出来ている。僕は2人の後に付いて廊下を歩く。
「会長、お客様をお連れしました」
廊下の先まで行くと室内が見渡せる。3人掛けの高級そうなソファーが2対、ガラステーブルを挟むように置かれている。その奥にはマホガニーの大きな執務机があり、1人の女性が座っていた。
「いらっしゃい志狼。それにデュノアさん」
IS学園生徒会長、更識楯無。転校前に要注意人物として資料に書かれていた1人だ。もの凄い美人なんだけど、ニンマリという表現がピッタリの笑顔を浮かべてこちらを見ている。イタズラ好きの猫、会長の第一印象を僕はこう感じた。
「どうも、会長」
「こ、こんにちは」
取り敢えず挨拶を返したけど、これからどうしたらいいの!? 志狼は会長の側に行くと、顔を近付けて内緒話をしている。2人共ちょっと近過ぎない!?
「デュノアさん。こちらへどうぞ」
その場に佇んでいた僕に布仏先輩がソファーに座るのを薦めてくれた。この人いい人だぁ。僕は有り難く座らせて貰った。このソファー本当に高級品みたい。適度な柔らかさで身体を包んでとても座り心地がいい。やがて内緒話を終えた志狼が僕の隣に腰掛けた。
「・・・・誰にも話さない約束じゃなかったの?」
僕は批難めいた視線を志狼に向ける。
「先生には話さないと約束したが先輩に話さないとは言ってないぞ?」
うー、確かにそうなんだけど、何かズルい。
「はーい、お邪魔するわよ」
突然そう言って、会長が志狼の隣に腰掛けて密着する。だから近いってば、もう!
僕が内心むくれていると、会長が僕の顔を覗き込む。
「な、何ですか・・・・?」
「うふ♪ 可愛いわね、貴女」
「なっ!?」
たちまち顔が熱くなる。そんな僕を見て会長は増々笑みを深めた。すると、
「会長、その辺で」
志狼が会長を止めてくれた。僕が感謝の視線を向けると、
「シャルロットを弄るなら話の後で。俺も喜んで参加しますから」
「オッケ~、分かったわ♪」
何と言う事だ。敵が増えてしまった。一瞬でも感謝した僕が馬鹿だった。
僕が反論しようとしたその時、ノックの音がした。布仏先輩が対応に行き、2人の女性を連れて来た。2人を見て僕は思わず立ち上がってしまった。
「! 織斑先生、山田先生───!?」
「お2人共良く来て下さいました。わざわざありがとうございます」
志狼も席を立って一礼する。
「結城と・・・・デュノアか。私達は更識に呼ばれて来たんだが、黒幕はお前か。結城」
「黒幕とは人聞きが悪い。まあ、俺が会長に頼んだのは事実ですが」
「それ見ろ。・・・・で? 用件はそこのデュノアの件か?」
織斑先生は目付きを鋭くして僕を見る。こ、怖い! 思わず一歩後ずさる。けど、志狼の手が背中を支えてくれて、何とか踏み留まる。
「はい。先生達の力を貸して欲しいんです」
「ふむ・・・・」
「まあまあ、織斑先生。ここは志狼君の話を聞いてみましょう。判断はそれからでも遅くはありませんよ」
「山田先生・・・・そうだな。いいだろう話してみろ」
織斑先生は山田先生に言われると、ソファーの中央、志狼の対面に腰を下ろした。その隣の僕の対面に山田先生も座る。ちょうど布仏先輩が紅茶を淹れてくれた。全員に配り終えると先輩は会長の背後に控えた。
「シャルロット、自分で話すか? 無理そうなら約束を破る事にはなるけど、俺が話すが?」
「ううん、自分で話すよ。いや、話さなきゃいけないんだ」
「そうか」
ここまで志狼にお膳立てして貰ったんだ。自分の未来を切り拓く為にもこれは僕がしなくちゃいけない。
「──織斑先生、山田先生、そして更識会長。これから僕の事情を全てお話します。話を聞いてどう思うかは皆さん次第ですが、僕はこの状況から脱け出したい。その為の力を貸して欲しいんです」
僕はこの場にいる人達の顔を見渡した。幸い否定的な顔は無かったので、このまま話を進める。
「僕の、いえ私の本当の名前はシャルロット・ブラン。デュノア社社長アルベール・デュノアの庶子で、ご覧の通り女です」
私はそう言って胸を張った。そりゃあこの面々の中じゃあ一番小さいんだけど。うう、自信失くすなあ。
「私はフランス政府とデュノア社の企みにより、スパイとしてこの学園に送り込まれました───」
こうして私は全てを話しました。私の生い立ちからデュノア社での扱い、学園に送り込まれた経緯など洗いざらい全てを。
~side end
~千冬side
「───私の話は以上です」
デュノアの話が終わった。成る程多分に同情の余地はあるが、それでもスパイ行為を行った事実は変わらない。可哀想ではあるが、身柄を拘束し、フランスへ強制送還する以外の選択は───
「ここで皆さんにご理解頂きたいのは、スパイとして送り込まれた彼女が、今までスパイらしき行為は何もしていないと言う事なんです」
まるで私の心を読んだかのように、結城がその点を指摘した。
「彼女が転校して既に2週間が過ぎました。その間、俺はおろか同室である織斑にもスパイ行為に及んでません。だからどうした、そう言われればそれまでですが、情状酌量の余地はあると思うんです」
「・・・・それを認めろと?」
「はい。よろしくお願いします!」
結城はそう言って立ち上がると、私達に向かって深く頭を下げた。その姿を見たデュノアも慌てて立ち上がり、「お願いします!」と、頭を下げた。
私は暫し考えを巡らすと、真耶とそして更識と視線を交わす。2人は私に向かって頷いた。判断は私に任せるという事らしい。
「デュノア。結城が今言った事は事実か?」
デュノアは弾かれたように顔を上げた。
「は、はい!」
「それは何故だ? 結城はともかくいち、ゴホン、織斑は同室なんだからデータを盗む機会などいくらでもあっただろう?」
「それは───正直な所確かにありました。でも出来なかった。何故って言われると上手く説明出来ないんですけど・・・・」
「ふ~ん、無意識下で罪の意識が働いたって所かしら。スパイには向かないタイプねぇ」
更識がそんな事を呟いた。
「まあいい。取り敢えず信じよう。となれば確かに情状酌量の余地はある」
「! それじゃあ───」
「慌てるな。だからと言って何のお咎めも無いとは言ってないぞ?」
「あ、はい・・・・・」
私の言葉にデュノアは意気消沈する。
「だがまあ、出来る限りの手は尽くすと約束しよう」
私がそう言うと、結城とデュノアは顔を見合わせ、笑顔を浮かべ、
「「ありがとうございます!!」」
と礼を言った。それを機に室内の空気が柔らかくなり、私はすっかり冷めてしまった紅茶を口に含んだ。
「そう言えばシャルロットちゃんは何で女だってバレたの?」
「えっと、一夏がシャワー中に入って来ちゃって・・・・」
ブフーーーーッ!!
更識とデュノアの会話に私は思わず紅茶を吹き出してしまった!
「ゲホッ、ゴホッ、す、すまん、結城!」
私が吹き出した紅茶は私の対面に座る結城のズボンに掛かってしまった。
「ああ、大丈夫ですよ。虚さん、布巾を貸してくれませんか?」
「あ、はい。こちらへ」
結城は布仏に給湯室へ連れて行かれた。
「先生どうぞ」
「すまん、更識」
更識がティッシュを差し出したので、数枚取って口元とテーブルを拭う。
「デュノアその、さっきのはどう言う事だ!?」
「えっと、その───」
多少言い淀みながら、デュノアが何があったかを話し始める。シャワーから出ようとしたらノックも無しに脱衣所に入って来て全部見られた事。いきなり結城を巻き込んだ事。その結城に自分の意見を否定されて殴りかかった事など。それを聞いて私は頭を抱えてしまった。
「あ~、つくづくデリカシーの無い弟ですまん」
「あ、いえ、事故ですし、その、恥ずかしかったけど、この場を設ける切っ掛けにもなりましたから、あはは・・・・」
そう言ってデュノアは力無く笑う。無理も無い、年頃の少女にとって裸を見られると言うのは、この上無い恥辱だろう。いくら男だと思ってたとしても、ノックぐらいしろよあいつは!
しかも、私に迷惑かけられないだぁ? それで結城に迷惑かけてどうするんだ! あいつはもう!
「でも学園特記事項第21ですか。確かに時間稼ぎにはなりますけど、根本的な解決にはなりませんよね。しかも結構穴がありますし」
真耶の言う通りだ。特記事項を楯にした所で抜け道なんていくらでもある。むしろ、この手の約定はどうとでも取れるようにわざと曖昧にしてるんだが、大人はそこを突いて自分の要求を通してしまうと言うのをあいつは分かってない。要はまだまだ子供だと言う事だ。
「そう。しかもその期間ですが、織斑は3年あると思ってるようですが、実際には1ヶ月程度しか無いんですよね」
「志狼君?・・・・そうか、夏休みですね」
結城が処置を終えて戻って来た。
「ええ、夏休みになればデュノア社のテストパイロットであるシャルロットは確実に呼び戻されるでしょう。でも、おかしいんですよね」
「何がですか?」
「この計画、最初から穴があると思いませんか?」
「それは・・・・確かにそうだな」
「正直リスクとリターンが吊り合ってないのよねぇ」
「会長の言う通り、本当に俺や織斑のデータが欲しいならシャルロットのような素人ではなく、専門の教育を受けた本物のスパイを送り込む筈です。でも、そうせずに使い捨ててもいい駒としてシャルロットを送り込んだ。シャルロットは心優しいお人好しな娘です。スパイが務まるかなんて少し接すれば分かる筈なんです」
「・・・・結城、つまりお前は何が言いたい?」
「これは俺と先に相談していた更識会長2人の見解なんですが、アルベール・デュノアはわざと失敗しようとしている。そう思われます」
「「「!!?」」」
馬鹿な! 自国の政府と自分の会社を破滅に追い込むような行為だぞ? 何の為にそんな事を!?
「どうしてそんな事を?」
真耶が聞くと、結城と更識は顔を見合わせた。そして、更識が後を続ける。
「シャルロットちゃんが転校した時からデュノア社の内調を進めていました。時間はかかりましたが、昨日ようやく報告が上がって来ました。その結果、デュノア社は今、経営難に陥り社長派と副社長派の二つに割れている事が分かりました。有利なのは副社長派。社長であるアルベール・デュノアは第3世代機を開発出来ず、フランスがイグニッションプランから外された責任を追求され、危地に陥っています。その危地を脱する為に今回の計画を企てたようです」
「───そんな!?」
デュノアがショックを受けていた。彼女はずっとテストパイロットだけをさせられていて、社内の実状は全く知らなかったらしい。
「そして、副社長派ではとある計画が企てられました。───シャルロットちゃんの暗殺計画です」
「「「!!!?」」」
暗殺とは流石に行き過ぎだ。デュノアはと言うと顔面蒼白になってさっき以上にショックを受けている。隣の結城が肩を抱いて支えていなければ倒れていたかもしれない。
「シャルロット、このまま聞くか? 辛いなら席を外してもいいぞ」
「ううん、聞くよ。僕は何も知らなかった。だから知りたい。いや、知らなくちゃいけないんだ」
デュノアは気丈にも顔を上げた。大した娘だ。この年頃の娘が自分の暗殺計画があるなんて知れば怖くて仕方がないだろうに。この娘を助けてやりたい、同情ではなく切実にそう思った。
「では続けます。副社長派は社長の実子であるシャルロットちゃんを亡き者とし、自らの覇権を確実な物にしようとしたみたいです。庶子であり、公に認められていない彼女なら死んだとしてもテスト中の事故として大した騒ぎにもならない。でも実際には後継者を失った社長派は勢力を失う事になる。ローリスクハイリターンって奴ね。権力争いに巻き込まないように敢えてデュノア姓を名乗らせなかったのが裏目に出たみたい」
「え? 何ですか、それ」
今の更識の説明にデュノアが不思議そうな顔をする。私にも良く分からなかったんだが、どう言う事だろうか。
「シャルロットちゃん。これは調査結果から導いた予測でしかないわ。それでも聞く?」
「聞きます、教えて下さい!」
「分かったわ──アルベール・デュノアには新入社員時代1人の恋人がいたわ。彼女の名はシモーヌ・ブラン。2人はそれは仲睦まじい恋人同士だったそうよ。でも、しばらくしてデュノア社は最初の経営難に陥ったわ。その危機を脱する為に当事のデュノア社社長であるアルベールの父親はアルベールに政略結婚をさせようとしたの。アルベールは当然反発したけど、会社と恋人の間で板挟みになって苦しんでいたわ。そして、それを見かねたシモーヌは自ら身を引いたの。お腹には既に貴女がいる事を隠してね」
「・・・・・・」
「シモーヌに去られたアルベールは政略結婚を受け入れ、現在の妻ロゼンダと結婚。デュノア社はロゼンダの実家の力を借りて経営難を乗り切ったわ。政略結婚でありながら夫婦仲は良好で幸せな日々が続いたようよ。でも、そんな中でアルベールはシモーヌの行方を捜していたわ。突然自分の元を去った恋人に未練があったかどうかは分からないけど、5年後シモーヌは見つかったわ。彼女の側にはアルベールの金髪とシモーヌの紫の瞳を受け継いだ小さな女の子がいたわ。それを知ったアルベールは自分の娘だと直感して2人を迎えようとしたんだけど、シモーヌはデュノア社に関わるつもりは無いと拒否したわ。ただ、自分に何かあった時には娘を頼むとお願いしてたみたい」
「・・・・それじゃあ、私は」
「恐らくだが本妻のロゼンダが本邸に招いたお前を殴ったのは不仲に見せる為の演技だと思う」
「志狼? 演技って・・・・」
「不仲に見せればお前に人質としての価値が無くなると踏んだんだろう。だが、それでも副社長派の魔の手はお前に伸びて来た」
「だからこそ最初から不完全な計画を画策して、その要員として自分の娘をここIS学園に送った。つまりは全て貴女を守る為にやった事だと私達は推察してるの」
「そんな・・・・お父さんは私の為に?」
「ああ。この計画は愛する娘を守る為にアルベール・デュノアが仕掛けた自滅覚悟の策だったと俺達は思う」
「────!!」
とうとうデュノアはポロポロと涙を零し始めた。喜びなのか悲しみなのか、溢れる涙は止まらなかった。真耶は既に貰い泣きしている。親の愛情と言うものを知らない私ですら胸が熱くなってしまった。
「・・・・シャルロット。俺と会長の予測も踏まえて、お前に話せる事は全て話した。その上で聞くぞ。お前はどうしたい?」
「助けたい! お父さんと、お義母さんを、助けたい!」
「さっき屋上で話した一番簡単なやり方。恐らくはあれこそがアルベールの望んだシナリオの筈だ。それでも?」
「それでも!私は2人を助けたい!!・・・・お願い志狼、助けて・・・・」
「・・・・ああ、任せろ」
涙ながらにすがり付くデュノアを抱きしめながら、結城は静かに、だが確かにそう言った。
その結城の目を見た時、私に戦慄が走る。結城の目は青白い炎のような怒りに燃えていた。
~side end
~シャルロットside
「・・・・ああ、任せろ」
志狼がそう言ってくれた。それだけで私の目にまた涙が零れた。それはさっきまで流していた喜びと悲しみの入り混じった涙じゃない。志狼なら、この人なら何とかしてくれる。そう思って零れた安堵の涙だった。
そう言えば2年前のあの時もこうして私を抱きしめてくれたっけ。私は2年前と同じ温もりを感じながら、当時の事を思い出していた。
<><><><><><>
私はフランスの山間部にある小さな村でお母さんと2人で暮らしていました。
お母さんは村にある病院で看護師として働いていました。
人口2000人程の小さなこの村は治安の良い、自然に囲まれたのどかな村でした。
私が生まれたのはパリだったそうですが、生まれてすぐにこの村に引っ越して以来、ずっとこの村で暮らしています。
私にはお父さんがいません。生きているのか、死んでいるのかすら分かりません。以前お母さんに聞いた所、「お父さんは立派な人よ」と言われただけで教えてくれませんでした。私は子供心に何か言えない事情があるのかなと思い、それ以上聞きませんでした。だって、私には大好きなお母さんがいてくれる、それだけで幸せだったから。
───でも、その幸せはある日突然、呆気なく終わりを迎えました。
8月のある日。山間部にある為、夏でもあまり暑くならないこの村で、珍しく汗ばむ程に蒸し暑い日の夜でした。
その日私はお母さんと些細な事で口論をしました。同僚の看護師が風邪をひいて、お母さんが急遽代わりに夜勤に出る事になった為、アップルパイの作り方を教えてくれる約束を破ったと言う、今思えば本当にくだらない事が原因でした。
夜勤に出掛けるお母さんを見送りもせず、私はむくれていました。1人で夕食を摂り、もう寝てしまおうかと思っていた矢先、
突然凄まじい爆発音が村中に響き渡り、何事かと外に出た村人達は絶望的な光景を見ました。
───山が落ちて来る。
私にはそんな風に見えました。
先程の爆発が原因で山崩れが起きたのです。
山から大量の土砂がなだれ落ちて来て、村を飲み込んで行きます。
とにかく逃げなくちゃ。私はそう思って動きました。その後で私が覚えているのは、村人達の怒号や喧騒。土砂が迫る不気味な震動。舞い散る土埃りで目の前は何も見えず、我先に逃げる人や避難誘導している人達の声すら轟音に掻き消され、誰もがただ逃げ惑う事しか出来ませんでした。
どこをどうやって逃げたのか、私は何とか生き延びる事が出来ました。
土砂は村の3分の1を飲み込んでようやく止まり、逃げ延びた人達は辛うじて無事だった公民館を避難所として集まり始めました。
私はそこで見知った人を見付けました。
「セイラ先生!」
「シャルロット!? 良かった、無事だったのね」
先生は私が側に行くと、抱きしめてくれました。セイラ・マス先生はお母さんと同じ病院に勤める女医さんです。お母さんとは同い年だからか仲が良くて、時々うちにも遊びに来るので私も良く知っている人です。
でも良かった。先生が無事ならきっとお母さんも───
「先生。お母さんは? 一緒じゃないの?」
私は周りをキョロキョロしながら先生に尋ねました。先生は急に辛そうな顔をすると、私を更に強く抱きしめました。
「先生?」
「・・・・ごめんねシャルロット。お母さん、シモーヌとは避難する途中ではぐれてしまって、だからここにはいないの。本当にごめんなさい!」
「!?」
先生にそう言われた私はすぐに走り出そうとしたけど、先生に腕を掴まれて止められました。
「離して! お母さんが!!」
「駄目よ! 現場はまだ治まってないのよ!? 貴女にもしもの事があったらシモーヌに何て言ったらいいの!?」
先生は後ろから私を抱きしめます。
「落ち着いてシャルロット。今、村中の人がここに集まって来てるわ。シモーヌも無事なら必ずここに来る筈。一緒にそれを待ちましょう?」
「・・・・・・はい」
この時の私にはまだ冷静な所があったらしく、先生の言う事が正しいと理解して、大人しく従いました。
だけど、1日が経ち、2日が過ぎてもお母さんは姿を見せてくれませんでした。
しびれを切らした私は1人お母さんの捜索に出る事にしました。勿論止められるだろうから、セイラ先生には何も言ってません。
災害発生から2日が経ち、山崩れはようやく沈静化したようで、視界を閉ざしていた土埃りも止んで、周りを見渡す事が出来るくらいにはなりました。
村の警察や消防だけでなく、近隣の村からも応援が来て、現場に立ち入る事が出来ないようにロープを張っています。当然一般人、それも子供の私では立ち入る事は許されませんから、こっそり隙を見て入り込みました。
村の中は酷い有り様でした。のどかで美しかった村の光景は大量の土砂に侵食され、倒れた木々や建物が被害の重さを物語るようでした。
私は取り敢えず病院の方に向かいました。土砂に埋もれた建物は倒壊したものもあればそのまま形を保っているものもあり、そう言う建物には逃げ遅れた人が避難している可能性もあります。現に大勢の大人達が土砂を運び出し、そう言う建物から村人を救出していました。
(───もしかしたら、お母さんもあんな風に避難しているのかも)
私の胸にほんの少し希望が生まれました。私は大人達が救出作業をしているのとは別の場所を捜す事にして、しばらくして土砂に半分埋もれながら倒壊していない建物を見付けました。私は入ってみようと扉を開けて中を覗いてみると、突然ミシミシッと言う音がしました。
「!?」
その音に頭上を見ると、突然建材が崩れ落ちて来ました。私が何も出来ず、立ち尽くしていたその時、後ろから何かが覆い被さってそのまま屋内に滑り込みました。
「きゃああっ!!」
思わず上げた悲鳴は大きな音に掻き消されて、さっきまで私がいた場所は崩れ落ちた建材で埋もれていました。もし、あのまま立ち尽くしていたら───そう思うとぞっとしました。
「危なかったあ・・・・おい、大丈夫か?」
さっき私に覆い被さって来た人物が声かけて来て、思わず私は振り向きました。この村では見た事のない黒い髪と瞳の東洋系の顔立ちをした、私より少し年上の男の人でした。
「おい、本当に大丈夫か?」
「ふえっ!? あ、はい、大丈夫です!」
私は反射的に答えました。
「そうか、良かった。・・・・それで?君はどうしてこんな所に?」
「え!? えーと、私は、その・・・・」
まずい。何てごまかせばいいんだろう? 彼は焦る私をじっと見ていたけど、やがてため息を吐きました。
「まあいい。取り敢えずここから出るぞ。いつまた崩れるか分からないからな」
「あ、はい」
私達は埋もれてしまった扉付近ではなく、窓から外へ出ました。外へ出た私達は建物から離れると向かい合いました。
「あの、助けてくれてありがとうございます」
私は彼にお礼を言いました。
「ああ。君はこの村の娘だよな? こんな所で何してたんだ?・・・・まさか火事場泥棒じゃないよな?」
「ち、違います! 私、お母さんを捜してて・・・・」
私はそう言って事情を話します。その間彼は黙って聞いていました。
「君の事情は分かったがやはりここには居させられない。さっきも危なかったし、お母さんが無事だったとして君に何かあったら元も子もないだろ?」
「・・・・はい」
思った通り反対されてしまい、私は落ち込みました。彼はそんな私を見ると、大きくため息を吐きました。
「お母さんの写真は無い? 出来る限り捜してみるから」
「ホント!? あ、じゃあこれ」
私は携帯の待ち受けにしているお母さんと写った写真を提示し、彼の携帯に転送しました。
「よし、受け取った。お母さんの名前は?」
「シモーヌ、シモーヌ・ブラン。あ、私は娘のシャルロットです!・・・・あの、貴方は?」
「ああ、俺は結城志狼。NGOのボランティアで来たんだ。よろしくシャルロット」
彼──志狼はそう言って左腕に付けたボランティアスタッフを示す腕章を見せました。
これが私、シャルロット・ブランと彼、結城志狼との出会いでした。
この後志狼は私を避難所まで送ってくれました。セイラ先生には叱られたけど、その後私を抱きしめてくれて、私は心配をかけて悪い事をしたな、と反省しました。
志狼はその後も積極的に捜索に加わり、戻る度に経過を教えてくれますが、中々お母さんは見付かりませんでした。
そして、災害発生から4日、志狼と出会ってから2日後の朝──お母さんは物言わぬ変わり果てた姿で発見されました。
その日、起きたばかりの私の前に志狼が現れると、「お母さんが見付かった」と言われました。私は一瞬喜んだけど、すぐに志狼の様子がおかしい事に気付きました。
志狼に促されて彼の後を付いて行くと、着いた先でセイラ先生が涙を浮かべていました。
───そして、先生の足下にはお母さんが眠っていました。
4日振りに会ったお母さんを見て私は全てを悟りました。お母さんが死んでしまった事、そして私が1人ぼっちになってしまった事を。
セイラ先生は私を抱きしめて涙を流しています。だけど、私の目からは一滴の涙も流れませんでした。
私はその日、何も出来ませんでした。食事も、睡眠も、トイレに行く事さえ。何もせずただお母さんの傍らに座り込み、何も言わないお母さんを見つめていました。
心配したセイラ先生や友達に声をかけられたけど、私の心は何も感じませんでした。
夜が明け、朝日が昇り始めた頃、志狼が私の元を訪れました。彼は他の人のように慰めたり、労ったりせず、ただ私の隣に座っていました。
そうして、どれくらいの時間が過ぎたのか、不意に志狼が口を開きました。
「シャルロット・・・・お母さんに何を伝えたかったんだ?」
その言葉に私は微かに反応しました。
「多分だけど、君は別れ際にお母さんと喧嘩でもしたんじゃないか?」
その言葉に今度こそ私は顔を上げて、彼を見つめました。
「どうして・・・・・?」
どうして彼には私が後悔してる事が分かったんだろう?
「当たりか・・・・似てるんだよ。今の君は」
志狼は苦笑しながら私の頭をそっと撫でる。
「・・・・似ている?」
「ああ・・・・母さんを亡くしたばかりの頃の俺に、な」
「!?」
志狼はそう言うと、自分のお母さんの事を話してくれました。
長い間病気で入院していた事。その病気を治す為に医者になると約束した事。些細な事で喧嘩して「嫌いだ」と言ってしまった事。───そして、そのまま二度と会えなくなった事。
「・・・・・・」
話を聞いて私は確かに似ていると思いました。
「・・・・なら志狼はどうやってこの傷みを克服したの?」
私はすがるような気持ちで聞いてみます。けれど志狼は、
「克服? 出来てないよ、そんなの」
「・・・・え?」
あっけらかんと言い放たれ、私は呆気に取られてしまいました。
「母さんを亡くしてもう8年になるけど、未だにこの胸の傷みは消えない。いや、多分一生消えないんだろうな」
「そんな!? それじゃあ私はどうすればいいの?」
「分からない。でもひとつだけ俺に言えるのは、君はこれからも生きなきゃならないって事だ。だって君が今生きてる事が亡くなったお母さんの生きた証になるんだから」
「私が、お母さんの生きた証・・・・」
そんな風に考えた事なかった。
「お母さんに伝えたい事が沢山あっただろう。でも『ありがとう』も『ごめんなさい』も『大好き』も、もう伝えられない。これからも後悔し続けるだろう。でも俺達はこれからも精一杯生きて行かなきゃならないんだ。それが志半ばで逝った、俺達を産み、育て、愛してくれた母さんに対する恩返しになる。俺はそう教えて貰ったよ」
あれ? 急に視界が滲んで来た。
「だから、その傷みを抱えたままでこれからも生きて行くんだ。お母さん、そして何よりシャルロット、君自身の為に」
ああ、もう駄目だ。
「・・・・君は、本当に酷い人だね・・・ずっと、泣かないように、堪えてたのに・・・もう駄目だよ・・・・・・」
今まで出なかった涙が堰を切ったかのように溢れて来る。志狼は私をそのまま抱きしめた。
「いいんだよ、泣いても。大切な人を失って涙を流すのは当然なんだ。今は心のままに思い切り泣けばいい」
「う、うわあ~~~んっ!、お母さん、お母さん、お母さーーーん!!」
私はお母さんを亡くしてから初めて泣いた。ただ心のままに、まるで子供のように思い切り泣いた。志狼にすがり付き、喚き散らし、心の底から泣いた。やがて泣き疲れた私はそのまま眠ってしまいました。志狼に抱きしめられ、彼の温もりに包まれたまま───
あの後、泣き疲れた私は丸一日眠ってしまい、目を覚ますとセイラ先生が側にいてくれました。先生は私の顔を見ると安心したように微笑みました。どうやら私は相当危なそうに見えてたみたいで、先生が言うには今にもお母さんの後を追いそうな雰囲気だったそうです。心配をかけて悪い事をしました。
お母さんを亡くした傷みはやっぱり消えないけど、大泣きしてすっきりしたのか、気持ちは落ち着いています。これも志狼のお陰かな。
彼から貰った言葉が、温もりが私を支えてくれる。会ったらきちんとお礼を言わなくちゃ。そう思ってたのに、いざ志狼と顔を合わせたら何も言えなかった。昨日散々泣き喚いた事や抱きしめられたのを思い出して、真っ赤になって固まってる私に志狼は苦笑を浮かべると、頭をポンポンと軽く叩いて行ってしまいました。それがまた気恥ずかしくって、私は更に耳まで真っ赤になっていました。
こうしてお母さんの死から少しずつ立ち直ろうとしていた私に、翌日更なる衝撃が降りかかりました。お父さんの使いと言う人が現れたのです。
その人はお父さんの会社の顧問弁護士と名乗り、お父さんが私を引き取る為、迎えに来たのだと言いました。
お父さんの会社、デュノア社は私でも知ってるくらいの大企業。その社長が私のお父さんだと言うのです。そもそもお父さんが生きてる事すら知らなかった私には衝撃が大きすぎます。困惑する私に代わり、同席してくれたセイラ先生が話を聞いてくれました。
お父さんとお付き合いしていたお母さんは紆余曲折あってお父さんの元を去り、1人で私を産み、育ててくれました。お父さんは私の存在を数年後に知ったそうです。私の存在を知ったお父さんは引き取る事を申し出たそうですが、お母さんに拒否されました。その代わり自分に何かあった時には頼むと約束していたそうです。
若い頃、2人で撮った写真や、互いに宛てた手紙を証拠として見せて貰って、本当に私のお父さんなのだと納得出来ました。
弁護士さんは一晩、気持ちを整理する時間をくれると言って、一旦帰りました。
一晩考えた結果、私はお父さんの元に行く事にしました。お母さん以外に身寄りの無かった私に実の父親が現れ、引き取ると言ってくれたのですから行かざるを得ないし、何よりお父さんがどんな人なのか興味がありました。
セイラ先生や友達にそう告げると、皆別れを惜しんでくれました。村が大変な時に自分だけいなくなるのは気が退けたけど、お父さんに会ってみたいと言う気持ちは私の中で大きくなり、止められそうもありませんでした。志狼にもお別れを言いたかったのですが、今朝早くから作業に出ていて会えませんでした。
迎えに来た弁護士さんにお父さんの元へ行くと言うと、彼は頷き、車に乗るよう言われました。皆とお別れしてると志狼が来てくれました。道具を取りに戻った所で私が行ってしまうのを聞いて、わざわざ来てくれたそうです。
「シャルロット、お父さんの元へ行くんだって?」
「うん。・・・・色々ありがとう、志狼」
「そうか。お母さんのご遺体は?」
「すぐに引き取りに来てくれるって。パリの方でお墓を用意してくれるんだって」
「そうか、良かったな。じゃあこれを」
志狼は小さな布製の包みを差し出しました。
「志狼、これは?」
「日本の御守り。旅の安全を祈願して、日本を発つ時に妹が持たせてくれた物だ。お前にやるよ」
「いいの? 大事な物なんじゃ───」
「俺は大丈夫。むしろこれからのお前に必要だろうから持ってってくれ。・・・・元気でな、無事を祈ってるよ」
「志狼・・・・ありがとう。大切にするね」
その時、弁護士さんに呼ばれました。出発するようです。
「もう行かなくちゃ。・・・・志狼、私頑張る。お母さんの生きた証として、精一杯生きてみせるよ」
「ああ。頑張れ」
何だか涙が滲んで来た。やだな。これじゃあ彼には泣き顔しか見せてないみたい。せめてお別れくらい笑顔でいたい。そう思って私は笑顔を作りました。
「さよなら志狼」
「ああ。さよならシャルロット」
私は車に乗り込み、故郷を後にしました。
車の中で志狼から貰った御守りの中に何が入ってるのか気になって開けてみました。中には1枚のメモがあって、「何か困った事があったら連絡しろ」と、彼の携帯番号とメールアドレスが書いてありました。
お別れして、もう会えないと思っていた彼とまだ繋がれると知って、私の胸に温かい何かが灯った気がしました。私は早速自分の携帯に登録しました。いつかまた、彼と会える日を祈って───
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そしてパリのデュノア社で私を待ってたのは、思っていたのとは全く違う展開でした。
初めて会った父は冷たく、継母からは殴られた。テストパイロットとして働かされ、学校にも通わず、通信教育で中学の卒業資格を取った。その間、父と過ごしたのは最初に挨拶をした時とお母さんの葬儀の時だけだった。
正直来なければ良かったと何度も思った。けれどその度に志狼の言葉に支えられて何とか頑張って来た。
そして、私は志狼に再び会う事が出来た。お父さんの真意も知る事が出来た。志狼が任せろと言ってくれたんだ。ならば私は彼を信じて自分の出来る事を精一杯やろう。
もう涙も乾いた。待ってて、お父さん。きっと助けてみせるから。
~side end
読んで頂きありがとうございます。
シャルロットの問題は数多のSSで沢山の方々が書いていますが、本作ではこのようにしました。
一応他の方々と被らないようにしたつもりなのですが、もし、どこかで読んだ事があるようでしたらごめんなさい。
次回はシャルロット編完結、の予定です。