二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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大変遅くなりましたが、第44話を投稿します。

モチベーションが下がっていた事に加え、新連載を2本始めてしまい、そちらにかかりきりになってこんなに遅れてしまいました。申し訳ありません。

因みに新連載はダンまちのSS「迷宮都市の影技使い」とハイスクールD×DのSS「ハイスクールD×G~駒王町の規格外品」の2本です。興味があればご覧下さい。尚、「ハイスクールD×G」の方はR-18ですのでご注意下さい。

それでは遅くなった上に短いですが、第44話をご覧下さい。




第44話 学年別トーナメント③~迫り来る影

 

 

~all side

 

 

 1年生の部Aブロックは結城志狼&凰乱音組が優勝した。

 

 

「へえ~、あんなISもあるんだなあ」

 

 Wピットで一夏は甲龍・紫煙(シェンロン・スィーエ)の爆龍モードを見て、呆れとも感嘆とも取れる声を上げた。

 

「ふん。あんなのは只のこけ脅しに過ぎん。それより次は私達の番だ。いつも通り邪魔するなよ」

 

「な!? お前また1人で()るつもりかよ!?」

 

 一夏が批難するも、ラウラは涼しい顔で言い返した。

 

「当たり前だ。素人が戦場をウロウロするなど邪魔なだけだ」

 

「! お前っ!!」 

 

 カッとなりラウラに掴みかかる一夏。だがラウラは冷めた表情で迫る一夏の腕を捻り上げる。

 

「! 痛ててっ、は、離せ!!」

 

 ラウラは手を離すとつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん。これに懲りたら口答えするな。お前は私に従っていればいいんだ。行くぞ」

 

「ちっ、勝手にしろ!」

 

 悪態を吐きながら一夏はラウラの後に続いた。

 

 

 

 

 Eピットに戻った志狼と乱をヴィシュヌが出迎えた。

 

「おめでとう志狼、乱。見事な戦いでした」

 

「アリガト、ヴィシュヌ」

 

「ありがとうヴィシュヌ。ただ、乱はともかく俺は勝ちを拾ったようなものだからなあ」

 

「ええ。正直、箒があそこまでやるとは思いませんでした。私も是非戦ってみたいものです」

 

「アハハハッ、ヴィシュヌらしいね。でも今は目の前の試合に集中だよ?」

 

「わ、分かってますよ、それくらい」

 

 ヴィシュヌの後ろから金髪碧眼のグラマラスな美少女が現れた。

 

「志狼は初めてでしたね。わたしのルームメイト兼パートナーの」

 

「2組のティナ・ハミルトンよ。よろしくね♪」

 

 ティナは明るい笑顔でウインクした。

 

「1組クラス代表の結城志狼だ。こちらこそよろしく、ハミルトンさん」

 

「アハハハッ、堅いなあ。ティナでいいよ」

 

「そうか? じゃあ俺も志狼でいい」

 

「OK志狼!」

 

 志狼とティナは握手を交わした。

 

「ボーデヴィッヒは強敵だぞ。何か対策はあるのか?」

 

「対策と言う程ではありませんが」

 

「まあ、見てのお楽しみって事よ♪」

 

 どうやらヴィシュヌ達には何か作戦があるようだ。

 

「そうか、じゃあ楽しみにしてるよ。頑張ってくれ」

 

「はい。では行きましょう、ティナ」

 

「OK、ヴィシュヌ!」

 

 2人は志狼と別れ、自分のISに乗り込んだ。

 

 

 

 

 先程の試合の興奮も冷めやらぬまま、Bブロック決勝が始まろうとしていた。

 先にEピットからヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー&ティナ・ハミルトン組が入場した。2人は観客の声援に応え、手を振っている。尤も、ヴィシュヌの方はティナに言われてしてたので、若干恥ずかしげではあったが。

 だがその歓声もWピットから織斑一夏&ラウラ・ボーデヴィッヒ組が入場すると次第に消えて行く。これまでの試合で圧倒的な力を見せたラウラに皆が畏怖しているようだった。そんな雰囲気など気にもならないと、ラウラは堂々としていたが、一夏の方は居心地が悪そうだった。

 

 試合開始のブザーが鳴ると、いつものようにラウラが前に出る。そのラウラに向かって、ヴィシュヌとティナの駆るラファールが迫る。

 

「まずは小手調べです!」

 

 ヴィシュヌの駈る赤いラファールが左ハイキックを繰り出す。だが、

 

「甘い!」

 

 やはりシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界(AIC )に阻まれてしまう。

 

「くっ、これが噂の停止結界! 成る程、動けませんね」

 

「我がシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前にはいかなる攻撃も無意味だ!」

 

 ラウラはそう言うと、肩部レールカノンをヴィシュヌに向ける。だが、

 

「後ろががら空きだよ!」

 

 いつの間にかレーゲンの真後ろに位置していたティナの黄色いラファールがバズーカ砲を撃った。

 

「何!? ぐあああっ!!」

 

 命中した砲撃にラウラの集中力が削がれ、停止結界が弛んだ。ヴィシュヌはその隙を逃がさない。

 

「チャンス!」

 

 止められている左脚を軸に機体を捻らせ、右のハイキックを放った。

 

「ハッ!!」

 

「ぐっ!!」

 

 レーゲンがハイキックを食らい、吹っ飛ぶ。その光景を見た観客から歓声が沸き起こる。今までダメージを受ける事のなかったラウラが初めてダメージを受けたのだ。この予想外の展開に観客も盛り上がっていた。

 

「くっ、おのれ!!」

 

 予想外の反撃にラウラは怒りの声を上げる。冒頭の六人(ページワン)になりそこねた代表候補生と名も知らぬ一般生徒のペアなど一蹴出来ると高を括っていた所、いきなりレーゲンのSEを2割も削られてしまった。ラウラは屈辱に身を震わせた。

 

 

 ラウラになりそこねと評されたヴィシュヌは「肉体凶器」と呼ばれた元ムエタイチャンプの母から幼少の頃よりムエタイを叩き込まれ、公式戦無敗、非公式では大人すら倒す程の実力を身に付けていた。

 そんな彼女が量産型ISを偶然動かした事が切っ掛けでスカウトされ、代表候補生となった。それから高い適性と戦闘力を発揮して、たちまち頭角を現す事になる。

 代表候補生同士の模擬戦でも連勝を重ね、このまま行けば序列1位は確実とまで言われていたが、今年の序列決定戦では後半連敗を重ね、結果7位に終わった。

 後で分かった事だが、この日ヴィシュヌは風邪を引いて40℃の高熱を発しながら戦っていたそうで、全ての試合が終わった直後、倒れて病院に搬送された。

 事情を省みたIS委員会タイ支部から、序列決定戦のやり直しを提案されるも、ヴィシュヌは「肝心な時に体調を崩したのは自分の責任。その必要はない」と公言して提案を拒否。己を鍛え直す為にIS学園へ入学し、現在に至っている。尚、非公式ながらタイ本国では「無冠の女王」と呼ばれている。

 

 一方のティナ・ハミルトンは確かに紛う事無き一般生徒である。特徴を強いて挙げるなら、彼女の実家は軍人、それも代々戦車乗りの家系であった。その関係から彼女自身も幼い頃から戦車に慣れ親しみ、ミドルスクールでは仲間達と戦車の競技大会に出場し、見事優勝を果たしている。そのせいか、砲撃に関しては非凡な才能を発揮する。

 陽気で細かい事は気にしない典型的なアメリカン美少女だが、最近は日本のお菓子が気に入って、食べ過ぎで太らないかが悩みの種らしい。

 

 

 ───閑話休題(それはさておき)

 

 

 ヴィシュヌが止められたらティナが、ティナが止められたらヴィシュヌがと、2人は互いの位置を確認しながら巧みに攻撃を仕掛けて、ラウラにダメージを積み重ねて行った。

 2人同時攻撃ならば先の本音・癒子組もしていたのに、何故2人の攻撃は効かず、ヴィシュヌ・ティナ組の攻撃は効くのか。それはAICの欠点を巧く突いている為であった。

 AICは1対1では部類の強さを発揮するが、その発動にはいくつかの制限がある。ひとつは操縦者が多大な集中力を要する事。その為停止結界発動中は他の行動が出来ず、集中が切れると効果も消えてしまう。もうひとつは一方向にしか発動出来ない事。その為反対方向からの攻撃には対応し切れず、このようにダメージを受けてしまうのだ。

 ヴィシュヌは代表候補生の権限で国際IS委員会のデータバンクを閲覧出来る。それによってAICに関して調べ上げ、交互に攻撃すると言う作戦を考えたのだ。

 言ってしまえば単純な作戦だが、単純故にハマれば効果は絶大であった。現にラウラは対処しきれず、ダメージを積み重ねて行った。

 

 観客の誰もが番狂わせが起きるかと注目し、ヴィシュヌとティナはこのまま行けるかも、と思った。だが、ラウラ・ボーデヴィッヒはそんなに甘くなかった。

 

「きゃああああっ!!」

 

 突如ティナの悲鳴が上がる。砲撃の一瞬の隙を突き、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に近付いたラウラはプラズマ手刀を発動させ、ティナのラファールを切り裂いたのだ。いきなり目の前に現れたラウラにティナは対応出来ず、ヴィシュヌが救援に来るまでラウラの攻撃を成す術なく受け続けてしまった。

 

「ティナ! 無事ですか!?」

 

「Oh~、助かったよヴィシュヌ。危うく絶対防御が発動しちゃう所だったよ」

 

「それは良かった・・・・どうやら彼女は貴女をターゲットに定めたようですね」

 

「予想通りだね。私とヴィシュヌじゃどっちが与しやすいかは分かりきってるし。でも」

 

「ええ。やる事は変わりません。行きますよティナ!」

 

「OK、ヴィシュヌ!」

 

 2人はラウラをはさみ撃ちにしようと再度散った。

 

 

「成る程。IS委員会のデータベースでも漁ったか。AICの欠点を突いて来るとは小癪な。だが、このシュヴァルツェア・レーゲンをAICだけの機体とは思うなよ!」 

 

 一方、ラウラにしてみればAICの欠点を突かれるのは想定の範囲内。ただ予想してたより早かった為、虚を突かれ、ダメージを負ってしまった。これはラウラの油断であった。だが相手がAICの欠点を知っていて、それを軸に作戦を立てるなら、それなりの戦い方をすればいい。ラウラは迫り来るヴィシュヌ機とティナ機を迎え撃とうと、6本のワイヤーブレードを射出した。

 

「くっ!」

 

「うわっ!」

 

 6本のワイヤーブレードはまるで生き物のように2人に迫り、攻撃して来る。

 

「食らえ!」

 

 ワイヤーブレードに対処して足を止めたティナに、レーゲンのレールカノンが直撃した。

 

「きゃあああっ!!」

 

「ティナ!? おのれ!!」

 

 パートナーをやられた怒りに、ヴィシュヌはワイヤーブレードを振り切ってラウラに肉薄するが、

 

「ふっ、馬鹿め」

 

 ヴィシュヌの攻撃はレーゲンの停止結界に阻まれてしまう。

 

「くっ、しまった!?」

 

「最後だ、食らえ!」

 

 レールカノンの砲口がヴィシュヌに向く。絶体絶命のピンチにありながら、ヴィシュヌは笑みを浮かべた。だが次の瞬間、その笑みが凍り付いた。そしてラウラの砲撃を至近距離で食らってしまった。

 

「きゃああああっ!!」

 

 ヴィシュヌのラファールがそのまま墜落する。その時、

 

 

『ラファール・リヴァイブのSE残量0。よってティナ・ハミルトン選手、リタイヤです』

 

 

 ティナのリタイヤを告げるアナウンスが響いた。

 

「何!?」

 

 そのアナウンスを不審に思い振り返ると、そこには雪片弐型を携えた白式がいた。

 

「危なかったな、ボーデヴィッヒ」

 

 一夏にそう言われるがラウラには何の事だか分からない。

 

「どう言う事だ、織斑一夏?」

 

 一夏は何があったかをラウラに説明した。 

 

 レールカノンの直撃により撃墜されたと思われたティナだったが、直撃する瞬間、隠し持っていたシールドで辛うじて防御に成功していた。砲撃の威力で吹き飛ばされはしたが、充分に戦闘可能であった。

 そして怒った振りをしたヴィシュヌが突撃し、1対1になったと思い込んだラウラが停止結界を発動させた隙に背後からティナが砲撃しようとしたのを一夏が強襲してティナを撃墜したのだ。

 全てはヴィシュヌとティナの策略であり、ラウラはまんまと策に嵌まった事になる。もし一夏がティナを撃墜しなければラウラは大ダメージを受け、場合によっては撃墜されていただろう。

 結果として一夏に助けられたラウラにしてみれば、屈辱以外の何物でもない。ラウラは機体をピットへ向けて飛び去ろうとする。

 

「おい! どこ行くんだよ!? まだ試合は終わってねーぞ!?」

 

「・・・・興が削がれた。後はお前がやれ」

 

「はあ!?」

 

「ギャラクシーのSEは残り1割もない。お前でもとどめぐらいは刺せるだろう・・・・」

 

 そう言ってラウラは今度こそピットの方へ飛び去ってしまった。

 

「何だよ。勝手な奴だな・・・・仕方がないか。こう言うのは好きじゃないんだけど、俺も負けられないんだ。悪いな」

 

 一夏はそう呟くと雪片弐型を構え、立ち上がったばかりのヴィシュヌに向かって突撃する。

 もうヴィシュヌには抵抗するだけの力は残っていなかった。

 

 

 試合時間13分57秒、1年生の部Bブロックは織斑一夏&ラウラ・ボーデヴィッヒ組が征した。 

 

 

 

 

 

「惜しかったな。後少しだったのに・・・・」 

 

 Eピットに戻って来たヴィシュヌとティナを志狼が労う。

 

「ええ。いい所まで行ったんですが」

 

「あそこで織斑が出て来るとは思わなかったよ~」

 

 そう、ヴィシュヌ達の敗因は一夏が絶対に動かないと思った事。一夏とラウラの仲は最悪だ。2人の間に信頼や友情なんてない。だからこそラウラが危機に陥っても一夏が助けに入るなんて普段の2人を知ってる者からすればあり得ない筈だった。だがラウラが撃破されれば自分が2対1で戦う羽目になると悟った一夏がティナを撃破した事で計算が狂ってしまったのだ。

 志狼も一夏は動かないと思っていた。自分達もヴィシュヌ達と同じ戦法を採ろうとしていた志狼は、作戦の立て直さねばと考えていた。

 

 

 

 

 

「くそっ! くそっ! くそっ!!」

 

 誰もいない廊下にラウラの怒声が響く。身の内の怒りを吐き出すが如く、ラウラはコンクリートの壁を叩き、そのままの体勢できつく唇を噛んだ。今、ラウラの心中は屈辱で一杯だった。

 格下と侮っていたヴィシュヌとティナの策に嵌まり、危うく撃墜される所だったのもあるが、

 

(よりによって織斑一夏(アイツ)に助けられるなんて───!!)

 

 何より腹立たしいのは、その危機を一夏に救われた事だった。

 大会のルール上仕方なくペアを組んではいるが、本来なら真っ先に始末したい相手に助けられるなんて、これ以上の屈辱はない。

 

「くそっ!!」

 

 ラウラは激情のままに再び壁を叩こうとした。だが、その手は壁を叩く前に何者かに掴まれた。

 

「! 誰だ!?」

 

 反射的に掴まれた手を振り払う。そして自分の手を掴んでいた者を見て、ラウラは驚愕した。

 

「───お前は!」

 

「お久し振り、ラウラ・ボーデヴィッヒ少尉。いえ、いまは少佐だったわね」

 

 紫色の長髪のまるで人形のように整った顔立ちの美女がそこにいた。2年前と変わらぬ冷たい美貌にラウラは見覚えがあった。

 

「何故お前がここに・・・・! まさか!?」

 

「まさかとはご挨拶だね。彼女は私の秘書だよ。私が行く所に同行するのは当然じゃないか?」

 

 コツコツと靴音が廊下に響く。暗がりから現れたのは白衣を着た長身の男。その男を見た途端にラウラは自分の身体が震えるのを自覚した。

 自分にとって未だに恐怖の象徴であり、ある意味自分の生みの親とも言うべき存在。その男の名は───

 

「ドクター、Dr.スカリエッティ!!」

 

 以前と変わらぬシニカルな笑みを浮かべて、Dr.ジェイル・スカリエッティは2年振りにラウラの前に姿を現した。

 

 

~side end

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

ティナのモデルは「ガールズ&パンツァー」のケイです。アメリカ人の美少女と言われパッと浮かんだのが彼女でした。ケイは好きなキャラなので神楽のようにモデルに引きずられ、ティナの出番が増えるかもしれません。戦車乗りの設定なんかは完全にケイに引きずられています。

ついに姿を現したDr.スカリエッティ。果たしてラウラに何をする気なのでしょうか。

次回は明日奈・シャル組対簪・沙夜組の対戦と決戦前夜までをなるべく早くお送りしたいと思います。


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