二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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復帰早々感想ならび誤字報告ありがとうございます。
今回は少し短めでお送りします。
ご覧下さい。


第46話 学年別トーナメント⑤~悪魔の誘い

 

 

~all side

 

 

 大会4日目。本日は1年生の部の準決勝と決勝が行われる。2、3年生は休養日となり、明日の最終日に決勝戦が行われる。

 昨日まで勝ち進んだ各ブロックの優勝ペア4組8名の選手達は既に各ピットで待機しており、試合開始を刻一刻と待ちわびていた。

 まず最初にAブロックを征した結城志狼&凰乱音組とBブロックを征した織斑一夏&ラウラ・ボーデヴィッヒ組の対戦。続いてCブロックを征した結城明日奈&シャルロット・デュノア組とDブロックを征したティアナ・ランスター&中嶋昴組の対戦が行われ、其々の勝者ペアが午後の決勝戦で総合優勝の座を争う事になる。

 

 

 

 午前9時55分、中央(メイン)アリーナでは間もなく結城志狼&凰乱音組対織斑一夏&ラウラ・ボーデヴィッヒ組の試合が始まろうとしていた。選手達は既にISを展開し、試合開始の刻を待っていた。

 

「調子はどうだ、乱?」

 

「絶好調です!」

 

 乱は待望の時を迎え、やや意気込んでいるらしい。食い気味の返事に志狼は思わず苦笑する。

 

「落ち着けよ乱。気持ちは分かるが冷静に、な」

 

「う、は、はい」

 

 志狼に言われてようやく自分の状態を自覚したのか、乱は頬を赤くする。

 

「さて、あっちは・・・・どうやら何も変わらないみたいだな」

 

 乱が落ち着いたのを見計らい、志狼は対戦相手である一夏とラウラの様子を窺う。試合前だと言うのに打ち合わせもせず、お互い顔も合わせない2人に志狼は呆れたようにため息を吐いた。

 

「全く、随分と舐められた物です。だったら作戦通り行きましょう!」

 

 乱は怒りの籠った視線を対戦相手の2人に向けた。

 

「勝つぞ乱」

 

「はいっ!!」

 

 2人は拳を打ち合わせた。

 

 

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒは目を閉じて、静かに佇んでいるように見えた。

 

「おいボーデヴィッヒ。この試合どうするんだよ?」

 

 一夏が顔を合わせぬまま訊いて来た。

 

「どうするも何も今まで通りだ。私が全部やるからお前は手を出すな」

 

「──ってお前まだそんな事言ってるのかよ!? 昨日の試合を忘れたのか!?」

 

 痛い所を突かれたのか、ラウラは一夏を睨み付けた。

 

「黙れ! 何度も言うが素人が口を出すな! 気に入らんというなら、まずお前から片付けてやってもいいんだぞ!?」

 

 ラウラは殺気の籠った視線を一夏に向ける。

 

「───ちっ、勝手にしろ!」

 

 一夏は悪態を吐くとラウラから視線を外した。

 

(ドクターのパーツのせいか、確かに反応速度や出力が昨日より上がっている。あの男の手を借りるのは癪だが私にはもう後がない。やるしかないんだ!!)

 

 ラウラは迷いながらも、勝利する為に決意を固めた。

 

 

 

 

「いよいよだねえ~。やっぱり心配?」

 

「べ、別に乱の心配なんかしてないわよ!?」

 

「ん~? 私、らんらんの心配だなんて一言も言ってないよ~?」

 

「ぐっ、アンタアタシを揶揄ってんの!?」

 

「そんな事ないよ~、ほら、りんりんも一緒に応援しよ? しろりんもらんらんも頑張れ~」

 

 志狼&乱組のピットであるEピットに2、3年生の整備科や開発科の生徒がスタッフとして待機していた。その中に志狼の専属整備士である本音がいるのは分かる。だがピットには何故か鈴の姿もあった。 

 昨夜鈴は志狼へ強引に頼み込み、本来関係者以外立入禁止のピットへの入場パスを手に入れてここに来ていた。その根底には従妹である乱が心配だというのもあるが、大会が始まってからずっと嫌な予感がしているのも関係していた。

 

(何も起きなきゃいいけど・・・・乱、志狼、気をつけなさいよ・・・・)

 

 一抹の不安を拭えぬまま、鈴はモニターを見つめていた。

 

 

 

 

 志狼・乱組は開始位置に横に並び、一夏・ラウラ組はラウラのみが開始位置に待機し、一夏は後ろに下がるといういつもの陣形を取る。

 そして午前10時、試合開始のブザーがアリーナに鳴り響く。それと同時に孤狼と甲龍・紫煙(シェンロン・スィーエ)が一斉に飛び出した。

 

「ふん! 予想通りだな。さあ来い!!」

 

 2人を迎え撃とうと意識を集中するラウラ。

 だが孤狼と甲龍・紫煙はシュヴァルツェア・レーゲンを無視するようにその横をすり抜けた。

 

「な!? どういうつもりだ!?」

 

 2人はラウラを無視して、後方に位置する一夏の白式に襲いかかった。

 

「えっ!?」

 

 驚く一夏を尻目に孤狼はグランディネを、甲龍・紫煙はアサルトライフルを乱射する。

 

「なっ! ち、ちょっと待てよ!? お前ら2人掛かりなんて汚ねーぞ!!」

 

 一夏も何とか逃れようと白式を操るが、2人掛かりの弾幕に逃げ道を塞がれ、射撃武器を持たず反撃手段の無い白式は徐々にSEを削られて行った。

 

「くそ、なめるな!!」

 

 その時、一夏が振るった雪片弐型が迫り来る銃弾を弾き返した。それは云わば斬〇剣で銃弾を斬る石〇五右衛門の如き神業であり、一夏の剣の腕が着実に上がっている証拠でもあった。観客は一夏の剣技に驚愕の声を上げた。

 

「どうだ!!」

 

 自らの剣の冴えに得意になる一夏だったが、その時既に孤狼が目の前に迫っていた。

 

「うわあっ!?」

 

 孤狼は拳を光らせ『爆弾』を放つ。咄嗟にガードした一夏だったが、文字通り爆弾が爆発したかのような衝撃に吹き飛ばされ、フェンスに激突する。

 

「ぐはっ!!」

 

 フェンスからずり落ちる一夏に今度は乱が迫る。

 

「チェストオオオーーーーッッ!!」 

 

 大上段からの角武の一撃が白式に直撃した。

 

「うわあああーーーー!!」

 

 乱の一撃は白式のシールドバリアーを斬り裂き、絶対防御を発動させるに至った。そして、

 

『白式SE残量0。よって織斑選手、リタイアです』

 

 試合開始から僅か52秒で一夏は敗退した。

 

「これはタッグ戦だ。悪く思うなよ、織斑」

 

「恨むならパートナーとの連携を怠った自分を恨むのね」

 

 エネルギー切れで待機形態に戻っていく白式を尻目に、志狼と乱は去って行った。

 

「くっ・・・・ちくしょーーーーっ!!」

 

 一夏は悔しげに叫ぶと、右手を強くグラウンドに叩きつけた。

 

 

 

 

 実の所、志狼と乱も対ラウラ戦では昨日のヴィシュヌ&ティナ組と同様の作戦を考えていた。

 結果、一夏が動いた事によりヴィシュヌとティナは敗退した。

 ラウラが一夏の参戦を認めるとは思えないから一夏の独断なんだろうが、どの道一夏を無視する訳にはいかなくなった。

 志狼と乱は昨日の試合からラウラが一夏の参戦を認めるかもしれないと考えもしたが、試合前の様子からそれは無いと判断し、2人掛かりで真っ先に一夏を墜とそうと狙っていたのだ。それは見事に成功し、2対1の有利な状況を作り出せた。

 

「さて、本番はここからだぞ、乱」

 

「はい!!」

 

 気合を入れ直し、2人はアリーナ中央で待つラウラへと向かっていった。

 

 

 

 

「ふん、先に邪魔者を排除したか・・・・まあいい、これで私も心置き無く戦えると言うものだ」

 

 迫り来る孤狼と甲龍・紫煙を見据えて、ラウラは迎撃態勢を取る。

 

「行くぞボーデヴィッヒ!!」

 

「覚悟なさい!!」

 

 先ずは孤狼が拳を光らせて突撃する。

 

「甘いわ!」

 

 だがラウラはレーゲンのAICを発動させ、孤狼の突撃を停める。

 

「何度やってもレーゲンの停止結界は破れんぞ!」

 

「確かに停止結界は強力だ。但し1対1ならな───乱!」

 

 停止結界に止められ、動きを封じられながらも志狼が叫ぶ。

 

「はい!」

 

 志狼の反対側から乱が角武を振り上げて迫る。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、覚悟!!」

 

「ふん!? なめるな!!」

 

 ラウラは肩部のレールカノンで迎撃するが、乱にはただの牽制だと見抜かれ、あっさりと回避される。そして、

 

「乱にばかり気を取られてていいのか? ご自慢の停止結界が弱まっているぞ」

 

「そんな事はーーーっ!!」 

 

 その声に振り向いたラウラが見たのは、両肩のカバーを開いた孤狼の姿だった。

 

「なっ!?」

 

「食らえ!!」

 

 孤狼必殺の『スクエア・クレイモア』が至近距離で炸裂する。

 8発のクレイモア地雷が誘爆を起こし、その爆発に孤狼諸共レーゲンは巻き込まれた。

 

「うわああああーーーーっっ!!」

 

 この一撃で孤狼とシュヴァルツェア・レーゲンのSEは半分近くまで減っていた。停止結界で威力を弱めていたから耐えられたが、まともに食らっていれば試合が終わっていたかもしれない。

 昨日の試合で停止結界の弱点が曝された時点で、今日の試合でも同じように攻められる事は予測していた。だがいきなり切り札の『スクエア・クレイモア』を、しかも自爆同然に使って来るとはラウラも予測していなかった。

 

(───ちっ、いきなり自爆同然で切り札を使って来るとは、何て無茶苦茶な奴だ・・・・昨日までのレーゲンでは危なかったかもしれんな)

 

 シュヴァルツェア・レーゲンの出力は昨日よりも上がっている。それがDr.スカリエッティによるものなのが気に入らないが今はそれ所ではない。すぐに反撃しなければと考えたラウラだったが、生憎ラウラの危機はまだ終わっていなかった。

 

「試合の最中に考え事? 案外余裕あるのね」

 

「!?」

 

 その声が聞こえた瞬間、ラウラは反射的に機体を動かした。

 

「ぐううっ!!」 

 

 微かに衝撃を受けつつ咄嗟に距離を取ったラウラが見たのは、角武を振り下ろした甲龍・紫煙の姿だった。どれ程のパワーを込めたのか、剣先がクレーター状に陥没している。

 

「くっ、馬鹿力め!」

 

 レーゲンもかすっただけだというのに1割もSEが削られていた。乱の一撃の威力にラウラの背筋は震えた。

 

(不味い、奴らの攻撃力がここまでとは!? 一旦距離を置いて態勢を整えねば!)

 

 距離を置き、態勢を整えようとするラウラに、そうはさせじと孤狼と甲龍・紫煙が肉薄する。

 

「くっ、こいつら───!?」

 

 ラウラは志狼と乱の連携に危機に追い込まれていた。

 孤狼と甲龍・紫煙は2対1の数的有利を利用し、常にレーゲンを挟み込むように攻撃し続けている。無論AICに止められるのを考慮し、時間差でだ。絶えず晒される猛攻にラウラは次第に追いつめられていった。

 普段のラウラなら2対1の状況下でも対処出来たのだろう。だが今のラウラは精神的にも追いつめられており、その焦りから冷静な判断を下せずにいた。

 そしてラウラは普段の彼女からはあり得ないミスを犯した。

 

 カチッ!

 

「───なっ!?」

 

 レールカノンの弾切れに気付かなかったのだ。

 

「チャンス!!」

 

 このミスを見逃す志狼では無い。ここぞとばかりに瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動し、一気に距離を詰めた。

 

「ステーク、行けえ!!」

 

「くっ、まだだあ!!」

 

 ラウラは咄嗟にAICで孤狼の動きを停めるが、レーゲンの背後には既に甲龍・紫煙が迫っていた。

 

「食らええええーーーーっっ!!」

 

 

 ───示現流・雷光斬り

 

 

 示現流の奥義の中でも最速を誇る秘剣がレーゲンのシールドバリアを斬り裂いた。

  

「ぐわあああっ!!」

 

 乱の渾身の一撃を受け、シュヴァルツェア・レーゲンのコンディションは一気に機体維持警告域(レッドゾーン)に突入した。

 

「ま、不味い、このままでは!」

 

 急ぎ機体を点検するラウラだったが、目の前に映るスクリーンは真っ赤に染まり、機体は既に戦闘不能に陥っていた。

 

「不味い。マズイマズイマズイマズイマズイ! 私が負ける!? この私が? ラウラ・ボーデヴィッヒがあんな奴等に負けるというのか!?」

 

 試合中の機体状況は管制室でもモニターされている。操縦者の安全を考え、試合を止められるのも時間の問題。その場合、当然ラウラの敗北が決まる。

 

(負ける? 負けたら私はどうなる? 力を示す所か不様に敗北したら私は───!?)

 

 ラウラの脳裏にかつて部隊の底辺まで墜ちた時の記憶がまざまざと甦る。

 上官からは期待外れと罵られ、部隊員から不様と嘲笑され、ドクターからはあっさり見捨てられた。あの時の苦しみや悲しみ、惨めさをまた繰り返すというのか───!?

 

「い、嫌だ。イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!! 私は教官と出会い変わったんだ!私はこんな所で負ける訳にはいかないんだ!動けレーゲン!動け動け動け動け動けえええええーーーーっっ!!」

 

 

 

 ラウラの血を吐く様な叫びに応えたのは、果たして神か悪魔か───

 

 

 

《力が欲しい?》

 

 

 

 どちらでも構わなかった。自分に力を与えてくれるなら誰でも───だから、不意に聞こえた声にラウラは飛びついた。

 

 

「欲しい!」

 

 

《何の為に?》

 

 

「誰にも負けない為に!!」

 

 

《力を得た結果、どうなっても?》

 

 

「構わない! だから、だから私に力をっっ!!」

 

 

 

 最早自分が本末転倒している事に気付かない程、ラウラの精神は追いつめられていた。そして───

 

 

《いいわ。貴女に力をあげる───さよなら、ラウラ・ボーデヴィッヒ》

 

 

「───は?」

 

 

 その声を最後に真っ赤だったスクリーンが眩い光を発すると、ラウラは光に呑み込まれ、その光の中、さっきとは別の機械音声を聞いた。  

 

 

 Damage Level・・・・・D.

 

 Mind Condition・・・・・UpLift.

 

 Certification・・・・・Clear.

 

 

 《Valkyrie Trace System》・・・・・Boot.

 

 

 

(ヴァルキリー・・・トレースシステムだと!? バカな!? 何故あの禁断のシステムがレーゲンに───!?)

 

 不意にラウラの脳裏に昨日のスカリエッティとのやり取りが浮かび上がる。それと同時に自分がナニをレーゲンに取り付けたのかを悟った。

 

(───ではあれが!? 私は、私はまたしても奴に───!?)

 

 ラウラの胸に絶望が満ちる。そして───

 

「あ、ああ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーーーーっっ!?」

 

 絶望の中、ラウラ・ボーデヴィッヒは絶叫した。

 

 

~side end

 

 

 

 

~?side

 

 

 いくつかあるモニターの光しか光源の無い暗い部屋にカチャカチャとキーボードを打つ音だけが響いている。

 

「ん、よし、【ヴァルキリートレースシステム】の起動確認っと。後はドクター達にルートを指示するだけね」

 

 自分の仕事がほぼ終わった事に私が弾んだ声を上げると、

 

「終わったのか?」

 

 今まで気配も感じさせなかった姉の声がした。

 

「ええ。一応不測の事態に備えて待機はするけど、後はそっちに任せるわ」

 

「分かった。では私はドクターを迎えに行って来る」

 

 姉は部屋を出ようと踵を返すが私はひとつ伝え忘れてた事があるのに気付いた。

 

「ああ、それとセインちゃんは当然だけど、念の為チンクちゃんも連れて来るようにってドクターが」

 

 姉は私の声に歩みを止める。

 

「チンクまで? 随分と念入りだな」

 

「私もそう思うんだけど、ドクターが言うからには必要なんでしょ?」

 

「・・・・そうだな。分かった、行って来る」

 

「行ってらっしゃーーーい♪」

 

 姉は今度こそ部屋を出て行った。

 モニターには【ヴァルキリートレースシステム】により変形を始めたシュヴァルツェア・レーゲンの姿が映る。そして、そこに取り込まれるラウラ・ボーデヴィッヒの絶望に染まった表情も。

 

「ウフフ、素敵よラウラ・ボーデヴィッヒ。貴女の最後のステージ、存分に踊り狂って魅せて!」

 

 私は暗い部屋で1人、愉悦の表情を浮かべていた。

 

 

~side end

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
次回はラウラ戦決着までお送りしたいと思います。
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