二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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ラウラ戦、決着です。


第47話 学年別トーナメント⑥~VTシステムの脅威

 

 

~志狼side

 

 

 乱の一撃を食らい、シュヴァルツェア・レーゲンが墜ちる。

 最早機体のダメージは限界を超えている。戦闘不能と判断され、俺達の勝利が決まるだろう。そう思っていた矢先──シュヴァルツェア・レーゲンからドス黒い光が発せられた。

 

「な、何これ!?」

 

 突然の状況に乱が困惑する。

 

「気をつけろ乱! まだ終わってないぞ!!」

 

 俺は乱に警告して様子を見る。

 黒い光の中、全身に紫電を漲らせシュヴァルツェア・レーゲンの装甲がドロリと溶けた。溶けた装甲はそのまま黒い泥のようにボーデヴィッヒの身体にまとわりつく。 

 

「た、助け・・・・」

 

 ボーデヴィッヒは絶望に染まった表情で手を伸ばしたが、微かな助けを求める声と共にそのまま黒い泥に取り込まれた。ボーデヴィッヒを取り込んだ黒い泥は、カタチを変え、やがて全身装甲(フルスキン)型のISの姿を形成していく。

 

「あれは・・・・?」

 

 まるで子供が作った粘土細工のIS──とでもいえるソレが一振りの剣、いや刀を振りかざし、

 

「! 避けろ乱!!」

 

 振り下ろす前に俺は叫んだ。

 

「!!」

 

 咄嗟に動いた事で乱は辛うじて助かった。

 さっきまで乱のいた場所は、黒いISの一撃で深く斬り裂かれている。この技に俺は見覚えが、いや受けた覚えがあった。

 

「この技は箒の、篠ノ之流の奥義・・・・!?」

 

 ヤツの繰り出した技に驚いていると、

 

『結城、凰、逃げろ! ソイツは私だ(・・・・・・)!!』

 

「「!!?」」

 

 突然織斑先生から訳の分からない通信が入る。だが、その時既にヤツは乱に襲いかかっていた。

 

「くっ、この!!」

 

 ヤツの剣を見て織斑先生の言った意味がようやく分かった。ヤツの剣は織斑先生の剣そのものだった。パワーやスピード、技の繋ぎやフェイントのタイミングまで、俺がほぼ毎朝相手している織斑先生の動きそのものなのだ。

 乱も必死に迎撃しようとするが、如何せん剣の腕が違い過ぎる。加えて乱の角武は大刀、一撃の威力には優れているが、取り回しが悪い。たちまち乱は防戦一方となり、SEを削られていった。

 

「不味い、このままでは───」

 

 乱の救援に向かおうとしたその時、

 

「うおおおおおーーーーっっ!!」 

 

 雄叫びを上げて織斑が目の前を駆け抜けた。

 

「な、何やってんだお前は!?」

 

 俺は慌てて織斑の腕を掴み、動きを止める。

 

「邪魔するな結城!・・・あいつふざけやがって、絶対にブッ飛ばしてやるっ!!」

 

 何だか分からんが織斑は激昂している。突然どうしたんだ?

 

「だからって生身でヤツに特攻してどうする!? 自殺行為だぞ!?」

 

 その時、緊急事態を報せるサイレンが響いた。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生。トーナメントは一時中断します。観客の皆さんは係員の指示に従い避難して下さい。繰り返します。緊急事態発生───』

 

 真耶先生のアナウンスが響くと同時に管制室から通信が入る。

 

『こちら管制室の織斑だ。結城、凰、今のアナウンスは聞いたな? 制圧の為の教師部隊を派遣する。お前達は何とかして離脱しろ』

 

「織斑先生、そうしたいのは山々ですが、乱はヤツと交戦中で、俺の方も織斑が・・・・」

 

『織斑がどうした?』

 

「何故かメチャクチャ怒っていて、生身でヤツに特攻しようとしています」

 

『はあ!? 一夏、お前何する気だ!?』

 

「止めるなよ千冬姉!あいつは千冬姉の剣を汚した、絶対に許せねえ!!」

 

 その後も姉弟で言い合ってるが、要は織斑はヤツが織斑先生の剣を使うのが許せないらしい。だがどんな事であれ上達する為に先達の真似をするのは良くある事だし、ヤツが織斑先生の模倣をするのもやぶさかでないと思うんだが、織斑が何故こんなに怒ってるのか理解出来ない。

 こうしてる間にも乱が危ないと言うのに、いつまでもグダグダと・・・・いい加減業を煮やした俺は孤狼の右手のみ部分解除すると織斑に声を掛けた。

 

「織斑」

 

「何だよ!?」

 

 そして、振り向いた織斑の腹にボディブローを叩き込んだ。

 

「ぐふっ・・・結城、お前・・・・・」

 

 織斑の首が落ちる。よし、上手く気絶させられたみたいだ。

 

「織斑先生。非常事態につき織斑には寝て貰いました」

 

『結城、お前・・・・』

 

「俺は目の前で命を粗末にする奴を許すつもりはありません」

 

『・・・・そうだな。すまん結城』

 

 通信を聞いて、俺が何をしたか理解したのか、織斑先生はため息を吐いた。

 

「では俺は織斑をピットへ連れて行きます。先生方は乱の救助を」

 

『ああ、・・・どうした?・・・何!?・・・・くっ、やむを得んか・・・分かった、出撃を許可する

 

 通信の途中で先生の声が遠くなる。どうやら何か不味い事が起きたらしい。

 

「織斑先生? 何かありましたか?」

 

『結城、問題発生だ。教師部隊が出撃不能だ』

 

「何ですって!?」

 

『正確にはすぐには出撃出来ない。準備してあったISのエネルギーが抜かれていた。再チャージまで10分は掛かる』

 

「なっ!? それじゃあ乱が!?」

 

『そっちの救援は別口を手配した。お前は織斑を至急ピットに』

 

「くっ、了解!」

 

 俺は倒れた織斑を拾い上げピットへと急いだ。その途中、ピットから出て来た1機のISとすれ違う。

 

「乱を頼む!」

「任せなさい!!」

 

 すれ違い様、声を掛けると彼女──凰鈴音が頼もしい返事を返した。

 

 

~side end

 

 

 

 

~鈴音side

 

 

 ボーデヴィッヒのISが不気味な変化を遂げると、いきなり乱に襲い掛かった。

 ヤツの剣は速く、そして鋭い。あっという間に乱は防戦一方に追い詰められる。

 

「何よコレ、何なのよ!?」

 

 思わず声を荒げるアタシの耳に山田先生のアナウンスが飛び込んで来た。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生。トーナメントは一時中断します。観客の皆さんは係員の指示に従い避難して下さい。繰り返します。緊急事態発生───』

 

「りんりん、避難命令だよ。私達も避難しなきゃ」

 

「ちょっと待ってよ! 乱はどうなるのよ!?」

 

「多分先生達が部隊を編成して救助する筈だよ。だから私達も急ご?」

 

「でも出て来ないじゃない! ああ、もう!!」

 

「ちょっと、りんりん───!?」 

 

 本音の静止も聞かずにパネルを適当いじくる。全く、嫌な予感的中だわ。何がどうなったのか焦っていると、通信機のスイッチが入ったのか声が聞こえて来た。

 

『ああ、「織斑先生、緊急事態です!」どうした?「教師部隊の出撃が出来ません」何!?』

 

 今、通信ではっきり聞こえた。教師部隊が出撃出来ないと。じゃあ乱は?あの娘はどうなるの?そう思った途端、アタシは口を挟んでいた。

 

「織斑先生! アタシに行かせて下さい!!」

 

『凰か!? 何故お前が「そんな事より先生達は出られないんですよね!? ならアタシに出撃の許可を!」・・・凰、お前の機体の状態は分かってるな?』

 

「はい。だから乱を救出したら先生達が出撃するまでの時間稼ぎに徹します」

 

『くっ、やむを得んか・・・・分かった、出撃を許可する。だが無理をするなよ、凰!』

 

「ありがとうございます!!」

 

 アタシは礼を言って通信を切る。

 

「りんりん、その状態でホントに出撃()るの?」

 

 全部聞いていた本音が眉根を寄せる。

 

「モチよ! あの織斑先生が今のアタシに出撃を許すくらいだもの。それだけ切羽詰まってるのよ。それに──」

 

「それに?」

 

「アタシはあの娘()従姉(あね)なんだから、従妹(いもうと)は絶対守らなきゃいけないのよ!」

 

 アタシは断固たる決意を込めて本音を見つめる。暫し視線が交差すると、本音はいつものフニャッとした顔に戻った。

 

「もう、仕方ないなあ~。気を付けてね、無茶しちゃダメだよ?」

 

「アリガト! 行って来るわ!!」

 

 本音に別れを告げて通用口からグラウンドへ。アタシは左手を吊っていた三角巾を外し、顕になった黒いブレスレットをそっと撫でる。

 

「ゴメンね。アンタがまだ戦える状態じゃないのは分かってるけど、アンタの力が必要なの。お願い、力を貸して」

 

 アタシがそう言うと、ブレスレットが一瞬ボウッと光った気がした。それはまるで「早く暴れさせろ!」と催促しているみたいで、アタシは相棒の頼もしさに思わず笑みを零した。

 

「よし、行くわよ、『甲龍(シェンロン)』!!」

 

 アタシの声にブレスレットが眩い光を発し、一瞬の後、アタシは赤みがかった黒い機体『甲龍』を纏っていた。

 そのまま機体を(はし)らせると、グラウンドからこちらへ向かって来る赤い機体とすれ違う。

 

「乱を頼む!」

「任せなさい!!」

 

 その操縦者──志狼と短い言葉を交わし、アタシは戦場へと踊り出た。

 

 

 

 

 グラウンドではヤツが乱を追い詰めている。良かった、まだ無事だ! アタシは2本の青龍刀『双天牙月』を手にヤツに襲い掛かる。

 

「いい加減にぃ、しろぉっ!!」

 

 だけどヤツはアタシの一撃をいとも容易く受け止めると、凄まじい力で弾き返した。

 

「くっ───!?」

 

 想定外の力に驚いたけど、弾かれた勢いのまま宙返りして軽やかに着地する。

 

「ちょっ───! 何でお姉ちゃんがここにいるの───!?」

 

 その隙にヤツから逃れた乱がアタシに食って掛かる。

 

「ご挨拶ね。助けに来てやったんだから、ありがたく思いなさい」

 

「何言ってんのよ! お姉ちゃんは戦える状態じゃないでしょ!? 怪我人は大人しくしててよ!」

 

 アタシ達はヤツから視線を外さないまま、口論を続ける。

 

「アタシもそうしたかったんだけど、先生達がすぐに出撃()られないらしくて、急遽代役を仰せつかったのよ。それに──」

 

「それに?」

 

「───カワイイ妹をイジメるヤツをお姉ちゃんは許さないのよ!!」

 

 ヤツの斬撃が(はし)る。アタシはそれをかわして左右の青龍刀を叩き込む。

 

「ハアッ!!」

 

 そのまま連続攻撃に入ってもヤツは余裕で受けきる。もっとだ、もっと迅く───

 

「ハアアアアーーーーーッッ!!」

 

 アタシはドンドン回転を上げて左右の連撃を叩き込む。流石のヤツもこの迅さは受けるので精一杯みたい。アタシも精一杯だけどこれだけ時間を稼げば───

 

「お姉ちゃん、どいてーーーーっ!!」

 

 乱の声に反応して咄嗟に跳ぶと、一瞬前までアタシのいた場所に光の奔流がほど走り、ヤツを吹き飛ばした。神龍・紫煙の第3世代兵装『龍雷咆』だ。

 

「ナイスタイミングよ、乱」

 

 甲龍の隣に『爆龍モード』に変形した甲龍・紫煙が並ぶ。

 

「あれだけ時間を稼いでくれたんだから、これくらい当然よ。・・・・アリガト、助けに来てくれて

 

 素直じゃない従妹(いもうと)の態度に思わず笑みが漏れる。でもあれくらいで気は抜けない。現にヤツは『龍雷咆』の直撃を受けた筈なのに平気な様子で立ち上がった。良く見ると黒い泥がウニョウニョと蠢き、受けた損傷を塞いでいく。

 

「ウエ~」

 

「気色わる・・・・」

 

 その不気味さにアタシ達は思わず嫌悪感を示した。

 

「どうやら簡単には終わりそうも無いわね。気合いを入れなさい乱!」

 

「分かってる!!」

 

 ヤツとの第2ラウンドが始まった!

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

VT(ヴァルキリートレース)システム?」

 

 ピットに到着した俺はそこにいた本音に織斑を預け、グラウンドに戻ろうとしていた。その間に織斑先生からボーデヴィッヒの身に何が起きたのか聞いていた。

 

『ああ。簡単に言えば過去のIS競技世界大会 (モンド・グロッソ)部門別優勝者(ヴァルキリー)の動きをデータ化し、その動きを模倣(トレース)するというシステムだ』

 

 成る程。つまりヤツは世界女王(ブリュンヒルデ)である織斑先生の動きを模倣していたという訳か。

 

『確かに一時的には強くなるだろうが、世界最高峰の操縦者の動きを強制的に強いるんだ。その負荷は計り知れず、場合によっては廃人になりかねない危険なシステムだ。当然アラスカ条約で開発も研究も禁止されている』

 

「それが代表候補生、しかも序列1位の機体に仕掛けられていたなんて・・・・ボーデヴィッヒは知ってたと思いますか?」

 

『いや、あいつは知らないだろう。賭けてもいい』

 

「賭けになりませんよ。という事はドイツの・・・・」

 

『軍、もしくは政府の陰謀かもしれんな』

 

 何ともキナ臭くなってきたな・・・・・

 

「先生の見解ではどれくらいボーデヴィッヒは持つと思いますか?」

 

『かなり派手に動いているからな・・・・持って後5、6分という所か』

 

 かなり際どいな。ボーデヴィッヒを五体満足で助けるには、教師部隊の出撃前にヤツを何とかしなくてはならないのか。

 

『結城・・・・私が言うのも何だが、お前が無理する必要は無いんだぞ?』

 

 織斑先生が珍しく神妙な声を漏らす。どうやら以前「ボーデヴィッヒを頼む」と言った事を気にしているらしい。全くこの女性(ひと)は・・・・

 

「まあ、任せてくれとは言いません。でも、出来る限りの事はしてみますよ。以前生徒思いの先生とも約束しましたしね」

 

『結城・・・・』

 

「それに先生のデータと言っても過去のでしょう? 今の先生とどっちが強いんです?」

 

 俺が揶揄うように訊ねると、 

 

『フ、馬鹿にするなよ。今の方が100倍強いさ』

 

「俺はその先生とほぼ毎朝組手をしてるんですよ?」

 

『そうだったな・・・・よし、頼むぞ!』

 

「了解!!」

 

 俺は再び戦場へ踊り出た。

 

 

 

 

 戦いは互角の攻防が繰り広げられていた。

 鈴と乱は見事なコンビネーションでヤツを追い詰めていた。鈴は天性の勘でヤツの動きを読み、素早い動きで出鼻を挫く。乱は要所要所で強力な一撃を放ち、確実にダメージを与えている。

 だがいくらダメージを与えても黒い泥が蠢いてヤツの損傷を再生してしまう。織斑先生の動きを模倣(トレース)した攻撃力とその再生能力は脅威だ。ボーデヴィッヒ自身にも確実に負荷が蓄積されてるだろうし、もう時間が無い。

 

「すまん、遅くなった」

 

「遅いですよ志狼さん!」

 

「今更来たってアンタの出番は無いわよ?」

 

 鈴と乱から不敵な笑顔が零れる。

 有利な状況に心身共にノってるらしい。だがこの状態も今だけだ。乱の甲龍・紫煙は『爆龍モード』の使用でエネルギーが残り少なく、鈴が来るまで一方的に攻撃されていたのでかなりのダメージを受けている。鈴は元々機体、本人共に戦える状態では無い。

 かくいう俺も半ば自爆に近い状態でスクエア・クレイモアを使い、ダメージを受けている。

 つまり俺達はちょっとした事で簡単に崩れ落ちる綱渡りのような状態にあった。だが、これを後少しだけキープさせなくては。

 

「2人共力を貸してくれ。このままだとボーデヴィッヒが危ないらしい」

 

「えっ?」

 

「どういうコトよ?」

 

 俺は織斑先生から聞いたVTシステムの危険性を説明した。

 

 

 

 

「ふ~ん、そういうワケね」

 

「・・・・・・」

 

「2人共、ボーデヴィッヒを助けるのは気が進まないか?」

 

「ふん、ちょっと志狼? このアタシを誰だと思ってんのよ! 確かにあの娘は気に食わないけど、命が懸かってるんなら話は別よ! いいわ、力を貸したげる!」

 

「すまない鈴。乱、お前は?」

 

「・・・・正直あの人は好きになれません。でも、自分の意図しない国の思惑でああなってるなら、助けてあげたいと思います」

 

「そうか・・・・2人共ありがとう。では作戦を説明する。まずは───」

 

 

 

 

「OK、それでいきましょ!」

 

「分かりました。任せて下さい!」

 

「よし、それじゃあ行くぞ!!」

 

 俺の号令で鈴と乱が左右に散る。ヤツは俺を狙いつつも2人を気にしているようだ。

 狙うは一瞬、ヤツが2人と交差するほんの少し前に───!

 

「行くぞ!!」

 

 狼の咆哮のような独特のブースト音を響かせ、孤狼が飛び出す。リボルビング・ステークを構えヤツに迫る。

 だがヤツも織斑先生のデータを元に生まれた怪物。俺の突撃に合わせ、完璧なタイミングで刀を振り下ろした。このまま行けば俺は斬られるだろうが、そうはいかない。俺はここで瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動、スピードを上げてタイミングをずらした。

 このまま行けるかと思ったが、ヤツは返す刀で逆袈裟に斬り上げて来た。

 

「まだだ!!」

 

 ここで俺は二重瞬時加速(ダブルイグニッション)を発動、但し直進ではなく横方向へと加速した。流石のヤツもこれは読めなかったらしい。俺の狙いは斬り上げた刀を持つ両手、そこをヴァリアブル・ナックルで撃ち砕いた。

 これでヤツは武器を無くし、懐がガラ空きだ。

 

「鈴! 乱!」

 

 そこに甲龍が双天牙月を、甲龍・紫煙が角武を構え、左右同時に斬りかかった。

 

「ダブル!」

「シェンロン!」

 

「「クラッシュ!!」」

 

 2人の息の合った合体攻撃がヤツを斬り裂き、覆われていた黒泥が飛び散ってボーデヴィッヒの銀髪が顕になる。

 

「あっ・・・・・?」

 

 ボーデヴィッヒはどことなく呆けた顔をしていた。

 

「全く、手の掛かるお嬢さんだ」

 

 俺は孤狼の両手を部分解除し、ヤツに飛び付く。ボーデヴィッヒを救い上げようとした時、黒泥が俺の手に触れた。

 

「ぐうっ!」

「ああっ!」

 

 黒い泥に触れた瞬間、頭の中に様々な場面()が流れ込んで来た。

 培養槽から出たばかりの銀髪の少女、様々な訓練風景、部隊のトップになり上官から称賛される彼女、白衣の科学者と手術台、変質した金色の左目と暴走、周りから蔑まれる彼女、絶望の日々、教官との出会いと厳しい訓練、黒い眼帯と飛翔するIS、教官との別れ等々───

 

(───これは・・・・ボーデヴィッヒの記憶なのか?)

 

 その記憶に意識が囚われそうになった時、

 

「志狼さん!!」

 

 (パートナー)の声が雷のように響いた。

 

「!!」

 

 その声に覚醒した俺はボーデヴィッヒを抱えて上空へ逃れようとした。だが、

 

「なっ!?」

 

 ヤツの黒泥がボーデヴィッヒの足に絡み付き、逃げられない。ボーデヴィッヒという核さえ失えば跡形も無く崩れ去ると思っていたが、未だにヤツは黒泥を蠢かせ機体を再生しようとしていた。

 

「くそ、操縦者(ボーデヴィッヒ)を逃がさない気か!?」

 

 その時、ヤツの中で何かが光った。

 

《マスター! あの光を撃って!!》

 

 突然頭に響いた声に導かれ、俺はボーデヴィッヒを左腕に抱え直し、右腕にリボルビング・ステークを展開した。

 

「そこかあああーーーーっ!!」

 

 光に向けてステークを撃つと、何かを撃ち貫いた確かな手応えがした。俺は爆発を避けて上空へと退避する。

 ヤツは紫電を発しつつそのまま倒れると、周りに黒い泥を撒き散らしながら、今度こそ動きを止めた。

 

 上空からそれ見ていた俺はどうやら終わったと感じ、ホッと息を吐いた。ふと間近からの視線を感じそちらを見ると、眼帯の外れたボーデヴィッヒが紅と金の瞳を揺らして俺を見つめていた。

 

「悪夢は終わりだ。今は休め、ラウラ・ボーデヴィッヒ」 

 

 俺がマスクを開いて言うと、彼女はゆっくりと目を閉じる。

 

「ア、リ・・・ガ・・・ト・・・・・」

 

 微かな声が風に乗って、俺の耳許に届く。俺が再び視線を向けると、彼女はもう眠りに就いていた。

 

「お休み。せめて今だけはいい夢を」

 

 彼女の華奢な身体を抱えながら、俺は教師部隊が突入して来るのを眺めていた。 

 

 

~side end

 

 

 

 




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