二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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今回より感想の受付を止めさせていただきます。
今後送られても読みも返信もしない事をご了承下さい。理由は感想で酷い事を書かれたからです。
作品に関してであれば私の文章や構成など至らない点や人によって気に入らない点もあるでしょうが、私の人格や人間性まで否定され、憤りを感じ得ませんでした。
そもそも気に入らないなら読まなければいいのに、どうしてあそこまで貶められねばならないのか、本当に悲しくなりました。
読者からの感想は作家のモチベーションを上げも下げもします。感想のひとつひとつに一喜一憂し、感想が原因で書くのを止めてしまった作家もいます。
近くにはツイッターでの酷評が原因で自殺した芸能人もいるくらいですから、読者の皆さんには感想を送る前にどうか想像力を働かせて欲しいのです。あなたのその一言が人の心を傷付ける可能性があるという事を。

長々と愚痴ってしまいましたが第49話をお送りします。
今回で原作2巻分のエピソードが終わります。





第49話 学年別トーナメント⑧~閉幕、そして新しい関係

 

 

~all side

 

 大会5日目、最終日。この日は若干予定を変更し、各学年の決勝戦が行われる。

 昨日、予期せぬトラブルが起きたが、事態が早急に鎮圧され、(一部の国以外)被害も少なかったせいか、アリーナは学園生や来賓、マスコミで今日も満員であった。

 試合は1年生から順に行われる為、アリーナには1年生の決勝進出組(ファイナリスト)、結城明日奈&シャルロット・デュノア組とティアナ・ランスター&中嶋昴組が姿を見せた。

 観客席から歓声が上がり、それに応える4人。そして試合開始のブザーが鳴り、1年生の部の決勝戦が始まった。

 

 Eピット側からはいつもと違い、最初から『ソードシルエット』に換装した明日奈専用機『閃光』が、Wピット側からは青く塗装された昴の駆る『打鉄』が飛び出し、アリーナ中央で激突した。

 

 

 ギイイィィィィンンッッ!!

 

 

 凄まじい音を発する激突は互角。志狼は出力(パワー)技量(テクニック)も上の明日奈と互角に打ち合う昴の実力に感心した。

 

「へえ、やるなぁ昴」 

 

「ええ。昴の格闘能力は1年生でもトップクラスに達しています。この大会で最も実力をつけた1人でしょう」

 

 志狼の声に一緒に観戦していたヴィシュヌが答える。

 昴の所属する3組は実技授業では4組と合同なので、志狼は彼女がどれくらいの実力なのか知らない。最近なのはから直々に教えを受けていると聞いてはいたが、明日奈と互角に打ち合えるとは思わなかった。

 

「昴さんだけではありません。彼女もまた、この大会で更に実力を伸ばしましたわ」

 

 セシリアの声に志狼は視線をオレンジ色のシャルロット専用機『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』と銃撃戦を繰り広げる白いラファールを駆るティアナに向ける。

 テストパイロット上がりのシャルロットの実力は代表候補生のページワンにも引けを取らない。そのシャルロットと互角に渡り合うティアナは志狼と戦った時より一段と力を付けていた。射撃に一家言あるセシリアが認めるくらいだから確かなのだろう。

 

「確かに2人共強くなった・・・・けど、やっぱり地力が違う」

 

 ポツリと簪が呟いた。そして彼女の言った通り試合が動く。徐々に昴の被弾が増えて来たのだ。

 両腕にリボルバーナックルという籠手を装着した格闘戦を得意とする昴が有効打を取るには、相手の懐に入り込まねばならない。試合開始時には想定以上の昴のパワーとスピードに驚いていた明日奈だったが、開始から5分もすると昴の戦い方にも慣れ、対処出来るようになっていた。

 元々『閃光』と呼ばれる程、スピードを生かした独特の剣技を使う上に格闘型との対戦は志狼との模擬戦で慣れている明日奈。昴の戦い方は志狼と良く似ているので対処もし安いだろう。現に先程から迫る昴を素早いサイドステップでかわし、鋭い突きを放ちSEを削っている。

 

「明日奈の突きは一級品だな。志狼、明日奈はどこでこれ程の剣技を身に付けたんだ?」

 

「ん? ああ・・・・・」

 

 箒の質問にまさか趣味のVRMMOゲームで身に付けたとは言えず、志狼は頭を掻いてごまかそうとしたが、

 

「あ、私も興味あります。教えて下さい志狼さん!」

 

 隣に座る乱までが聞いて来た。彼女も示現流の使い手なので剣術には興味津々のようだ。どう説明しようかと思ったその時、明日奈が必殺の一撃を放った。

  

 

 高速8連撃『スター・スプラッシュ』

 

 

 VRMMOゲームで明日奈が得意とした必殺技(ソードスキル)。突きと斬撃の8連撃をまともに受けた昴の打鉄はSEを全損した。

 

 

『打鉄SE残量0。よって中嶋選手、リタイヤです』

 

 

 昴は善戦したが、やはり地力に勝る明日奈が勝利を収めた。

 

 

 

 

 

「ありゃ~、やっぱり明日奈ちゃん相手はまだ早かったかあ」

 

 観客席でなのはが呟く。昴には素質もあるし本人も努力しているが、やはり地力の差は覆せなかった。

 

「これはやっぱり夏休みに『スーパーハードコース』が必要かな?」

 

 ニヤリと笑うなのはにフェイトのこめかみから一筋の汗が流れた。 

 

 

 

 

「勝ったんだね明日奈。なら私も!」 

 

 明日奈の勝利に意気を上げるシャルロット。

 

「負けるもんかっ!!」

 

 ティアナも負けじと気炎を発する。2人のバトルは激しさを増していた。

  二丁拳銃を主武装とした攻撃重視のティアナ。アサルトライフルと盾で武装したバランス重視のシャルロット。2人は高速切替(ラピッド・スイッチ)を駆使してバトルを繰り広げていた。

 二丁拳銃の銃撃から盾で身を守るシャルロット。それに業を煮やしたティアナはバズーカに切替え発射する。

 

「くうっ!」

 

 バズーカの威力に盾ごと吹き飛ばされるシャルロットにティアナはバズーカを二丁拳銃に切替え追撃する。しかしシャルロットはアサルトライフルをショットガンに切替え、ティアナの追撃を許さない。

 

「ちっ、やるわね!」

 

「貴女こそ!」

 

 シャルロットはショットガンを連射しながら距離を詰めると、ティアナに盾を叩きつけた。

 

「ぐっ!」

 

 一瞬シャルロットを見失ったティアナの前に長大なランスが迫る。辛うじて直撃を避けたティアナだったが、かすっただけでSEをガリガリと削られる。

 

「このっ!」

 

 二丁拳銃を構え反撃しようとしても、シャルロットの機影は既に射程外にあった。

 ティアナは後を追い、更に激しいバトルを繰り広げる。だがバトルの趨勢は次第にシャルロットへと傾いていった。

 2人の実力にほとんど差は無い。ならどこで差がついたのか、それは機体にあった。2人が使ってる機体は「空飛ぶ武器庫」の異名を持つラファール・リヴァイブ。だがシャルロットの機体は拡張領域(バススロット)を拡張したカスタム機だ。ティアナの通常型ラファールの搭載出来る武器は10個が限界。しかしシャルロットのラファール・リヴァイブ・カスタムⅡは実に20個もの武器を搭載出来るのだ。高速切替を駆使する2人に武器の差はそのまま戦闘力の差として反映する。

 加えてテストパイロットとしてあらゆる武器を使いこなす必要のあったシャルロットと自分の戦闘スタイルを早くから確立し、それを磨いて来たティアナでは対応力に差が出た。そして───

 

「行けええっ、『盾殺し(シールド・ピアース)』!!」

 

「きゃあああっ!!」

 

 シャルロットの『盾殺し』の一撃がティアナのラファールを貫き、SEを全損させた。

 

 

『ラファール・リヴァイブのSE残量0。よって学年別トーナメント1年生の部は結城明日奈&シャルロット・デュノア組の優勝です!!』

 

 

 真耶のアナウンスが響くと、アリーナが拍手と歓声に包まれた。

 歓声の中、笑顔でシャルロットに抱きつく明日奈と歓びの涙を浮かべるシャルロット。2人を祝福するように歓声が響いていた。

 

 

 

 

「優勝か・・・・やっぱりちょっと悔しいかも」

 

 乱がポツリと呟く。

 

「学年別トーナメントは毎年やってるんだ。また来年頑張ればいいさ」

 

「クスッ それは来年もペアを組もうっていうお誘いですか?」 

 

 志狼の言葉に乱が悪戯っぽく微笑む。

 

「ちょっと待て乱! 来年も志狼とペアを組もうだなんて許さんぞ!!」

 

「箒さんの言う通りです! 来年志狼さまとペアを組むのは私ですわ!!」

 

 2人のやり取りに箒とセシリアが途端にいきり立った。

 

「3人共、来年もタッグ戦になるとは限りませんよ」

 

「無駄だよヴィシュヌ。誰も聞いてないから」

 

 簪の呟きに志狼は苦笑を浮かべ、かしましく騒ぐ少女達を見つめていた。

 

 

 

 

「ティアナも負けちゃったか。残念だったねなのは・・・・なのは?」  

 

 試合が終わり、なのはに話かけたフェイトだったが、返事が無いのを不思議に思いそちらを向くと、笑顔でドス黒いオーラを漲らせるなのはがいた。

 フェイトのこめかみから再び一筋の汗が流れた。

 

「ウフフフ。そっかあ、ティアナも負けちゃったかあ~。これは『スーパーハードコース』じゃ足りないかな? なら夏休みは『ウルトラスーパーハードコース』に決まりだね。楽しみだなあ、ウフフフフ・・・・」

 

「な、なのは? そろそろ私達も用意しよう?」

 

 勇気を振り絞ってフェイトが声をかける。

 

「あ、そうだね。それじゃあ行こっか。このフラストレーションは全部試合にぶつけるとしようか、ウフフフフ

 

 なのはの後を追いながらフェイトは対戦相手に心の中で合掌した。

 

 

~side end

 

 

 

 

~乱side

 

 

 5日間に渡って繰り広げられた学年別トーナメントもようやく終わった。途中トラブルもあったが、今はこうして無事閉会式を迎えていた。

 学園長の総評や来賓の挨拶が終わり、今、アリーナでは各学年の優勝ペア6人が揃って表彰されていた。

 1年生の部の優勝ペアは明日奈さんとシャルロットさん。代表候補生とテストパイロットの2人は高い技量を誇り、試合でもその実力を遺憾無く発揮、見事優勝に輝いた。

 2年生の部の優勝ペアはなのはさんとフェイトさん。圧倒的な実力を見せつけて優勝した。特に決勝戦は圧巻で、なのはさん1人で対戦相手2人を瞬殺し、『白き魔王』の恐ろしさを改めて思い知らされた。

 3年生の部の優勝ペアはダリル・ケイシー先輩とイレーネ・ウルサイス先輩。下馬評通りの実力を発揮し優勝。アメリカ代表候補生序列1位のダリル先輩は元より、イレーネ先輩もIS学園3年生の実力の高さを世界中に見せつけた。

 

 

「昨日は納得していた筈なんですけど、こうして見てると、やっぱり悔しいですね・・・・」

 

 表彰台の6人を見つめ、私はポツリと呟いた。

 

「後悔してるか?」

 

 志狼さんに訊かれ、私は首を横に振った。

 

「ううん。ただ志狼さんと2人であそこに立ちたかったなって・・・・」

 

 そんな私に志狼さんは右手をそっと差し出した。

 

「志狼さん?」

 

 志狼さんの意図が分からず、小首を傾げると、

 

「ありがとう乱。俺がこの大会を戦い抜けたのは君のお陰だ。乱とペアを組めて良かった。だから、ありがとう」

 

「あ・・・・・・」

 

 志狼さんに言われ、私の胸に様々な想いが沸き上がった。

 今大会で私は概ね目標を達成する事が出来た。ラウラ・ボーデヴィッヒは打倒したし、ベスト4になり代表候補生としての面目も保てた。ついでにお姉ちゃんの評価も上がってるらしいし、達成出来なかった事と云えば優勝くらい。これも全て志狼さんというパートナーがいたからだ。 

 思えばこの数週間、最も多くの時間をこの男性(ひと)と一緒に過ごし、お互いのいい所も悪い所も知った。

 そんなペアとして過ごす期間が終わった今、私の胸によぎるのは寂しさだった。この男性(ひと)をもっと知りたい、この男性ともっと一緒にいたいという想いだった。 

 

「乱?」

 

「へ? あ、いえ、こ、こちらこそありがとうございます志狼さん」

 

 いつまでも反応しない私は志狼さんに声をかけられ、慌てて返事をして、差し出された右手を両手で握り返した。

 

(そう言えば初めて会った時もこんな風に握手したっけ・・・・)

 

 あの時と変わらない手の温もり。これを隣で感じられなくなるのは───

 

(嫌、だな・・・・・)

 

「乱?」

 

 いつまでも手を離さない私に志狼さんが声をかける。その声に押されるように、心の赴くままに私は動いた。

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side  

 

 

 俺の手を握ったまま離さない乱にもう一度声をかける。

 

「乱? ら、んん!?」

 

 いきなり乱の顔がアップになると、一瞬、唇に微かな温もりを感じた・・・・・・え? これって乱にキスされたのか? 頬とかじゃなく唇に?・・・・いかん、いきなりの事で頭が働かない。

 

恋敵(ライバル)が多いのは分かってるけど、私も諦める気は無いですから・・・・だから、これからもよろしくお願いしますね、志狼さん♪」

 

 はにかみながらも悪戯っぽく微笑む乱はとても可愛らしく、

 

「あ、ああ」

 

 俺はそう返事するのが精一杯だった。幸い一瞬だったし、周りの皆は表彰式に目を奪われ、気づかれなかったようで助かったが、

 

(鈴に知られたら何て言われるかな・・・・・)

 

 つい先日釘を刺されたばかりの乱の従姉(あね)を思い浮かべ、俺はそっとため息を吐いた。

 

 

~side end

 

 

 

 

~真耶side

 

 

 5日間に渡って開催された学年別トーナメントも何とか終わりました。

 今年は2人1組のタッグ戦の為、例年より試合数は少なかったのですが、予想外のトラブルがあり、私達教師は事態の収拾に奔走していました。

 トラブルの原因であるボーデヴィッヒさんとシュヴァルツェア・レーゲンは機体、操縦者共にドイツ政府から引き渡しを要求されましたが、学園が証拠隠滅の恐れを各国政府や国際IS委員会に訴えると、各々がドイツ政府に圧力をかけ、要求を退ける事に成功しました。

 協議の末、ボーデヴィッヒさんの身柄はこのままIS学園で預かる事になり、機体はIS委員会の監査が入る事になりました。危険なVTシステムを搭載していたのだから当然の措置であり、その結果次第では廃棄処分もあり得るそうです。

 更にボーデヴィッヒさんの証言からドイツ科学局のDr.スカリエッティの関与が疑われました。また、生徒会長の更識さんからもDr.スカリエッティが学園地下特別区画に戦闘機人を連れて侵入し、更識さんとの戦闘の末、逃亡したとの報告がありました。

 ドイツ政府はスカリエッティの私邸を捜索しましたが、最初から雲隠れするつもりだったらしく既にもぬけの殻で、私財や研究成果など何も見つからず、今回の件が計画的犯行であると断定。これによりDr.ジェイル・スカリエッティは危険なテロリストとして国際的に指名手配される事になりました。

 

 

 

 

 時刻は午後6時、もうすぐ夕飯時です。私は連絡事項があって志狼君を捜していました。

 角を曲がると、ちょうど食堂へ向かう志狼君を発見しました。明日奈さんとデュノアさんも一緒です。

 

「志狼君!」

 

 私が声をかけると、志狼君が振り向きました。

 

「こんばんは真耶先生。先生も夕食ですか?」

 

「こんばんは志狼君。それがまだ仕事があるんですよ。明日奈さん、デュノアさん、優勝おめでとうございます。素晴らしいバトルでしたよ」

 

「「ありがとうございます!」」

 

 私の賛辞に2人は嬉しそうに声を揃えました。

 

「それで、何かご用ですか?」

 

 志狼君に聞かれ本題に入ります。

 

「あ、はい、朗報ですよ。何と今日から男子にも大浴場が開放される事になりました!」

 

 私がそう言うと、志狼君は嬉しそうに声を上げました。

 

「本当ですか!?」

 

「はい。学園側と交渉して、月1回のボイラー点検の日だけになりますけど、早速今日から入れますよ」

 

「おお! ありがとうございます真耶先生!!」

 

 志狼君は大喜びで私の手を握った。よく訓練が終わった後に「足を伸ばしてのんびり風呂に入りたい」と溢していましたから、珍しく全身で喜びを表しています。ここまで喜んでくれると私も頑張って交渉した甲斐があります。

 

「コホン、兄さん? いつまで真耶先生の手を握ってるのかしら?」

 

 明日奈さんに言われ、志狼君は慌てて手を離してしまいました。ちょっと残念に思ったのは内緒です。

 

「すいません真耶先生。ちょっと感激して・・・・」

 

「い、いえ、構いませんよ。コホンッ それと注意事項なんですが、男子は2人しかいませんから大浴場の使用時間が7時から9時までの2時間だけなのと、全部の施設が使える訳ではありませんから気をつけて下さいね」

 

「はい、分かりました」

 

「では、楽しんで来て下さいね」

 

「はい!」

 

 私はそう言って志狼君と別れました。さて、もう一頑張りして仕事を片付けるとしましょう。

 

 

~side end

 

 

 

 

~シャルロットside

 

 

 食堂へ向かう途中で山田先生から大浴場を使えると聞いた志狼は珍しく上機嫌だった。

 

「そんなに嬉しいの、志狼?」

 

「そりゃあそうさ。日本人はシャワーより風呂、足を伸ばしてゆっくり湯船に浸かるのは最高だぞ。シャルロットだって大浴場は使った事あるんだろう?」

 

 そう言われて初めて大浴場に入った時の事を思い出す。確かに学園の大浴場は広い。種類もサウナや水風呂、ジェットバスや打たせ湯なんかもあり、フランスにいた頃はシャワーばかりだった私も今ではお風呂の方が気に入っている。

 

「ん~、確かに大浴場のお風呂は気持ちいいよね」

 

「だろ? 皆から聞いて羨ましかったんだ。今から楽しみだよ」

 

「ふ~ん、そっか・・・・・」

 

 私は敢えて気の無い素振りをしたけど、これはチャンスかもしれない。

 今日表彰されている時、偶然観客席を見たら、志狼が乱ちゃんにキスされてた。

 驚いたけど、何より私の胸に浮かんだのは「やっぱり」とか「先を越された」という気持ちだった。大会でのパートナーは仕方なく譲ったけど、これ以上譲る気なんて無い。ただでさえ恋敵(ライバル)は多いのだから私も頑張らなくちゃ!

 私はこれからの事を考え、決意を新たにした。

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

 カラカラと軽い音を立てて曇りガラスの扉を開けると、どこのスパリゾートかという光景が広がっていた。

 

「こりゃまた、凄いな・・・・・」

 

 IS学園大浴場は俺の予想を遥かに越えていた。

 一度に30人は座れそうな洗い場、温泉旅館のように大きな浴槽が用途別にいくつも用意されていた。更にはサウナや全方位シャワー、滝のようにお湯が落ちて来る打たせ湯なんかもあった(残念ながらいくつかは使用出来なかったが)。

 

「いやはや、これだけの施設ならたった2人に開放するのを無駄と思われても仕方がないか。甘く見てたな」

 

 そう。今まで男子に大浴場が開放されなかったのは予算の問題が第一だった。これ程の施設、維持管理費だけでどれだけの予算がかかるのか。それをたった2人に開放するとなれば予算の無駄と言われても仕方がない。本来は時間を決めて男女交代制にすればいいのだが、今のご時世男の先にも後にも入りたくないと主張する女は多い。ましてや年頃の少女ならば尚更だ。

 そんな中、こうして大浴場の使用許可が下りたのは、上と掛け合ってくれた副寮長の真耶先生のお陰だ。日頃から色々お世話になっている事だし、近い内に何かお礼したいものだ。

 

「! 結城・・・・」

 

 そんな事を考えていると、先に入っていたのか織斑が奥の方からやって来た。

 昨日気絶させてから顔を合わせていなかったので何か言われるかと思ったが、織斑は何も言わず大浴場を出て行った。いつものあいつなら噛みついて来るとばかり思っていたので少々拍子抜けした。あいつも少し変わったんだろうか。

 

「っと、そんな事より風呂だ風呂!」

 

 俺は備え付けの洗面器を手に取り、洗い場へ向かう。適当な所に陣取り、自前のシャンプーで頭を洗い始めた。

 泡を洗い流しているとカラカラと扉の開く音が聞こえた。織斑が忘れ物でもしたのかと思ったが、背後に人の気配を感じると、突然背中に柔らかなものが押しつけられた。

 

「えっと、背中流すね、志狼」

 

「シャ、シャルロット!?」

 

 そう、そこにはぴったりと俺に身体を押しつけているシャルロットがいた。バスタオル1枚のあられもない姿で。

 

「おまっ? 何やってんだ!?」

 

「あ、動かないで。ちゃんと洗えないよ」

 

「いや、そーゆう問題じゃなくて」

 

「お願いやらせて・・・・ダメ?」

 

 上目遣いで懇願する彼女に、不味いとは思いつつも、俺は身動きが出来なかった。

 

「・・・・分かった。なら背中だけ頼む」

 

「うん!」

 

 俺が観念すると、シャルロットは嬉しそうにタオルにボディソープを塗布して背中を擦る。彼女の優しい手つきが心地いい。

 

「んしょ。どう志狼、気持ちいい?」

 

「ああ、いい気持ちだ」

 

「ホント? 良かった。じゃあ、続けるね」

 

 シャルロットが嬉しそうに微笑む。

 

「志狼の背中ってやっぱり大きいね。男の人って感じがする」

 

「そりゃあ、男だしな」

 

「クスッ そうだね。さ、流すよ」

 

 シャルロットはシャワーノズルを手にすると、身体中の泡を丁寧に洗い流した。

 

「はい終わり! さっ、お風呂に入ろ!」

 

「ちょっ、おいシャルロット!?」

 

 強引に立たされると、そのまま背中を押され湯船に入れられた。

 

「おい、シャルロ、ット・・・・・・」

 

 湯船に足を入れつつ振り向くと、シャルロットは俺の目の前で身体を覆うバスタオルを解いた。

 

「!?」

 

 一糸纏わぬ裸身が俺の前に晒される。

 金色に輝く髪と濡れた紫の瞳。白い肌は熱いのか羞恥なのか赤く上気し、滑らかな曲線を描いている。案外胸は豊かで、よくこの大きさを隠していられたなと感心してしまう。

 薄紅色の頂も淡い金色の繁みも惜し気もなく曝す彼女に見蕩れ、俺は言葉を失っていた。

 今のシャルロットを見れば硬直してしまった織斑の気持ちも分かる気がする。と同時に織斑も見たのかと思うと、何となく腹が立った。

 

「そんなに見つめないで。恥ずかしいよ・・・・」

 

 益々顔を赤くして恥ずかし気に顔を反らすシャルロット。だが気になるのかチラチラとこちらを盗み見ている。当然ながら俺も全裸だ。しかもいきなり押しやられたせいか、隠す物は何も持っていないので丸出しだ。

 

「恥ずかしいならするなよ。で? 何故こんな真似をするんだ?」

 

「えっと、助けてくれたお礼と日頃の感謝を伝えたくて・・・・私に出来るのはこれくらいだし」

 

「だからってこんな真似は・・・・」

 

「あれ? 志狼ってこういうの好きだって聞いたんだけど・・・違った?」

 

 いや、好きか嫌いかで言えば間違いなく好きだが、何でシャルロットがそんな事知ってるんだ?

 

「・・・・・誰から聞いた?」

 

「明日奈から。以前やったら凄く喜んでくれたって教えてくれたけど?」

 

 お前か妹よ!! そりゃあ、やって貰った時は嬉しかったけど、お前が小学生の時の話だろ!?

 色々と誤解しているシャルロットにどう説明すればいいか頭を悩ませていると、彼女も湯船に入り、俺の目の前に立つ。

 

「シャルロット・・・・そんな真似をして俺が何もしないと思ってるのか? 正直我慢の限界なんだ、このまま食っちまうぞ?」

 

 昂りを抑えるのももう限界だ。こう言えば退いてくれるかと思ったんだが、

 

「・・・・・うん、いいよ。しても」 

 

 そう言ってシャルロットはぴったりと抱きついた。予想外の展開に心臓がドクンと跳ねる。

 

「シャルロット・・・・」

 

「我慢しないで志狼。私もその、き、興味はあるし、志狼が相手なら全然嫌じゃないよ」

 

「シャルロットお前、───んん!?」

 

 シャルロットが自分の想いを伝えるかのように、唇をそっと重ねる。彼女の唇の感触が、甘い吐息が、押しつけられた身体の柔らかさが俺の官能を刺激する。

 たっぷり数10秒してから唇を離し、シャルロットは微笑んだ。

 

「難しく考えないで、志狼。私はただ、好きな人に抱かれたい、誰よりも貴方を側で感じていたい、ただそれだけなの・・・・・それとも、私じゃダメ?」

 

 シャルロットは俺の頬に手を当て、上目遣いで俺をみつめる。紫の瞳が不安そうに揺れていた。

 不意に彼女に対する愛しさが胸に溢れる。ここまでされて俺もようやく覚悟を決めた。倫理観や道徳心やらを棚に置いて、俺はシャルロットを抱きしめた。

 

「・・・・いいんだな。途中で止めたりはしないぞ?」

 

 俺が最後に訊ねると、シャルロットは艶っぽく微笑んだ。

 

「うん、来て───」

 

 そして彼女はそっと目を閉じた。今度は俺から深く唇を重ね、彼女の裸身を強く抱きしめた。

 

 

~side end

 

 

 

 

~ウーノside

 

 

 妹達の活躍でIS学園から脱出した翌日、私とドクターは日本のとある街のカフェテリアで人を待っていました。

 今回の件ではドイツの庇護を失い、国際指名手配されましたが、こちらの目的は達成出来たので問題はありません。

 ドクターが今回の件(関係者の間ではVT事件と呼ばれているそうです)を起こしたのは、とある組織からスカウトされた事が切っ掛けでした。

 その組織からもたらされた情報に興味を持ったドクターは、その正否を確かめる為に学園地下特別区画への侵入を計画、その為シュヴァルツェア・レーゲンに秘密裏に搭載していたVTシステムを利用する事にしました。

 そしてラウラ・ボーデヴィッヒの不安を煽り、VTシステム起動の引き金となるパーツを渡して使うように仕向けたのです。

 発動したVTシステムにより学園は混乱に陥り、その混乱に乗じて私とドクターは地下特別区画に侵入しました。セイン達には混乱を長引かせる為、教師部隊のISからエネルギーを抜き、更に無人機の残骸の回収を命じました。あれを作ったのは恐らく篠ノ之束。今現在の彼女の技術力を知る貴重なサンプルとして是非欲しかった物です。

 そして地下特別区画にあった暮桜を確認し、組織の情報を正しさを認めたドクターは組織への参加を表明、組織のエージェントと会う為にここへ来ました。 

 

 約束の時間ピッタリに1人の女性が入店して来ました。年齢はよく分からない。20代にも40代にもとれるサングラスを掛けた金髪の美女でした。

 彼女はまっすぐにこちらへ近づいて来ます。

 

「初めまして、Dr.ジェイル・スカリエッティ。お待たせしてしまったかしら?」

 

「いや、時間通りだよ。こんな美女のお迎えとは光栄だね」

 

「あら、こんな可愛い娘を連れていながらお上手ですこと」

 

 その美女は艶然と微笑みながら、私に視線を向ける。私は小娘扱いされた気がして不機嫌そうに睨みつけるも、彼女は微笑を崩さず見つめていました。

 

「・・・・あまりうちの子を揶揄わないでくれるかな。それよりも早く連れて行ってくれないか。『彼』の元へ」

 

 ドクターの言葉に彼女は姿勢を正し、深々と一礼しました。

 

「失礼しました。それでは『あの方』の元へご案内しましょう」

 

 彼女に促され、私とドクターは席を立つ。外に向かう途中でドクターが思い出したように尋ねました。

 

「そういえば、まだ貴女の名を聞いてなかったな」

 

 すると彼女は振り返り、サングラスを取って名乗りました。

 

「申し遅れました。私はスコール。スコール・ミューゼルと申します。───Dr.スカリエッティ、ようこそ『亡国機業(ファントム・タスク)』へ」

 

 

~side end

 

 

 

 

~明日奈side

 

 

 週明けの月曜日。いつも通り兄さんと朝食を摂って登校する。

 

「おはよう、志狼、明日奈」

 

 寮の玄関でシャルロットに声をかけられ、一緒に登校する。

 登校中トーナメント優勝の影響か、私やシャルロットは周りから声をかけられた。男に成りすましていた件で彼女を良く思ってない人達の態度も軟化したようで、これからは学園でも過ごし安くなればいいな。

 彼女とペアを組んで過ごす内に私達もかなり打ち解け、今では親友と呼べる間柄だ。彼女の事情やら兄さんとの馴れ初めやらも聞かせて貰い、私も自分の事情を話してから、お互いを恋敵(とも)だと認識しあっていた。

 その彼女だけど、ここ最近兄さんとの距離が妙に近い。以前は拳一個分は空いていた距離が密着するまでに縮まっている。尤もそれはシャルロットだけじゃなく、乱ちゃんもなんだけど・・・・

 

 

 教室に着いてクラスメイトと雑談していると、ボーデヴィッヒさんが登校して来た。皆も彼女に気付き教室が静まる中、チャイムが鳴り先生方が入って来た。 

 真耶先生が教壇に立ち、HRを始めようとした時、勢い良くボーデヴィッヒさんが立ち上がった。

 

「失礼します織斑きょ、いや、先生。少しお時間を頂けませんか?」

 

 そうボーデヴィッヒさんに言われ、織斑先生は少し驚いていた。それは私達も同じ。彼女が織斑先生を「教官」と呼ばなかったのは初めてだったから。

 

「ふむ、まあいいだろう。何だ?」

 

 織斑先生がニヤリと笑って許可を出す。ボーデヴィッヒさんは先生に一礼すると、教卓前に移動して教室内を見渡してから口を開いた。

 

「───まずこの度は我がドイツの不手際で皆に迷惑をかけた。そして私の、皆に対する今までの態度についても謝罪したい。私は今まで軍という狭い世界で生きて来た。それ故にこの学園の雰囲気に馴染めず皆にもキツい態度を取ってしまった。だが私はいつまでもこのままではいけないと、変わらねばならないと悟った。今更虫のいい話だと思うが、改めてこのクラスの一員として受け入れて欲しい。───よろしく、お願いします」

 

 そう言ってボーデヴィッヒさんは深々と頭を下げた。

 突然の事に戸惑い、どうすればいいか分からなかったけど、兄さんが拍手し始めると、それに追随するように教室中に拍手が広がっていった。

 その拍手の中、「ありがとう」と呟き、皆に一礼したボーデヴィッヒさんは織斑君の前に移動し、再び頭を下げた。

 

「織斑一夏。お前にもすまない事をした。後程凰達にも謝罪するが、先ずはお前に──すまなかった」

 

「あ、ああ、分かった。鈴に謝るっていうなら俺も構わない。謝罪を受け入れるよ」

 

「そうか、ありがとう」

 

 織斑君に謝罪したボーデヴィッヒさんは次に兄さんの元にやって来た。

 2人は暫し視線を交わし、そして微笑み合った。その雰囲気はまるで親しい友人同士のようで、いつぞやの緊迫した空気は見る影も無かった。

 

「ようボーデヴィッヒ。身体は大丈夫か?」

 

「ああ、少し痛むが問題は無い・・・・改めてよろしく頼む、結城志狼」

 

「ああ、こちらこそ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

 そして2人は握手を交わす。この親しげな雰囲気は何だろう? 一体いつの間にこんなに親しくなったのか、兄さんとは後で事情聴取(OHANASHI)する必要があるわね。私がそう決意する中、ボーデヴィッヒさんが兄さんを指差し、

 

「それと結城志狼、今日からお前は私の『嫁』だ! 異論は認めん!」

 

「・・・・・・は?」

 

 そう高らかに宣言した。

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

 ボーデヴィッヒの宣言に1年1組の教室にいる者は彼女以外皆呆然としていた(非常に珍しいが織斑先生すら目を丸くしていた)。

 

「あ~、ボーデヴィッヒ?」

 

「ムッ? 嫁よ、我々の間で遠慮は無しだ。私の事はラウラと呼ぶがいい」

 

「・・・・じゃあラウラ。何で嫁だ?」

 

「うむ。実は私の部下に日本通の者がいてな、その者に教わったんだが日本では気に入った相手を『嫁』と呼ぶ風習があると聞いた。だからお前は私の嫁だ!」

 

 ちょっとその部下を呼んで来い!と叫びたくなった。要するにラウラ自身恋愛感情からではなく、純然たる好意と勘違いで嫁と呼んでいるらしい。なまじ軍しか知らない純粋な彼女は部下の言葉を疑う事なく鵜呑みにしてしまったようだ。

 問題なのはその部下がわざとやったのか、それとも只の天然なのかだが、どちらにしても問題だな。ドイツ軍の特殊部隊(エリート)と聞いてたんだが、大丈夫かドイツ?

 

「ちょっとボーデヴィッヒさん!? 貴女は間違ってるわ!!」

 

「ムッ? なんだ結城明日奈、いや妹よ」

 

 明日奈がラウラの勘違いを正そうとする。

 

「誰が妹よ! それに兄さんは男なんだからするなら『お婿さん』でしょう!?」

 

 と思ったらこいつも混乱していた。

 

「志狼さまをお婿さんに!? す、素晴らしいですわ!!」

 

「し、志狼のお婿さん・・・隣にはウェディングドレスの私が・・・・ウフ、ウフフフフフ」

 

「いかん、志狼なら嫁でもいいと思ってしまった・・・・」

 

「あっ、私もさんせ~。しろりんなら嫁でも婿でもどっちでもいいかも~」

 

 混乱しているのかセシリアが、シャルロットが、箒が、そして本音までもが訳の分からない事を口走り、気付けば教室の至る所で皆が騒いでいた。

 こうなるともう駄目だ。俺はもうすぐ降臨するであろう怒れる閻魔様に備えて耳を塞いだ。そして、

 

 

「いい加減にしろ!! この大馬鹿者共がああああっ!!!」

 

 

 閻魔様(織斑先生)の大喝が雷の如く轟き、騒ぎはようやく治まった。

 

 

 

 

「さてラウラ。嫁云々はともかく心を入れ替え、皆に解け込もうという心掛けは立派だ。褒めてやる」

 

「あ、ありがとうございます、織斑先生!」

 

 珍しく織斑先生が素直にラウラを褒める。ラウラは感激したのか、瞳を輝かせる。

 

「だが、その前にお前には色々とやって貰わねばならない事がある」

 

「了解です!」

 

 ラウラがそう返事すると、織斑先生はニヤリと笑って高らかに言い放った。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。ISの危険操縦並びに模擬戦で故意に対戦相手を痛めつけた件、それに教師からの警告無視と何度かの授業のサボり。以上を踏まえて、1週間の奉仕活動と反省文100枚、及びサボった授業のレポート提出を命じる」

 

「ハッ!・・・・・・は?」

 

「『VT事件』に関してはお前も被害者なので除外するが、他の件に関しては話は別だ。信賞必罰は軍人の常、お前も当然理解しているな?」

 

「は、はぁ・・・・」

 

「ちょうど専用機が使えないんだ、今の内に償っておけ」

 

「・・・・・・」

 

 さっきまで輝いてたラウラの瞳がどんよりと曇っている。

 とは言え織斑先生の言う通り「それはそれ、これはこれ」だ。『VT事件』では被害者だったかもしれないが、ラウラがこれまでに色々やらかしたのは紛れもない事実だしな。頑張れラウラ!

 

 

 などと思っていたが、後程俺は織斑先生直々にラウラの教育係に任じられ、彼女に一般常識を教えるよう命じられた。

 コアの世界でも約束した事だし仕方がない。取り敢えず嫁と呼ぶのをやめさせる事から始めるとするか。 

 

 

 ともあれ、こうしてラウラ・ボーデヴィッヒは改めてクラスの一員になった。

 

 

~side end

 

 

 

 

~束side

 

 

 「ゴッド○ァーザーのテーマ」が携帯から流れる。

 この着メロに設定しているのは1人だけ。私は即座に携帯を手に取った。

 

「は~~い、もすもす、ひねもす? 皆のアイドル束さんだよ!」

 

 出た途端に電話が切れた。あれ?なんで? もしかして皆のアイドルってのが不味かったかな?

 そのまま携帯を見つめていると、再度電話が鳴った。よし、今度こそ!

 

「は~~い、あ・な・たのアイドル束さん──って待って待ってちーちゃん! ステイステイ!!」

 

『ちーちゃん言うな! 後私は犬じゃないぞ!!』

 

「おっけい! 分かったよちーちゃん!」

 

『・・・・ハア、まあいい。今日は聞きたい事がある』

 

「ん? なになに?」

 

『束、お前今回の件──VTシステムに1枚噛んでるんじゃなかろうな?』

 

 私はちーちゃんの断定口調に唇を尖らせ抗議する。 

 

「ひどいよちーちゃん! この私があんな不細工で不完全なモノ作る訳ないじゃん! 私が誰か忘れたの? 完璧にして完全な篠ノ之束さんだよ?」 

 

 うふふ、と笑って私はきっぱりと言い切った。

 

『そうか。では邪魔をしたな』

 

「いやいや、邪魔だなんてそんな! ちーちゃんの為ならいつでもどこでも──(ガチャッ)・・・・」

 

 ありゃ、切れちゃった。もう、相変わらずせっかちなんだから・・・・・

 私はもう一度携帯を見つめてからまあいいか、とポイッと放り出した。けど携帯が空中でさっきとは違う着メロを奏で出すと、私は即座に宙に飛び上がり携帯をキャッチした。

 

(こ、この着メロは───!!)

 

 この着メロはパラパーでお馴染みの「必殺〇事人」のテーマ。待望のあの娘からのコールだ! 何があっても絶対に出なくては!!

 

「やあやあやあ! ひっさしぶりだねえーーー! ずっとずうっっと待ってたよ───箒ちゃん!!」

 

『───姉さん。その・・・・・』

 

 数年ぶりに聞いた妹の声に昂りが押さえきれない。

 

「うんうん大丈夫。用件は分かってるよ。欲しいんでしょ? 君だけの力、君だけのオンリーワン、そう、箒ちゃんの専用機が。モチロン用意してあるよ。最高性能(ハイエンド)にして規格外仕様(オーバースペック)。最新にして最強のIS。その名は───紅椿(あかつばき)

 

 

~side end

 

 

 

 

 

 




次回から原作3巻のエピソードに入ります。
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