二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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今回ISに関する独自解釈があります。
原作で制式な設定があるのかもしれませんが、本作品内ではこうだと思って下さい。

それでは遅くなりましたが、第7話をお楽しみ下さい。


第7話 真耶先生のはちみつ授業

 

 

~真耶side

 

 

 教員用アリーナでISスーツに着替えた私は結城君を待っていました。今日から結城君の補習を始めます。自分から言い出した事ですが少し緊張しています。

 自分の価値を示さねばならない彼の立場上、実力を付けるのは必須。今回の代表決定戦は最初の試金石となるでしょう。そんな彼の人生を左右する立場に自分がいる事に今更緊張していました。

 先生なのに情けないです・・・・

 

 

 ISスーツに着替えた結城君がアリーナに出て来ました。・・・・何というか、は、恥ずかしくてまともに見れません!

 ボクシングで鍛えた身体は均整がとれていて、所謂細マッチョといった感じです。学園が用意した男性用のISスーツは上は半袖(なぜかおなかから下が丸出しです)、下は膝までのハーフパンツになっていて、腕や脚のしなやかな筋肉が丸見えです。しかもスーツ自体薄手の素材で作られているので、割れた腹筋や、その、えっと、こ、股間の盛り上がりが強調されているのです!(後から聞いたのですが、結城君はファウルカップという保護具を入れていたそうで、決してお、大きくなっていた訳ではないそうです)

 こ、これはまずいです。ISスーツってこんなにエッチなものでしたっけ?恥ずかしくてまともに見られません!

 

「──っい、──っん生、───山田先生!」

 

「! は、はい!」

 

 耳元の声にびっくりしてそちらを向くと、結城君の顔が間近にありました。

 

「ふ、ふえええぇぇっ!!」

 

 びっくりして変な声を上げてしまいました。結城君は何だか真剣な顔をして間近から私の顔を覗き込んでいます。

 思えば男性とおつき合いした事のない私は、こんな間近で男性と見つめ合うなんて初めての事です。真剣な顔をした結城君は何だかカッコよくて、だんだん顔が熱くなるのを感じます。端から見れば私の顔は真っ赤になっている事でしょう。

 

「ど、どうしました、結城君!?」

 

 赤くなった顔をごまかすように結城君に尋ねます。

 

「どうした、じゃないですよ。俺をじっと見ていたかと思えば動かなくなって、何度呼んでも返事がないから心配したんですよ?」

 

 何という事でしょう。まともに見れないなんて思いながら、実際にはガン見していたなんて!

 結城君は心配して様子を見ていてくれたというのに、いつの間にか彼の肉体に見蕩れてトリップしていたなんて・・・・

 うう、自分にこんな性癖があるなんて初めて知りましたよ・・・・

 

「す、すみません。少しボーっとしていまして」

 

「そうですか。てっきり俺の格好に変な所でもあるのかと思いましたよ」

 

「いえいえ、むしろ良く似合っていますよ・・・ゴクリッ ええ、本当に・・・・」

 

「・・・・山田先生?」

 

 はっ、いけない。また見蕩れていました。以前男性誌のグラビアで水着よりISスーツの方が人気があるという話を聞いた事があります。その時は何がいいのか分からなかったのですが、今ならその気持ちがとても良く分かります。男性のISスーツ姿がこんなにクルものだとは!

 こんなの生徒達に見せてもいいのでしょうか?

 

「す、すみません、私ったらまた・・・・」

 

「本当に大丈夫ですか? もし疲れているようなら今日は止めましょうか?」

 

「い、いえ大丈夫です。代表決定戦まで時間がないのですから無駄には出来ません」

 

「・・・・そうですね。分かりました、よろしくお願いします。でも無理はしないで下さいね」

 

 ・・・・ううぅ、結城君の優しさが胸に痛いです。でも、時間を無駄に出来ないのは本当です。気持ちを切り替えて、始めるとしましょう。

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

「今日は実際にISを動かして感覚を掴んで貰います。学園にある量産機は日本製の打鉄とフランス製のラファールの二つがありますが、今回は汎用性の高いラファールを使います」

 

 ラファール・リヴァイヴ。フランスのISメーカーデュノア社製の第2世代機。第2世代機としては後発で、拡張領域(バススロット)の大きさによる武装の拡充や扱い易さで世界第3位のシェアを誇る人気機種だ。当然のように学園にも配備されており、俺も実技試験で使った機体だ。

 

「結城君、ISを操縦するのに一番重要な事って何だと思いますか?」

 

 ? 何だろう。技術? 判断力? 色々と考えられるけど・・・・俺はこれだと思うものを一つ挙げてみた。

 

「コアとの同調率、でしょうか?」

 

「・・・・なぜそう思いましたか?」

 

「ISはコアが機体の制御を行っているからです。そのコアとの同調率が高ければより機体を上手く操れるのではないかと考えました」

 

「成る程。考え方は間違ってませんが、この場合は不正解です。正解はイメージです」

 

「イメージ?」

 

「ここで一つ質問です。結城君はISをどう動かしていると思いますか?」

 

「どうって、そりゃあ・・・・」

 

 そう考えて、はたと気付いた。ISは所謂パワードスーツだ。手足を動かすようにすればパワーアシストが働いて動いてくれる。だが入学式で見たような複雑な機動をするにはどうしたらいい? 実技試験の時は地上戦だったから身体を動かすように動かしただけだし・・・・

 先程も言ったがISはパワードスーツ。ロボットじゃないんだから操縦悍やスイッチ、レバーなんかはないのだ。そこまで思い至って、先程の会話を思い出す。

 

「そうか、だからイメージが大事なのか・・・・」

 

 俺のつぶやきを聞いて山田先生がニッコリと笑い、

 

「どうやら正解にたどり着いたようですね。そうです。ただ単に歩く、走るだけなら自分の手足と同じ感覚で動かせます。ですが、空を飛び、より複雑な機動をするには操縦者のイメージをコアが読み取る事で初めて可能となるんです」

 

「ですが、それだと操縦者からコアへの意思伝達にタイムラグが生じませんか?」

 

「普通はそうです。ですが、ISに使われているイメージフィードバックシステムは特別製で、そのタイムラグをほとんど感じないんです。そのシステムもコアにより制御されているので、どうして可能なのかは不明なんですけどね」

 

 ブラックボックス化したISコアを解析出来なければ分からない、それが出来るのは篠ノ之束博士だけって事か。

 

「ISは操縦者がイメージした事をコアが読み取って機体を動かす。ISがパワードスーツでありながらそれを動かす者が装着者ではなく操縦者と呼ばれるのはそういう訳ですか・・・・」

 

「そう言う事です。・・・・さて、イメージの大切さが分かった所で、実際に動かしてみましょう」

 

「はい」

 

 俺はラファールを装着すべく、待機状態の機体に触れる。初めてISに触れた時と同様に頭の中に色々な情報が流れて来て、一瞬の後、俺はラファールをその身に纏っていた。

 マニュアルに従い、各部のチェックに入る。

 

 

 ───シールドエネルギー OK

 ───ハイパーセンサー OK

 ───パワーアシスト OK

 ───武装チェック OK

 ───ISコア同調 OK

    ・・・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・・

 

 

 ───システムオールグリーン

    ラファール・リヴァイヴ起動完了

 

 

 

「どうです、異常はありましたか?」

 

「いえ、問題ありません。正常に起動しました」

 

「では始めに真っ直ぐ歩いて下さい」

 

 先生の指示に従い、真っ直ぐ歩く事をイメージして、俺はラファールを動かした。

 

「はいストップ。結城君、後ろを見て下さい」

 

 20m程歩いてから言われた通り後ろを見て、俺は愕然とした。真っ直ぐ歩いたはずの足跡がフラフラと蛇行しているのだ。

 

「え、何で・・・・ちゃんとイメージしたのに」

 

「種明かしをしますと、真っ直ぐ歩く事を意識し過ぎたせいなんです。結城君は普段歩く時、真っ直ぐ歩こうなんて一々考えないでしょう? ISを使う時も同じなんです」

 

「・・・・意識せずに本能のまま動かせ、という事ですか?」

 

「ん~、少し違います。ISを纏っている事を意識し過ぎずに、あくまで自分の身体の一部として動かすのが理想的です。ですが、これは慣れの問題で、ISの操縦は稼働時間がものを言うと言われる所以でもあります」  

 

「・・・・習うより慣れろ、考えるな感じろ、という事ですか?」

 

「クスッ そうですね。慣れる以外では操縦者のセンスやコアとの同調率、後はIS適性などによっても変わりますね。・・・・では話しながらもう一度歩いてみましょう」

 

 俺はラファールを動かしながら質問する。

 

「操縦者のセンスは個人の資質だから仕方がないとして、コアとの同調率や適性はどう関係してくるんですか?」

 

「そうですね。まずISコアとは所謂人工知能、AIであり、それぞれ意思を持ち、性格も違います。当然操縦者との相性があり、その良し悪しと同調率は比例します」

 

「でもコアとの相性なんて最初は分からないんですよね。相性の悪いコアと当たったらそれまで、という事ですか?」

 

「いいえ、ここでいう相性とは所謂第一印象の事で、その後の接し方で良くも悪くもなるんです。第一印象は悪かったけど付き合ってみたらいい人だった、もしくはその逆という事もあります。要は人付き合いと同じですね」

 

 成る程、そう考えると分かる分かりやすい。

 

「そして適性に関してですが、いくらISを身体の一部として扱うのか理想的だといっても結局は機械ですから中々難しいでしょう。その受け入れ易さの目安がIS適性なんです。つまり適性が高ければISを身体の一部として受け入れ易い、イコールISを動かし易い、という事になるんです。・・・・所で結城君、気付いてますか?」

 

 先生の解説を聞きながら何の事かと先生の視線を追うと、いままで歪だった足跡が真っ直ぐになっていた。

 

「! これは・・・・」

 

「ふふ、私と話す事に意識が向いて、歩く事が自然に出来た結果ですね」 

 

 先生の指導力を目の当たりにして正直驚いた。彼女、真耶先生に指導をお願いしたのは間違いじゃなかった。自分の目が正しかった事、彼女に出会えた事が素直に嬉しかった。

 

「さて、次に行きましょうか」

 

「はい!」

 

 

 

 この後みっちり3時間かけてISの基本動作を教わった。終わるとヘトヘトになったが、この3時間でISに関する知識も深まり、操縦もかなり上達したと思う。

 明日の放課後も補習をして貰う約束をして、真耶先生と別れた。

 

 

~side end

 

 

 

 

~真耶side

 

 

 結城君の最初の補習が終わりました。つい夢中になって、3時間ぶっ通しで休憩も入れなかったのは猛省しなければいけませんね・・・・・

 

「お疲れさん真耶、ほら!」

 

「きゃっ、織斑先生。ありがとうございます」

 

 アリーナの廊下で待っていた織斑先生が放ったペットボトルをお手玉しながら受け取り、礼を言う。

 

「今は2人だけだ。普段通りでいいぞ。それにしても初日から随分飛ばしてたな」

 

「あはは、結城君が頑張ってくれるので、つい」

 

「ふっ、それで? お前から見て結城はどうなんだ?」

 

「ゴク、ゴク、プハー、あ、はい。そうですね・・・・彼は私と同じ理論派です。頭で理解し、訓練を重ねる事で力を発揮するタイプです。それに物覚えも早く、教えた事を次々と吸収していくので教えるのが楽しくって、ついやり過ぎてしまいました」

 

「・・・・成る程、つくづく一夏とは真逆だな」

 

「クスッ そうなんですか?」

 

「ああ、あいつは口で説明するより体に教え込んだ方が早いからな・・・・では、予定通りで構わないな?」

 

「はい。私はこのまま結城君の指導を担当します」

 

 そう、これは始めから千冬先輩と話し合って決めていた事。2人の男性操縦者はデータ取りの必要性から操縦者として実力を付けて貰わねばならない。

 そこで私達は千冬先輩が織斑君を、私が結城君をマンツーマンで指導をする事にしました。本当は1年生の実技実習が始まった頃にこちらから提案する予定だったのですが・・・・

 

「でも、2日目からとは随分と早かったですね。やっぱり代表決定戦の影響でしょうか?」

 

「そうだろうな。そのせいか2人共予想より早く動き出した」

 

「織斑君もですか? 彼は何を?」

 

「それがな・・・篠ノ之に連れられて剣道やってた」

 

「・・・・えーと剣道ですか? 確かに無駄にはならないとは思いますが、今は先にやるべき事があるのでは?」

 

「だよなあ! まず真っ先にISに触れて慣れるべきなのに、あいつは何で剣道なんかやってるんだ!」

 

 千冬先輩が憤るのも分かる。織斑君は今すぐやるべき事をやらずに別の事をやってるのだ。先輩じゃなくても「何で!」と言いたくもなるだろう。

 

 そう言えば今朝のSHRでされた質問。あれを聞いてたからこうなったのかな? あれ? もしかして私のせい?

 

「どうした真耶?」

 

 私の様子が変わったのを察した千冬先輩が聞いてくる。

 

「えーとですね。先輩は会議で来なかったから知らないでしょうけど、今朝のSHRでISの貸し出しについて質問されまして」

 

「うん、それで?」

 

「事前の申請が必要な事を説明したんですが、その時に今の時期は上級生が優先されるので、新入生の皆には中々許可が下りないだろう、と」

 

「それでか! それを真に受けて・・・・あのバカは何で教師である私達に相談せんのだ!」

 

 ですよね~、私悪くないですよね! 現に結城君は相談して来たんだし。

 

「どうしますか、織斑君は」

 

「どうもこうも現状維持だ! 自分から言い出さない限り特別扱いは出来ん!」

 

「はあ、今度の代表決定戦、駄目かもしれないですね」

 

「う、こうなると初日に結城と揉めたのは痛いな」

 

 確かに。結城君は織斑君より年上で、その経歴から解る通り色々な事を経験しています。そんな彼が味方についてくれたら織斑君の今後に不安を覚える事はなかったでしょう。

 つくづく人間関係って上手くいかないものです。

 

 私達は顔を見合わせると、ため息を吐きました。

 

 

~side end

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
 
真耶先生もお年頃。
真耶フラグ1がたちました。
彼女はヒロイン化する予定ですが、どうなる事やら。ご期待下さい。

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