二度目の高校生活はIS学園で   作:Tokaz

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遅くなりました。

最近仕事が忙しくて、投稿ペースが落ちてます。
出来る限り週1回くらいは投稿したいと思ってます。

それでは第8話ご覧下さい。



第8話 専用機

 

 

~志狼side

 

 

「織斑、結城、お前達にはデータ取りの為、専用機が用意される。少し時間は掛かるが代表決定戦までには届く予定だ」

 

 朝のSHRでの織斑先生の発言でクラスは一気にヒートアップした。

 

 

 

 ───IS専用機

 

 それは文字通り操縦者個人の専用IS。本来は国家や企業の代表、又は代表候補生にしか与えられないワンオフの機体で、量産機とは一線を画す性能を持つ。IS操縦者達にとって専用機を与えられるという事は、国家や企業から認められた証であり、憧れの象徴でもある。

 

 

 

 そんな専用機が与えられる。織斑先生の言った通りデータ取りが目的なのだろうが、ありがたい事だ。そんな中で、

 

「専用機って何? そんなに凄いのか?」

 

 全く分かってない織斑一夏(バカ)がいた。

 

 

 

 今の一言で沸いていた教室が一気に凍りついた。ふと教壇の先生達を見ると、2人共信じられないものを見たような目をしていた。まあ、当然だよな。

 

「一夏・・・・お前本気で言ってるのか?」

 

「え、何かまずかった?」

 

 どうやら本気のようだ。織斑先生も驚きのあまり織斑を一夏と名前で呼んでるし。しかし、これって一般常識の範疇だぞ。物を知らないにも程がある。

 

 呆れながらも織斑に理解させないと話が進まないと判断したのか簡単に説明をする織斑先生。

 

 

 

「という訳だ。分かったか?」

 

「・・・・ああ、分かったよ千冬姉。俺、期待に答えて皆を守ってみせるよ!」

 

「「「「?????」」」」

 

 ・・・・・・何で?

 

 

~side end

 

 

 

 

~千冬side

 

 

 何がどうしてこうなった? 私は今、絶賛混乱中だ。私の説明が悪かったのだろうか。一夏の奴は訳の分からない理解をしてしまった。

 困った私は思わず真耶を見たが、泣きそうな顔をしていた。駄目か。

 生徒の方を見ると皆何を言ってるんだという顔をしていた。そんな中で1人の生徒と目が合った。よし、こいつに何とかして貰おう。

 

「オルコット、織斑を何とかしてやれ」

 

「は、はい!? (わたくし)がですか?」

 

「うむ。私では説明が至らなかったようだが、入試首席のお前なら大丈夫だろう」

 

「で、ですが先生で無理なら(わたくし)が「大丈夫! お前なら出来る、てゆーかやれ!」・・・は、はいいぃぃ~」

 

 すまんオルコット、私も精神を建て直す時間が欲しいんだ! 少しでいい、時間を稼いでくれ。

 

 

「えーと織斑さん? いくつかお聞きしたいのですが、まず皆を守るとはどういう意味です?」

 

 オルコットは諦めたのか一夏の方を見ると質問を始めた。

 

「どういう意味ってISは力だからな。専用機っていう力を手に入れれば俺はもっと強くなって皆を守れるって事だ!」

 

「・・・・貴方に寄せられる期待とは何です?」

 

「だって国や企業の代表しか貰えないんだろ? 特別にそれを貰えるって事はその専用機でバトルに勝ち、男の強さを見せつけてやれって期待してるって事だろ?」

 

「! 貴方どこまでバカですの! 自分の置かれている状況が何一つ分かってないじゃないですか!」

 

 ああ、流石に爆発したか。無理もない。一夏の自分に都合の良い解釈は聞いていて私でも腹が立つ。あいつの置かれた状況は何度も説明したんだが、全く理解してなかったようだ。

 

「な、何だよ、何が分かってないってんだよ!」

 

「何もかもですわよ! 専用機があれば強くなれる? 男の強さを見せるのを期待されてる? どこをどうしたらそんな都合の良い解釈が出来るんですか!」

 

「俺が自分に都合良く解釈してるだと!? 専用機をくれるって事はそういう事だろうが!」

 

「何でそうなるんです! 専用機を与えるのはデータ取りの為だと言ってたでしょう!?」

 

「あーもう、お前に何が分かるんだよ! 不味い料理しかない国の奴は黙ってろよ!」

 

「!!」

 

 あ、いかん。一夏の奴言うに事欠いてイギリスを馬鹿にし出した。いい加減止めなければ。

 

「・・・・貴方、(わたくし)の国をバカにしますの?」

 

「じ、事実だろうが。世界一不味い料理で何連覇だよ!」

 

「! 黙って聞いてれば極東のサル──」 バンッ!

 

 突如響いた音に発生源を見れば、結城が机を叩いて立ち上がっていた。

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

 セシリアと織斑の口論がマズい域に達したのを見た俺は、やむを得ず介入する事にし、セシリアの台詞を邪魔するように机を叩いた。

 

「そこまでだセシリア。それ以上は言うな」

 

「志狼さま!? ですが」

 

「冷静になれ。君は代表候補生だ。その意味は分かるな?」

 

「!! 申し訳ありません・・・・」

 

 セシリアは国家代表候補生。彼女らには守らねばならない規律がある。その一つに他国を貶める発言をしてはならないと言うのがある。候補生とはいえ、彼女らは国の名を背負ってるのだ。そんな彼女らが他国を貶めるような発言をすれば、それはたちまち国家間の問題に発展する。そして問題を起こした候補生はその資格を失い、場合によっては犯罪者の烙印を押される事になるのだ。

 彼女は今、冷静さを失い、明らかにヤバい事を言おうとしていた。こんなつまらない事で彼女のキャリアに傷を付ける訳にはいかない。ここは選手交替といこうか。

 

「織斑先生、彼女は今、冷静さを欠いています。俺が交替しても構いませんね?」

 

 俺は非難の視線を織斑先生に向ける。全く、この人がきちんと織斑を教育していればこんな手間は掛からなかったというのに・・・・

 

「うっ、ああ、構わないぞ」

 

 微妙に視線をそらしながら織斑先生は言う。これで言質は取った。俺は織斑に視線を向けて、

 

「・・・・織斑、お前ローストビーフは好きか?」

 

「? いきなり何だよ? まあ、好きだけどさ」

 

「ローストビーフはイギリスの伝統的な肉料理だぞ」

 

「えっ!?」

 

「やはり知らなかったか。ではカレーはどうだ?」

 

「カレーはインド料理だろう!?」

 

「確かに発祥はインドだが、日本には明治時代にイギリス料理として伝わっている」

 

「嘘だろ!?」

 

「興味があったら後で自分で調べろ。一々説明してやる義理はない。さて、お前は自分の好物がどこの国の料理かも知らずに馬鹿にしていた訳だが、今どんな気分だ?」

 

「うっ・・・・・・」

 

「料理を馬鹿にするという事は、その国の歴史や文化を馬鹿にするも同じだ。仮にもこれから専用機持ちになろうという奴のしていい発言じゃない。反省しろ」

 

「くっ・・・・・・」

 

「それと、先程のお前のご都合解釈。子供の妄想にしても酷すぎる。それを堂々と披露する時点でイタい奴にしか見えなかったぞ」

 

「何だよそれは! 俺がバカだって言いたいのかよ!」 

 

「その通りだ。加えて重度の世間知らず付きでな」

 

「なっ、俺のどこが世間知らずだってんだよ!」

 

「・・・・まず専用機を知らない時点でおかしい。お前織斑先生の『暮桜』を知らないのか?」

 

「知ってるに決まってんだろ! 千冬姉のISでモンド・グロッソを征した機体だ」

 

「その暮桜が専用機だ」

 

「え? あ、そうか・・・・」

 

「それと、お前は自分が期待されてると言ってたが、少なくともお前の望むような期待のされ方はしてないぞ」

 

「どういう事だよ?」

 

「織斑先生もセシリアも言ってただろう。俺達に専用機が与えられるのはデータ取りの為だ。政府が俺達に期待する事があるとすれば、良いデータを提供するサンプルとして、だ」

 

「! そんな言い方「事実だ。連中は俺達が提供したデータを解析して、男がISを動かせる理由を突き止めたいんだろう。それが叶えば巨万の富を生むからな。大人の世界ってのは汚いものだぞ」

 

「・・・・まるで見て来たように言うんだな」

 

「実際見て来たからな。俺が本来なら大学生だというのは自己紹介の時に言ったが、その俺が今ここにいる事自体が汚い大人の事情という訳だ」

 

「・・・・・・」

 

「そういう事が分からないから世間知らずだというんだ。お前ももう高校生なんだから世の中綺麗事ばかりじゃないといい加減理解しろ。それとこの際だから言っておくが、お前は一般常識に疎すぎる。普段新聞やテレビのニュースは見ないのか?」

 

「・・・・あんまり」

 

「はあ、せめてテレビのニュースくらい見ろ。じゃないと恥をかくのはお前だけじゃないんだぞ」

 

「? どういう事だよ」

 

「お前の恥はお前だけのものじゃない。織斑先生の恥でもあるって事だ」

 

「! 何でっ「お前の保護者は誰だ? お前がバカをやった始末は保護者である織斑先生がつける事になるんだ、自覚しろ」

 

「!?」

 

 織斑の顔が真っ青になった。自分が織斑先生の迷惑になるのがこいつには一番堪えるようだ。ここまで言ってやればいいだろう。俺は織斑先生を一瞥して席に着いた。

 

 

~side end

 

 

 

 

~千冬side

 

 

 言うべき事を言って結城は席に着いた。その時私に向けた視線は「もう充分だろ?後は自分で何とかしろ」と、言っているようだった。

 確かにこれ以上は私がするべきだろう。私は一夏の担任である前に姉なのだから。

 

「一夏、確かにここ数ヵ月仕事が忙しくてお前の事を見てやれなかった。だが、そうだとしても今のお前は酷すぎる。嘘は吐く、物は知らない、礼儀はなってないでは結城の言う通りになっているぞ」

 

「・・・・俺、千冬姉の迷惑になってるのか?」

 

「今のお前はな。一夏、お前はこの学園に望んで入った訳じゃないと思っているだろう? だが、望むと望まざるとに関わらず、この学園に入学したからにはある種の責任が生徒には生じる。何だか分かるか?・・・・オルコット!」

 

「はい、ISを動かす責任です」

 

「そうだ。ISという『兵器』を動かす責任だ。ISは宇宙開発を目的に作られたが、残念な事に現行兵器の全てを凌駕する『超兵器』と見なされてるのが現状だ。それをアラスカ条約で抑え込み、ISバトルというスポーツとして転用しているとはいえ、兵器は兵器。簡単に人を殺せるモノだ。故にそれを扱う者には責任と覚悟が求められる」

 

「責任と覚悟・・・・」

 

「そうだ。一夏、お前は守るという事に妙に拘っているようだが、今のお前には誰一人として守れないぞ。何故ならお前には全てが足りないからだ。知識も、実力も、そして覚悟もだ。そんなお前に命を預ける奴はいないだろう。だから一夏、強くなれ。強くなっていつかお前の望みを叶えてみせろ。その為の助力なら私がいくらでもしてやる。覚えておいてくれ」

 

「・・・・・・はい」

 

 

 私の言葉は一夏に、そして生徒達に届いただろうか、正直どこまで理解してくれたか分からない。だが、私は教師として、そして姉として自分の出来る精一杯の事をしてやろうと、固く心に誓った。

 

 

~side end

 

 

 

 

~志狼side

 

 

 昼休み。もはやいつものメンバーと言って差し支えない面々との食事中、話題になるのは専用機の事。俺の機体は詳細が不明なので、必然的にセシリアの専用機「ブルー・ティアーズ」の話になる。

 

「ほえ~、これがセッシーの機体かあ~、綺麗だね~」

 

「ふふ、ありがとうございます、本音さん」

 

 携帯端末の画面にはセシリアの機体の基本スペックや訓練中の動画が映し出されている。

 こんなの公開していいのかセシリアに尋ねると、学園に提出した資料映像なので、秘密にしておきたい所は映してないから問題はないそうだ。

 

「遠距離型の第3世代機。第3世代兵装は機体名と同じ『ブルー・ティアーズ』通称BT兵器かあ~」

 

「操作が難しそうね」

 

「ええ、BT兵器を操るには適性が必要で、代表候補生の中で最も適性の高かった(わたくし)が操縦者に選ばれたんです。この娘を得てから序列も3位まで上がり『冒頭の六人(ページワン)』になれましたの」

 

 

 

 ───冒頭の六人(ページワン)

 

 

 代表候補生は毎年8月に試験を行い、合格した人がなれる(年に多くて3人、1人の合格者も出ない年もある)。

 翌年明けには代表候補生全員でリーグ戦を行い、序列を決める。決定した序列の1位から6位は公式冊子の冒頭に名前が乗り、専用機が与えられる事から大変名誉な事だとされている。これら代表候補生の1位から6位を総じて“冒頭の六人(ページワン)”と呼び、操縦者を目指す少女達の憧れの的だという(因みに日本の序列1位は高町なのは)。

 今ではすっかりアイドル扱いされており、中には6人でユニットを組んでCDデビューさせてる国もある(因みに売上げは他国のファンも買っている為、世界的にもトップクラスだそうだ)。

 

 

 

「下手すりゃ近付く事も出来ず、遠くからチクチクSEを削られて、はい終わりって事になりかねないな」

 

「何か対策を思いつきまして?」

 

「うーん、まあ俺は俺に出来る事をするだけだよ。・・・・さて、俺は用事があるから先に失礼するよ」

 

「あら、どちらへ?」  

 

「職員室。例の専用機についてちょっと、ね」

 

 俺は皆に断りを入れ、食堂を出た。すると、

 

 

「志狼さま!」

 

 呼ばれて振り向くと、セシリアが追いかけて来た。

 

「どうしたセシリア?」

 

「あの、先程はありがとうございました」

 

「先程?」

 

「織斑さんとの口論を止めて下さった事ですわ」

 

「ああ、その事か。別にいいよ。ただ、今後は気を付けるようにな」

 

「はい・・・・いくら織斑さんが許せなかったとはいえ、志狼さまに止めて貰わなかったらどうなっていた事か。本当に感謝してますわ」

 

「だから、もういいって。俺だってこんなつまらない事でセシリアがいなくなるなんて嫌だしな」

 

 俺は落ち込むセシリアの頭を優しく撫でると、彼女は頬を赤らめながら、嬉しそうに目を閉じる。うん、可愛い。

 

「さて、それじゃあまた後でな」

 

 これ以上続けるとヤバい雰囲気になりそうだったので、さっさと職員室に行く事にした。

 

「・・・・はい」

 

 背中で聞いたセシリアの声は、妙に艶っぽく感じた。

 

 

 

 

「失礼します。1年1組結城入ります。織斑先生はいらっしゃいますか?」

 

「結城? こっちだ」

 

 職員室に入ると織斑先生が手招いてくれた。良かった、昼食は終わってるようだ。

 

「休憩中すいません。聞きたい事があるんですが」

 

「構わんよ。で、何だ?」

 

「俺が貰える専用機、どこのメーカーが作るんですか?」

 

「お前達の専用機はそれぞれ違うメーカーが作る。織斑は倉持技研、結城は・・・・絃神コーポレーションだ」

 

 成る程。倉持技研は国内トップクラスのISメーカー、学園でも使っている「打鉄」を作った実績のある企業だ。

しかし、絃神コーポレーションとは聞いた事がない。どうやらこんな所で俺は織斑と差別されてるようだ。

 

「絃神って聞いた事がないんですが?」

 

「IS開発には昨年から参入した企業だからな。未だ何の実績もないから知らなくても無理はない」

 

「・・・・良くそれで選ばれましたね」

 

「資本はそれなりにある企業でな。・・・・それに言い方は悪いがお前の機体だから、というのもある」

 

 ああ、つまりはデータ取りが目的だから、どんなヘボい機体でもいいって事か。まあいい。

 

「では、その絃神の開発担当者と会いたいので、紹介してくれませんか?」

 

「それは構わんが、何をする気だ?」

 

「折角貰える専用機です。なら色々と自分好みに注文をつけてもいいでしょう?」

 

「ふむ、成る程な。ちょっと待て・・・・あったぞ。こいつに連絡してみろ」

 

 織斑先生から1枚の名刺を手渡された。

 

「───絃神コーポレーションIS開発室開発主任、藍羽浅葱(あいばあさぎ)?」

 

「昨年の卒業生で丁度絃神に勤めてる。優秀な奴だからな。お前の専用機にも間違いなく噛んでるはずだ」

 

「卒業したばかりで開発主任とは確かに優秀ですね・・・・ありがとうございます。早速連絡してみますよ」

 

 俺は織斑先生に礼を言うと職員室を後にする。さて、藍羽浅葱か、あの織斑先生が優秀と認めるなんてどんな人物なんだろうか。

 

 

 

 その日の放課後、早速藍羽浅葱に連絡すると、俺の外出許可がまだ下りない為、明日学園で打ち合わせをする事になった。

 明日は土曜日。入学してから初めての休日だが、どうやら忙しくなりそうだ。

 

 

~side end

 

 

 

 

 




今回設定としてアスタリスクのページワンを使わせて貰いました。
本家の12人を6人にしたのは、今後出てくる日本の代表候補生が5人いるので、切りよく半分の6人にしました。
因みになのは、簪、明日奈、雪菜、綺凛の5人ですが、全員そろうのはかなり先になります。

次回、STBより電子の女帝が登場します。

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