戦姫絶唱シンフォギア ーそれは破壊の力ー   作:雪原

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第一期──
覚醒の鼓動


――空を見上げる。立ち上る橙色の閃光は一瞬だけその姿を見せて、何も無かったように掻き消える。普通の人が見れば目の錯覚だと疑うような、本当に一瞬の、眩い光。

 

「……あの、光」

 

 人気の無い路地からその光を見上げた人影は、複雑そうな表情を浮かべて、胸のペンダントに手を伸ばす。

 

「アウフヴァッヘン波形……そっかぁ……」

 

 胸のペンダント……ギアペンダントはその橙色の光に呼応するようにキラリと光を反射する。人影はそれをみてふふと苦笑いを浮かべると、光が見えた方向へゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 まるで、夢を見ているようだ。と風鳴翼は心中で呟いた。ノイズの襲来、ここ最近になって更に頻度が増しているそれは、悪い意味での日常と化しつつあった。しかし、出撃しようとした矢先に現れたアウフヴァッヘン波形、ありえないタイミングでのそれに加え、照合されたパターンはそれ以上にありえない聖遺物。

 

「ガング、ニール……」

 

 それは、2年前の惨劇で命を燃やした相棒が纏っていたシンフォギア。彼女以外にガングニールを扱う……と言うよりも、現状シンフォギアの装者は風鳴翼、そしてあのライブ以来ぱったりと姿を見せなくなってしまったレーヴァテインの装者しかいないのだ。

 そんな状況で現れたガングニールのシンフォギア反応。叔父であり、自身がその身を置く二課の総司令を務める風鳴弦十郎の指示を受け、翼は逸る気持ちを抑えて現場に急行することになった。

 既にシンフォギアを纏っている翼は、現在走っている工場地帯の中でも一際高い建物の屋上を蹴って飛び上がる。その眼下には、少女を抱えて走る姿。

 

「形状は少し違う、けれど……」

 

『どうだ、翼?』

 

「……私には、あれがガングニール以外のシンフォギアには見えません」

 

『やっぱりか……まずは、わかっているな?』

 

「はい」

 

 弦十郎の指示に短く応答を返して、自身のアームドギアである剣を展開、それを横薙ぎに振るうと、合わせるように大量の小剣を具現化させる。

 

「そこのあなたッ!!」

 

『うぇッ!?急に声が!?』

 

「そのまま真っ直ぐ、一直線に走りなさい!左右に動かないように!」

 

『は、はいッ!』

 

 一方的に通信回線を開き、呼び掛ける。対象は随分と困惑した様子を見せたが、力のある翼の言葉に従って走り続ける。翼はガングニールの装者の進行コースを避けるように、展開した小剣を一気に投下した。

 

──千ノ落涙

 

 放たれた小剣は的確にガングニールを追うノイズを貫いていく、それを尻目に翼は空中で姿勢を整え、ノイズに立ちふさがるように着地、手に持つ剣を巨大化させる

 

「一気に殲滅させる!」

 

──蒼ノ一閃

 

 巨大化させた剣を横薙ぎに構え、全力で振るう。それに合わせるように剣から巨大な斬撃が放たれ、追い縋るノイズ達を一気に両断していく。

 たった2発の技で大半のノイズを炭に変えた翼は、油断すること無く巨大化させた剣を通常のサイズに戻し、残ったノイズへと翔ける。そのまま培った剣技を存分に活かし、ノイズに反撃の糸口を与える事なく蹂躙していった。

 

「……すごい」

 

 安全圏まで走り抜け、抱えていた少女を降ろしたガングニールの装者は、たった一人で大量のノイズを殲滅していく翼をただ眺めている。その脳裏には、2年前のあの時の姿が重なって見えていた。

 

「やっぱり、翼さんは、ツヴァイウィングは……あれは、夢なんかじゃなかった……」

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「……翼さん、凄いね。あの時からもっと強くなってる」

 

 翼が戦闘を行っている区域の直ぐ側にある建物の屋上に立つ人影は、洗練された動きを見せる翼に感嘆するように溜息を吐いた。シンフォギアを強引に振り回すのではなく、自身の特性を活かし、ある時は力強く、ある時は流れるように素早く、ノイズを斬っては貫く。2年前とは見違える様だと感じる。

 

「それと……」

 

 呟いて人影は視線を移す、その先にはガングニールのシンフォギアを身に纏い、少女を守るように立っている女の子の姿。

 

「ガングニールのシンフォギア……か、何の因果なんだろうね、奏……」

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「これで、最後ッ!」

 

 一閃、光の軌跡さえ見えてきそうな太刀筋で最後のノイズを切り裂いた翼は、後続のノイズが現れないことを確認すると、アームドギアを収納、そのままシンフォギアも解除した。

 軽く息を吐いて振り返ると、大人しく立っているガングニールのシンフォギア装者と、それに守られていた少女。歩き出そうとした刹那、一瞬の静寂に包まれていた現場を裂くように車のエンジン音が響いた。

 

「え?うわわッ!」

 

 数台の車両は三人を囲むように停車すると、中からは黒いスーツを着た人間と、作業着を着た人間がぞろぞろと降りてくる。それらは他には目もくれずに、現場の検証を始めていた。

 

「なんなのぉ……一体……」

 

 困惑する様子を隠さないガングニールの装者に、翼は歩み寄る。彼女は歩いてくる翼に気づいたのか、あ、と声を漏らした。

 

「怪我は無い?」

 

「あ、……は、はい。私もこの子も全然、ダイジョブです」

 

「そう、良かった……色々聞きたいことは、まぁ……こちらにもあるし、そちらにもあるのだろうけど……まずは、この子の命を守ってくれてありがとう、あなたのおかげで、命が救われたわ」

 

「そんな、私は……ただ、なんとかしなきゃって思って、夢中で……それに、私には託された言葉と、想いがありますから!」

 

「言葉と、想い……」

 

「生きるのを、諦めるな」

 

「……ッ!」

 

 ガングニールの装者から飛び出した言葉、それは忘れることは決して無い、あの惨劇。その最中に、相棒が死にかけの少女に放った言葉……

 

「私、立花響って言います!……実は、翼さんに助けられるのは、これで二度目なんです!」




1期、始まります(大分端折った模様
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