戦姫絶唱シンフォギア ーそれは破壊の力ー   作:雪原

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実はもうちょっと早く、かつ内容ももっと多く投稿する予定だったんですが、ちょっとした事情で体調を崩していたためまたもや短めの投稿になってしまいました。



熱中症には気を付けましょう!(白目


再び舞う炎

『聞こえる?』

 

 一部始終を覗き見していた人影の耳に、鮮明な声が響く。2年に渡り使い続けている古株の通信機だと言うのに、その音質には一切の劣化が無い。目線は未だに作業を続ける二課の人間から離さずに、そっと耳に手を当てる。

 

「感度良好、何時も通りの高音質」

 

『それは重畳。さて……どうだった?舞歌』

 

「……新しいガングニールの装者が現れた」

 

『ガングニールの!?うそ、あの人以外にガングニールを持ってる人がいたの!?』

 

「その割には、様子がおかしいみたいだけど……あ、手錠掛けられてる」

 

『手錠?』

 

「翼さんと黒スーツの人となにか話して……車に乗ったね」

 

『車?』

 

「あ、そのまま連れて行かれた」

 

『えぇ……』

 

 舞歌の簡素な報告に通信の相手である唯が困惑気味に呟く。状況が状況ではあるが、知らない人が見れば誘拐か何かと勘違いしそうな光景だ。最も、送られる先の予想が付いている舞歌に慌てる様子は無い。

 

「一通り見ていたけど、彼女は今初めてシンフォギアを纏ったみたい。戦う……というよりは、訳も分からず逃げまくってた、って感じだった」

 

『ノイズが現れた現場で初めてシンフォギアを纏って、訳も分からず逃げる……どういうこと?』

 

「さぁ。でも、あの子の事は知ってる」

 

 思い起こされるのは2年前、あの時救急隊員に預けて、今の今に至るまでその生死を確認出来なかった少女。

 

「立花響……あの子が、新しいガングニールの担い手……」

 

『立花響って……あの時の!』

 

「生きていてくれたのは嬉しいけれど……こんな形で知ることになるとは思わなかった」

 

『本当にね、よし。それじゃ舞歌、今日のやることはおしまい。例の女の子に狙われてないかだけ確認して、寮に戻ってきてね!』

 

「了解」

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「……はい、例の装者を確保しました。今はそちらに向かっています」

 

『わかった。こちらでも受け入れ態勢を整えておく。聞きたい事、聞かなければならない事は幾らでもあるが……通信越しよりは直接顔を合わせてからの方が良いだろう。どれ位掛かる?』

 

「そうですね、30分程でそちらに到着すると思います」

 

『よし、では緒川、こちらに到着するまでは任せたぞ』

 

「はい、では……」

 

 司令部に構える弦十郎と会話を終えた緒川は通信を切る。バックミラー越しに後ろを見ると、緊張した面持ちの響と、こちらも何時もよりは少し気を張っているような面持ちの翼が座っている。

 

「今……どこに向かっているんですか?」

 

「まだお教えすることは出来ません。あぁでも、立花さんも知っている場所ではありますよ」

 

「知っている場所?どこだろう……」

 

「ふふ、楽しみに……いえ、あんまり楽しみには出来ない状況ですよね……」

 

「あ、あはは……」

 

 苦笑いを浮かべる響、その両腕には手錠が掛けられていた、それも通常のでは無く、大きくて頑丈な物。

 

「こういうのって、凶悪犯とかが付けてるやつじゃ……」

 

「すみません、一応規則なので。もう少しだけ我慢してください」

 

「はぁーい……」

 

 そんな響と緒川の会話を聞く翼は、顔には出さず、けれども困惑が胸中を占めていた。

 

(見た目も普通、動き方や喋りも一般人そのもの……どうしてこの娘にシンフォギアが?

あのライブ会場にいたから?まさか、それなら今頃装者が溢れている筈……しかも、よりにもよってガングニール……)

 

「……翼、さん?」

 

「ッ、何かしら」

 

「あ、いえ……ずっとこっちを見てたので、その……」

 

「ッあ、あぁ……ごめんなさい、なんでもないの」

 

(いけない、戦闘後とは言え、つい考えにかまけて気が緩んでしまった。二課に付くまでは気を引き締めないと。それに、疑問の答えは遠くない内に分かる筈……)

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「……うーん」

 

 これは困ってしまった、と舞歌は頭を掻いた。

 前方、ノイズ

 右方、ノイズ

 左方、ノイズ

 後方、壁&ノイズ

 

「囲まれてしまった……」

 

 響ちゃんが二課に連行されていく現場を後にして、そのまま寄り道せずに寮に戻る予定だった……しかし、不意に前方に現れたノイズを皮切りに、我も我もと流れるように出現するノイズ達。

 

「意図的?それとも、野良ノイズ……?」

 

 首を傾げて見ても、見た目的にその判断は全くつかないのがノイズであり。取り敢えず、唯に通信を……

 

「唯、ノイズが……唯?」

 

 耳元の通信機をトントンと叩いても、帰ってくる音は無い。不調?今までずっと使っててこんな事一度も……

 想定外の不調に顔を顰めるが、それで状況が変わるわけも無く。ノイズはじりじりと距離を詰め、包囲網は狭まっていく。

 このままではどうしようも無いと考えた舞歌は、気を落ち着かせるように深呼吸をして、服の中に隠しておいたそれを取り出した。

 

「行くよ、レーヴァテイン」

 

 舞歌の呼びかけに反応するように、手のギアペンダントが夜の光を反射してキラリと光を見せた。それを見た舞歌がクスリと笑みを浮かべ、ペンダントを握り締めた。

 

――Inyurays laevateinn tron……

 

 透き通るような聖詠、呼応したギアペンダントが眩い光を放つ。光はそのまま舞歌を包み……それが晴れた時には、レーヴァテインのシンフォギアを纏った舞歌の姿があった。

 その姿は2年前とほぼ変わらず。しかし、顔を覆い隠していた仮面は無くなり、代わりに目元を隠すように黒い色のバイザーが展開されるように変更されていた。

 何度か右手を握っては開き感触を確かめた舞歌は、そのまま右手を開き、前に突き出す。いつものようにその手の前にアームドギアが展開され、それを握り、左から右へ、空気を斬るように振り下ろす。問題なく展開されたアームドギアは、手慣れた感触を舞歌に返した。

 舞歌は前方のノイズをバイザー越しに睨み付ける。これで全ての準備は整った。

 

「余計なモノを呼び寄せる前に……速攻で片を付ける!」


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