戦姫絶唱シンフォギア ーそれは破壊の力ー   作:雪原

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響ちゃんの誕生日となれば彼女がメインのお話をする他あるまいと思い、割と突貫で書き殴りました

いえーい!響ちゃんはぴばー!


再会

「……ん……」

 

 身体が重い、と言うより痛い。ついでに瞼も重い。意識だけがふわふわと浮いている様な感覚、これは、眠りから覚めた時によく起きる感覚だ。

 

「おーい、朝だよー」

 

 声がする、うるさい。

 

「起こしてって言ったの舞歌でしょー」

 

 確かに昨日、疲れ果てて帰ってきてあの時の事を話した後、シャワーだけ浴びて倒れ込むように眠った気がする。その時に明日起こしてほしいと言った気もする。でも仕方ない、頭が勝手に起きるのを拒否しているから、そう、仕方ない。

 

「んぅ……」

 

「はーん、そうですかまだ頭が起きてないみたいですねー

私としても心苦しいけどーこれ以上寝られると遅刻しちゃうから仕方ないねー、そう、仕方ない!」

 

 唯が何か言っている気がする、眠っているから聞き取れない、聞こえてないから仕方ない、仕方な

 

「そぉい!!!」

 

スパァン!!

 

 

──

 

 

「……痛かった」

 

「朝も言ったけど、起こしてって言ったのは舞歌でしょ。

ま、昨日が昨日だから寝てたい気持ちも分かるけど……私達学生だからね

、お昼まで寝まくるとか毎日したいよねぇ」

 

 寝惚けた頭をハリセンで文字通り叩き起こされた舞歌は、叩かれた頭を触りながら廊下を歩く。その隣には唯の姿があった。

 時間は午前の授業を終え、昼休みに入った所。二人は昼食を取るために、学生達がわいわいと騒ぐ廊下を歩く。

 

「結局睡眠不足で居眠りしちゃったけど」

 

「思いっきり怒られてたね、天海さぁん!!って」

 

「むぅ……」

 

「走らないでって、危ないよ!」

 

「だいじょーぶだって、未来は心配性だなー!」

 

 くすくすと笑う唯に不満げな顔をしながら歩き続けていると、案じるような声と、やんちゃ坊主のような快活な声が聞こえた。

 

「1年生かな?元気だねぇ」

 

「そうだね」

 

「いやー私も小学の頃はアレくらい……あ、舞歌、危ない!」

 

「え?」

 

 唯が指さした方向を見る、そこには目前まで迫った女の子の姿。

 

「うわわわわ!」

 

「ちょッ……!?」

 

 こっちは思わず立ち止まってしまい、向こうは走っていたらしく止まれる訳も無い。今騒いでいたのはこの娘か、と舞歌が思い立ったのと同時に、ごちん!と鈍い音を立てて、二人の頭が激突する。あちゃー、と肩を竦める唯を尻目に、勢いを殺しきれない少女が舞歌を押し倒す形で床に倒れ込んだ。

 

「う、ぇ……痛……」

 

「あ、頭が……あッ、す、すいません!大丈夫ですか!?」

 

「な、なんとか大丈夫……あ」

 

 結構な痛みに堪えながら、自分に跨ったまま慌てて謝る少女に答える。反射的に浮かんだ涙を拭ってその少女の顔を見て、舞歌は呆けたように声を上げた。少女の方も舞歌の顔を見て、一瞬固まった後、その双眼を見開いた。

 

「もしかして、舞歌さん……!?」

 

「響ちゃん……!?」

 

 

 

──

 

 

 

「いやー、まさかこんな所で舞歌さんと唯さんに会えるなんて!今日の私は呪われてない!?」

 

「私達もびっくりしたよ、響ちゃんがリディアンに入学してたなんてね!」

 

「響がすいません……本当に大丈夫ですか?」

 

「うん、もう大丈夫。ありがとう未来ちゃん」

 

 まだ少し赤みが残る額を撫でながら、申し訳なさげに謝る小日向未来と名乗った娘に返す。彼女は目の前で唯とはしゃぐ響の幼馴染のようで、小、中とずっと同じ学校で過ごし、大の付くほどの親友らしい。なんでも彼女がリディアンの入学を目指していると聞いて、響も一緒に行くと即決した程だと言う。

 舞歌は未来と会話を続けながら、昨日の出来事と今の響の様子を見て思案する。

 

(昨日の今日でしっかり登校してるってことは……昨日二課の人達に連れて行かれた後、軽い事情聴取と説明だけで帰された。って所かな、恐らく今日改めて詳しい説明を受けるんだろうね)

 

 あの時、奏のガングニールの破片を胸に受けた響。あの時以降、昨日ガングニールを纏っている姿を見るまで彼女の様体を掴むことは出来なかった。

 

(ガングニールの破片を受けた響ちゃんが、ガングニールのシンフォギアを纏う……それは、まるで)

 

 まるで、力を継承したかのようだ。

 そう考えて、その考えを振り払うように頭を振る。それではまるで、響も装者として戦う運命にいたかのようで、それはなんとも言えないような嫌な感じを舞歌に覚えさせた。

 

「……舞歌さん?」

 

「ん、どうかした?」

 

「いえ、険しい顔してたので……まだ痛いのかな、って」

 

「あ、あぁ。違うよ、ちょっと考え事をね。

ごめんね、喋ってる途中に」

 

「そんな、大丈夫ですよ。響なんて喋ってる途中でも興味持ったものにすぐ向かっちゃったりするし……」

 

 困ったように言う未来だが、口ではそう言っていても表情は嬉しそうに綻ぶ。きっとそういう面も含めて好きなのだろう、と。

 

「あぁ、唯も似たような時があるね、言っても聞かないから正直困る時も……」

 

「なんか、境遇似てますね……」

 

「全く……」

 

「む?何か後ろが辛気臭いね」

 

「んぇ?ほんとだ。未来も舞歌さんもどうしたのー?溜息つくと幸せが逃げるって言うよ!」

 

「そうだよー、笑顔でやってかないとね!」

 

 誰のせいだよ。と出かかった言葉を引っ込めながら、未来と舞歌は同時に溜息を吐いた。

 

 

 

──

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……で、どう思うの?」

 

「うーん……」

 

 放課後。学校を出て寮の部屋に到着し、舞歌は手に持っていたカバンを降ろしながら唯に問う。

 あの後、昼食を二人と共に済ませ、連絡先を交換。それからは至って何時も通りの学校生活を過ごし、今に至る。

 唯が考えているのは、立花響という存在。そして彼女が纏うガングニールの事。

 

「舞歌、もう一度聞くけれど。

奏さんが纏っていたガングニール、ノイズの攻撃を受けて破損したその破片が、響ちゃんの胸に突き刺さった。これは間違いない?」

 

「間違いない」

 

「多量に出血していて、駆け寄った時には気絶してたんだっけ?」

 

「そう、私と奏が呼びかけたら、朦朧としてはいたと思うけど、意識は取り戻してた」

 

「そして舞歌が響ちゃんを抱きかかえて、救急隊の所に預けた……ふーむ」

 

 ライブ会場で起きた事を改めて聞きながら、考え込むように顎に手を当てる。

 暫くの沈黙。舞歌が喉を潤す為に冷蔵庫に入れておいた麦茶をコップに注ぎ、ぐいっと一口。飲み終えた所で唯が「これは仮説だけど」と前置きして話し始めた。

 

「あの時響ちゃんに突き刺さった破片。意識を刈り取って大量出血するほどだから、結構な勢いで刺さったんだよね」

 

「……そうだね、身体が少し吹き飛ぶ位だったから、貫通してないのが不思議な位」

 

「もし、その破片がまだ響ちゃんの中に残っていたとしたら?」

 

「……まさか、それが?」

 

 唯の言わんとしていることは、ここまで説明されれば舞歌にも理解できる。つまり、奏のガングニールの破片が未だに響の体内に残っており。それによって響がガングニールのシンフォギアを纏うに至ったのではないか、という仮説。

 

「でも、それは……」

 

「ま、基本そういうものは手術で取り除かれるのが普通だけど……心臓や重要な血管の付近にまで食い込んだ異物は、取り除けない。もしガングニールの破片がそこまで食い込んでいたとしたら」

 

「確かに、それなら体内に破片が残っているのはわかるけど……ただの破片が、シンフォギアを纏わせるまでの力を持ってるの?」

 

「私もそれが一番の疑問だと思う。こう言ってはなんだけど、奏さんはガングニールとの適合率がそんなに高いとは言えなかった筈。そんな彼女が纏っていたガングニール、更にそのほんの一部分の破片。たったそれだけの物にそこまでの影響力があるのか……でも、現状それ以外に考えられる原因が無いのも事実」

 

 シンフォギアは聖遺物を利用して製作される兵器なのだ。自然的に発生する力では無く、舞歌や唯の様な特別な理由がなければ、ただの一般人が手に入れ、使用できるような物ではない。

 

「勿論二課でもこの事は把握済みだろうし、既に調査を始めていると思う。

でも一応、私達の方でも響ちゃんの動向には気を付けておこう」

 

「響ちゃんがこのまま日常生活に戻るのなら良し。

けど、もし、シンフォギアを使う決断をしたなら……」

 

「何が起こるか、分からない。何も起きないかもしれないし、響ちゃんの生命に影響が及ぶ事になるかもしれない」

 

 立花響の、命。舞歌の脳内に浮かんだのは、響と楽しそうに会話する未来の姿。あれだけ仲が良かったのだ、2年前も未来は随分と気を揉んだだろう。不安な思いもしたはずだ。まだ出会ったばかりの娘ではあったが、そんな想いをまたさせてしまう訳にはいかないだろう。

 

「前途多難だねぇ」

 

「そうだね……」

 

 

 

──

 

 

 

「……私の持つ、この力で……誰かを助けることができるんですよね?」

 

 放課後、昨日のように翼に連れられて二課の本部へと再び招かれた響は、自身が纏ったシンフォギアについての説明を受けた。その上で、司令官の弦十郎から受けた協力要請。

 得体のしれない力、怖いと言われればきっと否定することは出来ない。ここで嫌だと言ってしまっても、この人達は多分、悪いようにはしないのだろう。

 ……それでも、偶然でも手にしたこの力で、誰かを助けることができるのなら、きっとそれは、立花響(ワタシ)が望む事、やりたいことなんだ。

 弦十郎と、自分の身体を調べてくれた了子が頷く。それを見て、響は決断した。

 

「わかりました、これから、よろしくおねがいします!」

 

「やってくれるか……ありがとう!」

 

「じゃあこれからは同僚ね!よろしくね、響ちゃん」

 

「はい!」

 

──

 

「……あ、翼さん」

 

「あら……話は終わったのね」

 

「はい」

 

 協力要請を受諾して暫定的ではあるが、二課の一員となった響。弦十郎と固い握手を交わした後、彼は響に来てほしい場所がある、と言った。その場所へ行くには少し時間が必要らしく、響はその間二課の内部を見学がてらあるきまわっていた。そんな中、休憩スペースのような場所に、翼がいることに気づく。思わず声を上げると、向こうも気付いたようで読んでいた雑誌を閉じた。

 

「……私、戦うことにしました」

 

 響の言葉に、翼の瞳が揺れる。二課が彼女に協力を要請するつもりでいたのは、予め弦十郎から聞いていたし、それに異議を唱えるつもりは無かった。彼女がどのような選択をしたとしても、それを受け入れる程には、自分の心も落ち着いていると思っていた。

 しかし、いざ面と向かって言われると、平静であろうとした心中がざわめき立つのを感じた。

 

(奏のガングニール……私もまだ、引き摺っているのね)

 

「慣れない身ではありますが、頑張ります!

だから……一緒に、戦ってくれればと、思います」

 

 そう言って、差し出される手。それを見て、翼は手を出さなかった。

 

「ぁ……」

 

 手を握ってもらえなかった。受け入れて貰えなかったのだろうか、不安げに目を伏せる響に、翼は深呼吸を一つして、ゆっくりと口を開く。

 

「シンフォギアを纏い戦うということは、その生命を失う可能性もあるということ……いえ、その覚悟は司令と櫻井女史が既に見定めているのでしょう。ならば、それについて言うことはありません。

ただ、分かって欲しいの。言葉だけではなく、実際に見て、感じて、そして考えて。その上でまだその覚悟が揺らがないのなら……」

 

 そこまで言った所で、二つの足音が二人の耳に入る。揃って顔を向けると、そこには神妙な面持ちの弦十郎と了子がいた。

 

「待たせたな、響君。君に……会ってもらいたい人物がいる」

 

「私に?」

 

「ええ、そうよ。その人はあなたにとって、とても重要な人物。

もちろん、あなたの隣にいる翼ちゃんにとっても、ね」

 

「翼さんにとっても……」

 

「翼、お前も来るか」

 

「……はい」

 

 頷いた翼は、響と共に歩き出した。響がそれを見て、何を思うか、何を考えるかを確かめるために。




これで翼さんの激務が多少改善する可能性が……?
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