戦姫絶唱シンフォギア ーそれは破壊の力ー   作:雪原

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お好み焼きと天羽奏

レーヴァテインの初起動、そしてノイズとの初戦闘から翌日、学校が終わった途端「アレの微調整をしてくる!門限までには戻るから!」と言って(アレとは勿論レーヴァテインの事だ)唯に置いてきぼりにされた舞歌は、リディアンから然程離れていない商店街に足を踏み入れた。

時間が夕方頃だけあって、商店街は中々の活気に包まれている。

そんな中を少し歩いて、目的の場所に辿り着く。気軽にその店に入ると、香ばしい匂いが鼻を擽った。

 

「いらっしゃい。……おや、舞歌ちゃん」

 

「こんにちは、おばちゃん」

 

お好み焼き屋『ふらわー』。

舞歌も唯も、一度食べてから魅せられすっかり常連になった店だ。

狙い通り来た時間は人が殆ど居らず、カウンター席に至っては全席が空いていた。

いつも座っている席に腰を下ろし、いつもと同じお好み焼きを注文。待っている間、昨日の事を思い出す。

 

──シンフォギア、ノイズとの戦い。そして、秘匿されている二課のシンフォギア装者。二課にこちらの事を明かさない理由。

唯が言うには『誰も知らない幻のシンフォギア、かっこよくない?』との事だが、当然それだけではない、何か目的がある、……多分。

 

「今日はメガネのあの娘は来ないの?」

 

「ん……ええ、何やら用事があるとかで、学校終わって直ぐに飛び出して行きました」

 

「そうかい、残念だねぇ。あの娘の食べっぷり、豪快だから」

 

「ですね、食いかすがたまに飛んでくるのが傷ですけど」

 

「それでも、一緒に来たかったんだね?ちょっと寂しそうだよ」

 

「はは……おばちゃんは流石ですね」

 

年の功……失礼、職業柄なのか、おばちゃんは人の心を察するのに長けている気がする。

気さくで喋ってくれるし、話す気分じゃないときは黙っていてくれる。そう言った気遣いが、 常連を生み出すのに一役買っているのだろう。

 

「そういえば最近、唯ちゃんみたいに豪快に食べてくれる娘がまた増えたんだよ」

 

「唯みたいに?珍しい娘ですね」

 

完成したお好み焼きが皿に盛られ、前に出される。いい匂いだ、たまらない。

食べやすい大きさにカットしつつ、舞歌はおばちゃんの言う新しい豪快娘に興味が行った。

何せ隣で見ている分唯の食べっぷりは相当だ、おばちゃんだって目の前で焼いているのだから分かっている。そんな唯に匹敵すると言われれば、気になる。

 

「旨い旨いって食べてくれるものだから、私もつい調子にのって出しちゃうのよねぇ……」

 

「ふーん……いいですね、会ってみたくなってきました、その娘」

 

言いつつお好み焼きを口に運ぶ。何時も通りの味だ、とても旨い。

一口行くと止まらなくなるのがこのお好み焼きで、がつがつと手が出てしまう。こうなるとおばちゃんも会話をやめて仕事に回る辺り、流石だ。

そんな風に静かにお好み焼きを満喫。大体半分を胃に投入した所で、何の前触れも無く、元気一杯に入口が開いた。

 

「おっす、おばちゃん!」

 

「あら、いらっしゃい。ちょうど今あなたの話をしてた所よ」

 

「あたしの?」

 

と言うことは今入ってきた彼女がその『豪快に食べてくれる娘』なのだろう。

気になっていた舞歌は、お好み焼きを飲み込んでからちらりと顔を入口に向け……

 

「んッ!?」

 

しっかり飲み込んでいた自分に感謝した。

だってその娘と言うのは。

 

「あたしの食べっぷりが早くも伝説になったってことか?ははっ」

 

「あ、天羽奏……?」

 

只今人気爆発のアーティスト「ツヴァイウィング」の1人だったとは。おばちゃんの交友関係恐るべし、と舞歌は内心驚愕していた。

 

 

 

──────

 

 

同時刻、特異災害対策機動部二課

 

弦十郎は借りていた映画をTATSUYAに返却し、二課にて腕を組みモニターとにらみ合いを開始していた。

モニターには様々な情報が表示されているが、そのどれもが弦十郎の目には入っていない。

頭を占めているのは先日、何の前触れも無く出現した新たなシンフォギアの事だ。

あの後、帰還した奏、翼も呼び改めてアウフヴァッヘン波形の照合を試みた所、ヒットは無し。

形状も天羽々斬、ガングニール、そして現在行方不明になっている第2号聖遺物『イチイバル』とも似てすらいない。

 

(やはり、此方の全く知り得ない聖遺物から造られたシンフォギアか……)

 

「あーん、つっかれたー」

 

思考に耽る弦十郎の後ろから、気の抜けた女性の声がした。

櫻井了子、二課の技術主任にして、シンフォギア・システムの開発者でもある。

 

「了子君、何か分かったか?」

 

「少しだけね」

 

「少し?」

 

了子は近くのモニターを手早く操作、弦十郎がにらみ合いを続けていたモニターにシンフォギアの分析が表示される。

 

「アウフヴァッヘン波形の形状はご存知の通り、合致無しだったわ。

分かったのは、まあ辛うじて属性って所かしらね」

 

「属性?」

 

「そ、例のシンフォギアは、炎が関係する聖遺物から造られたっぽいわ」

 

次にモニターに映し出されたのはシンフォギア使いが倒したとされるノイズの炭と、その隣に2つのグラフ。

 

「これは?」

 

「炭化したノイズの熱量よ、左が通常の……奏ちゃんと翼ちゃんが倒したノイズの物で、右がシンフォギア使いの物」

 

グラフは左に比べ右の物が圧倒的に高く伸び、その熱量の差がよくわかるようになっている。

つまり、このグラフを元に了子は予測を立てたと言うことなのだろう。

 

「熱量に関係すると言えば、ま単純に雷や炎だけど……これだけじゃ絞り混みは出来ないわ」

 

「確信に至るには程遠い、か……」

 

「奏ちゃんが熱の事に気づいてくれなかったら、これすらも分からなかったわね、お手柄だったわ」

 

「その奏は?今日はまだ姿を見ていないんだが……」

 

「彼女なら、お食事中よん。商店街にお気に入りの店があるんですって」

 

 

 

──────

 

 

 

「リディアンに?じゃあ翼と一緒なんだな」

 

「いえ、まだ中3ですから、一緒になるとしたら来年からです」

 

隣でお好み焼きにがっつく天羽奏と会話しながら、舞歌は思わぬ形で訪れた有名人との邂逅に世間の狭さを感じていた。お好み焼き屋でトップアーティストと遭遇するか普通、そのトップアーティストが一学生の自分とわいわい喋るか普通。

 

「そういや翼の着てた制服は違うのだったか。

ま、高等部に入ったら翼の事、よろしくしてやってくれよな!あいつ、真面目過ぎて友達が中々出来なくてな、あたしも困ってたんだ」

 

どうやら想像していたそれと風鳴翼の私生活は違っていたらしい。天羽奏程では無いにしろ友達付き合いは良好だと想像していた舞歌は、奏の言葉に「はぁ……」といった生返事を返すしか出来なかった。

 

「そうだ、そっちの事も教えてくれよ!えーと……日向唯だっけ?あたしに匹敵する食いっぷりの女、お目にかかってみたいからな!」

 

「唯の事ですか……まあ、私の知ってる範囲でよければ」

 

 

 

──────

 

 

 

「ただいま」

 

「おー、お帰り舞歌。私より遅いなんて珍しいね、何かあったの?」

 

ふらわーでの食事と天羽奏との邂逅の後、門限ギリギリに戻ってきた舞歌は既に部屋着に着替えてアイスを食べながらテレビを見ている唯を尻目に、鞄を投げて冷蔵庫へと歩く。

 

「ふらわーでご飯食べてきた」

 

「1人で?そりゃまた珍しい」

 

冷蔵庫を開けて、飲み掛けの烏龍茶を取り出し、コップに注いで一口。喉の潤いを感じる。

 

「あと、天羽奏に会った」

 

「へー、あのツヴァイウィングの……ぶうぇっ!?」

 

「汚い」

 

舞歌の爆弾発言に含んでいたアイスをテーブルに噴出させた唯に容赦なくティッシュ箱を投げつける。

当然取れるわけもなく頭に直撃しつつそれでテーブルを拭く。

 

「一体どこで会ったの?そんな有名人」

 

「ふらわーで、あちらさんも常連だって」

 

「へぇ、世間は狭いね」

 

舞歌と同じ感想を言いつつテーブルを拭き終えた唯の隣に腰を降ろしてテレビを眺める。

……ちょうど、ツヴァイウィングの特集をやっているようで、ステージの上で楽しそうに歌う天羽奏と風鳴翼の姿が映っている。

 

「すごいねー、流石トップアーティスト」

 

「この二人が、ガングニールと天羽々斬の装者だったりしてね」

 

「アーティスト活動と平行してるってこと?可能性としてはゼロじゃないだろうけど……まさかそんな」

 

「私も無いと思ってるから。

……そうそう、天羽奏に唯の話したら会ってみたいって言ってたよ、食べっぷりを見せろ、とか」

 

「おっ、マジ?ふらわーに行くの楽しみになってきたなー」

 

笑いながら言う唯はどうみてもウキウキしていて、そんなに見れない様子に舞歌は意外そうに目をぱちくりさせた。

 

「……意外とミーハー?」

 

「違うよ!ツヴァイウィングだけだから!」

 




おばちゃんの口調が不安……
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