戦姫絶唱シンフォギア ーそれは破壊の力ー   作:雪原

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神様をパクパクしてたら遅くなりました。いやもうほんとすいません……あと、後半に行くほどなんかワケわからなくなってる。


風が鳴り天が舞う(前)

「…………」

 

「…………」

 

「翼ー、頑張れよー!」

 

「舞歌、負けたらご飯抜きだよー!」

 

「「……はぁ」」

 

場所は風鳴家の道場、舞歌は木刀を手に、対面にて構えは違えど同じように木刀を構える風鳴翼。

道場の隅には、ワクワクしているのだろう楽しげに声援を飛ばす唯と奏の姿、目の前の風鳴翼と同時に溜息を吐いたのを見ると、考えていることは同じだろうな、と舞歌は少し親近感を持った。

 

((……どうしてこうなった))

 

 

 

────

 

 

 

事の始まりは、舞歌が唯と共に買い出しに出掛け、その帰りに奏と風鳴翼の二人に遭遇してからだ。

 

「……あ、奏」

 

公園のベンチに腰掛けてアイスクリームを食べつつ、子供がキャッチボールをしている光景を眺めていた舞歌が、何気無く向いた先に居た、見覚えのある服装に言葉を漏らす。

相変わらず変装には気を使っている様で、奏が来ていた服が以前出会った時と似ている物でなければ気づかなかっただろう。

そんな何気無い呟きに、餌を撒かれた鯉のようにがっついたのは当然、隣で瓶コーラをがぶ飲みしていた唯だ。

 

「うぇげふっぉ!?どこどこ?」

 

「驚くかげっぷするかどっちかにしてよ。……ほら、あそこ」

 

舞歌が指差した先には、どこかに向かって手を振っている奏の姿がある。

一見そうは見えないと思った唯だが……

 

「…………ほんとだ、すっごい、本物を見れた」

 

おや、と舞歌は少し驚いて隣の唯に視線を向ける。もっと騒ぐと思っていたが、予想外に落ち着いているようだ。

そんな唯を尻目にアイスクリームをさっさと食べきって、挨拶の1つでもしようかと立ち上がった。

 

「唯」

 

「なに?今目に焼き付ける作業で忙しい」

 

なら放って置こう。

 

「じゃあ私だけでいいよね、ちょっと話してくる」

 

「行く行きます行かせてください舞歌様」

 

「宜しい」

 

 

 

────

 

 

 

天羽奏は深く被った帽子の奥から、先程まで自らも居た建物を見据えた。

気晴らし故の外出では大して用事もなく、先程まで一緒にいた翼に付き合うような形で買い物に出たが、奏にとって翼と一緒にいることはそれだけで楽しい物だ。だからこうやって太陽の下で待たされるのだって苦ではない、無いが……

 

(ちょっと遅すぎないか?翼……まさかバレたりしてないよな?)

 

まだそんなに暑くは無いから平気だが、こうやって一人で待ち呆けているのは暇だ。

ふと思い立ったよくない予想にキョロキョロと周囲を窺ってみるが、見た感じは騒ぎ立たれてない様子、バレてはいない……筈だ。

 

(…………暇だ)

 

中に戻って翼を探すことも考えたが、もし入れ違いにでもなったらまた待ち呆けることになってしまう。結局、このまま待ち続けるしか出来なさそうだ。

 

(しかし翼のやつ、一体何を買いに行ったんだ?興味を引くものなんてあったか……)

 

「……奏」

 

「ん?」

 

うんうん唸っていると、後ろから自分を呼ぶ声がした。

しかし下の名前だけで自分を呼ぶ人間等、そんなにいる訳ではない。

誰だ?と振り返った奏は、その先にいた、ごく最近仲良くなった赤い髪の女子……舞歌を見てぱあっと表情を明るくした。

 

 

 

 

────

 

 

 

「お前達もあそこに買い物だったのか」

 

「うん、あそこって何でもあるからね、そんな離れてもないし、よく行くよ」

 

「奏さんはお一人で来たんですか?」

 

「いや、翼も一緒だ。まだ中にいるんだけど、遅くてな……待ってた所だ」

 

「翼さんも!すっごいなー私幸せすぎるかも!」

 

場所はさっきまで唯と舞歌がいたベンチへ戻り、やっぱりミーハー……とでかかった言葉を飲み込んで、浮かれまくっている唯に大声を出すな、と額に手刀。

変装してるからいいものの、見付かったら貴重な休日を潰す事になるのだ。唯もすぐに気付いたようで、声量が小さくなった。

因みに話題には出していたが今日が初対面の唯と奏は、波長が合いでもしたのかすぐに仲良くなっていた。隔て無い奏と元からツヴァイウィングのファンだった唯ならそれも当然か。

 

「今更だけど、暇ならあたし達に付き合ってくれるか?翼にお前達を紹介したいからさ」

 

「大丈……「もっちろん、今日はもう暇ですから!」……人の言葉を遮らない」

 

「あははっ、やっぱ面白いな、お前ら!」

 

面白いのはこいつだ、と二度目の手刀を唯に打ち込んだ舞歌が、何かに気付くようにあ、と声を上げた。視線の先は奏の後ろ。

つられて奏が振り返ると、しきりにキョロキョロと周囲を見回しまくっている不審な青髪が1人。

 

「あれ、風鳴翼さん?」

 

「うえっ!?どこどこ?」

 

「あれだよあれ、あたしの事探してんのかな?」

 

何かの袋を片手に、困ったように周囲を探す風鳴翼。

奏がニヤニヤしているのを見ると、このまま困らせる算段らしい、傍迷惑な、悪くない。

よく見れば分かる筈だが、それとも3人でいるから分からないのか。

暫く探していた風鳴翼は、入れ違いになったと仮定したらしく、再び店内へ向かっていく。

あのまま入られてはまた待ち呆ける事になってしまう。

奏はいたずらに満足したのか笑いながら、「おーい」と一見誰に宛てたか分からない呼び方をする。

 

「それだけでいいの?」

 

「翼だからなー、……ほら」

 

奏の言った通り、声質だけで奏とわかったらしい風鳴翼は、神速の速さでぐるりと振り向き、手を振る奏に気付いて走って向かってきた。

 

「遅かったな、翼」

 

「ごめん、並んでて……えっと、この人達は?」

 

当然ながら、翼は初対面の二人が奏と一緒にいるのを見て小首を傾げる。

 

「あぁ、友達さ、ふらわーで知り合ったんだ。この前話したろ?」

 

「あぁ……」

 

「天海舞歌です」

 

「日向唯です!」

 

「初めまして、風鳴翼よ。よろしくね」

 

初対面じゃないんですけどね、思いっきり敵対しましたし。とは間違っても口に出さず、差し出された手を握る。

印象は悪くなさそうだな、と奏は二人と握手した翼を見て、嬉しそうに表情を緩めた。

 

「うっはー握手しちゃったよ私、一生のお宝だ……」

 

「そ、そんなに喜んでくれるの?」

 

「ファンの一人なもので!」

 

純粋に喜んでいる唯に、風鳴翼も驚きつつ、満更でも無さそうに笑っている。

……今更だが、こんな街中でトップアーティスト二人と一緒にいるこの状況って、とんでもなくラッキーな状態なのではないのだろうか?

いくらふらわーで何度か会話を交わし、友達になったとはいえ、一学生とは身分が違いすぎる。

そして、唯と言葉を交わす風鳴翼も、舞歌と言葉を交わす奏も、トップ中のトップに登り詰めようとしている。メディアへの露出も多く、ファン以外でも顔を知っている人間は日本中に沢山いるだろう。

……現に、周囲が僅かに、ざわつき始めた様だ。いくら変装しているとは言え、分かる人間にはわかってしまうのだ。

 

「……奏、不味いかも」

 

「お、鋭いな、あたしも今気付いた所だ。

……唯、翼、移動するぞ」

 

「……わかった、奏」

 

「へ?何何……あ、そう言う事か」

 

二人も周囲から集まってくる視線に気付いた様子、頷くと、それぞれの荷物を手に立ち上がった。

 

「んじゃ、どっか適当な場所にでも───」

 

「あ、危ない!」

 

急な大声に、四人がその声が聞こえた方向を見る。

そこには四人に……正確には唯に向かって飛んでくるボールがあった、しかも柔らかいお遊び用では無く、試合で使われる様なしっかりしたボールが、結構な速度で向かってくる、軟式か硬式かまではわからなかったが、当たれば結構な打撃には違いないだろう。そして当然、運動神経皆無の唯には視認した所で避ける反射神経がある筈もなく。

 

「やば…………!」

 

パシッ、と、人に当たったにしてはあまりにも軽い音が鳴った。

飛んできたボールは唯に命中する前に、いつの間にか唯の前に立っていた舞歌によって、完全に捕球されていた。

それこそ、舞歌の目の前にいた奏が、「え?」と声を漏らす程の速さで。

 

「貴女、今……「うわわわわわッ!?」あッ!?」

 

同じように舞歌の動きを見ていた翼が何かを喋ろうとした……が、目の前に迫る唯の背中に喋ろうとした言葉を失った。

結局ボールは舞歌の手に収まり、命中はしなかった。しかし、迫るボールに大きく仰け反っていた唯はそのままバランスを崩し、真後ろにいた翼を巻き込んで倒れこんでしまったのだ。

 

「いったー……あ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 

「ええ、平気よ……あ」

 

倒れた際に軽く打った頭を撫でようとして、手をやった風鳴翼が不味い……所か一発終了の事態に気付いた。

今まで中々に特徴的だった風鳴翼の髪型を隠していた帽子が、地面に落下してしまったのだ。

当然、近くには一般人が多数、しかも此方に注目していた人も多い訳で。

 

「風鳴翼だ!」

 

勿論、こうなる。

 

「バレたな」

 

「バレたね」

 

「奏も舞歌も、なんでそんなに冷静なの!?」

 

「凄いなこの人達……うわッ!こっちも凄!」

 

誰かが叫んだ言葉は、瞬時に周りを伝わって行く。舞歌がボールを投げ返した時には、既に一般人が周りを固めつつあった。

 

「逃げよう、奏!」

 

「それしかないな、皆、あたしについてこい。適当な場所まで走るぞ」

 

「わかった、付いてきてよ、唯」

 

「……善処するけど、無理だったら置いてって。体力持つ自信ない……」

 

「頑張れ頑張れ。……いくぞッ!」

 

奏の合図で脱兎のごとく走り出した四人。

奏と風鳴翼は鍛えてるだけあって速く、舞歌も高い身体能力を活かして並走している。

唯だけは少し遅れていたが、不意を突いた事もあって追い掛けてくる人達からはだいぶ離れた様だ。

 

「速いな舞歌!」

 

「身体能力だけは胸張って誇れるから!」

 

「……貴女、やっぱり……」

 

 

 

「ちょ……速すぎ!待ってそれ以上……速くしたら……ほんとに追い付かないからぁ!」

 

 

 

────

 

 

 

「巻いたかな?」

 

「それっぽいのは見えないし、大丈夫だろ。悪いな、あたしらのせいで」

 

「原因作ったのはこっちだから、気にしないで」

 

ファンからの逃走で走ること数分、ブロック塀から顔だけ出した奏が走ってきた方向を見ながら確認する。暫く待っても人が来ないのを見ると、巻くのはうまくいった様だ。

手ぶらならともかく、荷物を色々持った状態で走るのは流石に堪えるらしく、3人は少し息を切らしている。

 

「……お疲れ様、大丈夫?」

 

舞歌が苦笑混じりに言った先には、ブロック塀に両手を付いて必死に呼吸を落ち着かせようとする唯がいた。

心臓もバクバク言ってるし汗だくだし足ガタガタ、しかしあの全力ダッシュで、しかも追っかけはしっかり巻けている事から考えれば自分が正常なのであって、あの3人の速さと持久力が異常なのだ。

そう必死に自分に言い聞かせる唯は、返事を返す余裕も無くゼーハー言いながら大丈夫じゃないから、と片手を力無く横に振って答えるしか出来なかった。

 

「大丈夫じゃなさそうだな」

 

「ええ……ねぇ、貴女たち」

 

「はい?」

 

「よければ、今から私の家に来ない?」

 

────────!?

 

「つ、翼が他人を、しかも今日会ったばかりの奴を家に誘った……!?」

 

「……そんなに驚くの?確かに、基本的に人は呼ばないけれど」

 

「私達は……「……い、いく……行きます……」でも、いいんですか?」

 

奏が唖然としているのを見れば一目瞭然、風鳴翼の知り合いから考えれば本当に意外で有り得ないお誘いなのだろう。

ただ奏の友達と言うだけで、自宅にまで誘う理由になるのだろうか?

こればかりは舞歌も、そして奏ですら、風鳴翼が何を考えているのかがわからなかった。

 

「大丈夫よ、それに……確かめたい事があるの」

 

「……?」

 

そう言った風鳴翼の目は、確りと舞歌を捉え、離さなかった。




冒頭へは次回。

シンフォギアの漫画版がどこの書店行っても無いんですがこれもウェル博士のせいなんですかね。
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