戦姫絶唱シンフォギア ーそれは破壊の力ー   作:雪原

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難産でした……しかもクオリティも宜しくない。悔しいなぁ


交差する思惑(後)

 舞歌とツヴァイウィングが戦闘を開始したのと同時刻、現場周辺の一般人の避難を一通り済ませた唯は既に寮の自室へと戻り、相棒のパソコンと共にひっそりと、もう1つの戦闘を開始しようとしていた。

 

「態々通信妨害まで掛けるって事は……」

 

 指が消えるような錯覚を起こす程の速さでキーボードを叩く。モニターには左下にシンフォギアを通じて舞歌の視覚を表示するウィンドウが開いていて、それ以外のスペースはひっきりなしにウィンドウが出たり消えたりしている。

 やがてウィンドウが画面に幾つか現れてモニターに隙間なく整頓された。

 

「よし、これで……」

 

 カタン、と唯の指がエンターキーを押した。直後、真っ黒だったウィンドウに映像が送信されてくる。

 市街地のような場所を映すそれは、まさに今舞歌達が戦っている場所。その近辺に設置されている監視カメラの映像を、ハッキングでリアルタイムに受信しているのだ。

 それぞれのウィンドウに僅かな異変も見逃すまいと監視しながら、パソコンに繋がっているヘッドセットのマイクに声を上げた。

 

「その調子、もう少し頑張って、舞歌!」

 

 

 

────

 

 

 

「わかった……とは言え、流石に……」

 

 場所は変わって現場に移る。唯の言う『尻尾』を誘き出す為に逃げずに戦っている舞歌。

 しかし、やはり相手が悪い。少しずつではあるが、疲労による動きの乱れが相手に付け入る隙を与え、思わぬ一撃を貰いかけることが増えてきている。現に今も、翼と打ち合った瞬間にタイミングを合わせた奏の槍の投擲に対応しきれずに腹部を掠めてしまった。

 翼の剣を弾く事で打ち合いを拒否し、距離を取るために後方に跳ぶ。

 

「……ッ!」

 

 が、着地の衝撃でたった今掠った傷が痛み、仮面の下の表情を歪める。戦況、不利は明らか。幸いしているのは向こうが出来るだけ無傷での拘束を試みている事。実際に先程の奏の投擲もアームドギアを弾き飛ばす為に投げた槍を、ギアを庇った結果掠めたと言う物、それ以外に目立った負傷も無い。

 無傷での拘束、聞こえは良いがそれは生半可な事では無く、相応の技量が求められる。そして……

 

「……あまり気分の良いものじゃ、ない」

 

 要は手加減されているのだ。

 相手に負傷を与えずに戦闘を行うと言うのは、圧倒的な戦力差があってこその行動。確かに向こうは二人でこちらは一人。加えて経験にも開きがある。

 だからと言って簡単にやられてしまっては唯に申し訳無いし、そもそも指示にも反する。

 故に、もっと向こうに慎重になってもらわないといけない。出来るだけ戦闘を長引かせるのが目的なのだから、押せ押せでは困る。

 何してるか知らないけど急いでよ、と心中で唯を急かしつつ、アームドギアを構え直す。

 

「まだやるのか?こう言っちゃなんだがあんたに勝ち目があるとは思えないがな」

 

「……勝利の意味合いなんて、人によって異なる物。負けるつもりで戦っている訳ではないわ」

 

「……そうか、なら何があんたにとっての勝利なのか……」

 

「あなたを拘束した上で、聞かせて頂きます!」

 

 戦闘再開。先ずは距離を取る、接近戦がメインの舞歌にとってはあまり良い手とは言い難いが、自身の目的と今戦っている地形を考えればやりようはある。

 襲い来る剣と槍の猛攻をなんとかギアで凌ぎ、二人に背を向けて脱兎の如く走り、足場になっていた10階建て程のビルから飛び降りる。

 

「飛び降りた!?」

 

「普通なら自殺だけど、ギア纏ってるからな……追うぞ翼、今までの様子から見るに逃げてはいないはずだ!」

 

「わかった!」

 

 先に飛び降りた舞歌を追うように二人もビルから飛び降りる。問題なく道路に着地しすぐに周りを見回す……しかし、舞歌の姿は見えない。

 

「いない……隠れた?」

 

「みたいだな……全く、何を狙ってんだ?」

 

 呆れた様に奏が呟いた。

 実際、あのレーヴァテインの行動は前回の接触時とは真逆と言っていい。

 翼に不意打ちまで仕掛けて最速での離脱を図った前回、二人を相手取っても戦闘を続ける今回。

 あまりに違いが大きすぎる彼女の行動に奏も、そしてこの光景をモニターしている弦十郎も頭を悩ませるしかない。最も、相手について解っている事が少なすぎる今ではそれも仕方ない事ではある。

 

(奴の後ろにいる何かが絡んでいるのは確実だが、あたしらにはわかりゃしねぇ)

 

 今までの会話もモニターされている、レーヴァテインに命令を下す存在については既に二課のオペレーター達が捜索している筈。

 

(結局、あたしらにやれるのはあいつを引っ張る事位か)

 

「……奏」

 

「ん、どうした?」

 

 心中で目標の再確認を終えた奏を、翼が小声で呼ぶ。

 警戒を怠らないまま目だけを向けると、翼は難しい顔をして周囲を見回していた。

 

「なんだか、気配が離れないの」

 

「気配?」

 

 自分には何も感じない、と奏は怪訝な顔付き、自分にはわからない感覚が翼にはあるのだろうと、何となくわかってはいたが。

 

「そう、姿は見えないのに、気配だけが近くに居座っている様な……」

 

「……あたしにはわかんねーけど、翼が言うならそうなんだろ。どうする?」

 

「此方から探しに行った方が良いかもしれない、留まるのは危険かも」

 

「成程、だけど……ちょっと遅かったみたいだ」

 

「えっ──」

 

「翼……避けろぉぉぉぉぉ!!」

 

 冷や汗たっぷりに叫んだ奏が見ている方向を見て、翼は絶句した。

 飛んできた、何が?車が。しかもかなりのスピードで。

 考える暇は無かった、全力を込めて地面を蹴り、真横に飛ぶ。

 受身も取れずに地面を転がってしまったが、数tにも及ぶ大質量との正面衝突は避けられた。あんな物にぶち当たってしまったら、いくらギアを纏っていても洒落にならない。翼は自身の慎ましい胸を撫で下ろした。

 

「うっ……ぐぁ!」

 

 直後、呻くような奏の声に弾かれたようにそちらを向く。

 翼と反対方向に飛んだ奏は翼と同じように地面を転がった物の無事。しかし起き上がる暇すら与えずに急襲したレーヴァテインの蹴撃を腹部に食らって吹っ飛ばされていた。

 

「奏!」

 

「げほっ……構うな!行け、翼!」

 

 壁に叩き付けられた奏のその言葉に、直ぐにでも駆け寄るつもりだった気持ちを抑えてレーヴァテインに向かう。対した相手は正眼の構えで、真っ直ぐに翼を睨み付ける。

 

(かかってこい、と?)

 

 その様子がこちらを誘っている様に見えなくもない。罠を疑った翼だったが、車を吹っ飛ばすような大事をしながら罠を仕掛ける時間があったとも思えない。レーヴァテインを追ってビルを降りてからまだ数分しか経っていないのだ。

 故にその可能性は低いと判断する。

 

「来なさい、天羽々斬」

 

 それに……

 

「……正面切って挑まれたからには、防人として、受けない訳にはいかない!」

 

「……重畳」

 

 仮面の裏で舞歌が笑う。凛々しさを感じる翼の姿に、眩しい物を感じて少し羨ましくなった。

 

「……参るッ!」

 

 掛け声と共に、舞歌と同じように正眼に剣を構えた翼が迫る。呼応するように舞歌も走り出し、二人が立っていた場所の中間地点で、同じタイミングで振った二人の剣がぶつかり合った。

 ギリギリと金属が擦り合う音が鳴り、一瞬そこで勢いが静止する。

 

「互角……いや……」

 

 一瞬だけ拮抗した鍔迫り合いだが、僅かに翼の剣が後退していく。

 

(力ではレーヴァテインに及ばないか……)

 

 純粋なパワーではレーヴァテインの装者に負けていると感じる。そしてそれは相手もわかっている筈だ、このままでは圧し切られて弾かれてしまう。

 ならば今の状態を嫌って後退するか、足技にて相手の体勢を崩しに行くか。

 しかしその両方の選択肢を即座に捨て去った翼は、舞歌にとって予想外の行動に出た。

 

「だからこそ……押し通すッ!」

 

 右足を一歩前へ、踏ん張りを利かせ、剣に全力を込める。

 急激な相手のパワー上げに体勢を崩された舞歌はそのまま剣を上に弾かれる、辛うじて手放す事はしなかったが、それによって右腕が上に伸びきり、右半身ががら空きになる。

 当然翼がそこを逃す理由は無い。素早く剣を逆手に持ち変えて柄頭で舞歌の右脇腹を強く打った。

 

「があっ……!」

 

 強烈な衝撃に一瞬視界が滅点する。追撃を掛ける翼の剣を剣で受け止め、強引に弾き返した。すぐに後退して距離を取り、痛みを訴える脇腹を手で押さえる。

 

(痛……でも、支障がある程じゃない、まだ戦える……)

 

「あたしを忘れんなよ?」

 

「!?」

 

 横から聞こえたその声に目を見開く。完全に頭から抜け落ちていた奏の姿を視界に捉えた時には、既に彼女のアームドギアが目前に迫っていた。

 

「貰ったッ!」

 

「させない……!」

 

 薙ぎ払われるギアが届く前に、後ろに倒れかねない勢いで思いっきり仰け反る。目の前を槍が物凄い勢いで通過していく。

 紙一重で奏のギアを回避し、そのまま地面についた両手を支えに両足で蹴りを放つ。完全な不意打ちを回避された奏は予想だにしなかった反撃を前に、左腕を前に出して防御、舞歌の両足の威力に吹っ飛ばされた。

 

「ぐぅ……!」

 

「心臓に悪い……」

 

 奏を蹴った反動で後ろに飛んだ舞歌は、上手くバランスを取って後方に着地する。

 そこを突け込むように迫る影が一つ。

 

「その隙は……」

 

「なッ!?」

 

「逃さないッ!」

 

 完全に不意を突かれた舞歌は防御する暇すら与えられずに翼の一閃を食らう。

 再び吹っ飛んだ舞歌は、今度は受身を取れずに地面に落ちる。一瞬揺らいだ意識を直ぐに引き締め、眼前の二人を仮面越しに睨み付ける。

 

(もう無理かも……唯、早く……)

 

 

 

────

 

 

 

「……どこだ、何処に……」

 

 徐々に追い詰められている舞歌をモニター越しに確認しながら、他のモニターを食い入るように見つめ、僅かな違和感も見逃さないように気を配る。

 

(私の予想が正しければ、必ずあの近くに、彼女達の戦闘を見ている筈……!)

 

 姿の見えない「誰か」を見付けるために、ひたすらにモニターに目を走らせる。そして……

 

「ッ!!」

 

 

 

────

 

 

 

「……はぁ……はぁ……」

 

 迫る槍を受け止めて、何とか弾き返す。何度繰り返したか分からない攻防は、確実に舞歌の体力を削る。

 呼吸が荒くなる、最初に貰ったかすり傷と、先程の翼の一撃が重くのし掛かる。スタミナも無い、いよいよ不味い……。

 このままだと体力切れで動けなくなり、捕らえられてしまう。進退極まったか。そう舞歌が覚悟した直後だった。

 

『ハロー、ハロー、聞こえますか?』

 

「……唯」

 

『待たせてごめんね、楽しかった?』

 

「まあまあね」

 

 嘘だ、正直すぐにでも帰りたい。そう口には出さずに精一杯の虚勢を唯に返す。通信の向こうでくすくすと笑われた。

 

『残念ながら顔を見ることは出来なかったけど、存在を確認することは出来たよ。やっぱり直接見に来てた』

 

「それは重畳。……撤退していい?」

 

『うん。舞歌の好きなシュークリーム用意して待ってるよ』

 

「すぐ帰る」

 

 通信を切って、仮面の下の口元が弛む。

 布石は打ってある、逃げるのはそう難しくない……筈だ。

 

「さて……天羽々斬、ガングニール……いや、風鳴翼と天羽奏」

 

「ん……」

 

「どうした?諦めてくれたのか?」

 

「いや……目的は果たした、つまりは……」

 

 駆け出した舞歌は、すぐ近くに建つ廃ビルの中に入っていく。追い掛けようとした二人だが、それよりも早く舞歌が出てきた。手にあるものを持って。

 

「あれは……ガスボンベ?」

 

「危ないから離れたほうがいい。……そらッ!」

 

 両手に持ったガスボンベを二人に向かって放り投げる。直後にアームドギアを展開し、刀身にエネルギーを込める。そのままギアを上段に構え、一気に降り下ろす。

 

──焔ノ一閃

 

「……しまった!」

 

 意図に気付いた翼が声を上げるも既に遅し。真っ二つに切り裂かれたボンベから漏れ出したガスが、炎熱を纏った斬撃に反応し、轟音を上げて爆発する。

 

「そういう、事か……!」

 

 爆発を直接受ける事は無かったが、爆煙によって視界が遮られる。それが晴れた頃には、舞歌の姿はどこにもなかった。

 

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