こっちはベリー苦しみました。
さて、投稿が長く開いたのは新小説を書いていたのもあるのですが…。
なんと言うか、ソフトのバグでメガミデバイスコラボの小説が派手に爆散したからであります(涙)。
ううっ…。
4000文字とメカ3つと鹿毛の数少ない設定が消えていった…。
さて、グダグダしている間にストライクウィッチーズコラボが始まっていますな。
全く設定は知らないけど楽しい。
では本編スタート。
Ep.09 『叢雲のアト』
「997…998…999…1000。ふうっ、もう終わっちまったよ」
日課の筋トレが終わり、逆立ちの姿勢から戻る。
ため息と共に漏れ出た独り言は、飾り気のない壁に吸い込まれて消えた。
俺の家はユニットバス付きの3DKマンションで、特筆すべきものは何もない。
布団とかテーブルとかテレビ、小さな本棚があるくらいだ。
俺にとっては単なる寝る場所に過ぎないので、この程度でよかったりする。
それ故、この家では如何なるトラブルもイベントも発生しない。
平日は朝早くに出て、帰ってきたら適当に調理した料理モドキを食って風呂に入って寝る。
休日は一日中爆睡したり、布団に転がりつつテレビを見たりする自堕落な生活。
これはAEGISを退職した今でも変わらない。
たまに掃除や食糧調達というイベントはあるものの、基本的に家から出る事はない。
今日も例に漏れず、筋トレを終えた俺は布団に転がっていた。
「んあ?」
ピローンという音と共に仕事用の端末にメールが来た。
送信元はわが社の所長。
メールの中身は『新しくアクトレス三人をスカウトしたからよろしく』という言葉と、三人の履歴書と思われる資料。
一瞬『あっそう』の一言で流しそうになったが、瞬時にスカウトという文字に目が吸い寄せられた。
どんなアクトレスを採用したんだ?と思って添付ファイルを開いてみると、吾妻楓、日向リン、小鳥遊怜の三人だった。
あー、元叢雲工業の看板チームかぁ。
叢雲工業はギアのデータ偽装や不具合の隠蔽、特定AEGIS幹部との癒着問題やら、大型ヴァイス撃退案件放置問題と色々とやらかし過ぎて潰れてしまった。
まぁ自業自得という奴だな。
ウチに協力した吾妻楓の身を心配していたが、所長がチームごと採用したのね。
良かった良かった。
さてと、履歴書を拝見しますか。
吾妻楓は真面目さは分かるが頭が堅そうだな。
彼女が剣術を生かした近接戦闘という戦闘スタイルを採っているのは、あの日に乗っていた(はずの)隼のガンカメラで確認した通りだ。
赤髪の日向リンは何と言うか…、元気という言葉を人型に成型したような女の子だ。
戦闘スタイルは間違いなくパワーで押し切るタイプだろう。
青っぽい髪の小鳥遊怜は冷静に自分の事を分析している様だが、謙遜が過ぎて自分を卑下している…というか、部品の様にしか思っていないんじゃないか?
彼女の戦闘スタイルはデータでは分かりにくいが、あの二人が近接戦闘担当と考えると援護射撃役かもしれない。
ふーむ、このチームは一塊で動かした方が良いかもしれんな。
そんな事を考えていたらインターホンが鳴り、応対すると宅配ロボが大きな段ボール箱を持って来ていた。
送り主は…霞か。
鍾馗の修復が完了したので明日送るという手紙と、プチプチで保護された服っぽい何か。
どうやらコイツは霞が造ったものらしい。
アイツの創作物にしては珍しい…というか、服なんて初めて見たぞ。
なんだか色々と不安になってきたんだが。
とにかく箱の中身を取り出さなきゃ始まらんな…って、ん?
「…何だこりゃ」
箱の中身を取り出した俺は、思わずこう呟いた。
〇〇〇
翌日。
俺は自分の愛車のワークホースに乗って出勤していた。
コイツは霞がヤシマ重工に入社して初めて設計した電動オート三輪だ。
普通のオート三輪と違って前が二輪後ろが一輪となっており、車体にはカーブの時に内側に傾く振り子機能が搭載されている。
後は絶滅危惧種になっている普通の電動式オート三輪と一緒。
…の筈なのだが、スポーツカーもびっくりの加速力とバイク以上の旋回性能を誇るじゃじゃ馬軽トラックだ。
当然会社によって没にされ、色々あって俺の愛車になっている。
長く乗っているからえげつないステアリングも慣れたものだ。
旋回と加速の良いコイツを三十分くらい運転すると仕事先の成子坂事務所へと辿り着く。
昨日届いた段ボールを抱え、トレーニングルームへと向かう。
途中ですれ違った有人に怪訝な顔をされたが、無視無視。
無人である事を確認し、トレーニングルームへと入る。
ベンチプレスやランニングマシンといったトレーニング器具の間をすり抜け、奥にある更衣室へと向かう。
自分でもびっくりするほど挙動不審だが、これには訳がある。
段ボールの中に入っている服に着替えるからだ。
しかも似合っているかどうかも分からないという奴。
俺は溜息を吐きつつ、段ボールの中から霞謹製の服を取り出した。
茶色に染められたジーンズの上下にも見えるこれは、霞曰く新しい耐Gスーツらしい。
腕には日の丸、胸のところにはシャドークラウンのマークが入っている。
ブーツと手袋のオマケ付き。
非常に有難いのだが、どう見てもデザインが数世紀前の様な気がする。
まずは救命胴衣に見える生命維持装置。
今のライフジャケットの様な奴では無く、キルティング状になっているのが特に。
ちなみに本物のライフジャケットは襟の部分に仕込まれている。
背中のパラシュートを繋ぐ緑色のパラシュートベルトも古臭いが、まだマシな方。
最大の古臭さポイントは、今では全く使われない飛行眼鏡と飛行帽。
もう完全に第二次世界大戦のパイロットの服装だ。
全く、いつもの悪ふざけか。
素材は難燃性の化学繊維の様だが、見た目は絹のようにしか見えないな。
その素材のお陰なのかは分からないが、防寒の為に極力肌を出さない長袖長ズボンでも快適だ。
手袋やブーツも見た目はもこもこだが暑くない。
どうやら飛行眼鏡はHUDになっているらしく、飛行帽は衝撃を与えるとヘルメットの様に硬化する機能があるらしい。
そう考えるとパイロットを支援する装備の少ない隼向きなのかもしれないな。
見た目は古いが霞クオリティなので動作に心配はないだろう。
耐Gスーツが消耗していたのでありがたい。
ふーむ。鏡を見てみると、この古さも案外似合っている気もしないでもないな。
よし、行くか。
だが更衣室のドアを開けようとした時、外から聞き覚えの無い女の子の声がした。
思わず部屋の中へリターンする。
あーあ、この姿で出るのに躊躇していたら出るタイミングを逃してしまった。
もしかしたら、新しく採用したアクトレスかもしれないな。
会話交じりに荒い吐息が聞こえてくるので、挨拶の前にウォーミングアップといったところだろうか。
先程まで居なかったという事は、トイレにでも行っていたのだろうか。
仕方がない、三人が出たらここを出よう。
向こうの会話が筒抜けなので盗み聞く様な形となってしまうが、仕方がない。
確か新入りは楓とリンと怜だったか…?
『今までは楓さんの指揮で安心だったけど、成子坂では隊長の指示に従わないといけないんでしょ?信用できるの?』
『郷に入っては郷に従えと言いますから』
今のは怜と楓かな?
叢雲工業では隊長をアクトレスが務めていたのか。
アクトレスによる現場指揮と連携プレーがこのチームの強みと見るべきだろう。
このチームに関しては指揮系統を見直した方が良いかもしれないな。
今日のテスト結果次第だな。
『隊長はアクターだっけ?隼や鍾馗といった機体はニュースで見たけど…楓さんは近くで見たんでしょ?』
『いえ、機体しか見ていなくてパイロットはちょっと…』
『…謎の人物?』
あのさ、謎のスパイXじゃないんだから。
東京シャードでは防空作戦での活躍もあって隼や鍾馗の知名度は爆上がりしているが、これに搭乗している俺の知名度は低い。
その理由は両方ともパイロットが見えない構造になっているからだ。
鍾馗はパイロットの保護を目的にコックピットが装甲化されており、隼のバブルキャノピーはマジックミラーのようなもので出来ているので外からは見えない構造になっている。
そんな訳で、機体の知名度にパイロットの知名度が伴わないのだ。
まぁ、有名になる気も無いので実は有難かったりする。
色気のないアクターがテレビに出てもなぁ。
だがこの知名度の無さが逆に彼女らの不信感を招くことになるとは想定外だった。
そういえば、どこかのネットニュースではAI扱いされてたっけな。
『隊長はスポーツ好きかな?あたしと一緒にご飯を食べてくれるかな?それならOK!』
この元気さはリンだな…100%。
スポーツは好きでも嫌いでもない。
スポーツ番組を積極的に見るという訳でもないし、あまり得意でもないしなぁ。
得意分野であるエアレースやエアロバティックはモータースポーツだし。
そこは彼女の判断次第だな。
別に飯を食うのは構わんが。
そんなことを考えていたら、話は理想のリーダー像へと移っていた。
裏切らなければいいって今までどんな目に遭ったんだよ怜。
そして楓さんよ、お前さんの理想の人物のハードル高すぎるだろ。
いや…神職に居るかどうかも怪しいレベルなんだが。
もちろん神職ですらないパイロットの俺には無理。
リンもすっかり呆れている。
そんな人物が本当にどこかに居ると思っている辺り、楓は夢見がちという怜の意見には賛成だわ。
「そーだなー、例えば…」
え?何でリンの声と足音がゆっくり近づいてくるんだ?
しかも正確にこっちに来ている。
…まさか!?
「この人はー?」
「あっ、おい!」
「え!?」
やっぱり更衣室のドアを開けやがった…。
リンの奴、何の躊躇もなくガチャッと開けたぞ。
俺が着替えている最中だったらどうするつもりだったんだ。
怜はあっちゃーみたいな顔をしているし、楓に至っては固まってるぞ。
いやこれは俺のせいか。
というか、勘が鋭すぎませんかね?おたくらのリンさん。
「あの…すいません」
「いやいや、俺が見栄を張らずにさっさと出てりゃ良かったんだよ。こちらこそすまない」
「で?あんたは楓の隊長になれそう?」
「怜ちゃん…」
「そうだな。人間である以上すべてを叶えてやるのは無理だが、俺は『部下を死なせない』という程度の志程度は持っているつもりだ」
「合格っ!」
「指揮システムについては今日のテストの結果次第で検討しよう。そこで俺の戦闘スタイルも見せることになるだろうな」
「ふーん…」
「謎の人物X改め鹿毛手端、戦闘機パイロットだ。これからよろしく頼む」
「吾妻楓です。よろしくお願いします」
「小鳥遊怜、よろしく」
「日向リンだよ、よろしくね!」
うーむ、腕は優秀だが一癖も二癖もありそうなチームだなぁ。
いや、それは今日のテストで決める事だ。
「では、ウォーミングアップが終わったら事務所に来てくれ。それでは失礼する」
「隊長っ、終わったよ!」
「…え?」
「…隊長」
「リン、これからは一番奥のマシンを使う様にしてくれ」
「はーいっ!」
「すみません…」
結論、リンのパワーと勘は凄すぎる。
〇〇〇
朝からとんでもない珍事となったが、一応新しい部下との顔合わせには成功した。
トレーニングが終わったらこっちに来るだろう。
事務所に上がり、夜露たちに新しい衣装を見せる。
夜露と文嘉はビックリした表情を、シタラはキラキラした目をしていた。
それは似合っているという反応なのか?
朝礼というにはグダグダ過ぎる会話をしていると、トレーニングを終えた楓たちが入ってきた。
楓に目で促される。
さてと、どう紹介するかなぁ?
うーむ…。
「今日からここで働くことになった吾妻楓君と小鳥遊怜君と日向リン君だ。みんな仲良くするよーに」
今では化石レベルであろう転校生紹介シーンでの先生の台詞。
これがちょっと悩んで発した言葉だから余計に恥ずかしい。
穴が入ったら入りたいという感情は、頭蓋骨をぶち抜いてきた叫びによって掻き消された。
瞬停した感覚器官が夜露たちから発せられたものであると教えてくれる。
冷静に考えたら、普通に驚くよな。
あの騒動で処遇を心配していた面々が来たんだから。
俺の場合はパイロットスーツの事で頭が一杯だったからあまり気にしていなかったが。
良い感じに事務所が混乱した所で、新たなお客さんが割り込んできた。
懐かしのAEGISの制服を着たこのアクトレスは鳳加純。
東京シャード最強のアクトレスであり、実働部隊の隊長を務めている。
そしていつぞやの演習でやりあった(?)相手だ。…全く覚えてないけど。
職員同士での面識は無い。
あー。いや、現役時代によく彼女のチームと組んでいたのを思い出した。
…うーむ、これでは語弊があるな。
彼女らが投入されるときに限って先行偵察要員として戦場に放り込まれたという方が正しい。
あの仕事は本当にやばかったな。
庁舎で会う事もあったが、特に会話もなし。
俺にとってはありふれた同僚の一人だ。
向こうがどう思っているかはともかく。
そんな元同僚は、今は夜露たちと会話している。
「久しぶりね、鹿毛君。要件を済ませましょう」
「どうも。説明よろしく」
「ええ」
彼女は説明のためにそっと口を開いた。
アクトレス部門を経営統合してもらうこと。
楓たちが来たのはその一環らしい。
民間のAEGISを自称していた叢雲工業が消滅したことで、新宿の防衛戦力に大きな穴が開いた事。
その補充のために成子坂に戦力の拡大を望んでいる事。
で、その指揮を俺に任せる事。
癒着が原因であれだけの騒動になったのに、よくもまぁそんな台詞が言えたもんだな。
いつもながら勝手なお役所連中だ。
こんな連中のせいで俺はいつもいつも
…はぁ。
「で、その花畑な奴らは当然俺達を支援してくれるんだろうな?」
「もちろんよ。…何か問題でも?」
「気を悪くしたなら済まない。どうも昔からあの上層部の連中は信用できなくてな」
「そう。で、返答は?」
「了解したと返しておいてくれ。なにがどうなっても知らないぞとも」
「お騒がせして悪かったわね。ではまたいずれ」
「じゃあ」
軽く敬礼をして、鳳女史は帰っていった。
なんか悪い事してしまったなぁ。
彼女のせいという訳ではないのに、その場の怒りで辛く当たってしまった。
今度お詫びとして何か送っておくかな。
そんな事を考えているうちに、アクトレス達の話はいつの間にか変な方向へ進んでいた。
慌てて話の輪の中に入る。
「アクトレスが増えたら人件費が大変よ!」
「みみっちい」
「あのなシタラ、人件費は笑えないコストなんだぞ」
「大丈夫っすよ隊長。仕事は沢山あるからいっぱい受注すればいいんですよ」
「それで誰が出撃するの?」
「慣れたチームのほうが良いと思います」
「オッケー、それじゃあたし達で出撃しようか」
「良いんじゃない」
「おおーっ、これは世代交代かーっ!?」
「何言っているんですか」
「お待ちください。出撃するのは隊長の指揮に慣れている私達のほうが適任です。そうですよね、隊長?」
「待て待て待て。俺を置いていくな」
俺は聖徳太子じゃないんだよ。
こめかみをぐりぐりと押し、処理落ちした頭脳を回復する。
女三人寄れば姦しいというが、その二倍となると完全に頭が付いていかない。
「文嘉、お前初っ端の事をもう忘れたのか?」
「え?」
「ほら、新人研修だよ」
○○○
そんな訳で、俺は楓たち三人と共に東京シャードの空に舞い上がった。
搭乗しているのは最近オーバーワーク気味の隼である。
今回の任務はシャード内にある工場地帯の防空。
この工場地帯は外壁にやや近いとはいえ、この前の作戦で棲みついていたヴァイスの大半を駆除したのでさほど危険は無いだろうと判断したのだ。
まぁイレギュラーが出たとしても、場数を踏んだこのメンバーなら大丈夫だろう。
「チーム叢雲、通信は大丈夫か?」
『はい、聞こえます』
「今回の作戦では君らの実力を判断するため、援護のみを行う」
『りょうかーい!』
「テストとはいえ無茶はするな。これはあくまで今後の方針を決める為のものだ」
『…了解』
「よし。チーム叢雲、エンゲージ」
一旦チームから離れ、300mくらいの距離を取る。
機関砲で降りかかる火の粉を払いつつ、三人の動きの観察を始めた。
楓はやはり剣術を生かした接近戦がメインのようだ。
リンは余りあるパワーを生かしてヴァイスにガンガン突っ込んでいる。
怜は二人を援護するように中距離から射撃しているな。
このチームは連携が上手い。
こちらが索敵をしなくても危なげないし、途中で現れたイレギュラーの大型ヴァイスも割りとあっさり撃墜している。
流石に場数が違うな。
だが、欠点も明らかになった。
楓とリンの二人は近接戦闘が得意とはいえ、どう考えても突っ込みすぎている。
あそこまで突っ込むと超感覚を持っていたとしても回避が難しい。
怜は的確に援護しているように見えなくも無いが、カバーしきれていない部分もある。
連携する事自体は上手いものの、微妙なバランスの上に成り立った連携だ。
文字通りの"諸刃の剣"。
もし気が緩んでいたり、気を散らす要因があるとすれば…。
『敵機直下!ブレイク!ブレイク!』
命令に合わせチームがパッと散開する。
その瞬間、三人の間をポイゾネルモスが猛スピードですり抜けた。
衝突だけは避けられたが、リンと楓がすれ違いざまに発射された機雷に何発か被弾してしまった。
楓たちは迎撃しようとしているが、奇襲された事もあり態勢が完全に崩壊している。
ポイゾネルモスは一発あたりの攻撃力自体は低いものの命中率が高い。
毒機雷でシールドにじわじわダメージが入っている楓たちは下がらせよう。
「蛾はこちらで相手する。一旦体勢を立て直せ」
『…了解』
牽制射撃をしつつ、ドッグファイトに持ち込む。
おかしなことにポイゾネルモスはもうすでに損傷していた。
ははぁ、別の場所でやられて逃げてきたらしい。
それならばテレポート反応が無かったのも納得だな。
ともかく、こういうイレギュラーもあると学べたことは収穫だ。
今は撃墜を優先しよう。
機体を操り、ポイゾネルモスの背後にぴったりとくっつく。
右へ逃げたら右へ、左に逃げたら左へ。
距離を取る隙も与えない。
隼の旋回性能ならば、アクトレスを悩ます直角旋回も余裕で捕まえられる。
キツイ旋回でも気絶しない耐Gスーツの効果もあるのだろう。
じわじわ敵機を追い詰めていく。
どうやらポイゾネルモスに搭載されたジャミング移動するための機構は壊れているようだな。
ある程度まで近づくと奴が回転しながら撒く誘導弾は無効になる。
機雷に当たるリスクは大きくなるが、あれはブーストを使った高速移動時にしか使わない。
俺に追い回されている蛾にそんな余裕は無いだろう。
旋回のために減速するタイミングで、チクチクと削っていく。
こうしてダメージを蓄積した結果、十七回目の旋回を終えた所で蛾はフラフラになった。
好機到来!
照準器で奴の首を狙い、機関砲を撃ち込んだ。
すると蛾はパッと火を噴き、黒煙を伴いながら墜ちていった。
…作戦終了。
アドレナリンの効果が収まり、次第に冷静になってくる。
今回の作戦は成功といえるだろう。
彼女らの実力と問題点も確認できたし、新しいタイプのイレギュラーを把握する事が出来たのだから。
だが何故か楓たちからは元気が消えていた。
任務前にちょっぴりでもあった会話もすっかり消え、まるで俺一人だけで飛んでいるみたいだ。
索敵不足で奇襲されたのが余程ショックだったのだろう。
ズーンという音が物理的に聞こえてきそうだし、特に怜がうなだれていた。
まじでどうしよう。
あんまりこういうのに気を回せないんだよなぁ。
「まぁ…なんだ。ともかくお疲れ様」
重すぎる空気に向かってそう声を掛けるのがせいぜいだった。