オレと守鶴のヒーローアカデミア   作:砂狸

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No.2 入試

 雄英高校ヒーロー科

 

 全国に存在するヒーロー科の中でも最難関を誇り、その倍率は圧倒的!

 

 そんな化け物高校に入学するためには勉強ができるだけでもダメ。筆記に加えて実技でも高得点をはじき出さなければ不合格。

 しかしそこは我愛羅クオリティ。

 前世ではそんなに頭の出来はよろしくなかったが、今のオレは余裕で合格圏内。…とは言え、さすがに元の世界とはあちこちで相違点があるので混乱もあった。

 実技試験、つまり"個性"を使用しての戦闘を視野にいれた試験。

 これに関してはとくに心配していない。

 なにせ自分が使う"個性"はなかなかに汎用性にも優れ、しかも強力。

 おまけに試験内容にしても、すでに知り得ているので安心。なにせ、原作でも初期の初期なのでこればかりは覚えている。生まれてから十数年の月日が過ぎていようとも、この体は記憶力が良いようで忘れることなく思い出せる。

 

 まぁ本当は推薦入試の話しもあったが、主人公の雄姿を見てみたかったので辞退しました。

 

 推薦入試を受けてみないかという学校側からの話があったが断った。

 だってその話を受けると、主人公が初めて個性を使う場面を見れないじゃないですか。多分、…というか絶対に試験会場は別になるだろうけど、そこはオレの個性を使えば覗き見が可能なので実際にこの目で見てみたい。

 同じ中学校同士では試験会場が別々にされてしまうそうなので、主人公と同じ会場になる天哉がいる以上オレは別の会場だろう。

 

 

 ―――そんなことを考えているうちに雄英の校舎が見えてきた!

 今日は実技試験を受けるために、ここ雄英まで来たのだ。

 

「―――これが雄英…か」

 ウチの送迎車で雄英まで送ってもらい降車した際に思わず零してしまった言葉がこれである。

 仕方がない、これは仕方がないんだ。なにせTVに映された姿等を目にしたことはあっても実際に目にしたのは今回が初めてなのであるからして…。

 原作で見たあの建物が目の前にあると思うと、感動してしまうのは仕方がないことなのだ。…今までも家族や天哉に関しても感動しました。

 

 何時までも感動していられないと思い、会場に向かうとする。

 天哉とも校舎内で待ち合わせているので、時間に遅れないように歩く。―――が、その途中で特徴的な髪形の人物たちを発見した。

 

 もっさりとした頭の人物と爆発したような髪型の人物。

 あれはまさしく主人公ズ!

 

 すでにツンツン頭の人物はさっさと行ってしまったので惜しくも会話の内容は聞き取れなかったが、これが初遭遇である。

 …と言っても、以前にヘドロ事件が放送された際に映像越しにではあるが、その姿を見ている。しかし生で目にしたのは今回が初めてであるので感動ものだ!

 それにしても主人公は足がガクガクで今にも転びそうだな。……ということは次の展開は―――。

 

「大丈夫?」

「わっ! え!?」

 

 おお!主人公と、そのヒロインとの初邂逅(はつかいこう)だ!!

 危惧したとおりに緑谷が転びそうになったところを、彼女が個性を使って救う場面!

 いやはや、やはり漫画で見た場面を実際に見ることが叶うとは、―――転生冥利(てんせいみょうり)に尽きるな…!

 

 

  ※  ※  ※  ※

 

「我愛羅くん、君にしては珍しいな約束の時間を遅れるなんて」

「…すまない」

「いや、別に責めているわけではないのだが……。ただ、いつもなら約束の時間に遅れそうなら先に連絡してくるのに、時間になっても連絡がなかったので心配したよ」

 

 あのあと彼らのやり取りを見終わってからも、感動のあまり時間が過ぎるのも忘れて立ち尽くしてしまった。

 そのせいで天哉と約束していた時間が数分だが遅れてしまい、慌てて走る羽目に…。

 

「これから受けるのは最高峰たる雄英の実技試験だ!受験者たる我々はその実力を試される…!だから我愛羅くん!友人として共に切磋琢磨してきた僕たちの力を雄英の先生方に見て貰おうじゃないか!」

 

 なんかすごい熱くなってる。

 今、オレたちは試験開始前の講堂で指定された席に座り、そして普通に会話していたはずなのだが…。

 話の途中から熱が入り始め、ついには声を大きくして語り始めやがった。

 

「ああ、そうだな天哉。今日という日のためにオレたちは共に鍛えてきた。…だが、ここはすでに講堂の中で周りにも受験生たちが大勢いるのだから少し落ち着け」

 

 うん、少し緊張しているみたいだな。

 無理もないか。

 これから行われる実技試験の概要説明、原作でも天哉はピリピリしていて主人公にも噛み付いていたしな…。

 いつもならもっと余裕もあったが、今日はさすがに緊張するなと言っても無駄かな?

 

「む…。すまない、我愛羅くん…。少々緊張しているようだ。だが君はずいぶんと余裕そうに見える、すごいな…」

 

 自分でも緊張していることに自覚が持てたようだが、オレが緊張していないことにも気がついたようだ。

 う~ん、まったく緊張していないわけでもないんだがな…。

 

「フッ、オレはあまり感情が表情にでるようなタイプじゃないからな…。そう見えるだけで実際にはオレも天哉に負けず劣らず緊張しているさ」

「そうなのか?いや、そうだな、ならお互い頑張ろうじゃないか!」

 

 ふう、また熱くなって声が大きくなってる…。周りがオレたちの方をうるさそうに見てるよ。

 ま、これも天哉らしいと言えばらしいのか。

 

 そんな風に話していると、ついに講堂に雄英の講師が入ってきた。壇上に上がり大勢の受験生たちにいつものノリで話し始める。初めは興味本位でラジオを聴いてみただけなのだが、これがけっこうハマってしまった…!恐るべしボイスヒーロー…!

 

 最初の滑り出しは受験生たちによる静寂によりお察しになってしまった。

 …やはり雄英を受験するような優等生ともなると真面目くんばかりなのかね?本当はオレもプレゼント・マイクに向かって大声で応えたかったんだが、それはオレのキャラじゃないからと抑えてしまった…。すまない、すまないプレゼント・マイク…!

 

 うん、まぁしょうがないね。

 とりあえず…「質問よろしいでしょうか!?」…説明の途中なのに、手を挙げて立ち上がってしまった隣の席の友人は最後までマイク先生の話を聞いた方がいいと思うよ。

 ふ~…。注意してたんだけど止められなかったか…。

 しかも主人公にわざわざ注意もしてるし。

 まぁ、その間オレもしれっと他人の振りして前を向いていた。なので天哉には悪いが、悪しからずにお願いする。

 

 そして原作通りに説明が終わり、プレゼント・マイクによるこの雄英の校訓が伝えられる。

「かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!

 

 "Plus《更に》 Ultra《向こうへ》"!!

 

 それでは皆、良い受難を!!」

 

 ――――――こ、これはニヤニヤが止まらない…!!

 いや、本当にニヤついたりはしないんだけどね?我愛羅の顔でそんなことできないから、…できるけどしないから!だってこんな名場面を生で見聞き出来たらうれしくなっちゃうでしょう…!?

 

「我愛羅くん?もう他のみんなは移動し始めているぞ。僕たちも早く会場まで移動しなくては!」

「む…。すまない天哉」

 おっと、またもや動きが止まってしまっていたか。

 いかんいかん。これから試験なのだから集中しなければ!

 この後は各々着替えてから会場までバスに乗って移動するらしいが…、オレには取りに行かなければならないものがあるから、それを取りに行く手間もあるから早めに出なければいけない。

 

 ※  ※  ※

 

 そして天哉とはバス乗り場で別れ、オレは他の同じ会場の受験者たちと一緒に別のバスに乗り、実技試験が行われるそれぞれの会場まで向かった。

 

 ―――会場に到着してバスから降りた。

 降りたはいいが…、これはすごいな……。

 本当に街がひとつ丸々そっくりある…。

 周りのみんなも目の前の光景に驚いている。そんな他の受験生たちを見てみると、やはりそれぞれ違うなと思う。服装も各々の学校の体操着を着ている者もいれば、特注品と思える物を着ている。

 それに落ち着いている者もいれば精神統一をしている者もいる。

 

 オレは身の丈ほどもある瓢箪を背中に背負い、服装は普通に中学のジャージを着ている。普段は小ぶりの瓢箪を腰にぶら下げているだけだが、今回は念をいれて大きめの瓢箪に化けてもらっている。

 瓢箪は事前に家で砂を入れてきて、雄英に到着したときに預けておいた。

「守鶴、これから試験が行われる。前々から言っている通り、今回はお前にも少し働いてもらうことになる。わかっているな?」

『ああん?…ケッ、そういえばそうだったなァ』

 

 こいつ本当に分かっているのか?

「今日の試験は、雄英に入学するための大事な試験なんだぞ。オレの力だけでも合格を狙えるだろうが、それでもお前が力を貸せば確実性が増す」

『フン!そりゃそうだろうがな…。オレは我愛羅と違ってどうにもヒーローってやつにそんな思い入れはねェんだよ。だから気が乗らねェ……ッつー訳で、やっぱ力貸すのはやめだ!』

 

 !!?

 こ、この狸!前から今回の試験には力を貸すように重々(じゅうじゅう)言い含めておいたのに、あっさり土壇場で裏切りやがった!!

 

『シャハハハハ、悪いな我愛羅!そういうことで今日はお前ひとりで頑張ってみな!手は貸さねェが、代わりに邪魔はしねェでおいてやるからよォ!』

 

「ハイスタートー!」

 

 はぁ!?

「どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?」

 

 まじかー。

 試験始まっちゃったよ…。

 ―――仕方がない。守鶴のバカの裏切りは悲しいけど別に珍しくないし、素直にお願いを聞いてもらえたことなんてないもんな。

 本当にずいぶんと前から今日の事お願いしていたのに…。はぁ…。

 

 他の受験生たちがみんなオレを一人置いて走り去ってしまった。

 一人ポツンと取り残されることになったオレは、それでも余裕をもって行動に移ることにする。まずは瓢箪から砂を取り出し、砂を塊にした上に飛び乗りそのまま空を飛び街の中心を目指す。

 

 バス乗り場で別れるときに天哉を尾行させていた砂の目のおかげで向こうの会場の様子がよくわかる。主人公が大慌てでポイントを稼ごうと必死に走っている。

 あっ、1ポイントのロボを目の前にして立ち竦んでいる…。

 

 片目を指でふさぎつつ向こうの様子を覗き見してる真っ最中。…いや、もっと試験に集中しろって話になると思いますがね?それでもオレにとっては重要な意味があるんです!

 主人公の初めての個性発動シーンをこの目で見てみたいという……魂の奥底から燃え上がる欲求があるんです!!

 ―――もちろん、こっちはこっちで真面目にポイントを稼いでいますよ?

 

 ズズズズズズズズズズ……!!

 

 上空から捕捉した他の受験者たちが相手にしていないロボを狙い、足元の地中からオレの瓢箪から出した砂を使って作りだした砂をロボに纏わりつかせていく。これぞ砂縛柩(さばくきゅう)の術なり…!なーんて、ね。

 全身に纏わさなくとも、砂を関節部分に潜み込ませていけば簡単に拘束できたし、しばらくすると勝手に停止した。

 向こうの様子を見ながらでも、こういう精密作業ができるくらいに個性の鍛錬を重ねてきましたからね!

 

 それに危険そうなほかの受験生がいたら、そちらにも砂を向かわせ救助の真似事もしてみた。と言ってもそんな事態になる受験生なんてまずいないんだけどね。みんな盛大にロボをぶっ壊していっている。たまにその破壊されたロボの部品が気づいてないよその受験生に向かって飛んでいくのを防いでいるだけ。

 

 今の時点で30ポイントくらいは取れているかな?他にも受験生たちには伝えられていないけど救助ポイントというのも見ているらしいけど…。そちらもそこそこ取れているだろし、おそらくすでにオレは合格圏内に入っていると思う。

 

 腕を胸で組みつつ下を見渡せば、みんな一生懸命にロボを攻撃している。

 派手に壊しているけど…、これって一応仮想ヴィランという設定らしいんだからそんなに派手に壊していいものなのかね?

 仮想でも実際のヴィランも人なわけだし、それにマイク先生も行動不能にしろと言っただけで…破壊しろとは言っていなかった。なのでオレはなるべく傷をつけないように砂で拘束するだけに留めたんだが……いいんだよな?

 

  ボオオォォォォォン!!!

 

「あれは…」

 

 ちまちまポイント稼ぎしていたら突如巨大なロボが街中から出現した。

 すごいな雄英…!

 あんな巨大なロボを作れるとは、まさに恐るべし…だな。

 0ポイントギミック。倒してもポイントにはならないお邪魔虫。

 そう説明されたが、…さてどうしものか。前から存在は知っていたものの、オレ一人でも倒すことはできずともさっきと同じように機能停止までもっていくことはできるだろうが、それでも倒すメリットがないからどちらにしようか迷っていた。

 う~ん、ほかのみんなもとっとと逃げて行って、逃げ遅れたような人もいないようだ。

 

 やっぱ無視しよ、無視。

 

 ここで守鶴が力を貸してくれていたなら、あれをどうにでもできたんだが…。その守鶴はやっぱりあれを見てもオレに力を貸す気はないようだ。

『お~、ありゃでけェな』

 なんて言ってまるでやる気なし。予定通り守鶴が力を貸していてくれたら…。とも考えるが、まぁ今のポイントでも十分合格できるだろう。

 それはともかくあちら(・・・)は凄いことになっている。

 

 主人公がヒロインを助けるために初めて発動させた……"ワン・フォー・オール"

 

 やはり凄いな。あの巨大なロボがパンチ一発で粉々だ…!純粋なタダの握りしめた拳の一撃がここまでの威力を発揮するとは、わざわざ向こうの会場まで砂の目を送ってまでして見た甲斐があった!

 

「終・了~!!!!」

 

 プレゼント・マイクの終了宣言が聞こえる。これで試験も終わりか。

 今日は沢山良いものが見れた。

 これからも雄英に入学すれば、心躍るような機会がいくつもあるだろう。今からそれが楽しみで仕方がない。

『なんだ、これで終わりかよ…。おい我愛羅!この後は飯田連れて、なんか旨いもんでも食いに行こうぜ!』

 

 ……このバカ狸が。結局、今日は何一つ働きもしなかったやつが図々しい。

 それでも憎めないからしょうもない、何だかんだでこいつとも長いからな~…。

 

「…ふう。わかった、天哉にも声を掛けて何か食べに行くか」

 

『おお、そうこなくっちゃな!』

 

 うれしそうに声を弾ませやがって…、これでオレの一番の友なのだから、(たち)が悪いというかなんというか……。

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