「担任の
ぼさぼさ頭で無精ひげを生え散らかしている、物凄くくたびれた感を漂わせている男から発せられた担任宣言に驚くクラスメイトのみんな。
「早速だが。
本当に何も説明なしに用件だけを伝えて行ってしまう相澤先生。…てか、合理主義にもほどがあるでしょうよ。
「我愛羅くん、何が何やら分からないが…。それでも先生の仰ったとおりに着替えてグラウンドに向かうとしよう」
「天哉…、ああ…そうだな。更衣室の場所は兄に聞いておいたから、まずはそこに行こう」
一応こんなこともあろうかと…こんなこともあろうかと!送ってもらう車の中で兄からさりげなく他の施設の場所と一緒に更衣室の場所も教えておいてもらってあったのだ!
―――まぁ案内表示にしっかり載っているからそんなに意味なかったんだけどね。
※ ※
そしてグラウンド。
「個性把握…テストォ!?」
入学式もガイダンスもすっぽかしてA組のみがグラウンドで個性把握テストを受けることになった。…それにしてももう一つのB組だけで入学式をやっているのかと思うと、それもそれでなんかシュールだと思うな。
雄英の“自由”な校風が売り文句というのを先生側にも当てはめてのこのテスト。たしかに中学時代というか、今まで特定の場所以外での個性使用禁止という規則があったおかげで満足に個性を使う機会なんてなかった。それは体力テストも然り。
しかし今回―――
「爆豪。中学の時、ソフトボール投げ何mだった」
「67m」
「じゃあ“個性”を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。早よ」
相澤先生からボールを投げ渡された彼が地面に描かれた円の中に入る。
「思いっ切りな」
「んじゃまぁ…―――死ねえ!!!」
おお~、すごいなぁ。ボールが物凄い速さで遠ざかっていくのもそうだけど…、彼が本当にあの掛け声を上げるのも凄い。
そして計測された飛距離を相澤先生が読み上げられると、クラスのみんながわいわい騒ぎだす。
ただし、ある一人が言った「面白そう」という言葉が出ると…。
「………面白そう…か」
おおう、やっぱりけっこう怖いよこの先生…。
「ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
雰囲気も怖いけど…なによりあの眼が……。
「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「「「はあああ!?」」」
「生徒の如何は先生の“自由”。ようこそこれが―――雄英高校ヒーロー科だ」
赤く目が光ってらっしゃる……。怖い…。……あ、一応守鶴が変化してる瓢箪は視線から隠しとこ…。
※
そうして始まった個性把握テスト。
初めに50m走なのだが…、オレよりも先に走った天哉は原作よりも少し速いタイムを取れたようだ。
中学の時に天哉とはよく一緒にトレーニングを共にしていたので、その時にいろいろと手助けを行ったおかげかな?
「なかなか早くなったじゃないか天哉」
「うむ、だが50mじゃ速度を出し切れんからな。まだまださ」
なんか納得いってなさそうだけど、それでも充分早いと思うんだけどなぁ…。
「我愛羅くんももう次だろう?君なら最下位になる心配はしていないが、それでも応援させてもらうよ!」
「ああ、ありがとう天哉」
ただし走る前に、腰にぶら下がっている重りを外しておかないとな。
「…そういう訳だから、大人しくしてるんだぞ守鶴?」
『フン。……わかったわかった、大人しく待っててやるよ』
ジッと睨みつけて、ようやく素直に大人しくしていてくれると言ってくれた。素直に聞き分けてくれればいいんだが…、この狸はへそ曲がりが過ぎて素直に「うん」と言ってくれた試しがない。
―――さて、オレの番なわけだが…。
個性は使わずに走る。…で、行こうと思う。
「ヨーイ……スタート!」
ダッシュ!
一緒に走ることになった人を置き去りに、あっという間にゴールを切る。
天哉とほぼ変わらないくらいのタイムを出せた。
「おいおい!お前すっげぇ早いな、なにかそういう個性なわけ!?」
「…いや、ただ単にトレーニングで鍛えただけだ」
そう、オレに遅れてゴールした電気の個性の彼が聴いて来たので答えたが、オレは体に過負荷を与えても大丈夫そうな体に成長した後は個性を使って…つまり砂を用いたトレーニングを集中して行ってきた。いわゆるウェイトトレーニング。体に重しになる砂を纏わせてトレーニングを行い、徐々に量を増やしていくという鍛え方をしてきた。
その結果、それはそれは見事な筋肉を手に入れることができた。ちゃんとつける筋肉の種類を絞り、目標に沿った筋トレを行ったので、オレの身体は細身ながらも原作の我愛羅ばりの動きができるようにまでなった。
そして次の握力測定でも……と、思ったけどこれは砂を使って圧を掛けてみることにした。
測定器の握りの部分を砂で覆って―――
メキャ!
…おっと。
「我愛羅くん!?学校の備品になんてことを…」
「…すまない。わざとじゃないんだが…」
測定器を一つ壊してしまった。―――まぁこれに関しては測定不能という判定をもらった。
次は立ち幅跳び。
宙に浮かせた砂の塊に飛び乗ってそのまま行こうとしたら無限判定もらった。
次、反復横跳び。
…普通に体使って跳んだ。さすがに残像はでなかった。
そして
ここでオレ以外で初めて無限の判定が出た。もちろんメインヒロインが出した記録である。
…ちなみにオレも彼女の前に無限判定を出した。砂で作った手でボールを握って、そのまま地平の彼方まで…いや、さすがにそれは無理だから、せめて校舎の外まで運ぼうとしたらその前に先生に止められた。
ここまでパッとしない成績しか出せてない彼…。
主人公の彼はこれまでの種目であまり良い成績を出せていない。他のクラスメイトのみんなは大なり小なり何らかの種目で好成績を出しているのだが…。
「緑谷くんはこのままだとマズいぞ…?」
「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!」
ついには天哉からも心配の声が上がる。それに応じる彼の言う無個性発言に―――
「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」
「は?」
オレもすぐ近くにいるので会話は聞こえているが…。
それよりも彼の挙動に注意がいってしまっている。
うん、初めの一投を投げたが…結果はやはりだ。
先生の眼が赤く光っている。
「“個性”を消した」
露わになった先生の首にかけられているゴーグルを見た主人公の彼が、先生のヒーローとしての名前を口にする。さすがヒーローオタク!
そしてみんなが先生のヒーロー名を知り騒ぎ出す中、相澤先生は彼に指導という名の勧告を受ける。
「指導を受けていたようだが、どう思う我愛羅くん?」
「除籍宣告だろ」
「…あれは、天哉の言う通り指導でもあっているだろうが、そこの彼が言っていることも合っていると思う」
でも、あそこでブツブツひとり言をしながら考えに没頭している彼は、こんなところでつまづくヤツじゃない。
だからオレは心配せずに安心して彼の投球を見させてもらう。
「見込み…ゼロ……」
相澤先生がつまらなさそうにそう口にしているのを横目にしつつ、彼の指がボールから離れる最後の瞬間―――
「今」
ほらねほらね!
これでこそまさに主人公!
「あの痛み…程じゃない!!」
「先生……!まだ……動けます」
「こいつ……!」
お~かっこいい!
最後の瞬間に指先のみでボールを弾き飛ばした。たったそれだけの動作だけど、それでも本来なら一朝一夕でできることじゃないだろう?それをこの土壇場でやってみせるんだから、これぞ主人公って感じだねぇ。
「やっとヒーローらしい記録出したよーー」
「指が腫れ上がっているぞ。入試の件といい…、おかしな個性だ……」
「スマートじゃないよね」
「………」
近くの人たちがそれぞれ感想を口にしているが、そういえばこの後の展開は―――
「………!!!」
横向いたら凄いビックリしている顔を見れた。
「どーいうことだ、こら、ワケを言えデク、てめぇ!!」
「うわああ!!!」
止める間もなく掌から爆発を起こさせながら走って行ってしまった…。
「んぐぇ!!」
ははは。なんか面白い捕まり方してる。
先生の個性で爆発も止められているようだし、捕縛布を巻かれて動けないようだ。
…ちょっといい気味だと思ってしまった。彼が走り出すときに近くにいたせいで爆風で煽られたもんで。
さてと、この後の種目はなんだったか?
いやまだボール投げ終えていない人がいるのか……忘れてた。
※
残りの……もう何ていうかボール投げのインパクトで他の種目を残りものとしか思えなくなってしまったな。
えっと、持久走はこれもただ走るだけでもよかったけど、いちおうこれ個性把握テストだし個性を使ってみようと思う…ので、砂に乗ったオレ自身は腕組んでみんなの頭上を悠々と飛んでみました。
―――罪悪感が半端なかったです。
約一名を除いた他のみんなに対して罪悪感を感じた。…その一名はもちろんバイクに乗っていた彼女のことです。
みんな一生懸命走っている中を、上から見下ろしながらトラックを飛んで行くのは堪えた…。
……はい、次。
上体起こしに関しては特になにもない。普通に上体起こしをした。
最後。
長座体前屈は…、背中を砂で押して数字を稼いだ。そこそこ伸びた。
これで全種目が終了した。
※
全種目が終了し、これから相澤先生による結果発表が行われる。
「んじゃパパっと結果発表」
軽い、仮にも最下位除籍処分なんて重大を伝えようとする前振りとしては軽すぎだろう。
「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」
開示されたものを見ると…、へぇ…オレが1位か…。―――って、オレが1位かよ!
まぁ、そういえばオレもいくつか測定不能で無限なんていう判定受けてたからそうなるのも当然…なのかな?
「ちなみに除籍はウソな」
そしてまたえらく軽い感じでウソだと話す相澤先生。
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「はーーーーー!!!??」」」
ぶっは!!
すっげぇな主人公の顔!思わず表情が崩れそうになってしまったぞ。
他のクラスメイトたちも驚いてるが、彼が一番凄い驚きようだな。ま、それもしょうがないか。彼の成績は最下位、先生の宣言通りなら除籍されてしまうところだったわけだしな。
「あんなのウソに決まってるじゃない…。ちょっと考えればわかりますわ…」
うん?ああ、彼女はたしか物を作りだす個性の……。常識で考えれば彼女の言葉は正しいが…しかし―――
「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」
そう言って先生は立ち去ろうとする…が、その前に主人公に保健室の利用書を手渡す。
立ち去ったのを見届けてから主人公に言葉をかけてみる。
「よかったな。雄英に通っている兄から聞いた事があるがあの教師、たしか今までに100人以上を除籍させてきた先生らしい」
「「はあ!!?」」
おっと、近くの人にも聞こえてしまったか。
「が、我愛羅くん、その話は本当かい!?」
「ああ、なんでも去年ではとうとう一クラスを全員除籍にしたと聞いた」
話を聞いてたらしい天哉にも聞かれたので答えたが、去年の一年生は今では一クラスしか残っていないそうだし、その前から度々除籍処分を行使してすでに通算で100人以上を除籍してきたそうだ。
…ちょっとこの場で話したのは軽率だったかな。オレの発言で周りがざわついてきてしまった。仕方がないので主人公の彼に早く保健室に行った方がいいと促して、天哉を誘って教室に戻るとする。
更衣室が混む前にさっさと行こう…。
※ ※
時間は流れ、今は下校時間。
校門前までしか共にいけないが、天哉と二人で校舎の玄関を出る。すると、目の前にずいぶんと落ち込んだ雰囲気を漂わせる背中が見えた。
「疲れた…!!」
「指は治ったのかい?」
「わ!飯田くん…!うん、リカバリーガールのおかげで…」
早速とばかりに天哉が主人公の彼の肩を掴み話しかけた。よし、これならオレも自然な流れで…!
「そうか、それはよかった。…ああすまん、オレは天哉の友人で風影我愛羅と言う。よろしく頼む」
…自然だったよな?
「あ…うん、よろしくね、僕は緑谷」
よーし、これで主人公の彼…いや、今はもうお互いに自己紹介し終えたんだからこれからは緑谷と呼ぼう!
「しかし、我愛羅くんが言っていたが本当にあの先生は…「おーい!」…む?」
「駅まで?待ってー!」
天哉が話している途中にメインヒロイン来た!これで彼女ともお知り合いになれる!
「君は∞女子」…天哉、それならオレは∞男子か?
「麗日お茶子です!えっと飯田天哉くんに、あなたは…」
「オレは風影我愛羅という、これからよろしく頼む」
ふ、オレの方を向いて困った顔をされてしまったのですぐさま自己紹介させてもらったぜ!
「うん!これからよろしくね!…それで緑谷…デクくん!だよね!!」
「デク!!?」
「え、だってテストの時爆豪って人が「デクてめぇー!!」って」
この流れ、そういえば……表情が崩壊しないよう抑える準備をしなければ…!
「あの…、本名は出久で…、デクはかっちゃんがバカにして…」
「蔑称か」
「えーーそうなんだ!!ごめん!!」
抑え…、抑えなければ…!
「でも「デク」って…「頑張れ!!」って感じで―――なんか好きだ、私」
「デクです」
「緑谷くん!!」
―――ぶほぉ!!
ひょ…表情には出さなかったけど、これは凄い…凄い笑える…!!
「浅いぞ!!蔑称なんだろ!?」
「コペルニクス的転回…」
「コぺ?」
くっ…!これ以上…これ以上笑わせないでないでくれ…!
『…おい我愛羅、お前なんか様子がおかしいようだが大丈夫か?』
「―――…ああ、大丈夫だ守鶴。心配してくれてありがとう」
『いや…。まあ、お前が平気だっつうんならいいんだがよ…』
守鶴…お前が心配してくれるなんてどれ位ぶりだ?でもありがたいことだ。
三人とは校門で別れてオレは迎えの車に乗り込んだ。
兄が来るのを待つしばらくの間、明日から始まる授業について考える。オレが知っている限りだと、明日のヒーロー基礎学は戦闘訓練。
どんな相手と組んで、どの相手と戦うことになるのか…今から楽しみだ。
―――それについにオールマイトと
今回投稿した2話はあまり面白くできませんでしたが、次の話ではもうちょっと頑張って面白くするよう努力してみます。