ソードアート・オンライン~K・A・Y~ 作:piroyuki
「ごめん・・・アスナ・・・約束守れなかった・・・」
「終わりだ。キリト君。」
最後の一撃をヒースクリフが繰り出すその瞬間・・・
信じられないことに目の前に麻痺状態であったはずのアスナが飛び出してきたのだ。
人を守るという意識、いや、本当に守りたいという強い気持ちはシステムを凌駕した。
システムを超える力
かつてヒースクリフとの戦いにおいてキリトが出した力でもある。それをアスナも持っていたということか・・・。
ヒースクリフは最後の一撃をアスナに振りおろす。アスナを切り裂いたと同時に、アスナの胸に付けていた「ユイの心」も切り裂かれた。
「アスナァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
アスナが切られた瞬間、目の前が真っ白になった。耳鳴りというのだろうか?ノイズというのだろうか?なにも聞こえないというのだろうか?頭が真っ白になるっていう感覚はこれのことなのだろうか・・・思考回路が回らない。
「あ・・・・あ・・・・・・・」
ゴーン・・・ゴーン・・・ゴーン・・・・
真っ白な空間から鐘の音が聞こえてくる。
「ん・・・ううん・・・・」
気付くとそこは見覚えのある場所だった。なんというか、これはデジャブといってもいい。懐かしい・・・そう、ここははじまりの街だった。
「・・・はじまりの街??これは・・・夢か?」
動揺しつつも自分のステータス画面や容姿を確認する。
「装備もステータスも初期状態???」
「どうなってんだよ・・・?」
いろいろ考えている間に目の前にメッセージが届いた。
【from:Asuna】
「・・・え??」
すかさずメッセージログを表示する。
【キリト君!どこ?】
表示を見た瞬間、身体が震えた。感情が一気に湧きあがった。夢でもいい。アスナがいる!!
メッセージを返信しようとしていると、遠くから自分を呼ぶ声に気付いた。
「キリトくーーーん!!キリト君!!!どこーーーー!?!?」
「すみません!キリトっていうキャラ、知りませんか?」
キリトはその声の主をすぐに見つけた。
そういえばログインした時ってアバターの姿だったよな。。声の主の姿はアスナ・・・という容姿とは程遠い。背は少し高いし、なによりおっpが・・・コホン。髪型はピンクのボブカットで大人な雰囲気なキャラだった。
「アスナ!!」
キリトはそのアスナ的なキャラに駆け寄った。
「キ・・リトくん??」
「アスナ!俺だ!!」
「ぷっ・・・あははははは!!キリトくん!!誰wwwww」
「ちょ・・・おいおい・・・」
それはお互い様だろう・・。とでもいいたげな顔のキリトに気付いたアスナはすぐに顔を真っ赤にしたのであった。
「~~~~!!ジ・・ジロジロみないでぇぇぇ!!」
しかし今も状況を飲み込めないでいる。それもそのはず、二人は確かに75層でヒースクリフと戦っていた。そして目の前でアスナは切られた。その瞬間からの記憶がこの状況というのが二人とも一致していたのだ。もちろんログアウトのボタンもない。二人とも黙って考えてはいたものの、夢だろうがなんだろうがとにかく二人とも「無事」ということでよしとした。
「ねえ・・もし、もしこの状況が仮にタイムスリップとかだったとしたらさ・・・」
アスナが不意に口を開き、キリトの手を強く握った。
「今私たちにできることってあるんじゃない??」
そうだ。このゲームがもし俺たちの知っているSAOの過去であったのならば、夕方17:30にデスゲームである事実を10000人に宣告されることになる。
「そうだ!俺このあとクラインに出会うんだよ!」
そう、ゲーム開始からソロで狩りにいこうとしたときにクラインに引きとめられて戦闘指南をしたのだ。
「ちょっとクラインを探してくる!!」
「私もいく!!」
「ああ!!」
クラインは最初から最後の時まで俺を気遣ってくれた大切な友達?友達というか兄貴分のような奴だった。アスナは以前クラインから「アイツのこと頼む!」と言われたといっていた。アスナにとってもクラインはキリトを気遣ってくれる数少ない友人であることを理解していた。
確かクラインは市場通りにいたはずだった。確かアバターは・・・
「いた!!」
「どこ!?」
「あれだ!赤い髪の!!」
アスナにはクラインのアバターはわからないから見たら笑うんだろうな。
「なあ、アンタ」
「ん??俺か??」
「ああ、アンタだ。アンタ新規だろ?俺はβテスターなんだけど・・」
「おおお!?マジか!」
「よかったらその・・・」
キリト108のスキルの一つ、コミュ障が発動したのをアスナはすぐに感じ取ったのだろう。すぐにフォローにはいった。
「よかったら一緒に狩りしませんか?」
「あ・・ありがてえ!頼んます!!」
「ここにいる皆さーーん!ビギナーの方ーー!これから戦闘の基礎を教える勉強会やりまーーす!!」
「んな!!・・・アスナ!?!?」
「せっかくだしぃ・・多いほうがいいでしょ?」
「それに・・・出来る限り犠牲者も減らしたいの・・・」ヒソヒソ
「あ・・・あぁ・・・。そうだな。」
ここにいる人たちはみんながみんな、この後起こる出来事を知らない。
そして、それによって精神的にも大きなダメージを受ける。
一人でも多く生存者を増やしたいという気持ちは二人とも同じだった。
「てやっ」
「うっわ!!」
「えいっ!」
「そうそう!そんなかんじそんなかんじ!」
「キリトさん、教えるの上手いですねぇ」
アスナの呼びかけに応じたのは12人、確かに知らない人からいきなり声掛けられても警戒するのは当たり前だ。しかし女キャラのアスナが声をかければそんな警戒もすこし和らぐ。
キリトはそんな12人に戦闘指南をしていた。どのように敵の攻撃を捌き、どのように敵に攻撃するのかを分かりやすく説明し、徐々に皆が慣れてきていたのだ。
そんな中、アスナはあるものを執筆していた。
「なぁ、アスナちゃんは何をしているんだい?」
クラインはアスナの横に腰をかけ、執筆中のものを覗き込んだ。
「これはですねぇ・・この層のこの層のクエスト情報とか狩り場の情報とか、素材などの情報です。」
「へぇぇ・・完成したら皆に配るのかい?」
「複製できる人に頼んで出来る限り皆さんに配っていきたいんです。」
「優しいんだねぇ・・惚れちまうねぇ。」
「もう私は売約済みですよ?フフっ」
「あぁ~~あのキリトかぁ。あいつもいい奴っぽいもんなぁ。。ちくしょーー」
「いい奴っぽいんじゃなくて、すごくいい人なんです。」
「羨ましいねぇ。まったくよぅ」
アスナは前回のマニュアルを読んだことがあった。きっとそのマニュアルだけでは足りない。戦い方だけではなく、一人ひとりが意識をもって強くなっていかなければ生存率は上がらないと考えていた。
もしこうしていれば、ああしていれば・・・。そんな気持ちになっていたのは以前からあった。今回こうして戻ってこれたのはきっとチャンスなんだ。そう考えて今執筆しているのだ。
陽が暮れ始めたとき、一人のビギナーがログアウトボタンが無いという事に気付いた。
「どうなってんだ?バグか?」
「ま・・・まじ!?俺のにもないぞ!?」
「あ・・あたしのも!」
12人がパニックになっている中、キリトとアスナの二人だけはその時を知っていた。アスナの執筆は終わり、その後表紙にこう書き記す。
筆者:K・A・Y