ソードアート・オンライン~K・A・Y~ 作:piroyuki
キリトは35層の迷いの森に来ていた。
自宅でのパーティーが終わり皆が寝静まったのを見計らってやってきたのだ。
そう、今夜はクリスマス。背教者ニコラスが出現するモミの木に向かっていたのだ。
「なんか、あの頃を思い出すな・・・。」
前回SAO時のこの時は自分は死んでもいいという意識でいた。このイベントで死ぬもよし、死なずにアイテムを手に入れれば・・・なんて考えてた。
今回はまた違う。「還魂の聖晶石」はどこかで使うかもしれない。これは誰にも譲れなかった。幸いここには誰もきていない。たくさんの人やDDA、軍といった有力ギルドもこの場所を探せずにいたのだ。キリトは後をつけられていないことを確認していた・・・。
23:40、一人の足音が聞こえてきた。足取りの重い小さな人影だった。
「・・・・あっ・・・・・」
見覚えのある顔・・・・その人はなんと「サチ」だった。
「き・・・キリト?」
「サチ・・・?なんでここに??一人か?」
「・・・・うん。」
今回サチとの交流はなるべく避けていた。前回の彼女はキリトに想いを寄せていたことは薄々感じていた。今回はそういった感情が芽生えないよう極力マヤに育成を任せて自分はササマルの育成に専念していたのだ。
しかしサチの顔を見ると意識せずにはいられなかった。あの頃の思い出、そして「絶対しなない」と毎夜唱えてあげていたにもかかわらず死なせてしまった自責の念・・・。
「ほ・・・他の奴らは?元気でやってんのか?」
「・・・・・・。」
「・・・最近会ってなかったからなぁ・・・」
「・・・・・みんな・・・・死んだの・・・・。」
「・・・・え?今・・・なんていった?」
「みんな・・・・死んじゃった・・・・」
「そんな・・・・・」
サチの話によると、1か月前に49層のフィールドでレベリング中に他のPTが話しかけてきた。「この先にボスがいるんだが俺たちでは心許ないから一緒に倒さないか?」ということだった。安全マージンは取っていたし、人数も増えれば平気だろうとタカを括って挑んだが、そのボスがかなりの強敵だった。前衛のテツオとササマルは敵の攻撃2発で崩壊し、死亡。ケイタはダッカーとサチを庇ってダメージを受け、サチに結晶で逃げろと指示し、サチは帰還するも、その数分後にはフレンドリストからダッカーとケイタの名前が灰色になり、死亡したことがわかったという・・・。
「私・・・このイベントボスがドロップするアイテムが蘇生アイテムだって聞いて誰か一人でも生き返れたらって思ってここに来たの・・・。」
「サチ・・・それは・・・・・・」
「怖いよ・・・でも・・・一人でいるのはもっと怖い・・・だから・・・」
「わかった・・・ここは俺に任せて、サチはその木の陰に隠れてるんだ・・・。」
「でも・・・キリト一人でなんて・・・」
「大丈夫。任せろ。」
「・・・・・うん・・・わかった。」
キリトにはサチの気持ちが痛いほどわかった。そうだ。一人でいるくらいなら死んでもいい。そう思った時期があった。しかし俺たちは生きてるんだ。そう思えたのは前回のリズベットの一件のときだったな・・・。
背教者ニコラスはキリトの二刀流の前に消え去った。ドロップアイテム【還魂の聖晶石】を手に取る。
ここでサチにこの現実を見せるのは酷な話だ。このアイテムは「対象のプレイヤーが死んでから10秒以内ならば蘇生させることができる」というもの。
サチに自身の願いをかなえることはできないアイテムなのだ・・・。
「サチ・・・これだ・・・。」
「キリト・・・・ありがと・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・これ・・・は・・・そんな・・・・・」
サチはボロボロと涙を流していた。
「サチ・・・あのさ・・・」
「もう・・・・嫌だよ・・・・・無理だよ・・・・私・・・私・・・!」
「サチ・・・・よかったらうちのギルドにこないか?」
「・・・・・・うぅ・・・・・」
「うちのギルドなら一人になることはない。サチは絶対に死なせない。今度は・・・今度こそは君を守ってみせる・・・。だから・・・」
「・・・・キリト・・・・キリト・・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
1か月間、サチは涙をどれだけ流したのだろうか・・・。それはわからない。しかしキリトは今度こそ守ってあげたかった。月夜の黒猫団は違う形で崩壊してしまった。いつか自分達に追いついてくれるという夢は叶わなかった。だが、この胸で泣いているサチを放っておくことはキリトにはできなかった。
月夜の黒猫団ファンの皆さま・・・すみません。