自由で無鉄砲な女子がubwでアーチャーを召喚したら(恋愛フラグが壊滅した) 作:たこ足八本いか十本
呪文を唱え終わると同時に、部屋をもうもうとした煙が満たす。え、まさかね‥‥と戸惑っていると、魔法陣の上には薄っすらとした人影が。
「問おう、貴方が私のマスターか」
「え、都市伝説じゃなかったの‥‥⁉︎」
目の前に現れた男を改めてまじまじと見つめる。背ぇ高いイケメン、おまけに筋肉付き。なんだ、こいつは。
つーかこいつの髪の色、年にしてはどう考えてもおかしいだろ。苦労しすぎでいつの間にか全部白髪になってましたーみたいなオチとか?
「‥‥こいつ、とはまた酷い言われようだな。それにこの髪は残念ながら白髪ではない」
む、思ってたことが全部口に出てしまっていたか。これは申し訳ない。とはいえ止める気も無い。
「えっと、突然悪いんだけど。‥‥私、実はイケメン苦手だからさ、来てもらったところ悪いんだけど今すぐ帰ってもらっていいかな⁇」
「は、はぁ⁉︎」
「え、サーヴァントって私のお願いを聞いてくれる従順な下僕じゃないの?」
「いや、待て待て待て」
「あ、そう言えば令呪っていう便利なものがあったね。なら早速‥‥お家に帰れ‥‥‥‥‥そういえばあんた誰?」
命令しようにも名前が分からないことに今更ながらに気がつく。すると此方を思いっきり馬鹿にした顔で見るイケメンは深々とため息を吐いた。
「‥‥‥‥馬鹿なのかね、君は」
「いやーこれでもテストでは学年でトップ10には入ってるんだけどねぇ」
「‥‥詐欺だろう」
「詐欺じゃない詐欺じゃない‥‥って失礼だな、あんた‼︎」
「人の話も聞かずに理不尽な理由で消えろと言ってくる君の方が失礼だと思うが」
「‥‥確かに、それはそうかも」
非の打ち所がない正論で返される。同時に見た目だけで人を判断してはいけないよ、と遠い昔に優しく言ってくれた父さんの顔が自然と思い浮かばれる。
ごめんよ、父さん。父さんの大切な言いつけを、私はまた破ってしまった。
「イケメン消えればいいとか思ってしまってすみませんでしたー。‥‥‥ってそもそも何の話だっけ、これ」
「はあ‥‥‥そういえば君は最初に都市伝説だ何だの言っていたな、まさか聖杯戦争を知らんのか」
「え、何それ」
「‥‥無知な割りには魔法陣はきちんと描けているようだが」
「あーそれは私が描いたんじゃ無くて父さんが描いてたやつだから上手くて当たり前」
「‥‥父親?」
「そうそう。今私は父さんの残した遺言に従って行動してるだけだからさ、正直何が起こってるかよく分かってないんだよね」
「‥‥その遺言、とやらには聖杯戦争についての説明はなかったのか?」
「多分あったよ、でも面倒くさくて興味の湧いた所しか読んでない」
「たわけっ、そのくらい自分できちんと読め!聖杯戦争というものはな‥‥」
そう怒鳴ったかと思うとイケメンはセイハイセンソー(?)についてくどくどと説明してくれる。何だこの世話焼きの男は、私のオカンか何かか?
‥‥‥オカンといえばふと母さんを思い出す。そして母さんといえば手料理のシチュー。
そんなことを考えていたらどうしよう、無性に食べたくなってきた。よし、明日の晩御飯はシチューにしようか。
「‥‥聞いているのか」
「えっ、も‥‥勿論」
「‥‥なら、先ほどまでの私の説明をできるだけ短く要約してもらおうか」
イケメンがにっこりと笑みをたたえるが、目が全く笑っていない。
正直怖いです、誰かタスケテー。
「‥‥‥皆でセーハイを取り合ってレッツパーリー‥‥‥みたいな?」
「‥‥‥間違ってはおらんが、もっと表現の仕方を考えたまえ。余りにも馬鹿っぽいぞ」
「え、うそ‥‥合ってたの⁉︎」
「貴様、やはり聞いてなかったな⁉︎」
「うわっ、ごめんなさいお母さん‼︎」
「誰がお母さんだ‼︎‼︎」
墓穴に墓穴を掘ってしまい、イケメンの怒りが爆発する。
流石にやべーと口元を引きつらせていると、相手はもう此方を相手にするのも面倒になったのか一度深呼吸をして怒りを鎮めようとしている。どうやら何とか私の首は繋がったらしい。
「‥‥‥おかしなあだ名が定着する前に名乗っておくが、私はアーチャーだ。お前は?」
「ふーんアーチャーね、りょーかい。私は怜、桐谷怜だよ」
「‥‥初めて会話が成り立った‥‥」
「あっはっはー確かにー!アーチャーがつまらない説明ばっかりしてるからじゃないの?」
「ふざけるなっ‼︎お前が余りに何も知らないからこそ此方がわざわざ説明してやっているというのに!」
ああそういえばそうだった。
‥‥それにしてもアーチャーは、一体この会話だけで何回キレるつもりなのだろう。確かに戸棚の中に煮干しがあったはずだからあげてやるべきなのか?イライラにはやっぱりカルシウムだよ。
「‥‥お前がまたいらないことを考えているのは分かるが、取り敢えず話を元に戻すぞ。七人のマスターと彼らと契約した七騎のサーヴァントがその覇権を命を賭して競い、最後に残った一組が手にした聖杯で願いを叶える権利が与えられる。これが聖杯戦争だ」
「ふーん、つまり一位になれたら何でも一つ望みが叶うと」
「平たく言えばそういうことだな」
「‥‥‥‥じゃあ私はパスで」
「は、はあ⁉︎」
「えー、だって叶えたい望みなんて無いし。そんな下らないことに命を賭けれるほどたくさん心臓持って無いし」
「たわけ!召喚したからには君には、きちんとマスターとしての使命を全うする義務があるだろう‼︎」
「義務ねぇ‥‥」
まじまじと右手の甲で嫌という程存在感を放つ令呪を見つめる。あーもう、やっぱりあの遺書なんて無視した方が良かったなぁと今更ながらに後悔。まさか呼び出して終わりじゃ無いとは思ってもみなかった。
‥‥とはいえ私に頼み事なんて一つもしたこと無かったあの父さんの頼みだ。流石に子供としては無かったことにするわけにはいかないだろう。
「はあ‥‥じゃあ決めたよ。私の望みは聖杯をぶっ壊すこと」
「待て、いきなり話が飛躍したな」
「だって遺書にそうしろって書いてあったんだもん」
「最初にそれを言えっ‼︎」
頭が痛い‥‥と顔を手で覆うアーチャー。ロ○ソニンあるよと言えば、いらん!と怒鳴られた。
こいつ‥‥人の親切を。それ以前にロ○ソニンが頭痛薬だってこと良く知ってたな。
「まあ破壊に関しては私も父さんと同感だからねー」
「‥‥何故、」
「だって何でも願いを叶えてくれるモノなんてこの世にあっちゃダメでしょ。そんなものが本当にあったらこの世は魔術師だけの世界になっちゃうし、皆そのためだけに努力するサルになるじゃないか」
「‥‥!」
「そもそもこれまでに魔術師が誰も世界を手にしてないってことは、聖杯の存在自体が胡散臭くない?じゃあもう全部ぶっ壊そうぜー‥‥みたいな気分だねぇ今は」
「‥‥‥君の型破りは今に始まったことではなかったな」
「おう、ありがとう」
「全くもって褒めてはおらん‥‥‥が、その真っ直ぐな考えは嫌いではない」
「ふーん。まあ何でも良いけど取り敢えず戦闘では私を第一に守ってね。一応刀は使えるけど、流石に英霊相手に戦うのはキツイと思うから」
「‥‥逆に、君は英霊と勝負するつもりだったのか‥‥」
「まあね、ちょっと試してみたい気はするかも」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべると、頼むからやめろと頭を思いっきり叩かれた。
いってーな馬鹿、これだけで私の脳細胞がどれだけお亡くなりになったと思ってる。
「‥‥とにかく、戦闘全般は私に任せてくれ。まずは敵の情報収集から始めていこう」
「あっはっはー!つまりはノープランだね、その方が性に合うよ」
「‥‥‥やれやれ、私はとんでもないハズレくじのマスターを引かされてしまったようだ」
「私もそう思うよ、ご愁傷様ー」
「‥‥‥自分で言うのか‥‥。だがその令呪がある限り、私のマスターは君だという事実は変わらない」
‥‥‥何か重いなぁ。遺書といい真面目なアーチャーといい、正直面倒としか言いようが無い。
「‥‥‥やっぱり辞退しようかなぁ」
「‥‥‥」
「嘘だよ、嘘だからそんな怖い顔しないで」
「‥‥‥‥本当に頼むぞ、マスター」
「分かった分かった、参加するからにはちゃんと頑張るって」
「‥‥その言葉、何かに録音しておきたいぐらいだな」
「大丈夫、明日になったらきれいさっぱり忘れてるよ」
「それの何が大丈夫なんだ‥‥⁉︎」
「あははー、まあとにかくこれから宜しくね、アーチャー」
「‥‥先が思いやられる‥‥」
こうして、私はアーチャーというサーヴァントと思いがけない出会いを果たしたのだ。
オリキャラ紹介
•桐谷怜
父親と母親を亡くした士郎や凛の同級生。父の遺言に従って聖杯戦争に参加する。
性格は自由of自由。でも馬鹿ではない。
特技は剣道。私物に本物の刀がある。