自由で無鉄砲な女子がubwでアーチャーを召喚したら(恋愛フラグが壊滅した) 作:たこ足八本いか十本
家の間取りとかは適当です。特に衛宮家は良く分からない。
朝四時半に起床し、のそのそと一階のリビングまで降りる。
昨日は寝るの遅かったからなぁ、正直この時間に起きるのはかなりキツイ。
眠い目をぼんやりとこすりながら電気を付けると、ふと椅子に座って目を閉じている男の姿が目に入った。
‥‥‥誰だ、あいつ。私は一人暮らしのはずだったが?
「‥‥‥あの、もしかして酔って家でも間違えました?」
「そんな人間がいるかっ!さっさと昨日の出来事を思い出せ‼︎」
恐る恐る尋ねると、パチリと男の目が開いて容赦なく怒鳴られた。
寝起きの頭に大音量が鳴り響き、ぐわんぐわんと脳が揺れる。
うるさいなぁと思いっきり顔を顰めていると、そういえば昨日も自分は怒鳴られまくっていた気がするなぁというまるでデジャヴのようなものが自然と感じられた。そしてカチリと繋がる記憶。
「‥‥‥あ、そうだ。‥‥‥‥誰だっけ?」
「アーチャーだアーチャー!いい加減に覚えたまえ‼︎」
「ああそうそう、アーチャーだアーチャー。‥‥って朝からこんな漫才やってる場合じゃない!」
「‥‥‥‥私は一度、本気で怒っても良いだろうか」
「ダメに決まってるじゃん」
いっそのこと怒るの禁止!とか令呪で命じてみようかとも思うのだが、何と無く逆効果のような気がしてやめる。この男なら「怒るの禁止」という命令に対して怒る芸当すら平然とやってのけそうだ。
それに怒らないアーチャーなんて気持ち悪くて想像すら出来ない、申し訳ないが。
「‥‥そもそも、君はこんな朝早くに起きて一体何をしようとしているのかね?」
「んー?弁当と夜ご飯作り。あと鍛錬」
「‥‥最後の方に、女子高生に似つかわしくない単語が聞こえたような気がするのだが私の気のせいか?」
「うん、気のせいじゃないね。‥‥うわっ、最悪だ‥‥」
ゴソゴソと戸棚を漁っていると、朝からテンションがだだ下がりの事実が発覚した。
アーチャーがどうかしたのか、と尋ねてくるのでその元凶を彼の目の前に思いっきり突き出す。
「シチューをね、昨日食べたくなったから作ろうと思ってたんだけど‥‥このルーの賞味期限が五ヶ月前だった‥‥」
「‥‥‥‥五ヶ月、」
「‥‥‥‥いけると思う?」
「駄目だろうな」
即答。
やっぱりか、とがっくり肩を落とす。ルーさえあれば‥‥ルーさえあれば何とかなるというのに。
野菜や肉は(珍しく)きちんと揃っているという現実が、余計に私を虚しくさせる。
仕方ない、シチューは諦めるかとため息を吐いた瞬間、ん、待てよ‥‥と素晴らしい考えが頭に思い浮かぶ。
‥‥目の前にいるんじゃないか、私の最高のパシリが。
「アー‥‥」
「断る」
「まだ何も言ってないじゃん‼︎」
「大体予想はつく、どうせ私に買いに行かせるつもりだろう」
「お金浮かすために万引きさせるつもりだったんだけど。あんた、透明になれるんでしょ?」
「いっそ清々しいほど最低だな、お前は‼︎霊体化は犯罪に使う能力では無い!そもそも姿を消している間は物は持てん!」
「ふーん‥‥‥じゃあ私が行くからアーチャーは野菜と肉切って炒めてて」
「‥‥‥お前の、その食への執着心は一体何なんだ」
「食べたくなっちゃったから仕方ない。‥‥じゃあ宜しくね、いってきまーす」
「待て、お前はその格好で行くつもりなのか⁉︎」
そう言われて自分の服装を見下ろしてみる。
ジャージ、しかも上下揃ってない。
「‥‥すぐそこのコンビニだし」
「この馬鹿者っ、身だしなみぐらいきちんとしろ!それに外は寒い、そんな格好で風邪をひいたらどうするつもりだ‼︎」
やっぱオカンじゃん、と心の中で嘆息する。こいつ、もしかすると実は女に尻に引かれるタイプかもしれないな。
結局、折れたアーチャーがコンビニでルーを買ってきてくれたことによって、無事にシチューは完成した。
圧倒的感謝。
⚪︎ ⚪︎ ⚪︎
「‥‥で、弁当を作り終えた君は一体どこに行く?」
まだかなり暗い、しかも寒い朝っぱらの時間を制服で歩く私は特異な存在だろうといつも思う。
そのうえ今は、ボソボソと霊体化したアーチャー小声で話しているのだから尚更変人確定だ。
「士郎の家。あ、士郎っていうのは同じ学校の生徒なんだけど、彼の家には剣道場があるから貸してもらってるんだ。流石に学校で本物の刀を振り回すわけにもいかないでしょ」
「‥‥‥‥」
「あと自分の分の材料費を出す代わりに、朝ごはんも食べさせてもらってるんだ」
「‥‥‥‥成る程、それが君の〝鍛錬〟か」
「そうだよー」
正面の門から堂々と敷地内に侵入して道場を目指す。もう既にこの不法侵入にも慣れたものだ。
‥‥‥それにしても本当にこの家は広い。固定資産税、一体幾ら払ってるんだろうというのが私の目下の疑問だったりする。
道場に入り、バットケースに入っていた刀を取り出す。
鞘付きのそれはずっしりと深い重みを持っており、柄を握ると手に吸い付くように馴染んでくる。これまでの努力の賜物(?)だ。
「‥‥まさか、本物の日本刀を持っているとは思いもよらなかったな」
現界したアーチャーが物珍しげに刀を覗き込んでくる。
「これね、滅茶苦茶高かったんだよ。お小遣い、お年玉、約五年かけて溜め込んだ上に、親からの援助で何とか買えたんだ」
「ふむ‥‥それは中々の一品だな。名は、何と言うんだ?」
「無銘、だよ」
そう笑って答えると、アーチャーが少しだけ驚いたような顔をする。
そして私と手合わせでもしてみるか?と誘われたが丁重にお断りしておいた。
事故で「あ、殺しちゃった」とか言われてしまったらおしまいだし。
無心に刀を振っていると、ふと誰かが自分を呼ぶ声を聞いた気がした。
鍛錬を一度中断して外を覗くと、そこにはとある女子生徒の姿が。
「あ、あの‥‥先輩が怜さんをご飯ができたから呼んでくるようにと‥‥」
「そっか‥‥りょーかい。ありがとね、桜」
「いえ」
急がなくてもいいですからね、と笑いながら去っていくのは後輩の桜。今日も可愛い彼女を、心の中で私はエンジェルと呼んでいる。
しかし私の心の声はまたもや無意識に漏れてしまっていたらしい。
アーチャーも無視すればいいのに、ご丁寧にも嫌味ったらしい皮肉の雨を降らしてくる。‥‥この構ってちゃんが。
「‥‥エンジェルとは、また呼ばれる側が恥ずかしくなるような陳腐なあだ名を‥‥」
「お母さんよりは断然マシだ」
「だからその呼び方はやめろと、何度言ったら分かるのだお前は!」
「何度言ってもワカリマセーン。え、ママの方が良かった?」
「‥‥‥‥」
静かにアーチャーがキレる気配がする。
それに爆笑しながら歩いていると、目的地には直ぐに辿り着いた。
「遅いぞ、怜。ご飯が冷めちゃうじゃないか」
「あーごめんよ、先に食べててくれても良かったのに」
「いいじゃなーい、皆で仲良く食べようよ」
「怜さんの箸はこちらです」
「お、サンキュー!」
士郎、藤ねえ、桜、そして私のメンバーで囲む食卓はとても賑やかだ。そしてこの賑やかさが私にとってささやかな幸せだったりもする。
親を早くに亡くした私としては、大勢でご飯を食べられること自体がとても嬉しいことだから。
そんなじんわりとした思いに浸りつつ味噌汁を啜り、卵焼きを口にする。うん、やっぱり士郎のご飯はいつ食べても美味い。塩加減から何からバッチリだ。
藤ねえの容赦のないお代わり攻撃によって、一瞬で炊飯器が空になっていくのが見える。あの人はもしかすると、大人になった今でも育ち盛りなのかもしれない。
四人とも結局目的地は同じ、というのもまた面白い話だ。
藤ねえはスクーターで先に行き、私は士郎と桜が出た少し後に出発する。
流石にわざわざあの二人の邪魔をするほどのKYではない。
「‥‥随分と楽しそうだったな」
「ん?混ざりたかった?」
「馬鹿を言うな。‥‥頼むから、私の存在を周りに言いふらしたりなどはしないでくれ」
「はいはい分かってるって。‥‥ところでさ、」
意図的に、真面目な雰囲気を作り出す。するとアーチャーも私の纏う空気が変化したことに気がついたのか、「何だ」と固い声で聞き返してきた。
「魔術師でもない人間が聖杯戦争に参加することってある?」
「‥‥突然どうした、無いこともないが」
「‥‥‥士郎の左手に痣があった。あれは多分、令呪ができる前触れだ」
「‥‥ほう、流石やる時はやると豪語しただけあるな。気がついていたのか」
「え、私そんなこと言ったっけ?」
全く記憶にない。そんなカッコいい決めゼリフ、一体私はいつ吐いてしまったのだろう。
アーチャーが呆れたように深くため息をつく。今日だけで何回目だ、と思わずツッコミたくなる程の量だ。
‥‥‥彼はもしや、ひっそりとため息を吐く回数のギネス記録にでも挑戦しているのだろうか?
「‥‥‥‥前言撤回、一言で全てを台無しにする天才だな、君は」
「どうもどうも‥‥‥って駄目じゃん‼︎士郎もこの生産性の無い戦争に巻き込まれるってことじゃないか‼︎」
「まだそうと確定した訳ではないが」
「うーむ‥‥でも何と無く嫌な予感がする」
「‥‥ならばどうするかね?」
「あれだ、うん。今日から私たちは士郎の護衛になろう」
「‥‥もう少しマシな言い方は無いのか‥‥」
「じゃあストーカー」
「余計に悪化してるではないか‼︎」
「あっはっは!‥‥まあとにかく、士郎がマスターである可能性も考慮しながら他の情報も仕入れていくプランでいこう」
「‥‥‥はあ。了解した、マスター」