自由で無鉄砲な女子がubwでアーチャーを召喚したら(恋愛フラグが壊滅した) 作:たこ足八本いか十本
夕方、不思議な胸騒ぎが収まらず、私はアーチャーと共に校舎の屋上に佇んでいた。
手すりに捕まり、徐々に暗くなっていく空を見上げる。
‥‥何かいやーなフラグを感じるのは多分気のせいではないだろう。
こんな時は、何も起こらない方が逆におかしいのだ。
そんな下らないことをぼんやりと考えていると、
「よう」
背後から低い男の声。
やれやれ、残念なことに予想が的中してしまいました。こんな絶妙なタイミングで声をかけてくる人間など、十中八九サーヴァントに決まっている。
もう最悪だな‥‥面倒くさい。とっとと始末しちゃってよ、アーチャー。
心の中で悪態をつきながらゆっくりと後ろを振り返ると、そこには朱の槍を持った青い髪のイケメンが。
‥‥もう男はいいです、お腹いっぱい。どうせ戦うなら美人な女の人が良かったなぁ。
「‥‥おい、何か言いたいことがあるんならはっきり言えや」
私の微妙な顔をみた青いイケメンが、これまた微妙な顔をして問うてくる。
問答無用で殺されないことから考えて、彼はどうやら話が通じる系のサーヴァントらしい。
それ以前にこの人のマスターは一体どこにいるのだろうか。
「なら遠慮なく。‥‥その青タイツはどこで仕入れたんですか?」
「は‥はぁ⁉︎これは青タイツなんかじゃねーよ、歴としたオレの戦闘衣だ!」
「マジかよ、だ‥‥だっさー‼︎」
「て、てめぇ‥‥初対面の相手に対して言いたい放題だな‥‥‼︎」
「だって頭からつま先まで青って、どう考えてもソ○ックじゃん‼︎」
「ソ○ック誰だよ!」
そんな下らない争い(?)目の前の男と繰り広げていると、アーチャーにいい加減にしろと頭を叩かれた。地味に痛い。
また脳細胞が殺された、と恨みがましい目でアーチャーを睨む。
すると突如として青タイツの男の後ろの扉が開け放たれたれ、私と同じ制服のとある女子生徒が飛び込んで来た。
ん、ん‥‥?何処かで見たことある顔‥‥
「ちょっとランサー!マスターである私を置いて行くなんていい度胸してるわね‼︎」
「と‥‥遠坂さん⁉︎」
「え、き、桐谷さん⁉︎どうしてこんな所に‥‥‥」
思わずえええ、とお互いにお互いを指さして喚いてしまう。
何とそれは同級生だった。まだ同じクラスになったことは無かったので、実質面と向かって喋ったのはこれが初めてなのだが。
その上品行方正かつ絶大の美女であると専ら噂の彼女が、こんなふざけた戦争に参加しているというギャップに空いた口が塞がらない。
しかし私の右手を見た瞬間、彼女の纏う空気は同級生に対する柔らかいものから魔術師の真剣なものへと一変する。
「‥‥桐谷さん、その令呪‥‥」
「あーうん、一応私もマスターデス」
まあ横にこんなガタイの良い赤い男がいる時点でマスターってことはばれてたんだろうけど。
諦めて自分からそう宣言すると、遠坂さんにランサーと呼ばれたーーもとい青タイツの男が武器を構え、場の空気が張り詰めたものに変わっていく。
「よし、マスターってんのが分かったなら‥‥」
「あ、待ちなさい!ラン‥‥」
「加減は無しだ」
迫り来る赤。
無意識に体が動いていた。
「Duro!」
抜刀と同時に口は一人でに強化の呪文を唱えていて、既の所で刃を受け止める。
重すぎる、今まで受けてきた衝撃の中でも断トツだ。
これは耐えきれないな、と仕方なく地面に倒れこみ、全身を使って攻撃をいなす。
英霊チートすぎるだろふざけんなとか何とか考えていると、パッキーーンと何か固いものが割れる音。
どうやら私の刀が折れたらしい。
ん?ちょっと待て、折れただと⁉︎‼︎?
空を見るとちょうど刀身が吹っ飛んでいる真っ最中で、それはキラキラと輝きを残しながら落下していく。
ダメだ、あれは私の大切な‥‥‥!
「ま、待てええぇぇッ‼︎‼︎」
全力で追いかけ、手すりを乗り越え全力で手を伸ばすが残念ながら私の腕の長さでは届くはずがない。
ーーーそして気がつけば、手すりから身を乗り出しすぎた自分も一緒に落下していた。
自分の絶叫が、何処か遠い所から聞こえてくる。
ジェットコースターに安全バー無しで乗った気分になり、あーこれは死ぬなぁと脳が完全に現実逃避する。
が、予想していた衝撃は来なかった。
「‥‥全く、私の想像をはるかに超える無鉄砲さだな、君は」
「‥‥‥‼︎」
落下する私を受け止めたのは勿論アーチャーだった。所謂お姫様抱っこのような形で。
その余裕の表情にとんでもない苛立ちを覚え、柄だけになってしまった刀で思いっきり彼の肩を殴りつける。
「ッ‥‥突然何をする⁉︎」
「助けるのが遅い、馬鹿者‼︎刀が、私の刀があぁぁ!」
「な‥‥それは余りにも理不尽ではなかね⁉︎しかも自分ではなく刀の心配か!」
「戦闘は任せろとかドヤ顔で言っていたのはどこの誰でしたっけー??」
「生憎だが私も、まさか君が本気でサーヴァント相手に抜刀するとは思いも寄らなかったものでな‼︎」
「知らんわ!正直自分が一番びっくりしてるよ‼︎やっぱり木刀の方を持ってくるべきだった‥‥!」
「待て、木刀だったら君は死んでいただろう」
「強化したら全部同じなんだって‼︎」
そんな軽い掛け合いの真っ只中でもアーチャーはきちんと目的地を定めていたらしく、何の躊躇いもなく運動場の真ん中に着地する。
確かに屋上よりは、スペースのあるここの方が断然戦いやすいだろう。
折られた刀を見て深い溜息をついていると、追って来た青タイツが遠坂さんと共に少し離れた場所に現れた。
その青タイツの顔面を遠目で見ていると、腸が煮えくり返るほどの怒りが改めてフツフツと湧いてくる。
この刀、一体○十万したと思ってんだこの野郎。
「‥‥遠坂さんにには悪いが、微塵も容赦は要らないよ」
「もとい、私もそのつもりだが」
「ふーん、なら丁度いいね。‥‥行けアーチャー、アイツを八つ裂きの刺身にしろッッ!!」
そう心の底からの感情を叫んだ瞬間、アーチャーからは膨大な魔力が立ち上がる。なんだ、本当にちゃんとやる気じゃないか。
疑って済まんな、と軽く心の中で謝罪する。
が、此方を振り向いたアーチャーはやる気満々‥‥というわけではなく、なんとも言えない微妙な表情をしていた。
「‥‥まさかとは思うが、君は令呪を使ったのか、今の命令に‥‥」
「ん?そうなの?」
またまたご冗談を、と半信半疑で手の甲を見るとマジだった。
「うわ‥‥一画消えてる‥‥」
「無意識か‥‥本当にどうしようもないな、君は‥‥」
「まあ一画ぐらい良いんじゃない?私の欲望の為に使っても」
「君の場合、全部そうなる予感がするのは私だけか。‥‥そもそも何だ、あの微妙に具体的な命令は‥‥!君のせいで、私はあの男を分割しなければというおかしな義務に駆られているのだがどうしてくれる⁉︎」
「ぶ‥‥っ‥‥‥!」
悲痛なアーチャーの嘆きに思わず吹き出す。
同時にもっとおかしな命令にすれば良かった、と少し後悔。
例えばそうだな、両方にダメージが残るやつが良い。全力であいつに投げキッスしろ!とか‥‥
そんな下らないことを考えているうちに、捌く気満々(笑)の彼は青タイツに突進していった。
あれ、あいつ丸腰なんじゃないかと見ていると、気がつけばその両手には剣が握られている。
‥‥ん?あいつアーチャーじゃなかったっけ、何で剣使ってんの?
しかもアーチャーは次から次へとまるでマジシャンのように剣を壊されては取り出し、壊されては取り出しを繰り返している。
いやもう反則だろ、アレ。
この常識を逸脱した凄まじい戦いに、ここが運動場であることをつい忘れてしまいそうだ。
あーもうさっさと帰ってシチュー食べたいなぁと戦いの観戦に飽きて軽く現実逃避していたその時、突如としてランサーがアーチャーと反対の方向へ「誰だ!」と怒鳴り声をあげた。
驚いてそちらを見ると逃げていく黒い影。なんとまだ学校に残っていた学生によって、今までの戦いを見られていたらしい。
ランサーが逃げた学生を追いかけて行ってしまう。それに続く遠坂さん。そして取り残される私たち。
「‥‥‥帰ろっか、アーチャー」
「あの二人を追いかけなくとも良いのか?」
「だって私、治癒魔法使えないから行ってもあんまり仕方ないし。それに、私はとってもおなかが空いた」
「‥‥流石は君だな、この状況でもマイペースは健在か」
そんな私の気まぐれで、私たちは一応帰宅することになったのだが、ここで追いかけるという選択肢を選ばなかったことによってこの一晩に自分でも想像がつかない出来事が繰り広げられてることを私は知らない。