「団長サン☆ちょっといーい?」
「いや、今忙しいんで……」
この野郎、オレ様の今世紀最高に可愛い決めポーズをスルーした挙句このオレ様の誘いを断りやがった!
今グランは、セン、アンチラ、メルゥ、ミムルメモルと一緒に骨がなくなったかのごとくぐんにょりとしている。寝て……るんだよな、多分。
「……だらけてるだけじゃねぇか」
「お昼寝部の活動だ。あと少しで世界の真理が見える気がする」
「見たけりゃ見せてやる、アルス……」
「あ、ストップストップ。起きる、起きるからアルスマグナらないで。悪い皆、続きはまた今度」
杖を構えてウロボロスがぐるぐる回り出すと、グランは渋々といった様子で立ち上がった。
ぷぉーとかにゃーとかいう音がグランを送り出す。
この船の奴らってホント、意味わかんねーのが多いな……。
☆
オレ様の研究室にグランを連れていき、椅子に座るよう促す。
まだ少し眠そうな様子のグランは、椅子の背に肘をつきながら欠伸をした。
「それで、何の用ですかね錬金術師サマ」
「……なぁ、俺様って可愛いよな?」
「突然どうした。カワイイぞ、うん」
「そうだ。可愛いんだ。世界一可愛いはずだ。それなのにだな、この団での扱いが雑じゃないか?」
「そうか?普段からみんなカリオストロを立派なレデ〜として扱っているじゃないか」
「雑な扱いの筆頭はお前だお前!この美少女を前にしたら赤面して胸を高鳴らせて然るべきだろうが!なんで常に真顔だ!」
「こ、こうか……?」
顔を赤らめて目を逸らすグランを見て、何かが胸にこみ上げてくる。
「あ、やっぱりやめろ気持ち悪い」
「ひどい」
「それでだな、俺様は思ったわけだ。私がチヤホヤされないのはどう考えてもお前らが悪い。しょうがないから、ここのアホな団員どもでもわっかりやすーいような可愛さを見せてやろうとな」
「カリオストロ様のご厚意が身に染み入るなぁー」
「というわけで、俺様の可愛さをわかりやすくするにはどうする?」
「え、そこで俺に振るの?」
「お前の可愛さの追求力には一目置いてるんだ。光栄に思え」
「カリオストロ様の一目が光栄だぁー。……要は俺がカリオストロの魅力をプロデュースして団員に広めていけと」
「そういうことだ」
「……よし、そういうことなら奴らを呼ぶか」
「あ?奴ら?」
グランは廊下に出ると、伝声管を使って船内へと通達を始めた。
伝声管は船の主要な部屋、個室の前の廊下などに設置されていて、主にグランが団員を招集するときや、飯の準備が出来たとき、あとはグランのイタズラなどに使われている。
今回は招集のようだ。
「『あー、あー、団長より同志Jと同志Sへ。カリオストロの部屋に集合せよ。繰り返す、同志J Sはカリオストロの部屋に集合せよ』」
「……なんだ同志って」
「可愛いものをこよなく愛する同志だ」
……なんかいやな予感がする。
その予感の直後、男が二人現れた。
「なンかあったか、同志G」
「某らに出来ることなら何でも力になろう」
「おぉい!こいつらに相談するのだけは嫌だぞ!?」
同志Jと同志S、改めジンとソリッズ。この船のなかでもトップクラスの変態だ。というよりは、男の欲望に忠実な奴らというべきか。女風呂の壁の補強、船内見廻りの仕事の追加、女子入浴時のリーシャの見張りなどは主にこいつらのために取り入れられたものだ。以前グランが面白がってこいつらに協力した時には男と女の戦争が始まったこともある。え?オレ様がどっちについたかって?カリオストロは〜、可愛い可愛い、女の子だぞ☆
と、オレ様の言葉を無視してグランがジンとソリッズと握手を交わしている。
「よく来てくれた、同志。これより第146回目の漢浪漫会議を執り行う。今回の議題は『カリオストロの可愛さを広めるためには』だ」
「ほう。カリオストロ殿の可愛さについては第21回の会議で語り合ったな。その内容が応用出来るか」
「へっ、あン時の、体を作り変えられるならボインのネーチャンにすべきって俺の意見に対するお前らの抗論……アレは響いたぜ」
「やっぱり帰ってくれ!!」
☆
「さて。まずは外面から変えていくか。可愛さというものには、慣れがある。変化がなければ、どんなに可愛いものでもすぐに飽きがきてしまうんだ。ここの団員は皆カリオストロの可愛さに慣れ切ってしまっている。だからここはひとつ外面を大きく変えてギャップを狙っていくべきだ」
「うむ、異議はない」
結局三人を部屋に入れ、椅子に座らせてしまったオレ様。
ナメた発言したら即ウロボロスに食わせようと思っていたが……。
「お、おう、思ったよりも真面目な議論だな……。なるほど、理屈は通っている。それで、どう変える?」
「簡単なのは髪型だな。いつもの髪型も可愛いが、元が良いからどんな髪型も似合うはずだ。そうだな、お団子なんてどうだ。見た目の変化がわかりやすいうえに、可愛さもグンと上がるはずだ」
「お団子か、よし、ちょっとやってみ……」
オレ様が髪をまとめようとした瞬間、ジンがガタンと立ち上がった。
「待たれよ!!確かにお団子へあーも良いが……ここはポニーテールにすべきだ!男というのは揺れ動くものを見ずにいられない!これで視線を釘付けだ!」
それに応じてソリッズも机を叩きながら立ち上がり、椅子に足を乗せる。おいそれオレ様の部屋の椅子だから。
「オイオイ、そンならサイドテールでもいいじゃねぇか。ウェーブかかった三つ編みなんかでな!」
「いや待て、そんな一気に言われてもだな……」
しかしグランも立ち上がり、野郎三人は額を突き合わせメンチを切り合ってる。
「テール系はゴムで髪をくくればそれで終わりだろ!お団子という一見面倒そうな髪型にすることで髪型に気を使ってることをアピールすんだよ!」
「そんなアピールはわかりにくい!ポニーテールならば、その髪を結ぶ過程すらも武器になる!チラリと見えるうなじ、ふわりと動く髪、ヘアゴムを咥えていただければ尚良し!!」
「ここはいっちょ大きく変えてみるべきだろうが!横から伸びた三つ編み部分の髪を肩にかけることで人妻っぽさ、いつもと違った大人のエロスを演出だ!!」
「わ、わかった!全部、全部やってやるから一旦落ち着け!!」
スン……。
オレ様が声を張り上げた瞬間、さっきまでの喧騒が嘘だったかのように、三人とも椅子にキッチリと座っていた。
「……え、そんな一瞬で鎮火されんの?」
なんか納得いかねぇけども、とにかく治まった。
まぁ、こいつらも一応真面目にオレ様のために議論しているようだし、少しは見逃してやるか。
「髪型の次は、服だな。これもまた重要なファクターだ。俺はホットパンツがいいと思う。いや俺個人の私情抜きで、普段ヒラヒラスカートばっか履いてる奴が突然ピッタリズボン履いてきたら嫌でも見てしまうという根拠に基づいてだな」
「某はユカタヴィラがいい!!間違えた、第三者の目から見てもやはりここはユカタヴィラがよかろう。大きく開いた背中に劣じょ、ドキドキするのは男の性だ。そこにポニーテールが加わってみろ、もはや男どもの目は釘付け間違いなしだ!!」
「待て待て、肌色多くするのは構わねえが出すのは脚や背中じゃねぇだろ。男が一番女に一番魅力を感じるのはどこだ?そう、胸だ。乳だ。パイオツだ。というわけで胸元を大きく開けろ。大丈夫だ、小さいことはハンデじゃねェ。勿論デカイ方が好きだが、小さくても武器にはなるのさ」
「いや、「しかしな、「だからだな、」
「わかった!!着てやる!!着てやるから!!いや、ソリッズのは却下で」
「何でだァ!?」
☆
会議はその後五時間に渡り続けられた。
オレ様も三人の言い争いに加わり、議論はさらに白熱。
ならば実践してみせよ、おおやってやらぁ、ということで。
オレ様は言われるがままに、こいつらの要望にいくつも応えていったのだった……。
「「「あそっれメイド服!メイド服!」」」
「しょ〜がねぇ〜なぁ〜!!」
くるくるりんと回りながら、錬金術で学生服をメイド服へと作り変える。
そしてビシッとピース!アンド最高の笑顔!!
「かわいー!!」「かわいいぜー!!」
「かわいいぞー!次はバニーで頼む!」
「はっはっはーっ!!そうだろそうだろオレ様をもっと褒めろ崇めろってち・が・う・だろぉ!!主旨変わってるじゃねぇか!!」
頭のカチューシャを地面へと叩きつけ、ダンダンと踏みつける。
オレ様はファッションショーを開いたわけじゃねぇ!!
「チッ、もうダメか……」
「次は水着を着てもらおうと思ったのだが……」
「あそっれバ・ニ・ィ!バ・ニ・ィ!」
「アルス・マグナァ!!!」
「「ぐっはぁぁぁぁ!!」」「とうっ」
チッ、グランだけかわしやがったか!
「待て落ち着けカリオストロ。別に俺たちは間違ったことをしていたわけじゃないぞ?可愛さの追求だ。カリオストロにどんな服が似合うのかというな」
「ぐ、まぁ確かに……って騙されるわけあるか!!完全にお前らの趣味丸出しだったろうが!」
「結果!カリオストロはなんでも似合うということがわかった!全部可愛いぞ!」
「……お、おう」
そう言われると満更でもない。オレ様が可愛いのは当たり前だがな。
「さて、ということでそのメイド服のままでいってみよう。それだけでも十分男どもの目は引けるだろうが……。しかしここで、俺に考えがある」
ピッと人差し指を立てるグラン。こいつがこういうときはだいたいロクでもないことだ。オレ様は無言で続きを促す。
「カタリナの料理の横にローアインの料理を置けば、ローアインの料理がいっそう美味そうに見える!それと同じで、横に引き立て役を置くことにより、その差でさらにカリオストロが可愛く見えるはずだ!」
ふぅん、例えはアレだが確かに納得はできるな。
「その役目は……そうだな、センでいいか」
「セン?あの猫娘かよ。あいつもまぁ、そ・れ・な・り・には可愛いし、引き立て役としては正直微妙じゃねぇか?」
「まぁまぁ、任せておけって」
ちょっと連れてくる、と言ってグランはオレ様の部屋を出て行った。
……不安だ。
☆
「おーい、ライアン、ウェルダー!見せたい子たちがいるんだけど!」
「む、なんだグラン」
「見せたい子?小動物か?」
ちょいちょいとグランが手招きしてくる。
ったく、そんな前振りいらねーってのに……。
服、オッケー!動き、オッケー!笑顔、オッケー!
よーし、カリオストロ、いっきまーす☆
あ、もう1人、向こうの陰に隠れてたセンが先にあいつらの方へ走って……って。
「ワシこそがぁぁぁ!!古今無双の猫娘、セン・ダゴウザであぁぁぁぁぁぁる!!!にゃ」
センの服&猫耳着用のガンダゴウザだった。
「「おぼろろろろろ」」
「おおぉぉぉい!!比較対象のインパクトが強すぎだろぉぉぉ!!こっちの姿見る前にダウンしてんじゃねぇか!帰らせろ!!」
ファンタズマゴリアを咄嗟に発動しなきゃオレ様も危なかった……!
ゲロなんざ美少女が絶対出しちゃいけねぇもんだぞ。
「ええっ!?わざわざこのためだけにコルワに即興で服作ってもらったのに!」
「がっはっはっ!!新しい服というものはなかなかに気分が乗るものであるな!!にゃ。皆に見せて回るとするか!!にゃ」
「待てぇ!!船内でテロ起こすんじゃねぇ!!」
クソ、確かコルワが作る服には着た奴の気分を変える力もあったっけか!この生物兵器のテンションが高いのもそのせいか!!あと律儀に毎回「にゃ」っつってるのがすげぇムカつく!!
「……ん?なんでグランはコレ見て平気なんだよ」
「え?目つむってるから」
この野郎……。
目を閉じたままドヤ顔をするその顔に一発ぶちこんでやりたい……。
ん?
あ。
「アルス・マグナァ!!」
「ぐっはぁぁぁぁ!!」
そうだそうだ、目瞑ってるなら避けられねぇよなぁ?
「あっはっはっはっ!!悪は滅びた!!」
倒れ伏したグランの尻を踏みつけ、天を指差す。
こいつに相談したのが間違いだった。
いや、髪型とか服の話とか、少しは、ほん〜の少しは参考になったか。
さて、一応船の中を回ってみるか。団員どもにこの格好の感想を聞かねぇと……。
……あれ?あの生物兵器どこ行った?
「ぎゃあああああ!!なんすか!ヤバイのが!先輩!先輩ぃぃぃ!!」
「あれは、この船の均衡を乱すものだ……」
「醜悪だわ(醜悪だわ)」
…………………………。
カリオストロ、し〜らないっ☆
さ、お部屋に帰って錬金術の研究の続きでもしよっと。
可愛さ研究?ああ、うん、しばらくはいいわ。
登場キャラ紹介
カリオストロ
世界一可愛い錬金術師。るっ!では弄られることによって更にその可愛さを増している。猫被っても可愛い。素を出しても可愛い。弄られても可愛い。ソリになっても可愛い。すっげーな煮ても焼いても可愛いじゃねーか。