教室に入ると既に何人かの人が話していた。
「まゆっちの近くじゃなかったな、残念(笑)」
「仕方ないですよ、薫さんは苑宮で私は黛なんですから」
まゆっちは窓側の前から3番目で俺は廊下から2列目の前から5番目だった。
「じゃあ、みんな来るまで話していようか」
「はい、喜んで」
それからHRが始まるまでのあいだ、他愛のない話をしていた。
「皆さん席についてください」
担任らしき教師がそう言うと周りで話していた奴らは席についていった。
どうやら担任教師らしいな…普通の教師か
担任教師は小沼というらしい。小沼が話している時、ふとまゆっちを見たら、まゆっちが自分の席の周りの人にガン飛ばしていた。
おいおい、友達出来ねぇぞ?と言ってやりたいが、小沼が話し中なので注意も出来なかった。
そのまま自己紹介やらなんやらが終わり、休み時間となった。
まゆっちを見ると、見事にクラスの人に怖がられていた。
まぁ、いきなりガン飛ばされてしかも刀持ってりゃそうなるだろ。と思いつつもまゆっちに近づいていった。
「薫さん、どうすればお友達が増えるのでしょうか」
「うーん、笑顔で話しかけるとか?」
「こんな感じですか?」
まゆっちはそう言うと、俺にガン飛ばしてきた。威圧感半端ねぇ~てかこれが原因だったのか。
「まゆっち聞きたいんだけど、今までどうやって友達作ってきたの?」
いくら怖いやつでも友達くらいいるだろう、そう思っていた。
「い、今まで一人も友達ができた覚えがありません」
まゆっちはキラリと光る涙を流しながら、そう言った。
「まゆっち、多分原因はいくつかある」
「それは、どんなところですか?」
「一つ目は笑顔、まゆっちの笑顔は力が入りすぎている。無理に笑おうとしなくていいよ、自然体が大事」
「あぅあぅ、仰る通りです」
「負けるなまゆっち!強い心を持つんだ!」
「二つ目は松風だな。みんなから見りゃストラップと会話している痛いやつだ」
「アウチ!」
「手荒な一言を」
「最後に刀だ。怖い顔して、ストラップと会話、さらに帯刀とか、友達が寄り付くわけねぇよ」
「はぅぅ~!?」
「刀は手放せなくとも松風の出番を少なくして、尚且つ無理に笑顔を作らない。これで多少は良くなると思う」
「そんな、オラ納得できねぇよ!」
「うるさい。没収!」
「あぁ!」
「まゆっち~助けてくれ~!」
「次の休み時間まで松風は没収だ」
「そんな、殺生な!」
「友達をつくるなら自分から話しかけなよ」
「でも、なんて話しかければいいのか…」
「幸いにも今日は入学初日だ、これからよろしくくらい言っておけ」
「はい!」
それからというものまゆっちはクラスの人に話しかけようとするが、何かに集中していたり、話しかけても怖がられてしまったりして、なかなか進展はなかった。
俺もクラスの人に話しかけていた。
普通に友達が出来たし、一体どこがまゆっちと違うのだろうか、やはり刀か?刀なのか?と思いつつも、まゆっちは怖いやつじゃないと言っておいた。
どうやら皆は、まゆっちになにか機嫌を悪くするようなことを言ったら斬られてしまうと思っているらしい。
さらにはストラップと会話していて少し怖いとか、睨まれたので近づきづらいなどと言っていた。
一応弁解はしておいたが、あまり信じてもらえなかった。まゆっち、友達100人の道は長いぞ。
因みに、俺は隣の席の大和田さんとよく話した。彼女は七浜ベイのファンらしい、野球を知らない俺としては野球関連の会話は出来ないので辛かった。向こうも察してくれたのか色んな話題を提供してくれたのでこちらとしても助かった。大和田さん優しいな。それと大和田さんはよく食べ物を口に含んでいた。ちびちびと食べる様はとても愛らしかった。
そんなこんなで、入学初日としてはなかなかいい感じにできたと思う。
まゆっちと大和田さんとは結構仲良くなれたと思う。
今度まゆっちには大和田さんを紹介してあげよう
そして放課後。
「あ、あの、薫さん!」
「うわっ!?」
背後からまゆっちが声をかけてきたので不覚にも驚いてしまった。
「い、一緒に帰りませんか?」
「え?あ、あぁ。いいよ」
「よ、よかったです」
「ん?どうした?」
「実はまゆっちな~一緒に帰ろうなんて人生で一度も言ったこと無かったから緊張してたんだぜ~」
どんだけ悲しいやつなんだよまゆっち。
「な、なんてことを言っているのですか松風!」
今思えばまゆっちが困惑する所も結構可愛かった。
帰り道、入学式に咲き誇っていた桜は散り始め、所々若葉が見え隠れしていた。
「ところでさ、まゆっち」
「はい、なんでしょう?」
「聞くまでもないと思うけど、友達はどうだった?」
「あぅあぅ、入学してからまだ一人も出来ていません」
あれ?入学してからだと…俺も友達じゃない感じ?
そうか、まゆっちは知り合いと友達の境界線がわからないんだ。そりゃそうか、なにせ友達というもの自体いなかったから勘違いするよな。ここらで元気を出させるか
「まゆっち、それは違うよ」
「え?」
「俺はまゆっちを友達と思っているよ?俺が友達じゃ嫌なのかな?」
「そんなはずがありません!で、でもいいんですか?私なんかと」
「あぁ、まゆっちだからこそだよ。別にまゆっちが可哀想だからというわけじゃないし、誰でもいいという訳でもない。ただ単にまゆっちが気に入った。それにまゆっちは面白いしね」
「友達は、普通損得感情とか見返りとかを求めてなるものじゃないだろ?気に入ったから、楽しいから、仲良くなりたいから友達になる。難しく考えなくていい。利益を求めて友達になる、そんなのは友達じゃない!俺はそんな上っ面だけの友達より、本当の友達になりたい!まゆっちと馬鹿して楽しく過ごしたい。まゆっちが困ったら助けたいし、俺が困ったら助けて欲しい」
これは俺の本心だ。
「黛由紀江」
「は、はい!」
「俺の友達になってくれ」
「はい!私の方こそお友達になってください!」
「あぁ、よろしくな。まゆっち」
「はい、こちらこそよろしくおねがいします。薫さん」
まゆっちは瞳から流れる涙を拭いながら、俺の差し出した手を握った。
セリフが臭くてもカッコよければいい!
かっこよかったのか?